発売中 直販価格:64,890円 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)から、ネットブックの新モデルとなる「HP Mini 2140 Notebook PC」が登場した。2008年6月に発売され大いに話題となった「HP 2133 Mini-Note PC」の、事実上の後継モデルとなる製品で、ボディ外観はほぼそのままに、CPUにAtom N270を採用するなど、仕様面が大きく変更されている。 ●Atom N270採用で、ネットブック標準仕様に変更 2008年6月に発売された「HP 2133 Mini-Note PC」(以下HP 2133)は、CPUがVIA C7-M ULV、チップセットがVIA CN896、1,280×768ドット対応の8.9形液晶搭載、OSがWindows Vista Home Basic SP1と、ULCPCライセンス準拠のネットブックとは全く異なる仕様を採用していた。パフォーマンス自体はお世辞にも快適とは言えなかったものの、小さいながら高解像度の液晶に、キーピッチに余裕があり扱いやすいキーボードを搭載する点と、他のネットブックとは一線を画す優れたデザイン性もあって、登場直後から大いに話題となった。また、日本HPも「フルスペックミニノート」と、ネットブックとは異なる位置付けで販売している。 それに対し、今回登場した「HP Mini 2140 Notebook PC」(以下、Mini 2140)は、スペック面が大きく変更されたことで、位置付けも変化している。 最大の変化となるのが、基本スペックがULCPCライセンス準拠へと変更されている点だ。CPUはAtom N270、チップセットはIntel 945GME Express、メインメモリは最大1GB、160GB HDDと、基本スペックはまさしくULCPCライセンス準拠となっている。また、HP 2133での特徴の1つであった高解像度液晶も、Mini 2140ではサイズこそ10.1型と大型化しているものの、表示解像度は1,024×576ドットとなった。加えて、OSもWindows XP Home Edition SP2に変更されている。 この仕様変更によって、失ったものと新たに得たものがある。失った最大のものは液晶だ。サイズが小さかったとはいえ、HP 2133の1,280×768ドットの表示解像度が大きな魅力だったのは間違いなく、この点を残念に思う人も多いのではないだろうか。特に、他のネットブックと異なり、縦が576ドットと600ドットを下回っている点は非常に残念で、液晶の使い勝手は大きく退化したと言わざるを得ない。 それに対し得たものは、CPUがAtom N270になったことによるパフォーマンス向上と、OSがWindows XP Home Edition SP2になり軽々利用できるようになったこと。加えて、消費電力や発熱の低減も実現され、HP 2133の最大の弱点であった本体の発熱やバッテリ駆動時間の短さが解消されている。つまりMini 2140は、HP 2133の尖った仕様がなくなり、オーソドックスなネットブックへと変貌したわけだ。 ちなみに、もう1点、スペック面での違いがある。それは、無線機能がIEEE 802.11b/g対応の無線LANのみとなり、Bluetoothが搭載されなくなった点だ。この変更は、液晶解像度の変更同様、やや残念ではあるが、無線LANに比べると必要性は低く、非常にコンパクトなBluetoothモジュールも存在しており、無くてもそれほど大きな問題にはならないだろう。
●本体デザイン、扱いやすいキーボードはそのまま継承 基本スペックがオーソドックスなネットブックになったとはいえ、HP 2133から変わっていない部分もある。それは、本体デザイン、そして扱いやすいキーボードだ。 やや横長で、角に丸みをもたせたデザイン本体デザインは、HP 2133と全く同じだ。また本体サイズも、261×166×27.2~35.5mm(幅×奥行き×高さ)と、HP 2133と完全に同じ。ボディ素材も、アルミとマグネシウム合金を引き続き採用し、表面はヘアライン加工が施され、高級感は従来通りだ。 液晶に10.1型ワイド液晶を搭載しているため、液晶パネル部はベゼルがかなり狭くなり、解像度は低くなったが存在感は増している。また、HP 2133で液晶左右に用意されていたスピーカーはなくなっている。ちなみに、日本HPが発売しているもう1台のネットブック「HP Mini 1000」では、10.2型液晶が搭載されており、Mini 2140の液晶のほうが若干小さいが、その違いは横に並べて始めてわかる程度で、使い勝手はほとんど変わらないと考えていい。 本体デザインに加え、側面に用意されているポート類もHP 2133と全く同じだ。左側面には、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)と、オプションで用意されている外付けマルチベイII用電源コネクタ付きUSB 2.0が1ポート、マイク・ヘッドフォン端子が、右側面にはExpressCard/54スロットが1スロットとSDカードスロット、USB 2.0×1、Gigabit Ethernet対応のLANポート、電源コネクタがそれぞれ用意されている。ちなみに、今回の試用機ではExpressCardスロットとSDカードスロットに保護用のダミーカードが取り付けられていなかったが、製品版ではもちろん付属する。
