山口真弘の電子辞書最前線

第11回 カシオ「XD-SW6400」
手書きパネルを搭載した生活総合モデル




カシオ「XD-SW6400」

1月26日 発売

価格:47,250円



 カシオの電子辞書「XD-SW6400」は、100コンテンツを搭載した生活総合モデルだ。

 手書きパネルを新たに搭載し、読み方の分からない漢字の検索をスタイラスを用いて手軽に行なえるのが特徴だ。

●シャープ製品に続き、手書き入力に対応した子画面を採用

 2006年11月に発売されたシャープの電子辞書「PW-AT750」。キーボード手前に「手書きパッド」を搭載したこの製品は、BCNのランキングでも発売以来つねに上位にランクインするなど、好調な売れ行きを持続している。

 今回カシオから発表された「XD-SW6400」は、そのPW-AT750と同様、手書き入力に対応した子画面「手書きパネル」を搭載した電子辞書だ。これにより、キーボードからの文字入力に頼らずとも、読み方がわからない漢字を検索できるというわけだ。

 ちなみにこのモデルをはじめ、同時に発表された同社の電子辞書ラインナップでは、全モデルにこの手書きパネルが標準添付となった。型番が一新されたことからも、手書きパネルに対する同社の期待と本気度がうかがえる。

●手書きパネル搭載も従来モデルと同じキーサイズ、ピッチを維持

 まずはざっと製品の特徴をまとめておこう。

 筐体デザインは従来製品からモデルチェンジが行なわれ、上蓋に添付される同社電子辞書のブランド「EX-word」ロゴも一新された。本体サイズは、従来モデルに比べて厚み、奥行きが約2~3mm増し、重量も約35g増加している。ほんのわずかな差なのだが、持ち比べてみても「あれ、前よりちょっと重いな」「厚みがあるな」と感じる。

製品本体。色はシルバーのほか、レッド、ブラックがラインナップされている 従来から一新された天板のデザイン。EX-wordのロゴも新調された 従来機種に比べてスクエアな印象が強くなった

 キーボード盤面は、手書きパッドの搭載と引き換えに、ホットキー9個のうち3個が省略されたものの、その他のキーサイズ、ピッチは従来とほぼ同一で、窮屈さはまったくない。キーサイズそのものを縮小して手書きパッドの搭載にこぎつけたシャープPW-AT750に比べると、かなり余裕がある。設計者の苦労とこだわりが見て取れる部分だ。キーレイアウトもシンメトリックで美しい。

下段ホットキーの一部が省略されたほかは、キーレイアウトは従来機種とほぼ同じ。キーボード下部の左右にスピーカが搭載されているのも従来と同じだ 連載第8回で紹介した、同じ手書きモデルであるシャープPW-AT750(右)とのキーサイズ、ピッチの比較。かなりの差があることが分かる

 手書きパネルの左に戻るキー、右に訳/決定キーが配置されており、両手でホールドして操作した場合の操作感がPCのブラウザとよく似ている。こうしたインターフェイスがPCと共通化されていくのは、ユーザビリティ的によい傾向だと感じる。

 文字サイズの3段階変更や、各コンテンツごとに文字サイズが変更できる仕様は、従来と同一。詳しくは後述するが、1つのファンクションキーに複数のコンテンツが割り当てられた関係で、電卓などへのショートカットが廃止されたのは惜しい。

訳/決定キーと戻るキーは、本体正面にかかるデザインになっており、持った時に押しやすい 両手でホールドしたところ。ちょうど親指の位置に戻るキーと訳/決定キーが来るため、操作性は良好
手書きパネルはキーボード手前に搭載される。シャープPW-AT750に比べるとサイズは横長 上段のファンクションキーは1段。1回押した時と、2回押した時とでは呼び出されるコンテンツが異なる
文字サイズは3段階で可変する

 本体内の50MBのメモリ領域、およびSDカードにコンテンツやテキストを保存できる。ちなみに従来モデル「XD-ST6300」は本体メモリ領域が20MBだったので、2倍以上に拡張された格好だ。これにより、単体で20MBを超える追加辞書のインストールも可能になったわけだ。

