●RAID 5対応の「LANDISK Tera」
PCの低価格化にともなって、PC周辺機器も低価格化が進んでいるが、そんな中にあって周辺機器としては群を抜いて高価なのが、大容量のネットワーク接続型ストレージ(NAS)だ。 市場の主流であるRAID 5をサポートし、1TB級の容量を持つNASの実売価格は10万円弱ということで、下手なPCよりよほど高価だ。が、頻繁に利用するデータが、決まった場所にいつもあり、それがある程度の冗長性で保護されているというのは、実にありがたい。特に複数のPCを利用しているユーザーなら、その便利さは身に染みるのではないだろうか。 今回紹介する「HDL-GT」シリーズは、アイ・オー・データ機器が満を持してリリースしたRAID 5サポートのSOHO/個人向けNAS製品。容量は1TB(250GB×4)と2TB(500GB×4)の2種類があり、「LANDISK Tera」の愛称がつけられている。同社は、以前からRAIDをサポートしたNASを販売していたが、2台によるミラーリングタイプで、RAID 5サポートモデルはこれが初めてである。 HDL-GTシリーズの最大の特徴は、HDDをカートリッジの形で実装すること。カートリッジ式にすることで、HDDの交換は工具が不要で、本体前面から容易にできるようになった。そればかりか、カートリッジをロックするメカニズムを利用して、HDDのホットスワップを実現している(RAID 1もしくはRAID 5構成時)。このクラスのNASでホットスワップをサポートしたのは、本機が初めてかもしれない。カートリッジにより専用HDD化することで、HDDの消費電力や品質の管理も容易になる。
一方、HDDを専用カートリッジにすることのデメリットは、ドライブ単価がどうしても上昇してしまうことだ。本稿執筆時点において、アイ・オーの直販サイト「ioPLAZA」における販売価格は250GBタイプが15,800円、500GBが43,800円となっており、割高さは否めない。アイ・オーでは、このカートリッジを「Relational HD」と呼ぶとともに、PCの5インチベイに内蔵させるアダプタ(RHD-IN/SA、予価4,980円)や、外付けHDDとして利用可能なエンクロージャーを提供することで用途を広げ、割高さの解消を図るとしている。 今回試用したのは、250GBタイプのカートリッジドライブを4基内蔵した1TBモデル(HDL-GT1.0)。カートリッジドライブを4基内蔵しているとは思えないほど外観はコンパクトだ。4台のドライブは工場出荷時に1つのRAID 5ボリュームとして初期設定されている(利用可能容量約750GB)。 前面パネルにはキーロックがあり、カートリッジを交換する際は、まずこのキーロックを解除した後、カートリッジ毎のロックレバー(LEDを兼ねる)を解除する必要がある。また、前面パネルに用意されたUSBポートは、直上に用意されたコピーボタンを押すことで、このポートに挿されたUSBメモリなどのデータをNAS上のフォルダにコピーする機能を持つ(この機能を解除して、HDDの増設用に用いることもできる)。
背面で目立つのは2つの冷却ファン。小さい方は内蔵の電源ユニットの冷却用で、大きな方がカートリッジベイの冷却用だ。実際に使ってみたが、いずれのファンも騒音が気になるということはなかった。ほかにネットワーク接続用のGigabit Ethernetポート、USBポート(増設HDDおよびプリンタ接続用、プリンタが接続できるのはこの背面のUSBポートのみ)、HDD増設用のeSATAポート(×2)が並ぶ。USBに比べてeSATAポートは高速なだけでなく、ここに接続したドライブと本機の間でミラーリングペアを構成することができる。 内蔵するCPUは、MarvellのOrion(88F5182)プロセッサ。Gigabit EthernetのPHYチップやシリアルATAコントローラもMarvell製だ。ソフトウェアについては「本製品ではシステム内部にてGPL対象ソフトを利用しております」と記述されていること、過去の実績、ソースコードが同社サポートから送料実費によりCD-ROMで入手可能であることなどから考えて、Linuxベースと見て間違いないだろう。
もちろんNASとして使う場合、ソフトウェアが何かを気にする必要はない。特にDHCPサーバーのある環境であれば、LANケーブルをつないで、電源を入れれば、基本的に動作する。設定はすべてブラウザベースで行なうことができるし、添付のユーティリティ(Magic Finder)がネットワーク上の本機を見つけてくれるから、ブラウザにIPアドレスを入力する必要もない。ブラウザの設定画面も、多くの場合オプションが一覧から選択できるため、同種のものの中でも分かりやすい部類だと思う。本機のLEDは、かなり目立つように光るが、設定で明るさを変えられるなど、細かなところまで配慮されている。 NASとしての機能として特に変わったところはない。初期設定のRAID 5に加えて、RAID 0/1/0+1が選べること、DLNA準拠のメディアサーバー機能を持つこと(無効にすることも可能)、UTF-8をサポートしておりWindowsとMacの両方から日本語フォルダ名/ファイル名が使えることなど、基本的な機能はすべて押さえてある印象だ。
もちろん、eSATAやUSB接続のHDDに本機のデータを自動バックアップしたり、ネットワーク上のPCの共有フォルダを本機にバックアップしたり、といった機能も備えている。本機独自の機能としては、バックグラウンドで定期的に不良セクタをスキャンし、可能なら修復を行なうアクティブリペア機能も搭載する。 最近のGigabit Ethernetサポート機器の例に漏れず、本機もジャンボフレームをサポートしており、最大9KBまでのフレームサイズを設定できる。また、パワーマネージメント機能により一定時間アクセスがない場合、HDDのスピンドルを停止させることが可能で、デフォルトで10分に設定されている(ただし冷却ファンは停止しない)。クライアントからのアクセスがあると自動的にスピンアップするのだが、RAID 5設定の場合、1台ずつ順にスピンアップしていく(電源に負荷をかけないよう)ため、アクセス可能になるまで若干時間がかかることに注意が必要だ。 ●ベンチマーク結果 さて、本機の性能だが、前回と同じテストを行なった(念のため、パワーマネージメントは無効にしてある)。その結果だが、FDBenchの結果が全般に振るわないのに対し、ファイルコピーではそれほど悪くない結果となった。個人がNASを利用する場合、単純にファイルをコピーする用途が多いと考えれば、性能は悪くないといって良いだろう。また、テストしている間、動作に不安を感じることは全くなかった。
【表1】クライアントPCの構成
【表2】ベンチマーク結果(パワーマネージメント無効)
ホットスワップ可能なカートリッジ式のHDD、eSATAを含めた豊富な拡張オプションなど、本機はなかなかの意欲作だ。信頼性を確保する機能として、S.M.A.R.Tでエラーが報告されたり、一定回数のエラーが生じたドライブをLEDで知らせる機能も備える。カートリッジシステムの将来性については現時点では分からない部分もあるが、少なくとも4台まとめてRAID機能をサポートしたNASとして購入した場合は、決して割高というわけではないし、やはりメンテナンスは楽だ。小型で設置の容易な本体も魅力の1つである。 □アイ・オー・データ機器のホームページ (2006年10月23日) [Reported by 元麻布春男]
【PC Watchホームページ】
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