元麻布春男の週刊PCホットライン

“Santa Rosa”の積み残し部分をチェック




 5月9日、Intelは次世代のモバイルプラットフォーム「Centrino Duoプロセッサー・テクノロジー」の発表を行なった。

 これまで“Santa Rosa”のコードネームで呼ばれてきた新プラットフォームは、対応するプロセッサのFSB拡張(800MHz対応)、ディスプレイ機能と性能の強化、デスクトップPCのvProに相当する管理/運用機能のサポート(iAMT 2.5)など、さまざまな新機能を備える。プラットフォームとして、次の45nmプロセスのプロセッサ(Penryn:ペンリン)への移行をサポートする、という役割もある。

●「Intel Turbo Memory」はVista専用に

発表会でのTurbo Memoryのプレゼンテーション
 このSanta Rosaでサポートされる新機能の1つが「Intel Turbo Memory」だ。これまで“Robsonテクノロジー”というコードネームで知られてきたこの機能は、2006年春(3月)のIDFで明らかにされた。当初は、Intelが参入を決めたばかりのNANDフラッシュメモリを用いたディスクキャッシュ技術であり、特にOSには依存しないハズだった。

 それが大きく変わったのは2006年秋(9月)のIDFのこと。Robsonテクノロジーは、Windows Vistaの機能であるReadyDriveとReadyBoostの2つを1デバイスでサポートするものとなり、Intelはそのためのドライバを供給する、という位置付けとなった。おそらく両社の間で、市場の混乱を避けるべく、政治的な決着が図られたのではないかと筆者は考えている。

 これにより、両社が似て非なる技術で対立することは回避されたが、Intel Turbo Memoryの立ち位置は微妙になってしまった。すなわちReadyDriveやReadyBoostを持たない、Windows XPなどのOSでIntel Turbo Memoryが使えなくなってしまったのである。

 今回、Santa Rosaの発表会の席上、Windows XPにおけるIntel Turbo Memoryの扱いについてたずねてみたが、仮にIntel Turbo Memoryが実装されたノートPC(将来はデスクトップPCにも採用されるが、現時点ではノートPCのみ)にWindows XPをインストールすると、Intel Turbo Memoryは不明なデバイス扱いになってしまうという。

 Windows XPにReadyDrive/ReadyBoostがない以上、ある意味ではやむを得ないことだが、不明なデバイスになってしまうというのはいかにもいただけない(たとえ無害であろうと)。キャッシュデバイスでなくとも、たとえばWindows XPでは単なる取り外しのできないマスストレージ(512MBあるいは1GBの不揮発ストレージスペース)でも良いから、利用可能にするデバイスドライバの供給が望まれる。

 Intel Turbo Memoryを搭載したノートPCであるということは、間違いなくWindows Vistaをプリインストールして出荷されたノートPCであろう。購入後、何らかの理由(おそらくは互換性上の理由)でOSをダウングレードせねばならない状況に陥った時、内蔵のIntel Turbo Memoryが不明なデバイスになるというのは気分が悪い(Intel Turbo Memory以外のデバイスについては、Windows XP用のドライバはIntelから供給される見込み)。

 Intel Turbo Memoryのモジュールが簡単に着脱できれば良いが、PCI Expressのミニカードとして供給されるモジュールを容易に取り外しできない事態は想像に難くない。たとえノートPCを分解して取り外すことが可能であったしても、それでメーカー保証を失うのではやっぱり不満だ。Santa Rosaには動画品質を改善するIntel Clear Video Technologyなど、Windows Vistaでしかドライバサポートされない技術が含まれており、Windows XP以前のOSの利用を考えているユーザーは注意がする必要がある。


●IEEE 802.11nのW56対応は見送り

IEEE 802.11nの対応により、HD動画のストリーミング再生とビデオチャットが同時に行なえることをアピール
 このSanta Rosaで使われる無線LANモジュールがIntel PRO/Wireless 4965AGおよび4965AGNだ。いずれもCentrino Proに不可欠な、無線LAN経由の管理機能(iAMT 2.5)をサポートしたモジュールで、末尾にNの文字がある4965AGNのみが802.11nのドラフトをサポートする。この4965AGNの初期出荷版が40MHzチャンネルをサポートしていないことは、以前に紹介した通りだが、もう1つの注目すべきオプション、W56のサポートも間に合わないことが明らかになった。

 これまで、わが国で利用可能な5GHz帯の無線LANは、5.2GHz帯と5.3GHz帯で、このうち日本独自のチャンネル設定であった5.2GHz帯(J52)が、昨年世界標準に合わせる形でチャンネル設定の変更が行なわれた。ただ、新しい5.2GHz帯(W52)も5.3GHz帯(W53)も、屋外での利用が認められないという、共通の制約があった。

 2007年1月の法改正で利用可能になった5.6GHz帯(W56)は、この制約がなく、屋外でも利用可能であるという特徴を持つ。加えて、W56には利用可能なチャンネル(20MHzチャンネル)が11チャンネル設定されており、W52およびW53の各4チャンネルと合わせ、5GHz帯の無線LANは計19チャンネルに達する。スループットを最大2倍に拡張する40MHzチャンネルオプションが、2つの20MHzチャンネルを合わせて利用することを考えれば、チャンネル数の増加は特に802.11nにとって大きな意味がある(40MHzチャンネルは、周波数帯域の限られた2.4GHz帯では事実上サポートされない)。

 これら無線LANの広帯域化に有効な機能(W56への対応、40MHzチャンネルのサポート)だが、基本的にIntelはサポートする方向であるという(時期、方法等は現段階では不明)。もちろん、実効を得るにはノートPCの無線LANモジュールだけでなく、これらの機能をサポートしたアクセスポイント等も不可欠だが、これらを含めた利用環境が年内にも整備されることを期待したい。

【お詫びと訂正】初出時に、モバイルプラットフォーム向けのチップセットではViivロゴを取得できないむねの記述がありましたが、945GM/PMチップセットにおいても要件を満たすことで、Viivロゴを取得することは可能です。ここにおわびして、訂正いたします。

□関連記事
【5月10日】インテル、Santa Rosaの優位性をアピール
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0510/intel.htm
【5月9日】【多和田】Intelの新Centrino Duoプラットフォーム「Santa Rosa」の機能を見る
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0509/tawada103.htm
【4月23日】【元麻布】法改正が待たれる802.11nの国内利用
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0423/hot480.htm

バックナンバー

(2007年5月14日)

[Reported by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.