●大容量NAS市場を作ったTeraStation
内蔵した4台のHDDによる1TB近い容量、容量と冗長性のバランスのとれたRAID 5のサポート、Gigabit Ethernet対応、個人でも手を出せる約10万円という価格。これらはみな、2004年暮れに登場したバッファローの初代TeraStation、「HD-HTGL/R5」シリーズが備えていた特徴だ。 このうちのどれが決め手になったのか、それとも全てを満たしていたからなのか、TeraStationは売れ、発売当初はなかなか入手できない状況にさえなった。1年あまりで3万台以上が売れたというから、PC周辺機器としてはかなり高額な部類に入る価格を考え合わせると、大ヒット商品と言っても言い過ぎではないだろう。 しかも、これだけ売れ、注目されたにもかかわらず、1年半あまりの間、他社の追随を許さなかった。これはヒット商品にはすぐに追随者が出る業界において、かなり希有なこと。まさにこの市場を作ったのは、TeraStationだといっていい。 TeraStation自体は、登場から1年後の2005年末に最初のモデルチェンジを行なった。このモデルチェンジでTeraStationは、内蔵ドライブをパラレルATAからシリアルATAに変更すると同時に、2系統に分かれている。初代の外観を継承しつつDLNAに対応したコンシューマモデルの「HS-DTGL/R5」と、ブラック筐体に変更し開閉式のフロントパネルでドライブへのアクセスを容易にするなど保守性を向上させたビジネスモデルの「TS-TGL/R5」だ。 そしてこの2代目(新TeraStation)から約1年、ビジネスモデルのモデルチェンジが9月末に発表された。「TeraStation Pro」の愛称がつけられた3代目(TS-HTGL/R5シリーズ)の最大の特徴はデータ転送速度の向上。特に複数ユーザーからの同時アクセス時のデータ転送速度が向上しているという。またWindows ServerのActiveDirectoryと連携する機能も強化された。この3代目のリリースは12月上旬あたりが予定されているが、その試作機を借用することができたので、簡単に紹介することにしよう。
●TeraStation Proを試す 3代目改め「TS-HTGL/R5」シリーズとして発売されるのは、容量1TB(250GB×4)、1.6TB(400GB×4)、2TB(500GB×4)の3モデル。今回試用したのは1TBモデルの「TS-H1.0TGL/R5」だ。外観をパッと見たところ2代目のビジネスモデルから変わったところはないように思われるが、若干のマイナーチェンジはあり、ファン交換が可能になった。また、ドライブ交換時のケーブルの引き回しが改善された。 ただ、機構的な部分には大きな変更はない。キーロック可能で開閉式のフロントパネル、ラック式のHDDマウント(ただしホットスワップ非対応)、内蔵式の電源ユニットなどは共通だろう。2代目とほぼ同じ筐体を使うということは、アイ・オー・データ機器やロジテックの同種製品に比べ、サイズがかなり大きいということを意味する。実際、ほんの数日前まで筆者の手元にアイ・オー・データ機器の製品があったのだが、見た目で比べても容積比で2倍近いのではないかと感じられる。 外観の変化が少ないのに対し、中身、特に基板はフルチェンジしている。主要なパーツの提供ベンダの変遷を表1にまとめておいたが、中身的には今回のモデルチェンジはフルモデルチェンジと言って間違いない。CPUについてはファン付きのヒートシンクが接着されていたため型番を読むことはできなかったが、メモリが直結されたSOCチップであること、Marvell製のPCI-Xバス接続タイプのシリアルATAコントローラが使われていることなどから考えて、同社のOrionシリーズのチップが使われているのではないかと考えられる。
【表1】主要チップのベンダ変遷
CPUのアーキテクチャがPowerPC系(MPC8241)からARM11系(Orionは、ARM11コアのFeroceonベース)に変わったわけで、ソフトウェア的にもバイナリは別物ということになる。実際、ファームウェアのバージョン表示は0.01で、かなり初期段階のソフトウェアが使われているようだ。全く未使用であるにもかかわらず、RAIDアレイ1の空き容量が少なくなっている旨の注意が表示されるなど、おかしな部分がなくもない。
●ベンチマーク結果 ただ、今回限られたテストをし、利用する分には、動作そのものは極めて安定しており、特に不安を感じる部分はなかったため、前回、前々回と同じテストを行なってみた。本機はジャンボフレームとして、4,102bytes、7,422bytes、9,694bytesの3種をサポートしていたので、それぞれ実施している。
【表2】クライアントPCの構成
その結果だが、FDBenchのスコアはそれほど良くないものの、実際にファイルをコピーしてみると読み出しも書き込みもそれなりに速い。筆者は個人的に初代TeraStationを現用中だが、50%~100%近く速い結果が出ている。今後のチューニングでさらに向上する可能性を考えれば、かなり良好な結果ではないかと思う。
【表3】ベンチマーク結果(パワーマネージメント無効)
使ってみてそれ以上に好ましかったのは、本機もUTF-8のサポートが行なわれ、WindowsとMacの両方で日本語フォルダ名/ファイル名が利用できることだ。初代TeraStationを使っていて、最もフラストレーションを感じる部分だっただけに、素直に喜ばしい。製品リリースまでに、どのようなブラッシュアップが行なわれるのかは分からないが、期待して待ちたいところだ。 □バッファローのホームページ (2006年10月30日) [Reported by 元麻布春男]
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