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一ヶ谷兼乃の

【特別編】:光ファイバー接続インターネット導入記 ~中編~

 昨日に引き続き、一ヶ谷兼乃氏による「光・IP通信網サービス」導入レポートをお送りします。(編集部)


■今日って工事日?!

 2月27日の夕方、いきなり自宅の呼び鈴が鳴った。インターホンに出ると、これから光ケーブルの工事を行なうということであった。予定では3月8日に全ての工事が行なわれるはずであったので、これにはちょっと驚いた。筆者宅の近くには「山手通り」と呼ばれる環状道路があり、その道路の工事が明日からできなくなるということで、急遽工事日が前倒しになったらしい。当日は、近くに引かれているNTTの光ケーブル網から、筆者宅のベランダまでの工事を行なった。工事の中心となっていたのは日本コムシスの方々であった。

 筆者宅へ引き込む光ケーブルを接続する起点が、山手通りを超えた反対側の電柱にあるため、非常に大掛かりな工事となってしまった。作業の様子を見物するため通りに出てみると、高所作業用のゴンドラを搭載した作業車が2台、実際にケーブルを張る作業員や交通整理を行なう作業員など、総勢10名以上が作業に取り掛かっていた。夕方から始まった作業も、日が暮れ、暗くなった中で黙々と作業を進めていた。ようやく筆者宅まで光ケーブルが到着し、作業が終了したのは、呼び鈴が鳴ってから、数時間後のことである。ケーブルは50mほど先の電柱から幹線道路を越え、何本かの電柱を経由して、筆者宅のベランダに届いていた。ベランダに置かれたケーブルは、部屋へ引き込むために必要な長さが巻かれた状態で、そのままベランダに放置された。

工事風景。山手通りを越えて、筆者宅側での工事 夕暮れに近い時間帯から工事は始まった 暫定的にケーブルがはわせてある状態。たわんでいるのが光ケーブル

 ベランダで巻かれている光ケーブルを観察してみると、ケーブルを張るために使っている金属製のワイヤーを中心にして、4本の光ケーブルをより合わせたような形状をしている。そのうちの1本の光ケーブルを見てみると、一般的な電源ケーブルのように、断面が長方形で真中あたりに筋が入っているという形状をしていることがわかる。

 翌日2月28日の朝方、何気なく山手通りに出てみると、日本コムシスの作業員が、昨日作業を行なっていた電柱で引き続き作業をしていた。時間が無かったので声をかけはしなかったが、例のゴンドラを搭載した車で、3名ほどの方が作業を行なっていた。数時間後、同じ場所を通りかかったのだが、その時点では作業が終ったのか、作業車は既に撤収されていた。この後、筆者宅にONUを設置する工事も行なわれるため、光ケーブル関係の工事は合計3回も行なうことになる。

 3月3日、NTT東日本から、光・IP通信網サービスの約款やPPPoEで接続するためのソフトが入ったCD-ROMなどが届いた。3月5日には、リムネットからサービスの開始を通知するメールが届き、なんとかプロバイダのアカウントが入手できたため、安心して3月8日の工事日を迎えることができたのであった。


■ついに工事最終日

 ついに待望の3月8日が来た。朝一番にNTT東日本の営業担当から電話が入り、作業のスケジュールに関して大まかな説明があった。予定の時間になると、NTT東日本の営業担当者と日本コムシスの作業員が筆者宅に到着した。

 まず、午前中に日本コムシスの作業員が、ベランダにある光ケーブルを部屋に引き込んだ。光ケーブルは固定用のフックから先は、ワイヤー部分が切り取られ、4本の光ケーブルがより合わさった状態のまま、青いゴム状のカバーで保護された状態で、エアコン用のダクトの直前まで来ている。ダクトの直前で青いカバーが外されて4本の光ケーブルだけの束になり、そのままダクトを通過して、部屋の中に引き込まれた。引き込まれた4本の光ケーブルは適当な長さに切られ、そのうち、通信を行なう1本だけが終端加工された。

引き込み工事後の外壁部分。フックには補強用のワイヤーが固定され、4本の光ケーブルはエアコンのダクト直前まで青色のカバーでまとめられている 光ケーブルを引き込んだ後のエアコンのダクト。モールで保護することもできたが、特に問題がないので剥き出しのまま

光ファイバーの端に溶着したコネクタの面を水研ぎしているところ。左下から伸びている青い線が光ファイバー

 終端加工の作業行程は、まず、取り出したケーブルの被覆を剥がして光ファイバーがむき出しの状態にする。その端に、専用のコネクタを接着剤で取り付け、加熱し、溶着する。

 このままの状態ではコネクタの面が汚いため、研いて綺麗な状態にする必要がある。まず、先ほど溶着した光ファイバーのコネクタを、専用の器具に固定する。次は器具に研ぎ紙を張り付け、専用の溶液を垂らしながら、いわゆる「水研ぎ」を行ない、仕上げていく。仕上げの状態はその都度、顕微鏡のようなもので研いだ面を目視で確認し、完全でなければ、再度水研ぎを行なうという、地道な作業が繰り返された。この作業、非常にクラシカルな雰囲気があり、筆者はとても興味を覚えた。

