発売中 価格:オープンプライス 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の液晶一体型PC「TouchSmart PC」に新モデルが登場。今年7月に登場した「TouchSmart PC IQ500」シリーズをベースに機能向上を実現するとともに、液晶ディスプレイを大型化した上位モデル「TouchSmart PC IQ800」シリーズがそれだ。今回はその中から、同シリーズの店頭販売モデル「TouchSmart PC IQ817jp」(以下、IQ817jp)を取り上げる。 ●液晶の大型化でフルHD解像度表示に対応 IQ800シリーズでは、従来モデルとなるIQ500シリーズのデザインをそのまま踏襲しつつ、ひとまわり大きい25.5型ワイド液晶を採用している点が最大の特徴となる。IQ500シリーズの22型ワイド液晶も十分大きかったが、IQ800シリーズの25.5型ワイド液晶の迫力はレベルが違う。TVとは違い、画面に近い場所に座って映像を見ることになるため、実際に使ったときに感じる映像の迫力は、32型以上の大型TVを見ているかのような感覚になる。
液晶サイズの大型化に加え、表示解像度も1,920×1,200ドット(WUXGA)表示に対応し、フルHD映像も解像度を落とさず表示できるようになった。後述するように、今回試用したIQ817jpには、ダブル地上デジタルチューナおよびBD-ROM/DVDスーパーマルチコンボドライブが標準搭載されており、液晶がフルHD表示をサポートした点は、それらを活用する意味でも歓迎できる。表面の光沢処理がややきつく、映り込みが激しい点はやや気になるものの、表示品質は優れており、フルHDコンテンツも思う存分楽しめる。 また、従来モデル同様、液晶には光学式タッチパネルが取り付けられており、軽快なタッチ操作が可能となっている。光学式のため、液晶表面に余計なパネルを取り付ける必要がなく、液晶の表示品質が一切損なわれない点も嬉しい。従来モデルに付属していた、オリジナルランチャーソフト「TouchSmartソフトウェア」も搭載されており、映像や静止画、音楽の表示/再生はもちろん、ミニゲームやインターネットアクセスなども、マウスやキーボードを使わず軽快に操作できる。タッチオペレーションを採用する携帯機器が増えてきて、タッチオペレーションの便利さも徐々に浸透してきていると思うが、それらと同じような感覚でPCが操作できるわけで、他の液晶一体型PCに対する大きなアドバンテージと言える。ちなみに、タッチ操作や、TouchSmartソフトウェアの使い勝手などは従来モデルとほとんど変わらないので、IQ503jpの記事を参照してもらいたい。 ところで、IQ817jpでは、液晶表示領域がなぜか本体額縁の端まで届いていない。額縁内寸を計測してみると、比率が16:9になっているわけでもなく、かなり中途半端にパネルが配置されているように見える。液晶ディスプレイでは、額縁の端まで映像が表示されるのが通常なので、この点はどうしても気になってしまう。しかも、IQ500シリーズでは額縁いっぱいまでパネルが届いていたのだからなおさらだ。ただ、左右に余裕があるために、特に画面端に近い部分でのタッチ操作がかなりやりやすくなっているのも事実。おそらくこのような仕様になっているのは、タッチ操作の操作性を優先してのことだと思われる。この判断は間違っていないように筆者は感じた。 単体の液晶ディスプレイかのような、すっきりとしてスマートな本体デザインもそのまま踏襲されている。液晶の大型化に伴って、横幅こそ662mmと100mm以上大きくなっているものの、通常使用時の奥行きは238mmと従来モデルとほとんど同じで、省スペース性が損なわれていない点も嬉しい。また、本体下部のイルミネーションは、カラーを自由に変更できるようになった。画面にカラーバーを表示させ、タッチすることで表示色が選択できる。設置する部屋に合わせてカラーを変更でき、インテリア重視のユーザーも満足できるはずだ。
●ダブル地上デジタルチューナを標準搭載 従来モデルのIQ500シリーズでは、TVチューナが搭載されていなかったが、今回追加された新モデルでは、IQ500シリーズ、IQ800シリーズともにダブル地上デジタルTVチューナを標準搭載するモデルが用意されている。今回試用したIQ817jpも、ダブル地上デジタルTVチューナが標準搭載となっている。これにより、液晶一体型PCとしての魅力が大きく向上している。 ダブルチューナ仕様のため、録画時に裏番組を視聴したり、2番組の同時録画も可能。地デジ視聴/録画ソフトは、ピクセラの「StationTV for HP」を利用する。番組を録画しながら再生するタイムシフト再生や、EPGを利用した録画予約、EPG情報を利用して放送延長や、放送時間の変更時にも自動的に録画時間を変更するなどの機能を網羅。特に高機能というわけではないものの、地デジの視聴や録画など、基本的な使い方であれば特に問題は感じなかった。ただし、ソフトの起動にやや時間がかかる点は、気になった。 StationTVには、録画データのBDへのコピー/ムーブ機能も用意されているが、IQ817jpの光学式ドライブはBDの書き込み機能がないため利用できない。その代わり、IQ817jpでは、カートリッジ式のポータブルHDD「HPポケット・メディア・ドライブ」が利用できるようになっている。これは、160GBまたは250GBの2.5インチHDDを搭載するポータブルHDDで、本体上部に用意されている「Personal Media Drive Bay」に取り付けて利用する。録画した番組をHPポケット・メディア・ドライブにコピー(ダビング10対応のため、9回までのコピーが可能)またはムーブすれば、多くの番組を録画保存できる。もちろん、HPポケット・メディア・ドライブは、録画番組の保存用としてだけでなく、通常のHDDとしても利用可能だ。
