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元麻布春男の週刊PCホットライン

液晶ディスプレイと「リビングルームPC」


●リビングに液晶ディスプレイがほしい

 正直に言うと、筆者は液晶ディスプレイがあまり好きではない。薄型、軽量、低消費電力といった点で優れたデバイスであると思うものの、純粋にディスプレイデバイスとして見た時、やはりCRTに一日の長があると思うからである。デジカメ等で撮影した画像のカラーバランスやピントの確認は、やはりCRTで行ないたいと思うし、PDFファイルもCRTの方が見やすい(アンチエイリアスがかえって邪魔になる気がする)。筆者の常用ディスプレイは今も21インチCRTだし、おそらく次も21インチCRTを選ぶだろう(もっと大きいCRTが手ごろな値段で出てこない限り)。

 そんな筆者が今欲しいものの1つが、液晶ディスプレイだ。といっても仕事場で使おうというわけではない。リビングルームに置きたいと思っているのである。以前、筆者はこのコラムでリビングルームPCについて取り上げた。あれから1年以上が経過し、つくづく実感したのは、PCディスプレイとTVは決して1つにならない、ということだ。これは単純に解像度の問題だけではなく、数10cmの距離で使うことを前提にしたPCディスプレイと、数mの距離を置いて見ることを前提にしたTVでは、あまりにも特性が違いすぎて、兼用することは難しいと思い知らされたのである。当然のことだが、PC用のコンテンツ(に限らずOSのGUIも)はPCディスプレイを前提に作られているし、TVのコンテンツはTVを前提に作られており、それぞれの想定したディスプレイで利用するのに越したことはない、という結論になったのである。

 だが、リビングルームにPCを置くことを諦めたわけではない。リビングルームにPCが1台あることは、決して悪いことではない。高解像度でWebをブラウズしたり、AV機器と連携したり、使い道はいくらでもある。ただ、こうした利用にしても、結局はPCディスプレイがなければ辛い、というだけの話である。

 とはいえ現実的にはPCディスプレイとTVの2台をリビングルームに置くことは難しい。単純な設置スペースの問題もあるが、それよりPCディスプレイを上述したようにユーザーから数10cmの距離に置くことの方がより困難だ。一般的なリビングルームは、TVと人間が座る間にテーブルがある、というスタイルが多いのではないか、と思う。この環境にPCディスプレイを持ちこむと、どうしても置き場はテーブルの上になってしまう(あるいは1人だけ違う方向を向くか、だが)。まさか、リビングルームのテーブルの上に、CRTディスプレイを置くわけにもいくまい。

 そこで考えたのが液晶ディスプレイというわけだ。それも、できれば使わない時に邪魔にならないように、アームで吊り下げたい。イメージとしては、Zライトのような感じだ。吊り下げる以上、それほど大きな液晶は難しい(まぁ、大きな液晶ディスプレイは何より予算上も難しいが)。14~15インチクラスで解像度1,024×768ドット、という現在売れ線でもあるクラスがいい線だろう。

 もう1つ、アーム吊り下げを想定した場合に忘れてはならないのは、ケーブルの処理だ。最近の液晶ディスプレイは、ディスプレイとしての機能に加え、スピーカー、USB Hubなど多機能化している。だが、これらの信号ケーブルに加え、電源ケーブルを液晶ディスプレイ本体に接続しては、アーム動作の妨げになる。というより、アームを動作させるたびに、これらのケーブルがブラブラするのは、リビングルーム向きではない。

 だから、というわけではないだろうが、このところ電源やケーブル接続部を別にした、セパレートタイプの液晶ディスプレイが増えてきている。三菱MDT151X(VISEO)PanasonicTX-D5L31TN-JソニーSDM-N50といった製品だ。しかもMDT151XとTX-D5L31TN-Jの2製品は、TVチューナーやビデオ入力といった機能まで備えている。筆者の場合、TVがすぐそばにあるのでTVチューナーは不要だが、ビデオ入力があるのは嬉しい。ゲーム専用機の接続に使えるからだ。液晶ディスプレイなら、ノンインターレース表示だから、ゲーム専用機の画面も目に優しくなる(SDM-N50はビデオ入力を持たない代わり、PC2系統の入力を備えている)。

