元麻布春男の週刊PCホットライン

バッファローの1TB ネットワークHDDを試す




●RAID 5に対応したTeraStation

TeraStation
「HD-HTGL/R5」

 以前は個人/SOHOユーザーには高嶺の花だったネットワーク接続型ストレージも、急速に安価になり、それとともに広く普及しつつある。割と早い時期から、個人向けの外付けHDDの1つの方向性として、ネットワーク接続タイプが必要だと言ってきた筆者としては喜ばしい限りだが、もう1つ喜ばしいのは、個人/SOHOユーザー向けのネットワーク接続型ストレージ(パーソナルNAS)にも、様々なバリエーションが現れてきたことだ。

 ここで紹介するバッファローの「HD-HTGL/R5」シリーズも、これまでのパーソナルNASとは一味違った製品となっている。

 HD-HTGL/R5シリーズの最大の特徴は、内部に合計4台のHDDを内蔵していること。1番最初に製品化されたモデル(HD-H1.0TGL/R5)の合計容量が1TBに達することから、「TeraStation」という愛称が付けられている。

 この世界は上を見ていけばキリがなく、そして価格も天井知らずになるわけだが、パーソナルNASとしてはおそらく最大級の容量を備えた製品ではないかと思う。なお、1月26日付で1.6TBモデルも追加された。

 2番目の特徴は、1TBを構成する4台のドライブを利用して、様々な構成が可能であることだ。デフォルト設定は、4台のドライブがそれぞれShare、Share2、Share3、Share4の4つの250GBボリュームとして、ネットワーク上に公開される(通常モード)。

 このほか、4台のドライブを1つの論理ボリュームとして公開されるスパニングモード、4台のドライブを2台ずつのペアにして、それぞれミラーリングすることでデータの保護を図るRAID 1モード、そして4台のHDDに分散して冗長情報(パリティ)を書き込むことで、容量とデータ保護の両立を図るRAID 5モードをサポートしており、用途に合わせて構成を変更することが可能だ。

 スパニングモードは、いわゆるJBOD(Just a Bunch Of Disks)といわれるもの。メリットは1TBの空間が丸ごと利用でき、データ保護のために無駄になる容量がないことだが、逆に言えば冗長性がない。ストライピング(RAID 0)と異なり、データを4台のドライブに分散させて書き込むわけではないので、性能的な向上も期待できない。

 理屈的には、ストライピングよりスパニングの方が、ドライブが1台故障した際のデータの復旧はしやすいはずだ。しかし、特にそのためのツールや情報が公開されていないことを考えれば、基本的にドライブが1台でも故障したら“1TB丸ごとおしまい”、つまりストライピングと同じ、と考えた方が良いだろう。

 JBODには、容量の異なるドライブを1つの論理ボリュームに寄せ集められる、というメリットもあるのだが、本製品のように同容量のドライブで構成された製品にはその恩恵はない。個人的にはあまりお勧めではないモードだ。

 ミラーリングを行なうRAID 1モードは、同じデータを同時に2台のドライブに書き込むため、1台ドライブが故障しても、データは失われずに済む。読み出しは2台から分散させて読み出すことも可能で、若干の性能向上が期待できるが、2台に書き込む関係上、後述のRAID 5ほどではないが、書き込み速度は遅くなる。それより大きな問題は、容量が半分になってしまうことで、TeraStationもRAID 1にしてしまうと“TeraStation 2分の1 ”となる。

 なお、TeraStationでRAID 1モードにすると、250GBのボリュームが2つ(ShareとShare2)ネットワーク上に公開されるが、この2つのボリュームでストライピングを行なうRAID 10はサポートされていない。RAID 10のサポートがあれば、性能向上と同時に500GBのボリュームを扱えるようになるので、この点は残念だ。

 RAID 5モードは、パリティを4台のHDDに分散させて記録することで、RAIDボリュームを構成する4台のうち、1台が故障してもデータを失わずに済む動作モード。パーソナル向けのNASで、RAID 5をサポートしたのは本機が初めてかもしれない。

 パリティを記録する関係で、ドライブ1台分の容量が失われ、利用可能な容量は750GBとなるが、得られる冗長性と容量のバランスがとれたモードといえるだろう。個人的にはTeraStationを利用するなら、このモードだろうという気がする。

 RAID 5は、書き込み時にパリティを計算し、さらにそのデータを4台のドライブに書き込む、というオーバーヘッドが加わるため、書き込み速度はどうしても遅くなる。読み出しは4台のドライブから並列に読み出せるため、理論上は性能向上が期待できるのだが、実際の製品でどれくらいのパフォーマンスが得られるのか注目される。

 3番目の特徴は、Gigabit Ethernet(GbE)への対応だ。GbEに対応したパーソナルNASはすでに製品化されており、もはや目新しいものではなくなっている。が、本機のGbEインターフェイスは、1度に転送するデータサイズ(フレームサイズ)を拡張することでプロトコルオーバーヘッドを軽減し、高性能化を図るジャンボフレームに対応している。どの程度スループットが改善されるのかが気になるところだ。

