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CEATEC JAPAN 2005レポート

東芝のCell開発キットや富士通の曲がる電子ペーパーなど

会期:10月4日~8日(10:00~17:00)

会場:幕張メッセ

入場料
一般:1,000円
学生:500円
(事前登録は無料)



 PCとは直接関連しないが、会場には思わず足を止めて見入ってしまうような新技術が目白押しだ。本レポートでは、それらユニークな技術を持つ展示に焦点をあてて紹介する。

●富士通の曲がる電子ペーパー

 富士通は、7月に発表した曲がる電子ペーパーを展示。フィルム基板を使用した極薄の表示デバイスで、曲げることが可能。表示部は赤/青/緑の3枚のパネルを積層しており、カラーフィルタや偏光板が不要なため、反射型LCDより明るく、リフレッシュも不要でちらつきがない。また、曲げたり、指で押しても変色が発生しない。

 電源を切っても表示を維持するメモリ性を持ち、書き換えは従来技術の数百~数万分の1という微弱な電波エネルギーを用い、無線で行なえる。

 試作機の1つはフィルム基板の裏に、アンテナや画像表示関連のチップを積んだプラスチック基板を装着。電源類は一切装備していないが、カラー画像の表示を維持できる。これを電波を発生させる台の上に近づけると、アンテナが受信した電波から微弱な電流が生成され、違う画像に表示が切り替わる。担当員の説明によれば、携帯電話の電波を利用して、画像を書き換えることもできるそうだ。

 もう1つデモされているのは、先のプラスチック基板の部分を1チップ化し、クレジットカードサイズ大に収めてしまったもの。表示部は単色で、6桁の数字を表示しており、やはり台の上に近づけると、数字が変化する。表示部は簡略化されているが、この薄さには驚く。ポイントカードなどを想定して作ったものという。

 前述のもので、書き換えに3秒程度かかることから、動画の表示は難しいが、同社では、広告、時刻表、新聞、POPなどの用途への応用を目指している。製品化は2006年度中。

曲がる電子ペーパー 曲がるのも大きな特徴だが、微弱な電流のみで画像の書き換えができるのも特徴。電波が出る台に乗せると、3秒程度で画像が書き換わる
電源がなくとも、画像を保持できるので、この試作機には電源が搭載されていない こちらはカードサイズ大に収めた例

 富士通が開発した、手の平の静脈パターンによる個人認証技術は、すでに一部の銀行のATMなどで実用化されているが、今回体積を1/4に小型化した読み取り装置を参考展示している。

 小型化により、取り付け自由度が増したほか、傾き/位置/角度の自動補正技術の追加により、手の平を置く台が不要となった。

 また、読み取り装置は従来品だが、FeliCa機能を搭載した携帯電話を併用したソリューションも展示されている。まず、静脈を読み取り、そのデータを専用のiアプリを使って、携帯電話内に保存。以降は、ATM利用時に、手の平をかざして、携帯電話を置いておくだけ(ただし、iアプリの起動が必要)で、キャッシュカードを使わずに、現金の引き出しなどができる。携帯電話を併用することで、静脈パターンのデータを銀行のサーバーなどに記録する必要がなくなる。

 このほか、初展示ではないが、携帯電話用の燃料電池も来場者の注目を集めている。

手の平静脈センサー。右が新開発の小型版 静脈パターンを読み取りしているところ。実際にはもう少し高い解像度で読み取っているが、読み取り結果はそのまま表示すると不気味になってしまうので、やや簡易化して表示しているという
FeliCa対応iモード端末を組み合わせた例。まず、一度静脈パターンを読み取り、iアプリで携帯電話内に登録する ATM利用時はキャッシュカードを使うことなく、携帯電話と手の平だけを使って、取引ができる NTTドコモと共同開発した携帯電話用燃料電池

□関連記事
【7月13日】富士通、曲がるカラー電子ペーパーを開発
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0713/fujitsu.htm
【7月6日】ドコモ、「従来の3倍」に性能向上したFOMA用燃料電池(ケータイ)
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/24661.html
【2003年3月31日】富士通、手をかざすだけで個人を識別する認証技術を開発
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0331/fujitsu.htm

●東芝はCell開発キットをデモ

 電子部品・デバイス&装置ステージエリアにある東芝ブースでは、2006年4月発売予定のCell開発リファレンスセットを早速展示/デモしている。発表時は、マザーボードだけが公開されていたが、会場ではサイドパネルにアクリル板を貼って、中が見える形で実機が動いている。

