ProSavage KM133はAMDの救世主となりうるか?



 22日にソニーからAMDのバリューPC向けCPUであるDuronプロセッサ(以下Duron)を搭載した低価格PC「バイオJシリーズ」が発表になった。このバイオJにはチップセットとして、SiS(Silicon Integrated Systems)のAthlon/Duron向け統合型チップセットのSiS730Sが搭載されている。

 AMDのDuronは、これまでIntelの同クラスのCPUであるCeleronプロセッサ(以下Celeron)に対する弱点として、統合型チップセットがないという点が指摘されていたが、SiS730Sが実際に出荷されるようになったことでひとまずその点は解消される。しかし、Athlon/Duron用の統合型チップセットはSiS730Sだけでなく、SiS社のライバルであるVIA TechnologiesもProSavage KM133として既に発表済みだ。先週末の秋葉原ではこのProSavage KM133を搭載したマザーボード、MSI(Micro Star International)のKM133M Pro-A(MS-6340M)が出回りはじめた。今回はこの製品を入手したので、ProSavage KM133の実力を探ってみよう。


●旧S3のSavage4コア+Apollo KT133のProSavage KM133

 ProSavage KM133の構成は、VIAの非統合型Athlon/Duron用チップセットであるApollo KT133(VT8363)に、VIAが買収した旧S3(現SonicBlue)グラフィックス部門が開発したSavage4コアを合体させたものだ。しかも、KT133とKM133はピン互換になっており、マザーボードメーカーは基本的にはKT133とKM133で同じ基板を利用することができる。実際のところ、今回のMSIのマザーボードも「M」が付いていないMS-6340という型番のマザーボードをリリースしており、そちらはKT133が搭載されているスタンドアローンの製品となっている。

 さて、KM133とKT133との違いは既に述べたように、Savage4のグラフィックスコアを内蔵していることだが、実はそのことを除けばKT133と同じように利用できる。というのも、Intel 815やProSavage PM133と同じようにAGPスロットにビデオカードを挿した場合には、内蔵のグラフィックス機能は無効になり、外部AGPビデオカードを利用することができるようになるからだ。つまり、最初は内蔵のグラフィックスでローコストで利用し、内蔵のグラフィックスに不満を覚えたらより描画能力の高いビデオチップを搭載したビデオカードに交換して利用することが可能になっている。

 なお、そのほかのスペックもKT133と同じになっており、メインメモリはPC133 SDRAM、AGP 4X、サウスブリッジのVT82C686BはUSB×6ポート、Ultra ATA/100などをサポートしている。


●2D、3Dともにパフォーマンスは今ひとつ

 今回のKM133のパフォーマンスを計測するためのベンチマークに利用したのはBAPCOのSYSmark2000とMadOnion.comの3DMark2000、Video2000の3つだ。今回は比較対照として

の3つを同時に用意し、テストしてみた。なお、テスト環境は以下の通りだ。

 まず、SYSmark2000の結果だが、KT133+GeForce2 GTSに負けているのは当然としても、Celeron 800MHz+Intel 815(内蔵グラフィックス)にも遅れをとった結果となった。ビデオカードをGeForce2 GTSにあわせてDuron 800MHzとCeleron 800MHzを比較した場合には、Duron 800MHzがCeleron 800MHzを上回っているため、これは純粋にProSavage KM133に内蔵グラフィックスがIntel 815のグラフィックスよりも描画性能が劣るのだと考えていいだろう。

【SYSmark2000】
Overall Rating 127
150
133
147
Internet Content Creation 133
153
140
149
Office Productivity 123
148
128
145
Bryce 4 143
179
126
137
CorelDraw9 148
178
151
161
Elastic Reality 3.1 161
185
167
179
Excel 2000 114
142
134
151
NaturallySpeaking Pref 4.0 109
127
121
132
Netscape Communicator 137
148
129
147
Paradox 9.0 133
151
122
141
Photoshop 5.5 098
105
126
133
PowerPoint 2000 126
157
130
150
Premiere 5.1 138
160
146
152
Word 2000 107
142
112
133
Windows Media Encoder 4.0 134
149
136
148
Duron 800MHz+KM133(Int) Duron 800MHz
Celeron 800MHz+Intel815(Int) Celeron 800MHz

 3Dの描画性能だが、いくつかの解像度で3DMark2000 Version 1.1を実行していると、いきなりベンチマークが落ちてしまったりすることがあった。全部で6つの解像度で実行したのだが完走したのは640×480ドット/16bitカラーと800×600ドット/16bitカラーだけで、それ以外の解像度ではすべてベンチマークがエラーになってしまった。

 確かに出始めでドライバーもこれから改善されるのだろうが、これでは少々心許ない。そういう意味では今後のドライバのバージョンアップに期待したい(なお、未だVIA TechnologiesからPM133、KM133のグラフィックスドライバは公開されていない、早期の公開を望みたい)。ベンチマークを実行できた2つの解像度でも640×480ドット/16bitカラーではCeleron 800MHz+Intel 815(内蔵グラフィックス)という組み合わせに負けている。

【3DMark2000】
640×480/16 1,895
6,695
1,912
5,089
640×480/32 error
6,430
n/s
5,000
800×600/16 1,421
6,513
1,364
5,043
800×600/32 error
5,921
n/s
4,838
1,024×768/16 error
6,072
 901
4,848
1,024×768/32 error
4,780
n/s
4,357
Duron 800MHz+KM133(Int) Duron 800MHz
Celeron 800MHz+Intel815(Int) Celeron 800MHz

【Video2000】
Performance  266
 497
 299
 492
MPEG2 Encoding Performance(fps) 16.17
20.95
20.99
24.12
Duron 800MHz+KM133(Int) Duron 800MHz
Celeron 800MHz+Intel815(Int) Celeron 800MHz


●製品のコンセプトは正しいが、ビデオドライバは要改善

 以上のように、ベンチマークの結果を見る限り、正直パッとしない結果であり、積極的にお薦めしたい製品とは言い難い。Duronが持つ高い性能もスポイルされてしまっており、期待が大きかっただけに残念だ。なんと言ってもその原因はドライバのデキだろう(ベンチマークが完走しないのはその証だろう)。旧S3からVIAに移管されたS3のグラフィックス部門だが、OEMメーカー筋からはまだ完全にVIAへの移管が上手くいっていないという話も漏れ伝わってくる。3Dmark2000が完走しないのもそうだが、SYSmark2000でのスコアがGeForce2 GTSに比べてあまりに低く、Celeron+Intel 815に負けているのも早期に改善して欲しい。そうした意味では、もうすこしがんばってドライバを改良していただきたいものだ。

 ただ、現時点ではビデオドライバという弱点を抱えているものの、当初は内蔵グラフィックスで利用し、そのパフォーマンスに飽き足らなくなったらAGPビデオカードを増設可能というコンセプト自体は正しく、これまで統合型チップセットの選択肢がなかったAMD陣営にとってはこうした製品が投入されたことは朗報と言える。価格も15,000円前後と比較的安価で、Duron自体が1万円を切るような価格で販売されていることを考えるとコストパフォーマンスは決して低くない。3Dは必要ないようなビジネスユーザーで、パフォーマンスよりもコスト重視というユーザーであれば購入しても損はしないだろう。

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http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010120/km133.html

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(2001年1月26日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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