●データの金庫番

 さて、製品としてのHD-H1.0TGL/R5だが、いわゆるキューブ型PCの奥行きを詰めたような、ちょっとズングリとしたフォルムだ。重量は約7.2Kgと思っていたより重く、持ち手がないこととあいまって、箱から取り出す時に落としそうになってしまった。

 前面パネルのデザインはまるで金庫を連想させるもの。本製品のキャッチフレーズが「大切なデータの金庫番」に合わせたものだろう。やはり金庫というからには、冗長性を持たせたRAID構成で使うのが本筋なのだと思われる。

本機のフロントパネルは、まさに金庫のイメージ 本機の背面。電源に加え、UPS用のシリアルポート、GbEポート、USBポートが並ぶ

 内部は、バッファローのパーソナルNAS製品ではおなじみの組み込み用PowerPCプロセッサMPC8241を中心としたもの。これにNEC製のUSB 2.0ホストコントローラ、RealTek製のGbEコントローラチップ、ITE Tech製のATA133コントローラ等が接続されている。USBポートは本機の前面と背面にそれぞれ2ポートずつあり、外付けHDDあるいはプリンタを接続することが可能だ。
Freescale(旧Motorola)製のMPC8241を用いたマザーボード

 ドライブ部は、4台まとめてフレームに取り付けられている。試用した製品にはWestern Digitalのドライブが用いられており、スピンアップやスピンダウンの音はほとんど気にならなかった。

 冷却ファンは、ドライブの後ろに1つと、電源ユニット(PC用のSFX電源)に1つの計2つ。いずれも低騒音でうるさくはない。

 本機がユニークなのは、ドライブを交換する手順がマニュアルに明記されていること。上述の通り、本機では冗長性を持ったRAID 1とRAID 5がサポートされており、故障が生じてもデータを失わないで済む。だが、故障したドライブをただちに交換しないと、その間データは極めて危険な状態にさらされる。そこでユーザーの手元で交換可能にしてあるようだ。なお、交換はバッファロー製の内蔵HDDを使用する場合のみ保証されている。

 本機の場合、OSを再インストールする手段は提供されていないから、OSの保全はRAIDの冗長性に委ねられている。今回は試すことができなかったが、交換すると自動的にRAIDボリュームがリビルドされるものと考えられる。

 したがって、RAID 1あるいはRAID 5モード以外では、ドライブの交換はできない。明記されていないが、同時に交換できるのは1台のみではないかと思われる。2台同時に故障するとは思いにくいし、この仕様で問題はないだろう。

 実際の利用だが、これまでのバッファロー製のパーソナルNASと同様、設定用のユーティリティが付属する。DHCPサーバが存在するネットワーク上の場合、ユーティリティがほぼ自動で基本的な設定を行なう。ユーティリティが見つけた本機のIPアドレスを利用して、Webベースの設定ページを開くことが可能だ。

 セキュリティやユーザー設定に加え、動作モードの変更、ジャンボフレームの設定等はこのWebベースの設定ページから行なう。難点はRAID構成を選択した場合、ドライブのチェック(とおそらくOSの再配置)に4〜5時間かかることだが、そうそう頻繁に行なう作業でもないから、これも大きな問題ではないだろう。

●ジャンボフレームの利用でより高速化するファイル転送

 性能はというと、こちらは微妙なところ。ただし、決して性能が悪いというわけではない。フルに性能を発揮させるには、GbEを使い、ジャンボフレームの設定を行なうことが必要なようだ。グラフ1は、RAID 5、RAID 1、スパニング、通常の各動作モードで、ジャンボフレームの設定を変えてFDBenchを実行した結果だ。

 今回用いた機材(表1)では、設定可能なジャンボフレームのサイズが、TeraStation側が4,100Byteと7,418Byte、クライアントPC側が4,088Byte、9,014Byte、16,128Byte、ハブが最大9,500Byteとなっている。フレームサイズは機器同士のネゴシエーションで決定されるので、TeraStationに7,418Byte、クライアントPCに9,014Byte以上を設定した時が最大のフレームサイズ(7,418Byte)になると考えられる。

【表1:テスト環境】
  GbEクライアント Ethernetクライアント
マザーボード Intel D875PBZ Intel D915GUX
CPU Pentium 4 3.20GHz Pentium 4 560(3.60GHz)
メモリ DDR400 1GB DDR2-533 1GB
HDD Maxtor 6Y160P0 HDS722580VLSA80
ビデオカード GeForce PCX5900XT チップセット内蔵
LAN Intel PRO/1000 CT(LOM) Intel PRO/100 VE(LOM)
GbEスイッチングハブ PLANEX FXG-08IM

 ここではこの設定に加え、フレームサイズを最大4,088Byteにした時(TeraStationを4,100Byte、クライアントPCを4,088Byteに設定)のスコアもとってみた。なお、比較用に、筆者が使用中のパーソナルNAS、アイ・オー・データの「HDL-250U」のスコアと、クライアントにEthernetベースのPCを用いた場合のスコアを用意した。

