個人的にもずいぶん早期からのユーザーだが、カーナビは確かに便利だ。ただ、高いとはいえないモニタ解像度と、リモコンで使うGUIにはいらだちを感じることも少なくない。しかも、クルマに乗っているときにしか使えないという宿命も背負っている。その一方で、PCの地図ソフトがGPSをサポートするようになり、実用性も備えてきた。そこで、今回は、VAIO Type Uと同時に発表されたオプションのBluetooth GPSユニットを試してみた。 ●プロアトラスSV2でVAIO用GPSを試す 米国でクルマを運転するようになった当時、もっとも驚いたのは、住所がわかれば、ほとんどの場合、そこにたどりつけるという合理性だった。米国の住所は「nnnn ストリートネーム, 市名, 州名」の形式で表記される。 たとえば、以前、この連載で紹介したことのあるシリコンバレー発祥地の住所は「367 Addison Ave. Palo Alto, CA.」となっている。これは、カリフォルニア州パロアルト市にあるアディソンアベニューの367番地という意味だ。 この場合、パロアルトにはアディソンアベニューは1つしかない。そこから367番地を探せばそれでいい。どんなに短くても、市をいくつもまたぐような長い通りでも、通りごとに、順に番地がふられている。おおむね建物1つが1つの番地で、通りを隔てると、10桁以下は飛び番地となり、100桁部分が繰り上がる。だから、現在地の番地をみると、目的地まではあと何ブロックあるのかも想像できるのだ。 通りには通常両側に建物が並んでいるが、その場合は、片方が偶数、片方が奇数だ。だから、片方の建物だけに注目して、番地が減っているか増えているかを確認しながら目的地に近づいていけばいい。もちろん、××通りと○○通りの交差点といった表記の慣習ももあり、こちらはこちらで便利だ。いずれの場合も、通りの名前を地図で探し、自分の現在地を確かめれば、カーナビなどなくても、迷わずに目的地にたどりつける。 日本ではそうはいかない。○丁目、○番地ともに不規則に並んでいるし、名前がついていない通りも多い。だから住所を入れてピンポイントにサーチができるカーナビや、各種のウェブサイト、そして、地図ソフトはとても便利だ。 VAIO Type Uの関連製品として発表されたBluetooth GPSユニット「VGP-BGU1」は、約45×90×20mm(幅×高さ×奥行)、約79gの筐体を持つGPSレシーバーで、VAIOとはBluetoothで通信する。前提となっている地図ソフトは、type U搭載の電子地図ソフト「プロアトラス2006 for VAIO」だ。このソフトは名前を見ると、アルプス社の製品のOEMであることがわかる。 そこで、今回は、このレシーバーと7月に出荷が開始される予定の新製品「プロアトラスSV2」の評価用ベータ版をお借りし、実際の使い勝手を試してみた。なお、評価版は、詳細地図の収録が東京都のみとなっているほかは、製品とほぼ同等であるという。 また、PCとしては、パナソニックのLet's note light R4と、Widnows Vistaのベータ2をインストールしたNECのLaVie Jの両方で試してみた。両機ともにBluetoothを標準搭載していないので、R4ではCFカード型のBluetoothアダプタSocket Communicationsの製品とBlueSoleilスタック、LaVie Jではマイクロソフトのマウス/キーボードセットに添付のUSBドングルと、Vista標準のドライバを使った。 ●PCやスタックを選ばない汎用GPS 地図ソフトをインストール後、まず、Bluetoothユーティリティを使ってレシーバーを発見する。ところが、手元に届いたばかりのレシーバーが、ユーティリティから発見できない。半日ほど悩んだのだが、ふと思って、充電ケーブルを抜いてみたところ、無事に見つかった。レシーバー本体は、付属の電源アダプタから内蔵リチウム電池に充電し、約10時間の使用が可能ということになっているが、充電しながらの利用はできないということだ。これは盲点だった。 無事に発見できたら、これにCOMポートを割り当て、Windowsからはシリアルポートとして通信ができるようにする。認識後、特別なドライバ等を要求されることもない。製品にもCD-ROM等は添付されないという。 ユーティリティによって割り当てられたシリアルポートの番号を確認しておき、プロアトラスSV2の設定画面を開き、そのポートを指定、さらに、詳細オプションを設定する。VAIOの電子マニュアルを見ると、 に設定せよと書いてある。レシーバー本体は設定の変更ができないので、これがそのまま仕様ということになる。 こうして、正しい値を設定し、プロアトラスSV2でGPSナビゲータを動かせば、受信した衛星からの電波を元に現在地が割り出されるようになっている。 レシーバーには本体をパンツのベルトやカバンなどに固定するためのベルトが添付されている。