●衛星通信サービス打ち切りとリビングルームPC計画の後退
前回、アームに取り付けることを前提に液晶ディスプレイが欲しいが、肝心のアームが見つからない、と書いたところ、何人かの読者からアームについての情報をいただいた。この場を借りてお礼をいいたい。だが、残念ながら、いずれも筆者が望んでいるZライトタイプ(この説明がすでにわかり難かったのだろうか? もうZライトは死語なのかもしれない)はなかった。
筆者がこだわっている? Zライトタイプというのは、現在実際に市販されている液晶アームに比べて、もっと細くて長いアームを使ったものだ。現在発表されているものでは、日本サムスンの紙のカタログにあるものが一番近い。どうしてこのタイプのアームが欲しいかというと、それは使う時と使わない時(収納時)の距離が長いからだ。つまり、TVラックに液晶のアームを取りつけて、液晶を使う時はリビングテーブルをアームでまたいで、座っている位置まで液晶ディスプレイを引き寄せたい、と思ったのである。
このようなタイプのアームが存在しない(存在できない、ではない)理由もわかっている。三菱のMDT151X(VISEO)、PanasonicのTX-D5L31TN-J、ソニーのSDM-N50といった分離式(液晶パネルと電源/回路部が分かれているもの)でないと、アームの先に取り付ける液晶部の重量が重いため、おそらく支えきれないものと思われる(加えて、電源に加え太めのディスプレイケーブルを通すためにもアームにはある程度の太さが求められるだろう)。つまりZライトタイプのアームは分離式を前提にしないと存在できないのではないかと思う。
それはともかく、筆者が液晶ディスプレイを欲しいと思ったのはリビングルームPCを前提にしたからなのだが、リビングルームPCに対する投資をためらうような事件? が発生した。それは個人向け衛星通信サービスの打ち切りである。それだけが理由ではないものの、リビングルームにPCを置こうと思ったきっかけの1つが、衛星通信サービスの利用にあったことは間違いない。衛星アンテナの関係上、仕事場ではなくリビングルームでなければならなかった、という側面があったからだ。
●SKY PerfecPC!、Mega Waveが相次いで撤退
最初にサービス終了の通知がきたのはSKY PerfecPC!だ。5月17日に郵送されてきた5月16日付の通知によると、SKY PerfecPC!サービスは6月末日で終了するという。解約の手続きは自動的に行なわれるため、ユーザーが解約手続きを行なう必要はないが、問題になるのは手元に残るSKY PerfecPC!対応の受信機器(SKY PerfecPC!対応の衛星データ受信カード等)の扱いだ。ユーザーは将来に渡ってサービスを受けることを前提に、受信機器を購入したわけで、こうしたサービス打ち切りの際には、使い道のなくなる受信機器の補償が問題となる。
この補償について、ユーザーには2つの選択肢が提供される。1つはSKY PerfecTV!を視聴できる「チューナー搭載型のデータ&TVボード(NEC PK-UG-X022)」、もう1つはSKY PerfecTV!視聴料金5,000円相当のいずれかである。SKY PerfecPC!がなくなるのに、データに対応したカードをもらってもしょうがないと思うかもしれないが、とりあえずSKY PerfecTV!をPC上で見られるようになる、というのがミソである(もう1つの理由については後述する)。
そもそもSKY PerfecPC!は、衛星を用いたデータ配信であり、原則的にインタラクティブ性はない(インターネットとは関係ない)。衛星の高速な下り回線を利用して、大量のデータを配布し、ユーザーはそれをビューワーで見るというのが基本的なサービスの形態だが、正直言ってあまり面白いものではなかった。SKY PerfecPC!のサービス料金(視聴料)は390円で、安価だからコンテンツにお金をかけていられない、コンテンツにお金がかかっていないからユーザーが集まらない、という悪循環から結局抜け出せなかった印象が強い。そういう意味では、個人的に打ち切りによるダメージは比較的少なかったともいえる。
このSKY PerfecPC!の打ち切りの通知の翌5月18日、今度は衛星を使ったインターネット接続サービスであるMega Waveから、9月30日付でサービスを終了する旨の告知がきた。それによると、加入者の増加にともなう設備投資の負担と、現在の3,980円(定額制)というサービス料金がバランスせず、採算がとれないという。かといって従量制課金も難しい、ということがサービス打ち切りの理由とされている。
こちらの方の補償は、SKY PerfecPC!よりもっとストレートだ。Mega Waveの利用に用いた受信機器(衛星データ受信カード、たいていの場合、SKY PerfecPC!の受信機器と共用)の購入金額に応じて返金をする。詳細については7月ごろに申告書が送付されるため、現時点では不明な部分も多いが、大枠は決まっている。受信機器の購入金額(モデムやPC本体は含まれない)が4万円以上、5万円未満なら4万円、という具合だ。
