前々回で、リビングルームPCの基本システムは出来あがった。今回は、以前から筆者がぜひ使ってみたかったデジタルCSデータ放送/通信サービスについて取り上げてみたい(おそらく1回では語り尽くせないだろうが)。そもそもデジタルCSデータ放送/通信サービスというのは、その名前から察しがつくように、デジタルCS放送(SKY PerfecTV!とかDirecTV)と同じ通信衛星を用いたPC向けのデータサービスのこと。デジタルCS放送では動画をデジタルデータとして送信しているわけだが、デジタルであれば何もデータが動画である必要はない。代わりにPC向けのデータを送れば、動画が送れるほどの帯域がある以上、高速な通信が可能だ。筆者は、DirecTVには加入していないので、このようなサービスが存在するのかどうかさえ知らない(少なくとも米国にはDirecPCが存在するハズだが)。以下は、筆者が加入しているSKYPerfecTV!と同じ通信衛星(JCSAT3号機および4号機)を用いたサービスについての話である。
現在、通信衛星を介して利用可能なサービスは、CSデータ放送とでも言うべきSKY PerfecPC!と、CSデータ通信であろうMegaWaveの2種類がある。SKY PerfecPC!の方が開始時期が古いとはいえ、有料化したのは今年の1月から、MegaWaveは今でも無料キャンペーン期間中という状態。歴史の浅いサービスであることは間違いない。これらのサービスの内容や、どう違うのかというのは後回しにして、サービスを利用するにはどうすれば良いか、ということから話を始めたいと思う。
■何はともあれパラボラアンテナ
通信衛星を使ったサービスである以上、何はともあれ必要なのはパラボラアンテナ(CSアンテナ)である。SKY PerfecPC!は、今のところJCSAT3号のみを使っているため、1衛星対応のパラボラアンテナでも良いが、MegaWaveはJCSAT3号と4号の両方を使うため(筆者が使っている限り、JCSAT3号を使っている様子はほとんどないのだが)、2衛星対応のアンテナが必要になる。これは、SKY PerfecTV!のSKYサービスとPerfecTVサービスの両方に対応したアンテナが必要、ということだ。最近市販されているSKY PerfecTV!対応のパラボラアンテナは、まずこの2衛星タイプだから問題ないが、DirecTV用のアンテナや古いPerfecTV!用は1衛星のみの対応なので注意が要る。
実は、筆者がまさにこれ(PerfecTV!専用アンテナおよびチューナーの所有者)に該当した。筆者は、日本ではマイナースポーツであるNFLファンである。シーズンになるとNHK BSで週に2~3試合程度が放映されるが、絶対数が足りない。PerfecTV!のサービス開始と同時に加入したのはNFLを見るためと言いきっても過言ではない。が、最初に加入したがゆえに、アンテナが1衛星対応だったのである。
もちろん、このアンテナでもSKY PerfecPC!だけなら利用可能だったのだが、それでは十分でないと考え、チューナーもろとも買い換えることにした。その理由の1つに、使っていたPerfecTV!専用チューナー(ソニーの初代機DST-500JS)のデキが悪く、売り物の1つであるハズのEPG(電子番組ガイド)が事実上役に立たない(レスポンスがメチャクチャ悪い)という不満があったことも挙げておこう。以上に加えて、PCにデータを取り込むためのCSデータボードが必要になる。
■ SKY PerfecPC!とMegaWave両対応のCSデータボード
こうして、CSアンテナ、チューナー、PC用のCSデータボードの3つを買うことになった。何のことはない、ゼロからスタートするのと同じである。それはともかく、せっかく買い換えるのだから、SKY PerfecPC!とMegaWaveの両方に対応したハードを揃えなければ意味がない。そう思って調べると、意外に選択肢が少ないことがわかった。筆者が加入を考えた時点で、SKY PerfecPC!とMegaWaveの両方に対応可能なCSデータボードは、NECのSKY PerfecPC!データ&TVボード(PK-UG-X004)と、ソニーのSKYPerfecPC!データボード(DSB-1000)しかなかった(SKY PerfecPC!のみに対応したボードなら、他にもあるのだが)。
NECのPK-UG-X004は、CSデータサービスだけでなく、SKY PerfecTV!も見ることができる製品である。筆者にとって問題だったのは、このSKY PerfecTV!も見えてしまうことだ。当然のことながら、PK-UG-X004を用いると、SKY PerfecTV!をPC用ディスプレイで見ることになる。だが、筆者のようにPCをTVに接続しようと考えているものにとって、これはありがた迷惑でしかない。PC上にオーバーレイした画像をTV出力しても、画像のクオリティが満足いくものになるとは、到底思えないからだ(したがって、PCディスプレイでTVもPCもすべて対応するという人なら良い選択かもしれない)。ビデオデッキなど、他のAV機器との連携という点でも、決して使いやすくない。
それではと、SKY PerfecTV!のチューナーとPK-UG-X004の併用を考えると、今度はPK-UG-X004とチューナーの両方にICカード(会員がどのようなサービスを契約しているかの認証を行なうために用いる)が必要になる。現状では、ICカードごとに加入契約しなければならない(つまり、2倍の試聴料を払わなければならない)ことを考えると、やはり厳しい。PK-UG-X004のようなオールインワンタイプは、ワンルームマンション等に住み、PCディスプレイですべてをまかなう独身者ならともかく、リビングルームPCにはあまり向かないように思う。なお、現在はPK-UG-X004の後継モデルとして、カードをハーフサイズにした(機能的には同じくオールインワンの)SKY PerfecPC! データ&TVボードII(PK-UG-X022)が発売されている。NECには他にデータ専用の(SKY PerfecTV!には対応しない)SKY PerfecPC!データボード(PK-UG-X005)もあるのだが、MegaWaveに対応しない(おそらく2衛星対応ではないのだろう)。
