会場:San Francisco The Moscone Center 昨日の速報に続き、Macworld Conference&Expoで行なわれた、米Apple Computer スティーブ・ジョブズCEOの基調講演の詳報をお届けする。 ●20周年を迎えた2004年は“A great Mac year”になる
'84年当時の雑誌記事などを振り返り、GUIの導入やマウスの採用などをコメントしながら、伝説のCM「1984」を再度上映するというところまでは、会場に詰めかけた熱心なユーザーであれば予測の範疇であったであろう。もちろん、最初にイメージカットをスクリーンに見せた時点では「1984」は、当時そのままだった。 簡単に説明を加えておくと、このCMは全米最大のスポーツイベント、スーパーボウルの放送中に一度だけ放映されたもの。ジョージ・オーウェルの小説で未来の管理社会を描いた「1984」を題材にして、リドリー・スコット監督がメガホンをとった作品だ。“(Macintoshの発売で)1984年は「1984」のようにはならない”がメインテーマである。その後、その作品性が高い評価を集め、さまざまな機会で紹介されてきた。 今回あらためて公開された映像を見ると、Macintoshを象徴する女性の腰にはiPodが、そして耳にはヘッドホンが……というパロディ仕立てになっている。会場では、カット割りの途中でそのことに気がついた聴衆から次々と歓声が上がっていった。この映像を純粋にパロディと見るか、それても「Macintoshというプラットホームの成功は言うまでもないが、20年を経た次なる成果がiPodである」というふうに、ややうがった見方でとらえるかは人それぞれかと思うが、実際にその目で確かめてほしい。動画はこちらで参照できる。 ジョブズCEOは、この新しい象徴的なカットを背に、20周年を迎えた2004年を“A great Mac year”と位置づけた。なお、今回の基調講演ではいわゆる“Mac”そのものに関する新しいニュースは最後まで登場しなかったわけで、冒頭のこのコメントの真意はまだ測りかねる部分がある。このキック・オフから、果たして“A great Mac Year”の2004年がどのように展開されていくかが、今後の興味になろう。ちなみに2004年版ともいえるこのポスターは、展示会場内のアップルブースで来場者に配布されている。
Pantherこと10.3が昨年11月から出荷されているMac OS Xは現在930万ユーザーを数えて、今四半期中に1,000万ユーザーに達する見込みを明らかにした。'84年にはApple IIからMacintoshへの移行がスタートしたが、旧Mac OS から Mac OS Xへの移行は、2004年には完了しているとコメントした。 そのOS Xに対応したアプリケーションが次々出荷されるなかで、自社製品であるFinal Cut Expressのアップデートをアナウンス。G5とPantherに最適化され、Final Cut Pro4のテクノロジーを搭載した「Final Cut Express 2」のデモンストレーションが行なわれた。
Ho氏は、20周年を祝福し、現在Winodows向けに出荷している数々のアプリケーションも、最初はMac版からスタートしていると述べた。そして、Mac向けOfficeの最新バージョンになる「Microsoft Office 2004 for Mac」を初公開し、Word 2004、Excel 2004、そしてEntourage 2004のデモを行なった。
Office 2004 for Macは、米国で近日出荷を予定。この日から現行バージョンの購入者に向けた無料アップグレードなどのキャンペーンが開始される。ラインナップの最上位にあたるProfessional版は、Virtual PC 7とWindows XP Professionalが含まれる新たなパッケージ製品となる。このOffice 2004 for Macの詳細については、Ho氏とのインタビューをまじえて、後日詳しくお伝えする。
こうしたG5のパフォーマンスを背景に、同社の1Uサーバー製品であるXserveのアップデートがアナウンスされた。「Xserve G5」となった新製品は2.0GHzのPowerPC G5をシングルまたはデュアルで搭載。1Uのなかに最大3基の250GB HDDを搭載できる。今回新たにECC搭載メモリへ対応した。 シングルプロセッサモデルは2,999ドル(国内価格349,800円)、デュアルプロセッサモデルは3,999ドル(469,800円)で提供されるほか、クラスタノードモデルも2,999ドル(349,800円)で用意されている。また、あわせて「Xserve RAID」もアップデートされた。最大3.5TBのストレージ容量と、1GBあたり約3ドルという高いコストパフォーマンス性が強調されている。