ただ難しいのは「購入金額」という部分で、たとえば筆者の場合、使っているカードはソニーのDSB-1000で、標準価格は49,800円だが、その実売価格はというと、ハッキリと記憶はしていない。2割程度の値引きがあったとすると39,840円ということになるが、消費税込みなら4万円を超える。こういう場合、どうなるのかということは現時点では定かでない(細かい人なら、ポイントはどうなる、ということも気になるかもしれない)。
それはともかくMega Waveだが、評価が非常に難しいサービスだった。調子の良い時(つまりはMega Wave、相手のサーバーともに空いている時)は100KB/秒近いデータ転送レートが出たものの、混んでいるとアナログモデムにも劣るようなデータ転送速度しか得られない(テレホーダイ時間帯に特にデータ転送速度の低下が顕著だったことを考えると、Mega Wave側に主に責任があったのだろう)。筆者の場合、昼間に大きなファイル(たとえば3Dゲームのデモ等)のFTPに使う、というのが主な利用法であった。
●6月1日には「Mega Wave Select」がサービス開始。しかし……。
これで、個人向けの衛星データ通信サービスが全くなくなるのかというと、そうではない。Mega Waveを提供していたNTTサテライトコミュニケーションズは、衛星を使ったデータ配信サービス「MegaWave Select(仮称)」を6月1日から開始する予定だ。サービス内容は基本的にはSKY PerfecPC!と同じ。MegaWave Selectには、SKY PerfecPC!にコンテンツを提供していたコンテンツプロバイダも多く参加しており、見方によってはNTTサテライトコミュニケーションズがMega Waveを止める代りにSKY PerfecPC!を受けついだ、と考えられなくもない。SKY PerfecPC!の補償がデータ受信機能を持つSKY PerfecTV!対応の受信カード(当然Mega Wave Selectにも対応するハズ)であるのも、Mega Wave Selectが事実上SKY Perfec PC!の後継サービスという感を強くする。
もちろんMega Wave Selectには、旧SKY PerfecPC!組以外のコンテンツプロバイダも多く参加している。その多くは、現在SKY PerfecTV!で番組を提供しているところだが、マイクロソフトもWindows関連のモジュールダウンロードで参加しているところが目をひく。コンテンツには有料と無償の2種類があるとされているが、SKY PerfecPC!と同じ轍を踏まないか気になるところだ。
というわけで、個人向けの衛星データ配信サービスは生き残るが、衛星を用いたインターネットサービスはこれで消えることになる(DirecTV!がDirecPC!サービスを提供していたようにも思うが、DirectTV!自体が消え去ろうとしている以上、DirecPC!が生き残るとは思えない)。ADSLサービスも一向にサービス提供可能地域が増えないし、CATVをベースにしたサービスも、集合住宅が多いわが国でどのくらい普及するのか分からない。NTTによる光ファイバーサービスが全国で提供されるのはいったい何時のことだろうか。わが国のブロードバンドインターネットの夜明けは遠い。
□関連記事
【5月19日】パソコン向け衛星データ放送「SKY PerfecPC!」が6月でサービス終了(INTERNET Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2000/0519/sppc.htm
【5月18日】NTTサテライト、個人向けの衛星インターネットサービス打ち切り(INTERNET Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2000/0518/nttsc.htm
【'99年3月17日】元麻布春男の週刊PCホットライン
リビングルームPCが欲しい・その7 CSデータ放送/通信サービスを利用するには
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990317/hot031.htm
【'99年3月24日】元麻布春男の週刊PCホットライン
リビングルームPCが欲しい・その8 CSデータ放送/通信サービス・2 ~SKY PerfecPC!~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990324/hot032.htm
(2000年5月24日)
[Text by 元麻布春男]