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登場間近のSamuel2コアのCyrix IIIを切る![速報編] |
●64KBのL2キャッシュが追加され、製造プロセスルールも0.15μmへと微細化
Samuel1コアのCyrix IIIに関しては、このコーナーでも以前「VIA Technologies Cyrix III日本最速レビュー」でレポートした。その時の結果に関してはバックナンバーをご覧いただきたいが、パフォーマンスに関しては見るべきものはないというのが正直な感想だった。その時はCyrix III 533MHzを利用してテストしたのだが、ビジネスアプリケーションにおける処理能力を計測するBusiness Winstone 99では、Celeron 400MHz相当というあたりが妥当であり、浮動小数点演算を利用するようなアプリケーションではCeleron 533MHzに全く歯が立たなかった。
その最も大きな理由は、やはりL2キャッシュがなかったためだろう。Samuel1コアのCyrixはL1キャッシュこそ大容量の128KBを搭載したものの、L2キャッシュはなく、L2キャッシュ容量が処理能力に大きな影響を及ぼすビジネスアプリケーション環境で大きく遅れをとってしまっていたのだ。
その弱点を補うべく、Samuel2では64KBのL2キャッシュが搭載されている。しかも、このL2キャッシュはL1キャッシュと排他的制御を行なうエクスクルーシブキャッシュになっており、L1キャッシュに入っているデータはL2から消され、逆にL2キャッシュに入っているデータはL1から消されるという仕組みになっており、キャッシュの排他制御を行なわないCPUに比べて効率よくキャッシュを利用することができるのが特徴だ。
もう1つの特徴は、製造プロセスルールが0.15μmへと微細化したことと、コア電圧が1.5Vに下げられたことによる消費電力の低減だ。VIA TechnologiesがPlatform Conferenceで公開した資料によれば、Windows 98でBusiness Winstone 99を実行している時の平均消費電力は、Samuel1コアのCyrix III 667MHzが8.6Wであったのに対して、Samuel2コアのCyrix III 667MHzは4.9Wと減少している。最近のCPUは消費電力が増える一方で、冷却などにも気を使わなければいけないが、これぐらいであればCPUの冷却にファンは必要なくヒートシンクだけでも大丈夫なレベルと言える。
●対応にはBIOSのアップデートが必要な場合がある
今回はマザーボードとしてGIGA-BYTE TechnologyのApollo Pro133A搭載マザーボード「GA-6VX7-4X」を利用した。このGA-6VX7-4XはVIA Technologiesから提供をうけたSamuel2対応BIOSが入っているバージョンを利用した。Samuel2はSamuel1とは異なり、L2キャッシュが搭載されているが、対応していないBIOSの場合にはこれが認識されない場合がある。例えば、SOLTEK COMPUTERのSL-65MV(Apollo PM133)に挿してみたが、L2キャッシュは認識されず、起動時の構成画面で0KBと表示されてしまった(なお、SOLTEKではSL-65KVなどのApollo Pro133A搭載マザーボード用BIOSに、Samuel2対応バージョンを用意しており、同社のホームページからダウンロードできる)。
Samuel2に対応しているBIOSの場合、OS起動前に表示されるPCの構成画面で、L2キャッシュが64KBと表示され、CPUの表示も「Cyrix III 667A MHz」とクロックの数字のあとに「A」がついて表示される。なお、対応していないBIOSの場合には、CPUの表示も「Cyrix III 667MHz」とSamuel1と同じ表示になった。もしSamuel2コアのCyrix IIIを購入する場合には、BIOSが対応しているかどうかをチェックした方がいいだろう。
Samuel1コアCyrix IIIとの比較(左側がSamuel2コア、右側がSamuel1コア) | それぞれの裏面(左側がSamuel2コア、右側がSamuel1コア) |
●ビジネスアプリケーションでは同クロックのCeleronとほぼ同等
それでは、ベンチマークの結果を見ていこう。今回はベンチマークとしてZiff-Davis,Inc.のWinstone 99に含まれるBusiness Winstone 99とHigh-End Winstone 99、BAPCOのSYSmark2000、MadOnion.comの3DMark2000 Version1.1の3つを利用した。テストに使用したのはVIA Technologiesより提供されたSamuel2コアCyrix III 667A MHzのエンジニアリングサンプルで、システムバス133MHzの5倍で動作する。今回は比較対象として、Celeron 667MHzを用意し、同クロックのCeleronと比較することにした。なお、テスト環境は以下の通りだ。
マザーボード:
GIGA-BYTE Technology GA-6VX7-4X
メモリ:
PC133 SDRAM(128MB、CL=3、Cyrix III)
PC100 SDRAM(128MB、CL=2、Celeron)
ビデオカード:
GeForce2 GTS 64MB DDR SDRAM
ハードディスク:
IBM DTLA-30730(30GB、Ultra ATA/100)
OS:
Windows 98 Second Edition+DirectX 8.0(SYSmark2000、3DMark2000)
Windows NT 4.0+ServicePack4(Winstone 99)
Business Winstone 99の結果だが、Celeron 667MHzが30.6であったのに対して、Cyrix III 667A MHzは30.3とほぼ誤差の範囲内で、同等という結果になった。また、SYSmark2000のうち、Word2000、PowerPoint2000、Excel2000、Netscape Communicatorといったいわゆるビジネスアプリケーションにおける結果では、Cyrix III 667A MHzはCeleron 667MHzとほぼ同じ結果になった。