■ データボードはソニーのDSB-1000を購入
というわけで、筆者が購入するデータボードは、必然的にソニーのDSB-1000になった。DSB-1000はデータ専用であり、SKY PerfecTV!には対応しない。というより、実際はSKY PerfecTV!のチューナーと組合せて使う製品である。チューナーのデータポートとDSB-1000を専用のケーブル(とアダプタ)で接続して利用する。PK-UG-X004の項で述べたように、これはこれで好都合なのだが、今度もソニー製のCSチューナーを買わなければならなくなってしまった(実際にはそうでもないらしいことが購入後わかったのだが、この話は後述する)。なお、筆者がDSB-1000を購入した時点では、製品にはMegaWave対応ソフトが添付されていないものの、ソニーのWebからダウンロード可能な状態であった。
こうしたいきさつで、まず筆者はソニーのデジタルCS放送受信セットSAS-D900SET(2衛星対応のアンテナであるSAN-40DK2とチューナーであるDST-D900のセット)を購入した。さすがに第2世代だけに、EPGのレスポンスも良く(一体、初代機は何だったのかとかえって腹が立ったが)、リモコンの使い勝手も改善されている。だが、決して完璧ではないこともわかった。DST-D900は、JCSAT3号機を用いたサービス(PerfecTV!)と、JCSAT4号機を用いたサービス(SKYサービス)の切り替えがマニュアルなのである。
SKY PerfecTV!は、元々別会社だったPerfecTV!とJSkyBが、JSkyBのサービス開始直前に合併してできたものだ。合併以前は、別々に課金する(別々に加入契約する)予定だったため、両サービスの切り替えボタンを用意したものと思われる。要するに、DST-D900の仕様は、多分に過渡的なものなのである。現在、SAS-D900SETが量販店でかなり値引きされていることを考え合わせると、モデルチェンジが近いのかもしれない。それはともかく、アンテナの取り付けや調整も自分で行ない、データボードの受け入れ体制を整えた。
余談だが、デジタルCSアンテナの調整は、最初はとまどうかもしれない。というのも、BSなどに比べて受信可能な角度が極めて小さいからだ。現在、MegaWaveに対応したデータボードとして、日本IBMがIBM衛星インターネットボードが登場したのだが、TVサービスに対応せず、TVチューナーとも連携しない(しかもTVチューナーとCSアンテナを共用できない)仕様になっている。TVが見えないとなると、自分でアンテナの調整をしようとすると、結構難しいのではないかと思う。やはりアンテナ設置を業者に依頼する企業向けの製品という位置付けなのかもしれない。
CSアンテナの調整が済み、チューナーで受信できることがわかったら、ICカードの切り替えを行なわなければならない。CSデジタル受信機器には、それぞれICカードが添付されている。SKY PerfecTV!に電話でICカードの変更(新しいチューナーに添付されたICカードの番号)を告げないと、何も契約していないのと同じになってしまう。以上の作業が終ったところで、いよいよDSB-1000のインストールを行なった。だが、これも一筋縄ではいかなかったのである。
■ 購入したDSB-1000はWindows 95対応
筆者がDSB-1000を購入したのは2月の中旬頃、新宿西口のヨドバシカメラである。ところが添付されているソフトウェアは、すべてWindows 95対応のもの。Windows 98で実行するとアプリケーションエラーになってしまう。確かにパッケージには、Windows 95対応と明記されており、どこにもWindows 98対応とは書かれていない。やられたかも、と思いながら、最悪Windows 95をインストールしなおすことを覚悟しつつ、ソニーのWebを調べると、新しいバージョンのファームウェア、ドライバ、アプリケーションソフトウェアが登録されていた。これらをダウンロードして、ようやくSKY PerfecPC!が利用可能になったのである。現在は、SKY PerfecPC!でも新バージョンソフトウェアの配布が行なわれているが、筆者のようにWindows 98への組み込みを考えると、SKY PerfecPC!に接続できないのだから、結局アナログ電話やISDNでのダウンロードを余儀なくされることに変わりない(最初から新バージョンのソフトウェアをバンドルし、MegaWaveアプリケーションが添付されたパッケージに間もなく切り替わるとのことだが)。
このインストール作業中にわかったのは、ソフトウェアの設定には、ソニー製のデジタルCSチューナーだけでなく、他社製チューナー用のものも用意されている、ということだ。どうやら、動作保証するのがソニー製チューナーだけ、とうのが正しい理解のようである。通常、こういう場合、PCの常識としては、ソニー製以外のチューナーでも動作することが多い(動作保証がないのが怖くてPCが使えるかっ、てなものである)。だが、筆者はこのDSB-1000に関しては、他社のチューナーで動く気があまりしていない。次回以降に触れることにするが、添付されているソフトウェアの完成度が、現時点ではまだまだ低い。まだマイナーなサービスだけに、実際に使おうと思うと、何かと苦労が絶えないのが実情なのである。
□ソニーのDSB-1000製品情報
http://www.sony.co.jp/ProductsPark/Consumer/Peripheral/SPC/index.html
□NECのSKY PerfecPC! データ&TVボードII(MegaWave対応)製品情報
http://www2.psinfo.nec.co.jp/SkyPPC/
□MegaWaveホームページ
http://www.megawave.ne.jp/
□SKY PerfecPC!ホームページ
http://www.skyperfecpc.com/
[Text by 元麻布春男]