発売中 価格:オープンプライス ●通常電圧版CPUと最新チップセットを搭載 パナソニックのLet'snoteシリーズは、軽くて、丈夫で、バッテリ駆動時間が長いという。三拍子揃ったモバイルノートPCとして高い人気を誇る。これまで、Let'snoteシリーズには、10.4型液晶を搭載した1スピンドル機「Let'snote Rシリーズ」、12.1型液晶を搭載した1スピンドル機「Let'snote Tシリーズ」、12.1型液晶を搭載した2スピンドル機「Let'snote Wシリーズ」、14.1型液晶を搭載した2スピンドル機「Let'snote Yシリーズ」という4つのラインナップが用意されており、ユーザーの目的に応じて、最適なマシンを選べることが魅力であった。 今回の秋冬モデルでは、従来の4シリーズに加えて、14.1型ワイド液晶を搭載した2スピンドル機「Let'snote F8」(以下F8)が新たに追加された。F8は、通常電圧版CPUを搭載し、Let'snoteシリーズの中で最も高性能なマシンだが、本体に可動式のハンドルが用意されたことで、ぐっと持ち運びやすくなっていることが魅力だ。 本体のサイズは326×251×25.5~48.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.63kgだ。Let'snoteシリーズの中では最も大きなマシンだが、Let'snote Y8のサイズは309.6×245.5×28~44.5mm(同)、重量は約1.51kgなので、Yシリーズとのサイズや重量の違いはそれほど大きくはない。これまでYシリーズを使ってきたが、より高性能なマシンが欲しいという人にもお勧めできる。
これまでのLet'snoteシリーズは、携帯性やバッテリ駆動時間を重視して、CPUにTDPの低い超低電圧版や低電圧版を採用していた。超低電圧版や低電圧版は、発熱が小さいことがメリットだが、通常電圧版に比べるとクロックが低いため、パフォーマンス的には不利だ。特に14.1型液晶搭載のYシリーズは、液晶が大きく、デスクトップ代わりに使われることも多いので、より高いパフォーマンスを望む声が多かった。そこでF8では、Let'snoteシリーズで初めて、通常電圧版であるCore 2 Duo SP9300(2.26GHz)を採用。また、また、L2キャッシュ容量も4MBから6MBに増加、FSBクロックも800MHzから1,066MHzに向上しており、CPU性能は、Let'snote Y8に比べても大きく向上している。チップセットも、最新のモバイル向けチップセットIntel GS45 Expressを採用。内蔵グラフィックスコアの世代が新しくなり、3D描画性能も向上した。
メモリは標準で2GB搭載しており、プリインストールされているWindows Vista Business SP1も快適に動作する。地味な点だが、メモリモジュールが一般的で価格が安いSO-DIMMを採用しているのも嬉しい。メモリスロットは1基で、出荷時状態で1GB SO-DIMMが装着されているため、空きスロットはない。Yシリーズが採用するMicroDIMMの場合、最大容量が1GB品なので、オンボード1GBとあわせて最大2GBまでしか増設できないのに対し、2GB SO-DIMMを装着できるF8なら、最大3GBまでメモリを増設可能だ(直販サイトのマイレッツ倶楽部ではオンボード2GBモデルも選択でき、その場合は4GBまで増設できる)。 HDD容量は160GBで、こちらも十分な容量だ。本体を分解しなくても、底面のカバーを外すだけで、HDDにアクセスできるようになっている。HDDには、衝撃吸収材が貼られており、外部からの衝撃がHDDに伝わらないように設計されている。 光学ドライブとしては、DVDスーパーマルチドライブを搭載。Let'snoteシリーズではお馴染みのシェルドライブで、貝殻のように上に開くため、トレーを引き出すスペースが不要なことが利点だ。
●Let'snote初のワイド液晶を搭載 液晶ディスプレイとして、14.1型ワイド液晶を搭載。これまでのLet'snoteシリーズは、アスペクト比4:3の液晶を採用しており、ワイド液晶の搭載も、F8が初となる。解像度は1,440×900ドットと高く、Windows VistaのWindowsサイドバーを表示させても、アプリケーション領域が狭くならず快適に利用できる。ただし、1,400×1,050ドットのSXGA+液晶を搭載するYシリーズに比べると、横方向の解像度は40ドット増えているが、縦方向の解像度が150ドット減っているため、一度に表示できる情報量は12%ほど少なくなっている。 他のLet'snoteシリーズと同様に、表面に反射低減処理が施されたノングレアタイプの液晶を採用しているので、外光の映り込みが少なく、長時間使っていても目の疲れが少ない。 ●「ハンドル」装備で安心して持ち運べる F8の最大の特徴は、可動式のハンドルを装備したことだ。パナソニックの業務向けタフモバイルノートPC「TOUGHBOOK」では、ハンドルを備えた機種が発売されているが、Let'snoteシリーズでハンドルを装備したのは、F8が初めてとなる。コンシューマー向けノートPCでハンドルを備えた機種は、過去に何機種か登場しているが、2kg未満のモバイルノートPCでハンドルを装備した機種は珍しい。F8の重量は約1.63kgであり、Y8の約1.51kgに比べて120gほど増えているが、ハンドルを装備したことによって、片手で確実に持てるので、F8のほうが持ち運びやすい印象を受けた。 特に、オフィスの自分の机から会議室にノートPCを持って行く際など、一緒に資料などを持って行く必要がある場合、ハンドル付きのF8なら、ノートPCを小脇に挟まずに片手で持って運べるので、誤って落としてしまう心配がなくなる。ノートを持ったままドアノブを回して、ドアをあけることも楽にできる。このハンドルは、サイズや形状が異なる試作品をいくつも作成し、一番持ちやすく、デザイン的にも違和感がないものを採用したという。もちろん、ハンドルや取り付け部分の強度には注意が払われており、ハンドルを持って本体を振り回しても問題ないように設計されている。 また、ハンドルを装備したことで、ハンドルを持った状態で上から机に置かれることが増えることが予想される。その際の衝撃を吸収するために、底面のゴム足が大きくなり、背面側にも突起が付くようになっている。