HP 2133で最も好評だったキーボードも、当然変更無くそのまま採用されている。一部ピッチの狭いキーも存在しているものの、主要キーは縦横とも約17.5mmのキーピッチが確保され、余裕でタッチタイプが行なえる。ポインティングデバイスのタッチパッドもHP 2133と同じもので、縦がやや狭く、クリックボタンがパッド左右に用意されている点が気になる。 ちなみに、本体デザインやサイズはHP 2133をほぼそのまま継承しながら、本体重量の軽量化が実現されている点は嬉しい部分だ。本体重量は、標準添付の3セルバッテリ利用時で1,167g(実測値、ただしダミーカードは非搭載)と、110gほど軽くなっている。数字としてはそれほど大きな軽量化ではないように思えるが、実際に手に持って比べてみると、かなり軽くなったという印象を受ける。
●3Dモーションセンサー搭載で、HDDを衝撃から保護する
もう1つ、HP 2133から継承された機能が、外部の衝撃からHDDを保護する「HP 3Dドライブガード」と呼ばれる機能だ。これは、3Dモーションセンサーを搭載することで本体の揺れや落下を感知し、HDDへの衝撃が加わる前にHDDのヘッドを待避させ、ディスクの破損を防ぐというものだ。また、この機能に加えて、HDDは衝撃吸収材に囲まれた状態で本体に搭載されているため、二重の衝撃対策が施されていることになる。 常に持ち歩いて利用するノートPCでは、本体の落下などの事故が発生しやすく、HDDが損傷してデータを失う可能性がついてまわる。そういった意味では、ネットブックでも3Dモーションセンサーを利用したヘッド待避機能は必要な機能であり、Mini 2140にも引き続き採用された点は大いに歓迎したい。 ●パフォーマンスはAtom N270搭載ネットブックと横並び では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類。比較用として、HP Mini 1000およびHP 2133、Eee PC S101の結果も加えてある。また、Mini 2140は標準でWindows XP Home Edition SP2がプリインストールされているが、今回はSP3を導入した状態で全てのテストを行なった。 結果を見ると、HP 2133から大きくパフォーマンスが向上していることがわかる。とはいえ、同じAtom N270搭載ネットブックと比較すると、当然パフォーマンスは横並びで、特に突出するような部分はない。
次に、バッテリ駆動時間だ。方法は、液晶輝度を最大に設定し、無線LANを動作させた状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)をWindows Media Player 11を利用して連続再生させるというものだ。結果は、標準添付の3セルバッテリ利用時で約1時間59分、オプションで用意されている6セルバッテリ利用時で約3時間55分と、HP 2133より5割ほどバッテリ駆動時間が延びている。省電力機能を利用すれば、3セルバッテリで3時間弱、6セルバッテリで5時間は十分利用できると思われるため、HP 2133のバッテリ駆動時間の短さはほぼ解消されている。 ○バッテリ駆動時間
最後に、ベンチマークテスト実行時に、キーボード面と本体底面の温度も計測してみたところ、キーボード面では24℃弱、底面で27℃ほどであった。実際に触ってみても、ほんのりと暖かさを感じる程度で、HP 2133のように熱いと感じることは全くなくなっている。これも、Mini 2140の魅力と言っていいだろう。
Mini 2140は、基本スペックがULCPCライセンス準拠になったことで、液晶解像度が低くなり、HP 2133の魅力がやや失われている。とはいえ、パフォーマンスが他のネットブックと横並びに向上するとともに、発熱は減り、バッテリ駆動時間も大きく向上しており、常に持ち歩いて利用するネットブックとしての魅力は向上しているだろう。それに加え、安価なネットブックとは一線を画す優れたデザイン性もあり、全体的には十分魅力のあるネットブックと考えていい。液晶解像度にさえ我慢できるなら、バッテリ駆動時間の短さなどでHP 2133を見送った人でも満足できるはずだ。 ただ、日本HPは、ULCPCライセンス準拠のノートとして、すでにMini 1000を発売していることを考えると、この時点でスペックがほぼ同じMini 2140を出す意味があまり感じられないのも事実。本体の薄さや軽さはMini 1000のほうが勝っており、Mini 2140にはバッテリ駆動時間以外の魅力が感じられないのだ。それなら、ULCPCライセンス準拠にこだわらず、やや高価になってもいいので、高解像度液晶を搭載するモデルとして投入してもらいたかったように思う。ちなみに、米国では1,366×768ドットの高解像度液晶を搭載するモデルが発表されているが、日本での発売は未定となっている。HP 2140の高解像度液晶モデルこそ、HP 2133の真の後継モデルと言える製品なので、早い段階で日本市場への投入を期待したい。 □日本ヒューレット・パッカードのホームページ (2009年3月10日) [Reported by 平澤寿康]
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