1月にサンフランシスコで行なわれたMacworld Conference&Expoで発表されたiPod miniは、MacユーザーのみならずWindowsユーザーにも受け入れられたポータブル音楽プレイヤー「iPod」の小型版で、従来のiPodに比べてより携帯性が向上しているのが特徴だ。 日本など米国以外の地域では4月から販売される予定となっているが、米国ではそれに先駆けて現地時間2月20日の午後6時より販売が開始された。本記事では、米国で購入したiPod miniについてのレポートをお届けする。 ●緑以外の4色が発売されたiPod mini、初日の段階では在庫も豊富
先週、筆者はIntel Developer Forum Spring 2004(IDF)の取材のため、サンフランシスコに滞在していた。IDF自体は木曜日までだったのだが、金曜日にサンフランシスコである企業を取材するために、滞在日を1日延ばした。そんな時に友人から、金曜日(2月20日)の午後6時にiPod miniが販売されるので、ぜひ購入してきて欲しいという依頼を受けた。それなら、自分も買ってみようと思い、販売が行なわれるというサンフランシスコ市内にあるコンピュータショップ「CompUSA」に出かけた。 筆者が同店を訪れたのは午後6時過ぎで、もしかすると買えないかもしれないと思っていたのだが、店内に入ると特に長蛇の列が出来ているわけではなく、通常時と同じような行列がレジに出来ている程度で、比較的すいていた。 早速iPod miniを探そうと、Apple製品のコーナーをうろうろしていると、店員が「iPod miniか?」と声をかけてきた。そうだと答えると、「何色が欲しいんだ?」と聞かれたので、友人用のピンクと、自分用にブルーが欲しいというと、色のところにチェックした紙を渡され、それをレジに持っていくと、店員がその色を持ってきてくれた。なお、CompUSAではグリーンの在庫はまだないようで、ピンク、ブルー、ゴールド、シルバーの4色から選択することができた。 価格は249.97ドルで、この日のレート(1ドル=109円)で約2万7千円強といったところだ。別にApple Careと呼ばれる1年の保証も販売されており、そちらは59.99ドル(日本円で約6,500円)となっていたが、米国での保証が延長されてもあまり意味がないので、とりあえず購入は見送った。 その後も、しばらく様子を見ていると、それなりに売れているようだったが、飛ぶように売れているという感じではなく、お店のオフィスには在庫が積み上がっているのが確認できた。筆者が店を出た午後7時頃の段階では、まだかなり余裕で購入することが出来たようだ。
●IEEE1394とUSB 2.0の両方のケーブルが付属
iPod miniの箱は、iPod miniのクリックホイールと呼ばれる操作用のホイールを描いた外装と、中央で左右に分割される箱から構成されている。気になる内容物だが、以下のようになっている。
PCと接続するためのケーブルはUSB 2.0とIEEE 1394(6ピン、FireWire)が付属している。MacintoshユーザーはIEEE 1394ケーブルを利用し、Windows PCユーザーはUSB 2.0ないしはIEEE 1394を利用する。なお、筆者はWindowsが動作するノートPCに付属のUSB 2.0ケーブルを利用して接続して利用したが、PCからのUSB給電でiPod miniを充電することができた。マニュアルによれば、IEEE 1394ケーブルを利用した場合でもPCからの給電による充電が可能となっている。 ただし、ノートPCなどの場合にはIEEE 1394ポートが用意されていても、4ピンしかない場合が少なくない。4ピンの場合には、IEEE 1394経由での給電ができないため、たとえ6ピンのコネクタを4ピンに変換しても充電はできないので注意したい。WindowsのノートPCなどの場合にはUSB 2.0ケーブルで使うようにするといいだろう。 なお、ACアダプタを利用して充電する場合には、付属のIEEE 1394ケーブルを利用してACアダプタをiPod miniに接続する。WindowsのノートPCユーザーであれば、家において充電用に利用する場合にはIEEE 1394+ACアダプタを、持ち運びにUSB 2.0ケーブルをという使い分けをするといいだろう。 このほか、ハードウェア的な付属品と言えば、ベルトグリップとイヤフォンがある。ベルトグリップはiPod miniをベルトに取り付けて利用するためのものだ。米国では、携帯電話などをベルトに取り付けて持ち運ぶユーザーが少なくなく、そうした需要に応えるものだと言えるだろう。なお、iPod miniにはオプションでアームバンドと呼ばれる腕に取り付けるバンドも用意されており、腕に取り付けてという使い方も可能だ。
付属のイヤフォンは白のシンプルなインナーイヤータイプのもので、カバーが左右2つずつの合計4つが付属している。こうした製品に付属してくるイヤフォンとしては割と標準的か、それよりはややよい音がしているのではないかと感じた。 ただ、日本でよく見かける、左右のケーブルの長さが異なり首の後ろを回すタイプではなく、左右のケーブルの長さが同じもの。米国ではこのタイプのケーブルを使うユーザーをよく見かけるので、こちらが好まれているということなのだろう。
●付属のCD-ROMは英語以外の言語にも対応
付属のCD-ROMは、各国語対応版となっており、英語の他、日本語、イタリア語、オランダ語、スウェーデン語、スペイン語、デンマーク語、ドイツ語、ノルウェー語、フィンランド語、フランス語、中国語、韓国語に対応している。ただし、付属の紙のマニュアルは英語のみとなっており、各国のパッケージでこのマニュアルのキットが異なる点なのだろう。 日本語Windowsが動作している環境でCD-ROMをドライブ入れると、インストーラが起動し、日本語を選択してインストールすることができる。インストールすると、iTunes for Windows(Ver.4.2.0.72)、iPod mini 1.0 Softwareがインストールされ、iPod miniがWindowsから認識されて利用することができるようになる。 なお、iTunesやiPod mini Softwareなどをインストールしなくても、USBケーブルで接続すれば外付けHDDとして利用することが可能だが、音楽ファイルの転送は必ずiTunesで行なう必要があるので、ポータブル音楽プレイヤーとして利用するのであれば、インストールして利用することになる(外付けHDDとしてだけ使いたいという人はあまりいないと思うが……)。