残念ながら日本国内ではまだ実現に至らない「iTunes Music Store」に関しても、現状の紹介とアップデート、そして新たなキャンペーンの概要が告げられた。昨年4月28日のサービス開始以降、すでに3,000万曲の販売が行なわれており、現在も販売数は伸び続けている。なかには1日で29,500ドルも購入した事例もあった。昨週のニールセンのデータによると、音楽のダウンロード販売で70%という圧倒的なシェアを達成していることも明らかにされている。 すでに開始されているサービスでは、音楽の購入権となるギフトカードは昨年10月以来10万件に達したほか、AOLユーザーも取り込んだサービスへと発展している。また、新たにビルボードの音楽チャートを元にした曲の検索機能がサポートされ、'43年以来のトップ100(ただし古い年度については100件に達しない場合もある)が、2003年分まで簡単に入手できるようになった。あわせてクラシック音楽のダウンロード販売開始もアナウンスされ、聴衆の喝采をあびた。 新たなキャンペーンとしては、ペプシとタイアップしたプレゼントキャンペーンが2月1日からスタートする。これは1億曲分の購入権がプレゼントされるもので、ペプシのキャップ裏に購入権となるシリアルナンバーが、約3本に1本の割合で刻印されているというもの。ユーザーはこのナンバーを入力して、好きな曲を無料で手に入れることができる。99セントで販売されている飲料で、99セントの曲がダウンロードできるという大規模なキャンペーンになる見込みだ。ちなみに2月1日は日曜日で、まさに今年のスーパーボウルの開催日と一致している。 いずれのアナウンスも、いまだにiTunes Music Storeの開始時期が発表されない日本の現状から見れば、のどから手が出るほどうらやましいニュースばかりだ。
すでに4.2が登場していたiTunesをのぞいて、iPhoto、iMovie、iDVDの三本は今回揃ってバージョン4に更新されたことになる。ちなみに、バージョンナンバーを1つ飛ばすかたちで「iPhoto2」は「iPhoto4」になった。 ジョブズCEOは、個々のアプリケーションについて1つ1つ自らの手でデモを披露した。iPhotoでは、最大25,000枚の写真が管理できることとその高速スクロール、拡大・縮小を行なってみせた。またRendezvousによる共有機能を利用し、ステージ袖から呼び寄せたスタッフのピーター・ロー氏の持つPowerBook G4から同氏の写真をスライド機能で上演してみせた。 ステージのデモを見る限り、現行バージョンのiTunesで提供されている共有とほぼ同じ使い勝手で利用できるようだ。さらに、スライドショーのBGMを追加するために、iTunes Music Storeからテーマにあった曲をダウンロード購入してみせるなど、各アプリケーションが密接な連携を保っていることを改めて示した。
なお、北米地域ではiPhoto2から提供されていたインターネットによるプリント注文システムとアルバムの発注機能が日本では1月から、ヨーロッパでは3月から開始されることが発表された。実は、iPhoto2が発表された2002年に、日本における最後の開催になったMacworldで、このプリント注文システムの2002年中の開始を示唆していたわけだが、今回その時は未定とされていた製本されたアルバムの発注機能と合わせて、およそ1年あまり遅れたとはいえ、ついに約束を果たし、待望のサービスインを迎えることにあらためて期待を寄せたい。当初コメントされていたとおり、欧米におけるパートナーはKodakだが、日本では富士写真フイルムがパートナーになる。 iMovieには、クリップ単位で映像と音声の時間を自在に長くしたり短くしたりして、スローモーションや早送りの効果が簡単に作れるトリム機能が追加され、ほかにタイトル作成機能などが充実した。テンプレートにはスターウォーズ風のものもあって、ジョブズCEOが次々とさまざまなタイトルを見せていくたびに歓声があがっていた。ほかに、iSightの映像をインポートする機能や、.Macのホームページ作成と連携した使い方なども披露している。そしてiDVD4では、DVDメニューの素材となるテーマやシーンに、20項目を追加。さらにスライドショーを強化したほか、これまで最長1時間に制限されていたハイクオリティ映像のDVDへの書き込みが、2時間になったことなどが紹介された。
