発売中 価格:54,600円 発表直後から注目され、6月の発売以降も入手しづらい状況が続いたHPのミニノート「HP 2133 Mini-Note PC」(以下、2133)から約半年が過ぎ、「HP Mini 1000」が登場した。今回、16GB SSDを搭載するモデルを入手したので、2133と比較してどのように変わったのか、さっそくチェックしていくことにしよう。 ●ULCPCライセンス準拠の仕様へと変更 2133は、CPUにVIA C7-Mを採用するとともに、高解像度液晶や扱いやすい大型キーボードを搭載するなど、他のネットブックとは一線を画す仕様が大きな特徴だった。それに対し、今回登場したHP Mini 1000では、スペック面が大きく刷新されている。 まず、CPUがAtom N270へと変更され、それに伴いチップセットもIntel 945GSE Expressへと変更。ストレージデバイスは8GBまたは16GBのSSD(16GB SSD搭載モデルには、8GBのフラッシュメモリ「HPミニモバイルドライブ」が付属する)か、80GBのHDDの3タイプから選択するようになった。また、後述するように液晶ディスプレイのスペックも変更されている。加えて、OSもWindows Vista BusinessからWindows XP Home Edition SP3に。これらHP Mini 1000の仕様は、いわゆるULCPCライセンスに準拠したものである。つまり、2133はネットブックとは異なる位置付けのミニノートだったのに対し、HP Mini 1000は、ネットブックそのものへと変貌したわけだ。 ただし、カラーこそシルバーからブラックへと変更されているものの、ボディデザインは大きく変わっていない。 本体サイズは、261.7×166.7×25.9mm(幅×奥行き×高さ)。フットプリントは、HP Mini 1000のほうが若干大きくなっているが、横に並べても大きさの違いはほとんど感じられず、ほぼ同じサイズと考えていい。それに対し高さは、HP Mini 1000のほうがかなり薄くなっている。2133では、後方が35.5mmあったため、やや分厚い印象を受けたが、前方から後方まで均一の厚さとなっていることもあって、横に並べると、際立って薄くなったという印象だ。 本体重量は実測で1096g。付属のバッテリが3セルリチウムポリマーバッテリに変更されたことで、2133の6セルバッテリ搭載時(約1.27kg)と比べてかなり軽くなっている。本体が薄くなったことと合わせ、携帯性は向上したと考えていいだろう。 ボディカラーは、2133のシルバーからブラックへと変更。そして天板部分には、同社のノートPC「HP Pavilion Notebook PC」シリーズでもおなじみの「ZEN-design」が採用されている。HP Mini 1000のデザインは「uzu(渦)」と呼ばれるもので、多数の渦状のラインが描き込まれたもの。他のZEN-design同様、模様は比較的薄く描き込まれており、さりげなく模様が見えるといった程度で、強く主張するようなものではない。2133のヘアライン仕上げのシルバーボディも質感が高く好印象だったが、HP Mini 1000のZEN-designも申し分ない質感で、他のネットブックとは異なる、落ち着いた高級感が醸し出されている。
●扱いやすいキーボードに変更なし 2133の特徴の中でも、特に好評だったのが、扱いやすいキーボードだが、HP Mini 1000にも当然受け継がれている。 HP Mini 1000のキーボードは、キーピッチが縦・横ともに17.5mmの正方キーを採用する、大型のキーボードとなっている。キーピッチやキー配列など、2133と全く同じで、好評だったキーボードがそのまま搭載されていると考えていい。最下段のキーや[\]キーなど、ごく一部でピッチが狭くなっているキーもあるが、ほとんどのキーはピッチが揃っており、2133同様非常に扱いやすい。適度な堅さのタッチやしっかりしたクリック感も従来同様で、キーボードに変更が加えられなかった点は大いに歓迎したい。 それに対し、少々残念だったのがポインティングデバイスのタッチパッドだ。キーボードの搭載位置が2133よりも若干奥に移動したこともあり、パームレスト部分が6mmほど広くなっており、それに伴ってパッドの縦の幅も拡がっている。しかし、クリックボタンが、2133同様パッドの左右に配置されているために、かなり扱いにくい。 パッドの縦のサイズが拡がることによる操作性の向上ももちろんある。また、パームレストが拡がったとはいえ、約6mm程度ではパッドの下に扱いやすいクリックボタンを配置するスペースを確保するのは難しいだろう。しかし、小さくてもいいので、クリックボタンを下に配置してくれた方が扱いやすいと感じるユーザーは多いと思われるので、できれば将来のモデルチェンジで変更を考慮してもらいたい。
