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Vistaがもたらす10インチGUIが待ち遠しい「VAIO type U」




 パソコンでやりたいことは、人それぞれで違うし、その時々でも異なる。そのそれぞれ時々に柔軟に対応できるからこそ、汎用機としてのパソコンの意義がある。だから、いつでもどこでも常に携帯し、ぼくらのわがままに応えてくれるパソコンが欲しい。でも、それには、ハードウェアだけではなく、ソフトウェアの進化も求められる。

●カスタマイズさえ終われば何とかなる

 500cc入りのペットボトルの重量は約500g。520gのVAIO type Uとあまり変わらない。軽くはないが、重くもない。ただし、これでは3.5時間しかバッテリが持たないので話にならない。そこで倍の容量のLサイズバッテリをつけて100gを上乗せすると620g。けっこうズシリとくるが、これでバッテリ運用時間は7時間になる。

 Lサイズバッテリをつけた状態で標準添付のキャリングポーチに入れ、腰のベルトに固定する。さすがに身につけているのを忘れることはできない。パソコンを抱えているのだという圧倒的な存在感を常に腰に感じ続けなければならない。

 新しいパソコンが手元に届いたら、まず、自分好みの状態にカスタマイズする。必要なソフトウェアをインストールしたり、それぞれのソフトを設定したりといった作業だ。たとえば、VAIO type Uには、指紋認証機構があり、Windowsログオンやスタンバイからの復帰、セキュリティに守られたWebページでのパスワード入力といった、さまざまなタイミングで指紋認証を行なえる。センサーはディスプレイの左上にレイアウトされているので、両手で本体を持った格好なら、左手の親指でセンサーをサッとなぞるだけで、認証が完了するのはとても便利だ。

 これらをひっくるめて設定しようと、Windowsを起動し、スタートボタンをクリックしたが、もうその先に進めない。スタートメニューからプログラムを起動するまではなんとかなっても、起動後のメニューやダイアログボックスの文字が小さすぎて読めないのだ。

 ディスプレイの解像度は1,024×600ドットで、XGAよりも縦方向が168ピクセル短い。これを4.5型液晶に表示する。たぶん、若くて目の衰えを感じていない方なら平気なのだろうが、ぼくにはつらかった。初めて手にする新しいパソコンでは、どんなソフトがプリインストールされていて、何がどのように機能するのかわからないので、余計につらい。でも、完璧にカスタマイズしておけば、何がどこにあって、どこをどうすれば何が起こるかを把握し、自在に操れるようになるはずだ。

 ディスプレイの右側にはズームボタンも用意されている。このボタンを押せば、1倍-1.5倍-2倍-2.5倍-3倍をトグルすることができる。ズーム時に表示されるアイコンをクリックすることで、いわゆる手のひらで画面をつかんでスクロールできるハンドカーソルモードと通常のポインティングデバイス操作ができるマウスカーソルモードを切り替えることもできる。でも、これはデスクトップ全体の様子が把握しづらく緊急用と割り切った方がよさそうだ。

 目をショボショボさせ、泣きそうになりながらも、本体をポートリプリケーターに置いて作業を始めた。ポートリプリケーターには、USB 2.0×3、Ethernet、IEEE 1394、ミニD-Sub15ピン、A/V OUTコネクタ、DC-INコネクタが装備されている。端子の数に比較的余裕があるので、調子に乗ってフルキーボード、マウス、Ethernet、20型ディスプレイ、DCアダプタを接続した。VAIOをポートリプリケーターの上にのせるだけで、これらの周辺機器がすべて使えるようになる。

 本体のディスプレイは1,024×600だが、本体側のディスプレイを消し、外部ディスプレイにつないだときには、そちらの仕様に切り替えての出力ができる。最初、この機能に気がつかず、本体ディスプレイのミラー表示が4:3の液晶に表示され、縮小機能によってつぶれた文字に閉口してしまったが、わかってしまえば、実に快適な表示が行なえる。

 この状態で使えば、もう普通のパソコンと変わらない。大きなディスプレイで表示させて、初めて知るVAIO type Uの詳細は新鮮だった。スタートメニューに本体の電子マニュアルのPDFを見つけ、それは、念のためにデスクトップパソコンにコピーしておいた。