そこで、パンツのベルトに取り付けて、住宅街を10分程度うろうろしてみた。ところが、しばらく歩いてPCの画面を確認すると、何も軌跡が表示されていない。つまり、衛星からの電波を受信できていないのだ。 仕方がないので、ベルトからレシーバーを外し、天空に向けて数分間放置したところ、衛星を捕捉、正確な現在位置が割り出された。その状態でしばらく歩いたところ、うまく追尾されるようなので、今度は胸ポケットに入れてしばらく歩く。それでも大丈夫なようなので、元通り、パンツのベルトに取り付けてみたところ、きちんと追尾する。つまり、最初に衛星を捕捉させることがポイントであるようだ。 また、このレシーバーは、歩行モードを搭載、歩行速度が検出され、速度に合わせて最適な位置検出方式に自動的に切り替わるという。歩く程度の速度というのは、GPS的に、わりと苦手なのだそうだが、その弱点がうまく回避されているということだ。 内蔵デジカメで撮影した写真には位置情報が埋め込まれ、写真を地図にドロップすれば、地図上のその位置に写真が配置される。この機能はとてもおもしろそうだ。 ただし、歩いた軌跡を見ると、道路からは多少ズレが認められる。でも、どの道路を通ったのかはきちんとわかるのであまり気にしないことにした。 ちなみに、今回は、貸出期間中にたまたま出張があり、山形新幹線に乗車する機会があったので、その車内でも試してみた。プロアトラスSV2には、広域地図は東京以外も収録されていたので、位置は正確にわかる。約230キロで走る新幹線の中でも、トンネル内以外ではきちんと位置をトレースすることができていた。 【お詫びと訂正】初出時、VGP-BGU1はモードによって軌跡の色が変わると記載しておりましたが、色は変わりません。お詫びして訂正させていただきます。 ●ヘルスケアソリューションを視野にいれた地図アプリが欲しい。 先日受診した人間ドックの結果が、褒められたものではなかったので、少し、まじめに運動しようと思い、ウォーキングを始めることにした。最初から厳しいルールを課すると三日坊主になることはわかっている。そこで、電車に一度も乗らない日で、雨が降っていなければ40分間歩くと決めた。20分程度で汗が出始め、脂肪が燃え始め、そこからさらに20分歩けば十分だと経験者に聞いたからだ。 40分間だと、歩ける距離は約4キロである。自宅近辺なら、2駅向こうにまでいって戻ってくるという感覚だ。ただ、周辺は、決して道路がわかりやすいとはいえない。せっかくだから散歩も兼ねようと、普段は知らない道を歩いてみようと野心を起こしたら最後、迷路のような道に、自分の居場所を見失ってしまう。街角に頻繁に地図が設置されているわけでもなく、ひたすら歩いて知っている道に出て安堵するということの繰り返しだ。 こういうときにも、GPSがあれば道に迷うこともない。ただ、PCを背負ってのウォーキングというのも現実的ではない。実際、ファンレスのR4を電源オンのままでデイパックの中に入れ、ずっとBluetooth通信をさせながら歩いた軌跡を記録していると、30分もたたないうちに、さわれないほど熱くなる。これが機械によいはずがない。 現在、市販されているハンディGPSは、液晶モニタなどを備え、位置情報を定期的に取得して記録、それを地図ソフトからダウンロードして、歩いた軌跡を確認したりすることができたり、地図を表示してナビゲートなどもできるようだが、それだけのことができるものは価格も高くなってしまう。 個人的には位置情報だけを記録し、あとで一気に転送できるような、インテリジェント歩数計的に使えるものがあったらいいなと思う。もちろん、そのためには、どの地点に何月何日何時何分にいたかを確認できなければならないし、特定の地点から特定の地点までの距離もたちどころにわかるようになっていてほしい。時速も計算できれば文句なしだ。 ヘルスケアが注目され、自分の健康に気を使う世代が、新たなPCの使い方を見いだそうとしている時代ではあるが、ガジェットとしては、そんな用途も視野にいれたソリューションがあればいいなと思う。 いずれにしても、レシーバーとPCの間が無線であるというのはやはり便利だ。すぐにワイヤレスUSBの時代になるといいながら、なかなかそうはなりそうもなく、現実的な解として、Bluetoothは今、いろんな場面で役に立つ。特にGPSのように良好な電波受信のために、PC本体とレシーバーを離して設置したい場合は、無線がありがたい。汎用性があってもUSBケーブルは勘弁だ。 【編集部注】初出時にワールドワイドでの対応と記載しておりましたが、各GPSについては発売された国内のみの対応となります。お詫びして訂正させていただきます。 □VAIO type Uの製品情報
(2006年6月23日)
[Reported by 山田祥平]
【PC Watchホームページ】
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