●液晶は大型化を果たすも解像度は減少 液晶ディスプレイは、2133の8.9型ワイドから10.2型ワイドへと大型化された。2133では、本体サイズがやや大きいこともあり、液晶がやや小さく感じたのも事実だが、HP Mini 1000ではベゼル部分がかなり狭くなり、液晶の迫力が大きく増している。もちろん、文字などの見やすさも向上している。 サイズが大きくなった点は大いに歓迎できる部分だが、逆に解像度は減少してしまっている。2133では、サイズは小さいものの、1,280×768ドットと高解像度を実現していたが、HP Mini 1000では1,024×600ドットへと解像度が低くなってしまった。この変更、当然ULCPCライセンス準拠によるものなので、必然的な変更だ。とはいえ、やはり解像度低下は残念だ。 ちなみに、液晶の表示品質は2133のものと大きく変わることはない。表面の光沢処理がきつく、映り込みが激しい点は少々気になるものの、表示される映像の発色は鮮やかで、十分に高品質だ。
●増設フラッシュメモリ用の専用スロットが追加 本体側面のポート類の種類や配置も若干の変更が加えられている。 まず、大きな変更点となるのが、2133で用意されていたExpressCard/54スロットが省かれたという点だ。2133はビジネス用途をターゲットとしているのに対し、HP Mini 1000は個人ユーザーをターゲットとしていることから、ExpressCard/54スロットが省かれたのではないかと思われるが、拡張性が下がるという意味で少々残念ではある。 それに対し、HP Mini 1000の16GB SSD搭載モデルには2133にはなかったスロットが用意されている。それは、拡張フラッシュメモリ「HPミニモバイルドライブ」を取り付ける専用のスロットで、本体右側面後方に用意されている。16GB SSD搭載モデルには、8GBのHPミニモバイルドライブが付属しているため、ストレージ容量は16GB+8GBとなる。ただし、HPミニモバイルドライブは製品には取り付けられずにパッケージ同梱となっている。これはULCPCライセンスに準拠させるための措置だと思われる。 ちなみに、HPミニモバイルドライブは、Transcend製のカード型USBメモリ「JetFlash T3」そのもので、このHPミニモバイルドライブ用スロットも正確にはUSBコネクタだ。もちろん、HPミニモバイルドライブは、取り外して他のPCのUSBコネクタに取り付けても利用できる。ただし、この専用スロットは、HPミニモバイルドライブに合わせた形状のために、他のUSB機器は利用できない。また、HDD搭載モデルにはHPミニモバイルドライブ用スロットは用意されない。 その他のコネクタ類は、左側面にUSB 2.0×1とアナログRGB出力(独自形状で、利用にはオプションのアダプタが必要)、マイク・ヘッドホン端子、100BASE-TX対応有線LANコネクタが、右側面にはSDカード/MMC対応メモリカードスロットとUSB 2.0×1がそれぞれ用意されている。 無線機能は、IEEE 802.11b/g対応の無線LANを標準搭載。また、SSD16+8GBモデルおよびHDD60GBモデルにはBluetooth v2.1+EDRも搭載する。
●発熱が大幅に減少 2133の問題点として、発熱が非常に大きく、本体底面やパームレスト部分がかなり熱を持つというものがあった。しかし、HP Mini 1000では、CPUにAtom N270を採用していることもあってか、発熱がかなり減っている。フルパワーで連続動作させていると、タッチパッドの上部付近や底面の手前側がやや温かくなるものの、2133のように熱いと感じることはなくなっている。 実際に温度計を使って計測してみたところ、キーボード面では最も温かくなる部分(タッチパッド付近)でも32℃ほどしかなかった。また、底面では、中央手前付近が35℃ほどだったが、こちらも2133のような熱さは感じない。これは、Atom採用による大きな優位点と考えていいだろう。 ちなみに、フルパワー駆動時には空冷ファンが回転し、若干音が気になるものの、うるさいと言うほどではなかった。
●分解してみました 今回入手したHP Mini 1000は、編集部で購入したものだったので、分解して内部を見てみることにしよう。