 こうした製品であれば、液晶ディスプレイに接続するケーブルは1本で済む。アームでぶら下げるのに都合が良いのだが、残念ながらTX-D5L31TN-Jは、アームを取りつけることが考慮されていない。同じことはSDM-N50にも当てはまる(こちらはソニーの独自デジタルインターフェイスでケーブルの細さをうたっており、一層アーム向きなのだが)。それに対しMTD151Xは、VESA規格(75mm)に準拠した取付け金具が利用可能だ。

●固定用アームが見つからない

 つまり、筆者のニーズに最も合致しそうなのはMDT151Xということになるのだが、MDT151Xを買ったかというと、実は買っていない。何より問題なのは、アームがどこで売っているかわからないことだ。MDT151Xのカタログを開くと、Layout Freeがうたわれており、付属のデスクトップスタンドを使ってデスクトップ、デスクトップスタンドを外して壁掛け、デスクトップスタンドを外してアームスタンド、といった設置法が示されているのだが、肝心のアームスタンドをオプションとして売っている風ではない。

 様々なメーカーのカタログを調べてみると、VESA規格準拠の取付け金具への対応をうたう液晶ディスプレイは多い。しかし、VESA規格準拠の取付け金具をちゃんと自社で用意しているベンダーは極めて少ないということがわかった。総てのベンダーのカタログを集めたわけではないが、ちゃんとアームスタンドをカタログに掲載しているのはナナオ(価格はオープン)とメルコ(24,800円)くらいのもの(ただしいずれも筆者が望んでいるZライトタイプ? ではない)。TOTOKUは、筆者が望んでいるアームはないものの、壁掛け用器具セットがカタログにちゃんと掲載されており、価格も明記されている(5,000円)。シャープはアーム(Zライトタイプではない)がカタログに掲載されているものの、関連会社(シャープドキュメントシステム)扱いになっており、価格は明記されていない。

 唯一、筆者の望み通りのアームスタンドをカタログに掲載しているのは日本サムスンなのだが、直販方式をとる同社のWebサイトには、まだオプションの項目がない。ちなみに日本サムスンも、TVチューナー機能付きの液晶ディスプレイを製品化しているのだが、分離式ではないため、多数のケーブルを直接ディスプレイ本体に接続せねばならず、あまりアームでの運用に適しているとは言いがたい(デスクトップ用途なら、直販で価格も安いし悪くないのだが)。あるいは、アームの中をケーブルが通せる仕組みにでもなっていれば良いのだが、写真を見る限りアームはそれほど太くはない。

●DVI対応機も出はじめて

 アームがなければ意味がない、というわけで、結局購入には踏み切っていないのだが、そろそろ接続インターフェイスとしてDVIも気になりつつある。ポツポツとだがDVIに対応した液晶ディスプレイが登場してきた。DVIの普及を待つか、それともアナログインターフェイスの液晶ディスプレイを購入するか、これも難しい。

 実は、筆者が液晶ディスプレイを買おうかと考えたもう1つの理由は、ヨドバシカメラのポイントがそろそろ貯まってきたから。果たして液晶ディスプレイを買うことになるのか、それともほかの製品に化けるのか(300万画素級のデジタルカメラもちょっと考えている)、しばらく悩むことになりそうだ。

 最後に、前回の原稿に1つ修正を。あの後、パーツ袋をもう1度チェックしたところ、ゴム足が入っていることが確認できた。横置き用のゴム足はある、と訂正させていただく。

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(2000年5月17日)

[Text by 元麻布春男]


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