●ユニークな操作感のクリックホイールだが慣れると使いやすい
本体は、サイズ/重量が約50.8×12.7×91.4mm/約102gとなっており、iPod(15/20GBモデル)の約60.9×15.7×104.1mm/158gに比べてより小さくなっている。こうした小型化が可能となった理由は、iPod miniが1インチのHDDを採用しているからだ。iPodがボディ色がホワイトのみであったのに対して、iPod miniではピンク、ブルー、グリーン、ゴールド、シルバーの5色から選択することができる。色が異なるだけでだいぶ違った印象になっている。 ただし、HDDの容量はiPodが40/20/15GBと大容量であるのに対して、iPod miniでは4GBと容量が少なくなっている。このあたりは小さくするためのトレードオフと言える部分で、ある程度の割り切りが必要だろう。Appleは、例えば長さが4分間で128kbpsのAACエンコードされた音楽ファイルは、iPodの40GBモデルであれば1万曲格納可能としているが、iPod miniでは1千曲としている。 iPodとの違いは、HDDだけではない。液晶ディスプレイもiPodが2型であるのに対して、iPod miniでは1.76型とやや小さくなっている。ただし、画面の見やすさに影響するほどではなく、操作性などには特に影響はない。 また、操作性も若干の変更が加えられている。iPodでは再生、先送り、戻し、メニューなどから構成されるタッチボタンと、その下にあるタッチホイールを利用して操作していたが、iPod miniではタッチボタンとタッチホイールを組み合わせたクリックホイール(ClickWheel)に変更されている。ホイールには上下左右を押すと、iPodの4つのボタン(再生、先送り、戻し、メニュー)と同じボタンとして機能し、ホイールの中央にあるボタンはメニューなどを選択するボタンとして機能する。 メニューをスクロールしたり、ボリュームを調節するという作業はホイールを利用して操作する。ホイールをさわり、指をタッチホイール上で回転するとボリューム調整、スクロールなどを行なうことができる。しばらく使って慣れてしまえば使いやすくなったが、慣れるまでは少々時間がかかるだろう。 リモコンは標準では付属していない。これは個人の趣味にも依存すると思うが、筆者は現在利用している別のポータブル音楽プレイヤーではリモコンを利用して操作しているだけに、できれば欲しいなと感じた。おそらく本体が元々小さいので、本体自体を取り出して操作して欲しいというコンセプトなのだと思うが、ストラップを取り付ける穴が用意されていないので、取り出す時に落としたりしそうでちょっと怖い感じがする。次機種ではより簡単に取り出せるようにストラップを取り付けるための穴を用意して欲しいものだ。そうすれば首から下げたりということも可能になるだけに期待したいところだ。 なお、オプションとして用意されているiPodのリモコンを利用することは可能で、必要であればこれを購入して利用するといいだろう。 ●実利用環境では7~8時間程度の再生が可能
購入後、サンフランシスコから帰国する飛行機の中などで使ってみた。サンフランシスコー東京は10時間程度かかる。離陸時、着陸時などを除いた7~8時間程度の間使っていたが、東京に近づいて着陸体勢に入るぐらいまでは使うことができた。 使っていた気がついたのは、長時間使っていると、ほんのりと暖かくなっていたことだ。熱いというわけではなく、あくまで暖かい程度ではあるが、夏になると気になるかもしれない。 なお、筆者はWindows XPが動作するノートPCにiTunesをインストールし、128kbpsのMP3ファイルを423曲/1.76GB分転送したが、転送するのには7分30秒かかった。ただし、これは最初の1回目だけで、2回目以降同期では差分だけの転送になるので、特に差分が大きくなければ数秒で終了するということを付け加えておこう。 ●より家電に近づいたデザインでWindowsユーザーにもお薦め
しばらくiPod miniを使ってみて最も気になったのは、すでに述べたようにストラップをつける穴が無い点だ。リモコンが標準では付属していないため本体を出す機会が少なくないと考えられるが、そうした時に落としてしまいそうであることは不安として残る。そうした意味では早期にネックストラップ用のケースなどがサードパーティから登場することなどを期待したいものだ。 iPod miniは、ストレージの容量は小さいものの、ポータブル音楽プレイヤーとしてiPodと同等の機能を備えている。さらに、色の選択肢が増えたことで、より家電らしいデザインになったことも評価できる。筆者個人としては、以前のiPodのデザインはiBookと一緒に利用するにはいいけど、他のWindowsノートPCと組み合わせるときにはどうか? と感じていたので、素直に色の選択肢が増えたことは歓迎したい。 このように、以前のiPodがちょっと大きいと感じていたユーザー、ボディ色が白しかないことに不満を感じていたユーザー、あるいは20GBもの大容量はいらないので、安価に入手したいと考えているユーザーであれば、iPod miniは十分検討するに値する製品と言えるだろ。なお、本製品の日本での発売は4月の予定だが、現時点では日本での価格などは未定となっている。 □関連記事
(2004年2月24日) [Reported by 笠原一輝]
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