 画面は5型、解像度は480×320ドット。バックライトが付属しているので、照明が十分でない環境でも利用することができる。ただし、手書きパネルにはバックライトは付属しない。電源は単4電池×2本、連続使用可能時間は130時間と、十分な値である。

本体右側にはUSBポートとイヤフォン端子、ボリュームを操作するダイヤルが並ぶ 本体左側にSDカードスロットを備える。ストラップホールも装備 手書き入力に利用するスタイラスは、本体後部、電池カバーに取り付ける方式になっている。素材はプラスチック製で造りはややチープ
京ぽん2ことウィルコムWX310Kとの比較
連載第6回で紹介した従来モデルXD-ST6300(右)との比較。天板のデザインが一新されていることが分かる 厚みは従来モデルXD-ST6300(右)のほうがやや薄い 単4乾電池×2で駆動する

●手書きパネルは左右2マス構成で連続入力に最適。面積はやや小さめ

 さて、本題の手書きパネルである。この手書きパネルを用いれば、漢字の読み方が分からなくても、スタイラスを用いて直接手書きで検索することが可能だ。また、文字入力を必要としないシーンでは、前後の見出しにジャンプするボタンが手書きパネル部に表示されるなど、シーンに応じてさまざまな機能が割り当てられている。

 これらの機能は、シャープ「PW-AT750」に搭載されている手書きパッドと基本的に同一であり、キーボード手前にレイアウトされている点も同じだ。しかしながら、実際の操作性、および使用感はかなり異なっている。具体的には以下の通りだ。

○記入できるマスの数と、1マスあたりの面積
カシオXD-SW6400:2マス、約16×16mm
シャープPW-AT750:1マス、約27×23mm

○文字の認識手順
カシオXD-SW6400:左右に交互に書いていくことで、「認識」ボタンを使わず連続入力できる。最後の文字のみ「認識」をタッチする必要あり
シャープPW-AT750:1文字入力するたびに「認識」ボタンをタッチするか、一瞬間を空けて自動認識させる

○ほかの候補文字
カシオXD-SW6400:上段の「訂正」をタッチすることで、修正候補が10文字表示される
シャープPW-AT750:上段に修正候補があらかじめ表示される

 複数の文字を高速に入力するという点では、本製品に圧倒的な分がある。入力マスが2つあるので交互に書くことができ、次のマスに書き始めた時点で前のマスの文字認識が行なわれるので、わざわざ「認識」ボタンを押したり、認識が始まるのを待つ必要がない。

 一方、1マスあたりの入力エリアの広さや、修正候補の表示などは、シャープ製品が優れている。シャープ製品ではパッドのサイズを小さいと感じることはなかったが、本製品のそれはやや狭いと感じる。画数の多い漢字を書こうとすると、若干ストレスを感じる場合もある。

 また、カシオ製品の場合、思い通りに認識できなかった場合はパネル上部の「訂正」をタッチし、修正対象の文字→その候補と絞り込んでいくのだが、シャープ製品の場合はあらかじめ上段に修正候補が表示されているので、カシオ製品より2つ少ないステップ数で修正が行なえる。

 全般的な傾向としては、カシオ製品の手書きパネルは、読みがわからない漢字1文字を検索するインターフェイスというより、むしろキーボードの代替として使いやすく配慮されているように思える。シャープ製品は1文字ずつじっくり書いていくには向いているが、キーボードの代わりに連続入力を行なうにはちょっと厳しい。このあたりは、同じ手書き機能でありながら、コンセプトの違いが読み取れて面白い。

付属のスタイラスで手書きパネルに文字入力を行なっているところ 新JIS規格(JIS X 0213:2004)フォントに対応。旧字形だった従来機種(18b)と違い、新字形での表示が可能
本製品の手書きパネル(左)と、シャープPW-AT750(右)の手書きパッドのサイズ/レイアウト比較。本製品はやや小ぶりな2マスを装備。シャープPW-AT750は大き目の1マスで、上段に変換候補を表示するスペースを備える
文字を書いたあと、続けて隣のマスに文字を書き始めるか、もしくは認識キーをタップすることで、文字の認識が行われ、画面に漢字が表示される 認識された文字が正しくない場合は、訂正キーをタップすることで、修正候補が最大10文字表示される
文字入力が必要ない利用シーンでは別のキーが表示される。これは見出し送りの機能 これはコンテンツを選んでいる最中の表示。コンテンツを「お気に入り」に登録するためのキーが表示されている