 Cell、コントローラチップ、メモリには、ヒートシンクが実装されており、Cellのヒートシンクはヒートパイプも使っているがケースファンを除いてファンはなく、動作クロックから考えると、冷却機構は小規模に見えるが、Cellは液冷を利用している。

 ケースの高さは一般的なATXケース程度だが、光学ドライブがマザーボードの横側に位置するため、横幅はATXケースの2倍程度ある。

 デモでは、48個のMPEG-2動画をストリーミングで同時に表示するものなどが行なわれている。

Cell開発リファレンスセットの外観 マザーボード Cell(左)と各種I/O制御用のSuper Companion Chip(右)
実動しているリファレンスセットの内部の模様。ぱっと身はヒートシンクのみの冷却だが、Cellは液冷を使っている 48個のMPEG-2動画を同時ストリーミングするデモ

 このほか、同ブースでは、携帯機器向けの世界最小燃料電池、3D液晶、東芝松下ディスプレイ開発の光ペン入力対応液晶などが展示されている。

ギネスブックにも載ったという世界最小の燃料電池 東芝の実際の製品を燃料電池に対応させたプロトタイプ
3D液晶。写真ではわかりにくいが、丸い枠の中では、魚や水しぶきが浮いて見える 光センサーを液晶パネルに組み込むことで、タッチセンサーなどをつけずに、光ペンや指に反応させされるようにしたシステムオングラス

□関連記事
【9月20日】東芝、Cell開発リファレンスセットを2006年4月発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0920/toshiba.htm
【9月20日】東芝松下ディスプレイ、光ペン入力対応の低温ポリシリコン液晶
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0920/tmdt.htm
【2004年6月24日】東芝、世界最小の携帯電子機器向け燃料電池
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0624/toshiba.htm

●パイオニアの浮き上がる液晶や三菱のドーム型スクリーンなど

 パイオニアは、裸眼立体視と空間センサー入力機能を併せ持ったフローティングインターフェイスをデモしている。

 一般的な立体視が、左右の目の視差を利用して画像に奥行きを持たせているのに対し、液晶パネルの前に特殊なレンズパネルを取り付けることで、映像全体が液晶パネルよりも手前に結像されて見える。また、空間センサーにより、浮かび上がった映像に指でタッチして操作したりできる。

 デモの1つは、3cm四方程度のサイズで、受付カウンターを模した形になっており、人が近づくと、CGの受付嬢が案内や説明を行なってくれる。浮かんで見える映像に来場者の関心は高い。ただし、正面以外から見ると映像が崩れたり、浮かんで見えなくなったりするため、この点はもう少し改良が必要と思われるが、2006年中に製品化の予定という。

 もう1つは15型大のディスプレイを使ったもの。指を近づけると、イルカが近寄ってきて、指の動きに追随して移動したり、芸を披露する。また、指を空間上でクリック&ドラッグすることで映像の表示枠を拡大/縮小/移動したり、ボタン操作などもできる。

 立体視はレンズによって実現されているので、視差の場合のように1枚の映像に対して2つの画像を用意する必要がなく、簡単にコンテンツを作成できるのがメリット。また、解像度や液晶のサイズの制約も小さい。レンズがハニカム状に並んでいるため、各レンズの枠の部分が黒く残って見えるが、文字の視認性を著しく悪化させるほどではない。

写真でも、受付嬢がカウンター手前あたりに表示されているように見えるのが分かるだろうか しかし、横から覗くと分かるとおり、実際の液晶パネルはもっと奥にある
こちらは大型のディスプレイを使ったデモ、指を近づけるとイルカが反応する 空間に浮かんだボタンを押したりもできる

□関連記事
【9月30日】パイオニア、立体映像ユーザーインタ-フェイスを開発
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0930/pioneer.htm

三菱のドーム型スクリーン。上下左右に6台のプロジェクタが設置されている

 三菱がデモしているのは、映像自体は立体ではないが、スクリーンをドーム型にすることで、臨場感を向上させるシステム。

 会場に設置されているのは、直径3m以上ありそうな半球型のスクリーンと6台のプロジェクタを組み合わせたもの。各プロジェクタは右上、真ん中、左下など、それぞれ異なる部分を投影しており、違うプロジェクタの映像が重なる部分は、リアルタイムで輝度などを調整することで、シームレスな映像に仕上げている。

 従来の同様のシステムでは、プロジェクタのキャリブレーションに長い時間を要していたが、2台のWebカメラを使って1時間程度で済ませられるという。アミューズメント施設などでの応用を狙っている。

□CEATEC JAPAN 2005のホームページ
http://www.ceatec.com/

(2005年10月5日)

[Reported by wakasugi@impress.co.jp]

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