元麻布春男の週刊PCホットライン

PCの将来について4つのトピック




WinHEC最後の基調講演を行なうBill Gates会長
 5月15日から3日間の予定でWinHEC 2007がスタートした。ハードウェアメーカーのエンジニアに対する情報提供を目的に、'92年から開催されているWinHECも今回で16回目。それまでNDAベースでこっそりと情報が提供されていたOS(Windows)のハードウェア対応情報が、公開の場で語られるようになったという点で、かなり画期的なイベントだったと記憶している。

 そのWinHECも、今回で1つの区切りを迎えた。Microsoftの創業者であり、これまで同社のシンボルであり続けたBill Gates会長が、WinHECに参加するのは今回が最後になると公式に表明したからだ。残念ながら筆者は、16回、すべてのWinHECに参加したわけではない。が、記憶にある限り、Bill Gates会長がキーノートスピーチを行なわなかったWinHECはなかったと思う。

 言うまでもなくMicrosoftは、ソフトウェア会社、それも世界最大のソフトウェア会社である。が、ソフトウェア開発者向けのイベントであるPDCが基本的に各年開催であり、必ずしもBill Gates会長がキーノートを行なってきたわけではないのに対し、WinHECは'92年以来、毎年、かならずGates会長を迎えて開催されてきた。これは、Microsoftの基盤が、Windowsをライセンスするハードウェアベンダにより支えられている事実を示しているのかもしれない。Windows対応アプリケーションを提供するサードパーティは、Windowsエコシステムの大事な一員であることは間違いないが、直接的にMicrosoftの財政基盤を支えているわけではないのに対し、ハードウェアベンダが支払うWindowsのライセンス料こそがMicrosoftの基盤だと考えられるからだ。

 それはともかく、ここ数年のGates会長のスピーチ(WinHECのキーノートに限らず)は、Microsoft、Windows、あるいはPC業界の歩みを振り返る、というものが目立っている。Gates会長自身が近い将来の引退を表明していることを考えれば、うなずける話ではあるし、PC業界にも振り返るべき歴史ができたということの証でもあるだろう。

新しいフォームファクタの例として、IntelのコンセプトPC「Metro」を紹介するGates会長。MetroはWindows Sideshow対応のサブディスプレイをケース側に備えた、薄型のノートPC
 今回のキーノートもWindowsの歴史、あるいはパートナーとの協業によりWindowsが達成した成功を語ることからスタートした。そして、その最新事例としてWindows Vistaの成功について述べた。

 Windows Vistaについては、MicrosoftやPC業界が期待したほどのスタートではないという批判がつきまとう。決して失敗ではないにせよ、もろ手を上げて万歳とは言えない状況であることはみなが認めている。それを考えれば、Windows Vistaをどう変えていくのか、噂されるService Pack 1の方向性といった話を聞きたかったところだが、それは2日目のキーノート、特に急きょ朝8時からのスピーチが決まったWindows担当のMike Nash副社長が語るべきことなのかもしれない。

 さてBill Gates会長のキーノートは、「Windows Rally」、「Windows Home Server」、「Windows Server 2008」のデモを交えつつ、進められていった。

 「Windows Rally」はネットワーク上のデバイスを見つけて、ユーザーが利用可能にするプロセスを自動化するもの。昨年(2006年)のWinHECで、その名称とともに発表されているが、その時点ではこれを正式サポートしたOS(Windows Vista)がまだ完成していなかった。今回は完成品のWindows Vistaを用いてのデモである。

 「Windows Home Server」は、今年のCESで発表されたもので、複数のPCを持つ家庭を対象に、PC間のメディア共有やデータのバックアップをサポートする。家庭向けに管理が容易になり、ストレージスペースの拡張なども簡単にできる。デモにはHPが開発中のSmartMedia Serverと呼ばれるちょっと大きめのNASくらいのマシンが使われていたが、ほかにもGateway、LaCie、Medionといった会社がすでに製品化を発表しているという。

今回、Windows Server "Longhorn"の正式名称がWindows Server 2008になると発表された Windows Home ServerのデモでHPのSmartMedia Serverを紹介するMicrosoftのSteven Loenard氏(Windows Server Senior Product Manager)

 デモとしては最後になった「Windows Server 2008」だが、従来呼ばれてきたWindows Server “Longhorn”に替わるこの正式名称が発表されたことがまず大きなニュースだ。

 昨年のWinHECにおけるデモが、仮想化技術の採用やスクリプティングコンソールなど技術面にフォーカスされていたのに対し、今回のデモでは、アンチウイルスソフトの定義ファイルが最新でないクライアントのネットワーク接続を拒否したり、重要な文書の印刷やUSBメモリによる持ち出しを禁止したり、といった利用面にフォーカスされていた。これも製品としてのリリースが近づいた証なのだろう。

 キーノートの最後のパートは、PCの向かうところ、ということで、PCの将来について4つのトピックを取り上げた。

1. 64bitへの移行
2. フォームファクタの革新、特に携帯性を重視したフォームファクタについて
3. 音声入力や手書き入力などのナチュラルインプット
4. インターネットを中核とした「Live」時代の到来

 これらによりPC業界にはまだ大きな変革とチャンスが残されているとした。そして、これらの変革を導くリーダーの1人として、ソフトウェア戦略部門における自らの後継者に指名したのがCraig Mundie氏だ。Gates会長のWinHEC最後のキーノートは、Chief Research and Strategy Officerの肩書きを持つMundie氏を、2番目のキーノートスピーカーとして壇上に招きあげることで締めくくられた。

□Microsoftのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/
□WinHECのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/whdc/winhec/

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(2007年5月17日)

[Reported by 元麻布春男]


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