●キーボード全面防滴や耐圧100kgfを実現 Let'snoteシリーズは、ボディが頑丈なことでも定評がある。もちろんF8も、他のLet'snoteシリーズと同じく頑丈設計を受け継いでおり、一般的な机と同じ高さの76cm落下試験(底面方向、動作時)や26方向からの30cm落下試験(非動作時)をクリア。キーボード全面防滴や天板の耐圧100kgfも実現しており、気軽に持ち運べる。 キーボードは全86キーで、ボディの横幅が大きいので、キーボードもゆったりしている。キーピッチは約19mmで、キー配列も変則的なところがないので快適にタッチタイピングが可能だ。ポインティングデバイスとして、Let'snoteシリーズお馴染みの円形のホイールパッドが搭載されている。ホイールパッドの操作性も良好だ。
搭載インターフェースも、Yシリーズに比べて強化されている。Yシリーズでは、USBポートが2基しか用意されていなかったが、F8ではUSBポートが3基に増えている。また、オプションのミニポートリプリケーターの仕様が変更され、従来のミニD-Sub15ピンではなく、デジタル出力であるDisplayPortに対応するようになった。DisplayPortは今後普及が見込まれる規格であり、いち早くサポートしたことは評価できる。なお、サードパーティから登場している変換ケーブルを利用すれば、HDMIやDVIへの変換が可能だ。 無線LAN機能も強化されており、従来からのIEEE 802.11a/b/gに加えて、IEEE 802.11nドラフト2.0にも準拠。最大300Mbps(下り、理論値)の高速通信が可能になった。ワイヤレススイッチも用意されているので、無線LAN機能の有効/無効を素早く切り替えることができ、航空機内のように電波を出すことが禁じられている場所に持ち込む際に便利だ。
●最大約9時間の長時間駆動を実現 バッテリパックは、10.8V/5,800mAhの6セル仕様で、約9時間の長時間駆動が可能だ。ちなみにY8のバッテリ駆動時間は約8時間なので、F8のほうが1時間ほど長い。大容量バッテリは用意されていないが、標準バッテリでこれだけ持てば十分満足できる。パワーマネージメントユーティリティも強化されており、きめ細かなパワーマネージメント設定を一括して行なえるようになった。ただし、F8では、通常電圧版CPUを搭載したことで、消費電力が増えているため、YシリーズよりもACアダプタが一回りほど大きくなっている。 OSとしてWindows Vista Business SP1がプリインストールされているが、Windows XP Professionalへのダウングレードも可能だ。Windows XP用リカバリDVD-ROMが付属しているので、簡単にOSをWindows XPに入れ替えられ、特にビジネスユーザーにはありがたいだろう。
●モバイルノートPCとしてはトップクラスの性能を実現 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark Vantage 1.0.0.0」と「PCMark05(Build 1.2.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」、「フロントミッションオンラインオフィシャルベンチマーク」、「モンスターハンターフロンティアオンラインベンチマーク」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」だ。また、Windowsエクスペリエンスインデックスも計測した。比較対照用に、ソニー「VAIO type T VGN-TT90S」とレノボ「ThinkPad X61 Tablet」、パナソニック「Let'snote Y7」の結果もあわせて掲載している。 PCMark VantageやPCMark05のスコアは、超低電圧版や低電圧版のCore 2 Duoを搭載している他機種に比べて、格段に高い。特に、PCMark05のCPU Scoreは、Core 2 Duo L7500を搭載したLet'snote Y7の2倍近いスコアとなっている。なお、PCMark VantageのTV and Movie ScoreがVAIO type Tに比べて低くなっているが、これは一部のテストがキャンセルされてしまったためだ(スコアは各テストの合計点となる)。3D描画性能を計測する3DMark06やフロントミッションオンラインオフィシャルベンチマークのスコアも、Intel GM965搭載製品に比べて格段に高い。Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアも、最低が3.7であり、標準で2GBのメモリを実装していることもあり、Windows Vistaも快適に動作する。モバイルノートPCとしてはトップクラスのパフォーマンスを実現しており、一般的なA4フルサイズノートPCと比べても、遜色のない性能を誇る。 Let'snote F8のベンチマーク結果
●パフォーマンスと持ち運びやすさの両立が魅力 F8は、通常電圧版CPUと最新チップセット、ハンドルの採用によって、フルサイズノートPCに迫るパフォーマンスと持ち運びやすさを両立させた製品であり、モバイルノートPCとしての完成度は高い。価格はやや高いが、それだけの価値はあるといえる。メインマシンとしても快適に使えるモバイルノートPCが欲しいという人にお勧めしたい。 □パナソニックのホームページ (2008年11月11日) [Reported by 石井英男]
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