●ネイティブ音声がコンテンツから独立。数も15,000→85,000に大幅増

 話が手書きパネルに偏ってしまったが、コンテンツおよび特徴的な機能にも触れておこう。

 本製品の搭載コンテンツ数は100。多少の入れ替えはあるものの、コンテンツの数は従来モデルと変わらない。

 これらのコンテンツは、キーボード上段のファンクションキーから呼び出すわけだが、今回の製品からは、ファンクションキーを複数回押すことで、異なるコンテンツが呼び出せるようになった。例えば左から2つ目のキーであれば、1回押すと広辞苑、2回押すと漢字源が呼び出される。この機能はこれまでSIIの電子辞書に搭載されており、筆者個人は非常に便利だと感じていただけに、今回の採用は素直に喜ばしい。

メニューは従来機種と同様、タブ形式で表示 同じファンクションキーでも、1回押すのと2回押すのとでは呼び出されるコンテンツが異なる

 また、ネイティブ英単語の収録数が、従来の15,000語から85,000語と、5倍以上に増加している点も見逃せない。一例を挙げると、ジーニアス英和辞典に収録されている見出し数は約95,000語なので、同辞典に収録されている見出し語のほとんどがネイティブ音声で発音できることになる。

 ちなみに本製品のネイティブ音声は、特定のコンテンツにぶら下がる形ではなく、独立して収録されている。そのため、どのコンテンツからも同じネイティブ音声を呼び出せるようになった。コンテンツごとに音声データを持つのに無理があることは明らかなわけで、極めて合理的な進化を遂げたと言えるだろう。

脳力トレーニング系のコンテンツも健在だ 流行りの漢字検定に役立つコンテンツとして「漢検プチドリル2級」「同、3級」が収録されている

●2つのインターフェイスをどうマージさせるのか

 カシオ製の電子辞書に手書きパネルが搭載されたことで、電子辞書のシェア上位の2社の主要製品が、子画面による手書き入力に対応することになった。かつて音声モデルがあっという間にスタンダードになったように、子画面による手書き入力機能がこのままデファクトとなるのは、ほぼ間違いないと見てよいだろう。

 今回、さまざまな目的で本製品を利用してみたが、入力内容の大半が手書きパネルと訳/決定キーのコンビネーションで事足りてしまい、キーボードに触れる機会はほとんどなかった。スタイラスを取り出さなくてはいけない手間はともかく、手書きに慣れてしまうと、キーボードからの入力が億劫になるのである。

 もちろん、筆者のように感じるユーザーばかりではないだろうし、キーボードの有用性を否定するものではないが、こうした進化が続けば、そのうちキーボードも含めて全面タッチタイプの2画面電子辞書が出てきてもおかしくない気がする。

 期せずして、キーボードと手書き入力、複数のインターフェイスを持つことになった2007年モデルの電子辞書。今後カシオ、シャープの両社がこれらのインターフェイスをどう料理していくのかにも注目したい。

【表】主な仕様
製品名EX-word
XD-SW6400
メーカー希望小売価格47,250円
ディスプレイ5型モノクロ
ドット数480×320ドット
電源単4乾電池×2
使用時間約130時間
拡張機能SDカードスロット、USB
本体サイズ144.5×101.3×17.2mm
(幅×奥行き×高さ)
重量約285g(電池含む)
収録コンテンツ数100(コンテンツ一覧はこちら)

□カシオのホームページ
http://casio.jp/
□製品情報
http://casio.jp/exword/products/XD-SW6400/
□関連記事
【1月22日】カシオ、ネイティブ発音を強化した電子辞書13機種
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0122/casio.htm
【2006年11月28日】【山口】シャープ「PW-AT750」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1128/jisho008.htm
【2006年9月19日】【山口】「XD-ST6300」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0919/jisho006.htm

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(2007年2月5日)

[Reported by 山口真弘]


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