ステージ上にはあらかじめ、音楽用のキーボードとギターが配置されていたわけだが、ここでゲストのグラミー賞ギタリスト、ジョン・メイヤー氏がステージ登場した。ジョブズCEOの仕切りで、クラシックピアノ、ベース、ギターなどをジョンメイヤーがキーボードで演奏していく。時には「ホントはギタリストなんだ……」などと言うコメントで笑いをとりながら、じっくりと時間をかけて「GarageBand」の持つさまざまな機能が紹介されていった。最後はこれら入力した楽器類と、各種のループ、そしてついにギターを手にしたジョンメイヤーのライブ演奏をミックスして録音が行なわれた。 録音終了後、ジョブズ氏はおかまいなしにその再生のデモへと移行していったが、せっかくのジョンメイヤーの演奏ということで、会場からは「セーブしろ!」「買う!」といった歓声も沸き上がった。その後、このデータをiTunesを使って再生してみせた。 GarageBandを加えた「iLife'04」の価格を発表するにあたって、ジョブズCEOは、それぞれのジャンルにおけるWindowsの代表的なソフトの価格を示し、これに対して、iLife'04が49ドル(日本国内では5,800円)という低価格で提供されることの価値をあらためて強調してみせた。
なお、iLife '04は今後出荷されるMac製品には無償でバンドルされるほか、現在流通している製品に関しては安価なアップデートプログラムが用意される。iLife'04は、米国では16日から出荷を開始。日本国内では1月下旬から店頭販売が行なわれる予定となっている。
ジョブズCEOは、昨年10月から12月の四半期で73万台のiPodを出荷したことを明らかにし、好調な売り上げ推移と収益性の高さを示した。ポータブル音楽プレーヤー市場におけるiPodの台数面でのシェアは31%、売り上げ額では55%がiPodが占め、事実上のスタンダードであることを改めて強調した。今回、現行のiPodのラインナップでは最下位モデルのディスク容量が10GBから15GBへアップ。価格を据え置くという見直しが図られた。 また、日本国内では同様のスペック変更が行なわれたうえ、為替変動などをベースにして、全ラインナップで値下げも行なわれている。詳細は関連記事も参照してほしい。同時に、新しいCMとインナーイヤータイプの新型ヘッドホンも発表されている。このヘッドホンは、今回アップルが発表したさまざまな新製品のなかで、Final Cut Express 2と並んで当日から入手可能なものの1つである。 ジョブズCEOは、ここでもう1度マーケットシェアにテーマを戻した。現在台数ベースではiPodの持つシェアが31%で、低容量のシリコンタイプのプレーヤーが31%、そして高容量タイプのシリコンプレーヤーが31%と偶然にもほぼ同じシェアを分け合っている。ちなみに、残りの7%はと言えばiPodのようなハードディスクタイプや、その他の製品が占めているわけだが、こちらについては「いずれiPodのものになる(笑)」と一蹴してみせ、聴衆の笑いを誘った。そして次なるターゲットとしたのが、高容量のシリコンタイプということになる。 Rioに代表されるこのタイプは「実はあともう少しお金が出せればiPodが手に入る価格帯」と前置きしたうえ、「そこで、このジャンルに参入してシェアを奪ってしまうことにした」と宣言してこの日の目玉の1つ、「iPod mini」の紹介を始めた。 ジョブズCEOは、あらためてRioとiPod miniとの比較をスライドを使って行なってみせる。16倍のメモリ容量で16倍の曲が収録できる。そして厚みは半分。それだけ機能がアップしているのに、価格は50ドルだけの上乗せですむ、というのがジョブズCEOの説明だ。そのうえ、iPodとまったく同じ操作性を維持するため、使い勝手にも勝るとしている。こうしてようやくポケットからiPod miniを取り出して見せたジョブズCEOは、5色のカラーバリエーションを発表。あらためて「iPod miniがハイエンドのタイプのシリコンプレーヤーの市場を席巻していく」として締めくくった。iPod miniの出荷は米国内で2月中に、そして日本を含むワールドワイドでは4月が予定されている。
□Macworld Conference&Expoのページ(英文) (2004年1月8日) [Reported by 矢作晃]
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