本体を分解するには、底面ゴム足の横にある、ゴムで埋められた穴の奥にあるネジを外すとともに、バッテリを外した部分に見える2本のネジを外し、キーボードやパームレスト部分などを外すことでマザーボードが取り出せるようになる。 キーボードを外すと、左側にCPUやチップセットを冷却する空冷ファンと、右にストレージを搭載するスペースが見える。ストレージスペースは、1.8インチHDDそのものといった大きさで、SSD搭載モデルでは、1.8インチHDD相当のカバー内部にSSDモジュールが取り付けられている。また、SSDモジュールはZIFソケットで接続するタイプとなっている。 SSDが取り付けられているカバーを外すと、その下にHPモバイルドライブ用スロットがあるが、コネクタ部分の形状からUSBであることがよくわかる。また、このスロットを外すと、SSDからHDDへ換装できるように思われる。 搭載されていたSSDモジュールは、SanDisk製の「SDPA1AA-016G」だ。低価格ノートPC向けとして用意されている「pSSD」シリーズに属するもので、接続インターフェイスはPATAだ。 パームレスト部分を外すと、基板が現れる。基板のパームレスト側には、CPUとチップセット(ノースブリッジ)、左に無線LANモジュールの取り付けられたMini PCI Expressスロット、右にBluetoothモジュール、そして空きになっているMini PCI Expressスロットが見える。ただし空きのMini PCI Expressスロットは、カードを固定するネジ穴がないため、実質的に利用は難しいだろう 基板裏には、サウスブリッジとメインメモリ用のSO-DIMMスロット、メモリカードスロットなどが見える。メインメモリはオンボードでは搭載していない。
●SSDが低速だが、その他のパフォーマンスは一般的 では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類。ただし、今回はアナログRGB接続アダプタがなく、1,024×768ドットの表示解像度が利用できなかったため、PCMark05のグラフィック関係のテストが行なえなかった点はご了承願いたい。また、比較として他のネットブックとともにHP 2133 Mini-Note PCの結果も加えてあるが、OSが異なるため、参考値として考えてもらいたい。 結果を見ると、CPUやグラフィックまわりのパフォーマンスは、他のAtom搭載ネットブックとほとんど変わらず、ほぼ同じパフォーマンスが発揮されていることがわかる。それに対しSSDのパフォーマンスはかなり低くなっている。
SanDiskのpSSDは、低価格PC向けの製品ということから、価格とともにパフォーマンスも抑え気味となっている。速度は、公称値でリードが39MB/s、ライトが17MB/sとされていおり、これがストレージの結果に影響したのだろう。また、CrystalDiskMark 2.2.0で速度を計測してみても、ほぼ公称通りの速度が計測された。ちなみに、追加ストレージのHPモバイルドライブの速度も計測してみたが、こちらもUSBメモリらしい速度であった。
次に、バッテリ駆動時間だ。こちらも、従来より行なっている方法と同じように、液晶輝度は最大に設定し、無線LANおよびBluetoothも動作させた状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)をWindows Media Player 11を利用して連続再生させることで行なった。結果は、2133の3セルバッテリ搭載時より25分ほどバッテリ駆動時間が伸び、約1時間45分であった。この結果を見るとかなり短く感じるかもしれないが、HP Mini 1000には容量の少ない3セルタイプのリチウムポリマーバッテリ(容量26Wh)が採用されており、その点を考えると納得できる数値だ。実際に、他の6セルバッテリ搭載ネットブックのバッテリ駆動時間のほぼ半分ほどで、結果自体は妥当と考えていいだろう。とはいえ、やはりバッテリ駆動時間が短いことは間違いなく、少々残念だ。バッテリが本体底面に取り付けるタイプのため、大容量バッテリの搭載は難しいかもしれないが、もし可能であれば大容量バッテリの追加も検討してもらいたい。
HP Mini 1000は、さまざまなメーカーから登場しているAtom N270採用ネットブックと同等のスペックになったものの、タッチタイプも余裕で行なえる扱いやすいキーボードや、質感の高いデザインなど、2133の特徴も十分に受け継がれ、他のネットブックにない魅力を多く備えるマシンに仕上がっていると思う。確かに、液晶解像度やストレージなど、魅力が失われてしまっている部分があるとともに、バッテリ駆動時間が短いという点も気になるが、これだけの仕様のミニノートを54,600円で販売するには、ULCPCライセンス準拠のネットブック仕様にするのはほぼ必須となるため、ある程度の妥協は必要だ。スペック面での違いが出せない中で、HP Mini 1000は2133の特徴をうまく受け継ぎつつ、他にはない個性を実現しており、十分な魅力を備えたマシンと言える。デザイン性やキーボードの扱いやすさを重視したネットブックを探している人におすすめしたい。 □日本ヒューレット・パッカードのホームページ (2008年12月25日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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