●セキュリティは指紋で確保

 指紋の管理は添付ユーティリティのProtector Suite QLを使って行なう。このユーティリティを使って両手10本の指を個別に登録することができる。画面には両手のイラストが表示され、登録したい指をクリックして、3回ずつ指紋をスキャンする。本当はセンサーに対して直線上にまっすぐ手前に向かってスキャンするべきなのだが、認識時のことを考え、左手の親指だけは、斜め気味にスキャンしておいた。両手で本体を抱えて左手親指をスキャンするときには、どうしても斜めになりがちだからだ。認識率は良好で、時には失敗するものの、以前体験した携帯電話やパソコンの指紋認証機構に比べればずいぶん進化しているという印象を持った。

 このユーティリティで指紋を登録しておけば、パワーオンパスワード、HDDパスワード、Windowsログオン、Webページなどにおけるパスワード入力を指紋認証に代えられるようになる。また、最大2GBまで設定できるMy Safeフォルダと呼ばれる領域を確保しておき、その領域に保存するファイルを暗号化、読み書き時には認証を求めるようにすることもできる。たかだか数十GBとはいえ、個人情報満載のパソコンになるのだ。セキュリティはきちんと確保すべきだろう。紛失したり、盗難に遭ったような場合には、関係者に訴訟されることだってあるかもしれない。

 さらに、Protector Suite QLは、アプリケーションランチャーの機能も提供する。これは、特定の指とよく使うアプリケーションを関連付け、センサーを指でなぞることで特定のアプリケーションを起動するための機能だ。

 ちなみに、ディスプレイ左下のボタンを押せばVAIOタッチランチャーが起動し、いわゆる10フィートならぬ、10インチGUIのランチャーが表示されるが、指紋によるラウンチをうまく使えば、タッチランチャーやスタートメニューのお世話になることなく、必要なアプリケーションを起動することができる。

●スライド式キーボードは緊急用

 指紋の登録後、ネットワーク経由で、常用アプリケーションをどんどん入れていった。必要ならば、USBで光ドライブを接続し、そこからインストールしてもいい。Outlookを含むOfficeの各ソフト、今回は海外でも使う予定でいるので、海外の地図ソフトも入れた。デジカメ画像のビューアーとしてMuseViewerPro、テキストエディタの秀丸、iTunes、百科事典のEncartaなどもインストールした。これらは、極端に言えば目をつぶっていても操作ができるくらいに慣れ親しんだアプリケーションだ。

 アプリケーションをインストールしたあと、ファイル拡張子とアプリケーションの関連付けなどを若干変更してポートリプリケーターから本体を抜き去る。これでさっきまでとは使い勝手が全然違う。今回は、スライド式キーボードが装備されたことがセールスポイントの1つとなっているが、通常の作業のほとんどは、キーボードを使う必要がない。もちろん、メールを書いたり、検索ページでキーワードを入力するためには、キーボードがあった方がいいが、この液晶ディスプレイでの読み書き作業は、個人的にはやりたくないと感じた。

 スライド式のキーボードは、クリック感に乏しく、キーをきちんと押せたかどうかが今1つわかりにくい。配列はQWERTY準拠だが、格子状にキーが並びブラインドでの打鍵は難しい。だから、押せたかどうかを確認するために、常に画面とキーボードの間で視線を行き来させる必要がある。そういう意味では緊急用と割り切った方がよさそうだ。短い文字列の入力が必要なら手書き認識で入れる方がカンタンに感じることもある。

 いずれにしても、ブラウザはもちろん、せっかくインストールした百科事典など、とにかく文字を読むという作業は、このマシンでは閉口する。もちろん、これには年齢や視力による個人差があるだろう。購入を検討しているなら、とにかく実物を手にとって画面から受ける印象を確認してほしいと思う。

 旅行中には、GPSも試してみた。オプションとしてBluetooth接続のGPSユニット「VGP-BGU1」も用意されているが、今回は間に合わず、手持ちのものをUSBケーブルで接続して使った。バスや徒歩での移動中、本体の電源を入れっぱなしにして、移動した軌跡を記録していくのだが、これはなかなか楽しい。ストリートの名前を確認するのもつらい地図の視認性には閉口するが、あとで、そのデータを別のパソコンに転送したり、ディスプレイを接続して広い画面で見れば問題ない。こうした汎用的な使い方ができるという点で、やっぱり、フルスペックのWindows XP搭載というのは嬉しい。