●基本スペックも進化 基本スペックは、従来のIQ500シリーズ同様、ノートPC向けプラットフォーム(いわゆるSanta Rosa)がベースとなっているが、もちろんスペックは強化されている。 CPUは、Core 2 Duo T8100を採用(直販モデルの IQ811jpでは、Core 2 Duo T7250を採用)。メインメモリは、標準でPC2-6400 DDR2 SDRAMを4GB搭載(最大4GB)。マザーボードにはSO-DIMMが2基用意されており、標準で2GBのSO-DIMMモジュールが2個取り付けられ、デュアルチャネル動作を実現している。メモリスロットには、背面スタンド下のカバーを外すとアクセスできるが、標準で最大容量のメモリが搭載されているので、アクセス性に関して気にする必要はない。 グラフィック機能も、従来モデル同様、外部GPUを利用するが、従来モデルのNVIDIA GeForce 9300M GSから、GeForce 9600M GSへと強化されている。これによって、3Dゲームも快適に動作するようになった。専用ビデオメモリは512MB搭載している。 内蔵HDDは、640GBの3.5インチHDDを採用する。以前取り上げたIQ503jpでは750GBのHDDを搭載していたため、若干の容量減となっているものの、おそらくコスト面を考慮してのことだと思われる。また、IQ500シリーズでは、内蔵HDDへのアクセスは本体の分解を伴っていたが、IQ817jpでは背面スタンド下のカバーを外すだけでアクセスできるようになっており、交換も容易となった。 光学式ドライブは、BD-ROM/DVDスーパーマルチコンボドライブを標準採用している。スロットイン形式で、本体右側面に用意されている点などは従来モデル同様。BDメディアへの書き込みは行なえないが、フルHD解像度に対応する液晶と合わせて、高品質なBD再生が楽しめる。 その他の機能は、従来モデルと大きく変わらない。ネットワーク機能は、Gigabit Ethernet対応の有線LAN、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LAN、Bluetooth 2.0+EDRを標準搭載。USB 2.0は、本体後部に3ポートと左側面に2ポートの5ポートを用意。また右側面には、5in1メディアスロットと、IEEE 1394ポートが用意されている。 無線方式のキーボードとマウスが付属している点も従来モデル同様。仕様も全く同じで、薄型のコンパクトキーボードと、ホイール付き光学3ボタンマウスだ。また、Media Centerリモコンが付属する点も同様で、地デジ視聴時のチャンネル切り替えなどもリモコンで行なえる。 ところで、従来モデルでは、64bit版Windows Vistaが採用されていたが、今回登場したIQ800シリーズや、IQ500シリーズの新モデルでは、全て32bit版Windows Vista Home Premium SP1に変更されている。そのため、4GBのメインメモリは一部使用できない領域が存在することになる。とはいえ、一般ユーザーにとっては、利用するソフトやドライバの対応について考慮する必要がなくなったメリットの方が大きく、この変更は歓迎だ。 ●大型液晶搭載の一体型PCを探している人におすすめ では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回は、従来モデルと同じベンチマークソフトを利用しようと思っていたのだが、正常に動作しなかったため、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と「3DMark06(Build 1.1.0)」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類を利用した。また、Windows Vistaに用意されているエクスペリエンス・インデックスの結果も加えてある。 TouchSmart PC IQ817jpのベンチマーク結果
結果を見ると、外部GPUとしてGeForce 9600M GSを搭載していることもあり、3D描画能力がかなり優れていることがわかる。これだけのパフォーマンスがあれば、3D描画のゲームソフトも快適にプレイできるだろう。GPUが強化されたことによって、スペック面のバランスが向上し、より幅広い用途に快適に利用できるようになったと考えていい。 従来モデルでの課題であった、地デジチューナの搭載が実現されるとともに、液晶画面の大型化によって、魅力は大きく向上している。今回試用したIQ817jpは店頭販売モデルで、価格は24万円前後。従来モデルよりもやや高価となっているが、液晶の大型化、地デジチューナやBD-ROM再生対応のスーパーマルチコンボドライブを搭載するなどの機能強化を考えると、十分納得できる。ちなみに、直販モデルの「TouchSmart PC IQ811jp」は、価格が199,500円からとやや安価ながら、CPUや外部GPUが低ランクのものになっていたり、光学式ドライブがBD-ROM非対応だったりするため、機能やスペックを重視するなら、店頭販売モデルであるIQ817jpがおすすめだ。 機能面の死角がなくなり、スペック強化によってより幅広い用途に対応できるようになったIQ817jpは、機能面だけでなくデザインも含め、幅広いユーザーにおすすめしたい液晶一体型PCだ。 □日本HPのホームページ (2008年11月13日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
|