Business Winstone99 | 30.3 |
---|---|
30.6 | |
High-End Winstone99 | 19.6 |
24.7 |
SYSmark2000
Overall Rating | 084 |
---|---|
119 | |
Internet Content Creation | 065 |
121 | |
Office Productivity | 102 |
118 | |
Bryce 4 | 077 |
112 | |
CorelDraw9 | 077 |
129 | |
Elastic Reality 3.1 | 072 |
143 | |
Excel 2000 | 106 |
125 | |
NaturallySpeaking Pref 4.0 | 079 |
102 | |
Netscapeョ Communicator | 113 |
118 | |
Paradox 9.0 | 123 |
117 | |
Photoshop 5.5 | 049 |
114 | |
PowerPoint 2000 | 112 |
117 | |
Premiere 5.1 | 071 |
121 | |
Word 2000 | 115 |
116 | |
Windows Media Encoder 4.0 | 059 |
120 |
しかし、それ以外の浮動小数点演算を利用するようなアプリケーションや、SIMD型演算を行なうNaturallySpeaking Pref 4.0、Windows Media Playerなどの結果は、残念ながらあまり芳しいものではなかった。また、3Dの処理能力を計測する3DMark2000では、GeForce GTSに搭載されているハードウェアT&Lを利用して演算している時には小さかった差も、CPUを利用して演算している場合にはかなり大きな差となっており、やはり3Dなどの処理にはあまり向いていないCPUだと言えるだろう。
640×480/16 | 1,861 |
---|---|
3,060 | |
640×480/16 | 1,850 |
3,054 | |
800×600/16 | 1,872 |
2,974 | |
800×600/16 | 1,854 |
3,057 | |
1,024×768/16 | 1,869 |
3,032 | |
1,024×768/16 | 1,865 |
3,037 | |
640×480/16/HW TL | 3,735 |
3,964 | |
640×480/16/HW TL | 3,761 |
4,072 | |
800×600/16/HW TL | 3,759 |
4,040 | |
800×600/16/HW TL | 3,679 |
3,814 | |
1,024×768/16/HW TL | 3,741 |
3,990 | |
1,024×768/16/HW TL | 3,401 |
3,679 |
●バリューPC向けとして存在価値あり
以上のように、浮動小数点演算性能があまり高くないことなどから、マルチメディア系や3D系のアプリケーションでは同クロックのCeleronに遠く及ばないものの、ビジネスアプリケーションを利用している限りは同クロックのCeleronとほぼ同等と言っていいだろう。
VIA Technologiesの子会社でCyrix IIIの開発を担当しているCentaur Technologyの社長であるグレン・ヘンリー氏は「ユーザーが行なう処理のうち、90~95%はいわゆるビジネスアプリケーションを利用している。その大部分にフォーカスした製品こそバリューPC向けのCPUだ」と述べており、元々そうした市場をターゲットにした製品であると強調している。そうした用途がメインである、または単なるインターネット端末として割り切るのであれば、浮動小数点演算性能が低いことは気にならないはずだ。その場合、このSamuel2コアのCyrix IIIは有力な選択肢となる可能性がある。特に、1円を争ってコスト削減を目指している日本の大手PCベンダなどにとってはCeleronやPentium IIIとピン互換であることなどから、オルタナティブ(別の選択肢)として魅力的な存在だと言っていいだろう。
現時点では正式に発表されていないため、Cyrix III 667A MHzの価格がどの程度になるかはわからないが、製造コストがSamuel1よりもSamuel2の方が安価になる可能性が高い(Samuel2の方がダイサイズが小さい)ことを考えると、Samuel1とほぼ同じぐらいか、むしろ安価になる可能性が高い。先週末のAKIBA PC Hotlineの調査によれば、Celeron 667MHzの価格が現在1万円を少し切るぐらい、Duron 700MHzが7千円弱で、現在Cyrix III 667MHzの価格が8千円弱であることを考えると、少々苦しいところだ。ただ、同クロックのCeleronに比べて安価になる可能性が高いので、最初はCyrix IIIで利用し、高クロックのPentium IIIが安価になったらそれに乗り換えようとステップアップを検討するような自作PCユーザーであればよい選択肢となるだろう。
□Akiba PC Hotline!関連記事
【2月3日】Samuel2コア搭載Cyrix III 650/667MHzのサンプル展示が始まる
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010203/etc_samuel2.html
□関連記事
【1月24日】Platform Conferenceレポート
VIAがSamuel2を、AMDはAMD-760MPマザーボードを世界初公開!
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010124/pfc01.htm
(2001年2月5日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]