【表2:FDBench結果】
ジャンボフレームの設定 ReadWrite Read Write Random Read Random Write Copy 2K 32K 256K Variable
RAID 5 デフォルト(1,518Byte)/なし 11670 16505 7620 15419 7138 5234 211 2261 7796 10670
4,100Byte/4,088Byte 16197 22674 12457 18882 10777 7228 209 2438 10342 15925
7,418Byte/9,014Byte 17373 24088 13622 20225 11557 7771 206 2370 10922 17586
RAID 1 デフォルト(1,518Byte)/なし 11937 16261 8211 15274 8001 5216 212 2278 7758 10616
4,100Byte/4,088Byte 17479 22594 15204 18882 13238 7303 207 2425 10326 16255
7,418Byte/9,014Byte 18587 24088 16339 20039 13882 7802 207 2453 10990 17558
スパニングモード デフォルト(1,518Byte)/なし 12248 16381 8867 15419 8326 5230 214 2291 7785 10632
4,100Byte/4,088Byte 17864 22515 16060 18882 14000 7299 209 2428 10326 16233
7,418Byte/9,014Byte 19217 22831 18564 20161 15311 7602 208 2440 10137 17623
通常モード
(セパレートドライブ
デフォルト(1,518Byte)/なし 12263 16381 8891 15454 8326 5178 211 2220 7667 10615
4,100Byte/4,088Byte 17811 22362 16217 18882 14062 7314 211 2447 10342 16257
7,418Byte/9,014Byte 19231 23151 18460 20039 15274 7595 207 2438 10122 17612
比較用 HDL-250U(Ethernet) 7302 7201 8691 5887 7429 3579 122 1382 5111 7580
Ethernetクライアント(RAID 5) 7989 9810 6579 9387 6182 5431 559 4652 7884 8631

【グラフ1:FDBench結果】

 結果を簡単に言えば、良くも悪くも動作モードの違いによる性能の差は大きくない。RAID 5で書き込みが若干遅いのは明らかだが、それほど極端に違うわけではない。逆に、RAID 5にしてもあまり読み出し速度は速くなっていない。この点は改善を期待したいところだが、確かにバッファローのWebサイトでも、本機の特徴として謳われているのは、

 ・障害に強い! データ保護機能搭載
 ・4つのモードで1TBをフル活用
 ・安定動作を追及したハードウェア
 ・最新のネットワーク機能
 ・使いやすさを実現した多彩な機能

の5点で“RAID 5で高性能”とは一言も書かれていない。特にクライアントがEthernetだと、シングルドライブのHDL-250Uと大差ない性能だ。とはいえGbEを使うと、読み出し性能がかなり向上する。さらにジャンボフレームを設定すると、より高速化する。しかも、フレームサイズの変更にも比較的敏感に反応している。

 こうした傾向は表3に示したファイルコピーのテストでもほぼ踏襲されており、ジャンボフレームの効果は顕著だ。ジャンボフレームを有効に活用すると2倍近い書き込み性能が期待できる。たとえばローカルでキャプチャしたTV番組を本機に書き込むのに、2分かかっていたのが1分になる、というのはかなり大きな変化だ。

【表3:ファイルコピー(約860MBのMPEG2ファイル)】
ジャンボフレーム設定
7,418Byte/9,014Byte
Local → Remote Remote → Local
TeraStationへ書き込み TeraStationから読み出し
RAID 5 1分25秒 1分03秒
RAID 1 1分10秒 1分00秒
スパニングモード 1分02秒 58秒
セパレートドライブ 1分02秒 59秒
比較用 ジャンボフレームオフ(RAID 5) 2分17秒 1分13秒
Ethernetクライアント(RAID 5) 2分25秒 1分47秒
HDL-250U 1分59秒 2分08秒

 ネットワーク環境をGbEに移行したユーザーには、特にメリットの多い製品に違いない。ジャンボフレームの利用には、PC側に対応したNICが必要になるほか、ハブも対応した製品を用いる必要があるが、最近のスイッチングハブの多くはジャンボフレームに対応しているようだ。

●追加機能の実現に期待

 最後に価格だが、約10万円という金額は決して安くはない。が、現在250GBのパーソナルNAS、例えば筆者が使っているHDL-250Uなどが3万円前後であることを考えれば、その4倍の容量を持つ本機のByte単価は悪くないことが分かる。

 また考え方を変えて、250GBのパーソナルNASの3台分の価格と容量に、1万円の追加投資で冗長性が加わる、と考えても決して悪くない。

 TBクラスの容量の使い道、特にパーソナルな用途となると、ビデオ関連が大きなウエイトを占めると思われる。今後はUSBポートに外付けTVチューナーBOXを接続しての直接録画や、本機に蓄積したビデオファイルのLinkTheaterからのネットワーク経由での再生もサポートされる予定となっている。こうした機能が実現されれば、さらに魅力は高まることだろう。

□関連記事
【1月27日】バッファロー、容量1.6TBの「TeraStation」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0127/buffalo1.htm
【2004年11月5日】バッファロー、最大1TBのRAID対応NAS
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1105/buffalo2.htm

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(2005年1月28日)

[Reported by 元麻布春男]


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