●ノート、デジカメ、プレーヤーを置き換えられるか

 静止画や動画の撮影、音楽や動画の再生など、フルスクリーンを前提にしてこのマシンを使う分にはとても快適だ。でも、撮影にはデジカメがあるし、再生にはiPodやVoToLなどのデジタルメディアプレーヤーがある。常にベルトにつけて携帯しているデジカメはすでに型落ちとなっている、155gのPanasonic「Lumix DMC-FX8」だし、最近持ち歩いているメディアプレーヤーはNECの「VoToL」で、これが188g。

 VAIO type Uは、その両方の機能を兼ね備えている。ただ、立ったまま15分間電車に乗り、動画や音楽などのコンテンツを楽しむというならVoToLの方が手軽だし、街を歩いていてちょっと気になる光景を撮影したいと思ったときには、サッと取り出せるのはFX8だ。すでに、このマシンで読み書きはしたくないと書いたが、日常の生活を読み書きなしですませるわけにはいかないので、結局は、常用ノートパソコンの「Let's note R4」はカバンの中に入ったままだ。結局VoToLとFX8の合計重量343gとVAIO type Uの620gの差分277g分のアドバンテージが、どこにあるかを考えてみるに、その結論は実に微妙だ。

 VAIO type Uは、ハードウェアとして、本当によくできている。欲を言えば、重量はそのままでディスプレイのサイズをもう少し大きくして薄型化を図ることができれば、キーボードレイアウトにも余裕が出るだろうし、あわよくばSDメモリーカードスロットなども装備できるかもしれない。

 悪いのはWindows XPの融通のきかなさであり、XGA表示を前提とした各ウェブサイトのデザインだ。ユーザーの使っている表示デバイスの能力や、視力の個人差に合わせて柔軟に対応できるようになっていれば、ここまで使いにくくはなかろう。たとえば、200gくらいのミニキーボードをカバンの中に忍ばせておき、大量の文字入力が必要な場合には、それを接続するようにすれば、テキスト入力に大きなフォントを指定することで、約1,000gのLet's note R4を代替できるかもしれない。むしろ、本体のキーボードを廃止して軽量化、オプションでコンパクトなBluetoothキーボードを提供するような方法だってありだと思う。

 期待すべきはWindows Vistaだ。Vistaでは、カスタムDPIの仕様がXPと異なり、画面の解像度とディスプレイサイズによって柔軟にDPI値を変更できる。変更に伴って、メニューやツールバーのボタン、ダイアログボックスなども値に応じてスケーリングされる。Vistaを想定したアプリケーションのダイアログボックスではスクロールバーも使えるので、はみ出した部分にアクセスできなくて困ることもない。XP世代のアプリケーションでは、DPI値を変更したことで、いろいろな不具合が発生してしまい、実用にならない。

 スケーリングによって、デスクトップに表示できる情報量は減少してしまうが、使い勝手は大幅に向上するはずだ。実際、別のパソコンでWindows Vistaのβ2に、the 2007 Microsoft Office Systemのβ2をインストールし、200%スケールのDPI値に設定してみると、その様子がよくわかる。冒頭の画像は、Windows Vistaで、XGA解像度を200%スケールした状態のデスクトップにおける、Microsoft Word 2007での編集画面だ。これを見れば、フルスペックのWindowsが、まさに10インチGUIに生まれ変わり、実用的に使えることがよくわかる。

 専用に10インチGUIを想定して設計されたアプリケーションを使うのはカンタンだ。でも、それでは汎用機としてのパソコンを使う意義が薄らいでしまう。いつも使っているあのアプリケーションを、そのときのデバイスに応じて切り替えたいのだ。今回は、時間の関係でVAIO type UにVistaを入れるところまではできなかったが、それができていれば、少し印象が違っていたかもしれない。機会があれば、ぜひ、試してみたいものだ。

□VAIO type Uの製品情報
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/UX1/
□関連記事
【5月18日】【Hothot】2年ぶりに登場したソニーの超小型PC「VAIO type U VGN-UX50」
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【5月24日】マイクロソフト、次期Officeのβ2を提供開始
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【5月16日】ソニー、スライド式キーボードを備えた「VAIO type U」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0516/sony1.htm

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(2006年6月16日)

[Reported by 山田祥平]


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