 目視で確認がとれたら、今度は実際にテスターを使って光の信号の減衰状態などを測定し、正しく通信できるかどうかを確認する。これが終わって初めて適切に終端加工が行なわれたことになる。終端加工が終ったら、「屋内成型キャビネット」と呼ばれる、プラスティック製ケースの中にある直径20cmほどのワッカに巻いて、作業は終了。部屋に引き込まれた4本の光ケーブルのうち、使用されない3本は、このキャビネットの入り口で切り取られる。引き込み工事が始まり、光ケーブルがキャビネットに納められるまで約1時間ほどが経過し、ここで午前中の工事は終了した。

 余談だが、光ケーブルの中身は、ちょうど電源ケーブルで言う銅線の部分に対応するところに、光ファイバーを保護するためのワイヤーが2本入っている。その2本のワイヤーの間に、光ファイバーが配置されていた。光ファイバー本体にも薄い被覆がかぶさっており、光ファイバーだけでも中心部の芯となる部分と、それを保護するための部分で構成されているようだ。

屋内成型キャビネットの内部。野外用のケーブルと屋内用のケーブルを接続するために利用されるもの。光ケーブルの接合面に物理的な負担をかけないように、光ケーブルが巻き取られている 屋内成型キャビネット内部の光コネクタ接合部分。オレンジの部分が屋外からの光ケーブル、緑の部分が屋内からの光ケーブル 真中が屋外用の光ケーブル。これが4本よった状態で部屋の中に引き込まれた。切断面に見える2本の突起は光ファイバーを保護するワイヤー。右の青い線が光ケーブルの中の光ファイバー


■工事完了。いよいよ開通!

 午後になると、今度はNTT東日本の営業担当者と、NTT-MEの作業者が筆者宅に来た。NTT-MEの作業者は、午前中にキャビネットへ収めた光ケーブルのコネクタに、屋内配線用の光ケーブルを接続した。その後、接続した側とは逆の、ONUと接続する側のコネクタに専用のテスターをセットして、通信が正常に行なえるかどうかをチェックした。ここでは、NTT東日本の光ケーブルを収容している電話局から、筆者宅の光ケーブルの端まで、信号が規格内であるかどうかをチェックしている。

ONUの正面。沖電気製のようだ ONUの背面。白いのが電源ケーブル。黄色が屋内配線用の光ケーブル。黄色のケーブルには2本の光ファイバーが入っている ONUの内部。左側に光ケーブルを巻き取る部分がある。中心付近にある青いコネクタで光ケーブルが接続される

 ちなみに光ケーブルは、電話局からユーザー宅までの間だけでも、いろいろなところで他のケーブルと接合されている。接合部分の加工が雑に行なわれていたり、規格に沿った扱い方をしていない場合には、光信号が減衰し、通信が行なえなくなったり、通信速度が遅くなったりしてしまう。そのためONU直前と、電話局側での最終テストが必ず必要になるということだった。ここで使用された屋内用の光ケーブルは、あらかじめ終端加工がされた既製品のため、先ほどのような水研ぎ作業は行なわれなかった。

 テスターでのチェックが終わり、屋内用光ケーブルとONUが接続された。光ケーブルは、ここでもやはりONUの中で直径15cm程度の円状に巻き取られて収められていた。このONUを経由することで、光の信号を10BASE-Tの電気信号に変換し、インターネット端末を接続できるようにするわけだ。ONUの準備が完了すると、NTT-MEの技術者が持ち込んだノートPCをONUに接続した。

 その後、フレッツ系サービスユーザー専用のホームページである、「フレッツ・スクエア インフォメーションサイト」にアクセスして、パフォーマンスなどの測定をしていた。だが、そこで計測された速度は、たった1.7Mbps程度という、気の遠くなるような結果であった。そこで、計測に使用しているノートPCをチェックしてみると、ゆうに3世代以上も前の機種であった。これでは通信インフラではなく測定しているPCがボトルネックとなってしまい、正確な数値が測定できるはずもない。結果は気になるが、ここはおとなしくNTT-MEの技術者の作業が完了するのを待つことにした。しばらくすると、ノートPCを使ったチェックは終了し、午後の作業が完了した。ちなみに、作業時間は1時間強といったところ。

 工事が終わり、まず注意されたのが、ONUの扱いについてである。ONU自体をNTT側からリアルタイムで監視しているため、電源を長時間切るときには連絡を入れて欲しいということであった。ただし、ONUを移動するときなど、数分程度であれば問題無いということであった。また、くれぐれも光ケーブルを抜いたりはしないように、とも注意を受けた。説明を終えると、NTT-MEの作業員とNTT東日本の営業担当者は帰って行った。この時点でようやく全ての工事が完了したことになる。結局、申し込みから開通までは、約2ヶ月半という道のりであった。

 筆者宅の外壁に取り付けた光ケーブルを固定するためのフック工事以外は、NTTに支払う初期工事費用の27,100円に含まれる。現調や2月27日に行なった大掛かりな野外工事、3月8日の屋内工事、その他電話局内での工事など、実際には合計すると数十万円程度では支払いきれないようなコストが発生していると思われる。そう考えると、ユーザーが負担する金額は極めて小額である。

(後編につづく)

□NTT東日本「FLET'S Official Site」ホームページ
http://www.ntt-east.co.jp/flets/index.html
□NTT西日本「フレッツ・シリーズ」ホームページ
http://www.ntt-west.co.jp/flets/index.html
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【2001年4月4日】光ファイバー接続インターネット導入記 ~前編~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010404/dgogo22.htm


[Text by 一ヶ谷兼乃]


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