元麻布春男の週刊PCホットライン

「Officeなし生活」の次は、別のOSを検討してみたい


 今年の5月、マシンがクラッシュしたのを契機に、新しいマシンでは極力Microsoft製品を使わないポリシーで行くことにしたのは、このコラムで報告したとおり。その目玉がMicrosoft OfficeからStarSuite 6.0への切り替えだったが、ほかにもVisioを花子13に変更したほか、Outlookのメール機能をShuriken Pro3へ、カレンダおよび連絡先の管理とPDA連携をPalm Desktopへそれぞれ移行した。

 あれから3カ月、意外とそのまま使えている。少なくとも、これらのアプリケーションに関して、Microsoft製のアプリケーションを入れなおしたほどではない。ただし、不具合がなかったわけではない。


●トラブルはあるが、けっこうイケる「MS Officeなし生活」

 画面1は、先日WebにアップロードされたWinHEC 2003のスライドで、IntelがAC'97の後継として開発中のオーディオ技術であるAzaliaを、将来のWindows(おそらくはLonghorn)で採用するUAA(Universal Audio Architecture)のリファレンスデザインの1つとして採用する、というセッションの中に含まれるスライドをPowerPoint 2000で表示したところだ(ちなみにAzalia自身はWindows 2000以降でサポートされる予定)。最近は、プレゼンテーション資料の配布はPDFが圧倒的で、このようにPowerPointのファイルで提供されるのはMicrosoftくらいになってしまった。

 これをStarSuite 6.0のImpressで表示すると画面2のようになる。本来はAzaliaのコントローラのところにあるべきAzalia Register Interfaceが、画面下の変な場所にくっついてしまっている。また、将来のWindowsによるサポートを示した画面左側のドライバ構成の中身が180度ひっくり返ってしまっている。このボックスの中のテキストがひっくり返るというのは、結構良く見られる不具合だ。画面がメチャクチャに壊れるような不具合ではないものの、プレゼンテーション内容を誤解しかねない、かなり要注意な問題である。

【画面1】 【画面2】

 とりあえずデスクトップPCにはまだPowerPointビューワーやPowerPointはインストールしていないが、ノートPCのOffice 2000はアンインストールできそうにない。特にノートPCは、ホテルのような、ほかのマシンの支援が受けられない環境で使う機会が多いから、デスクトップPCより保守的なソフトウェア選択をせざるを得ない気がしている。

 もう1つ経験したトラブルは、Excelのシートが添付されたメールに関するもの。Shuriken Pro3の中から添付ファイルをクリックして、StarSuite 6.0のCalcを呼び出して表示させようとすると、Shuriken Pro3が異常終了してしまう。どちらに問題があるのかは分からないが、添付ファイルを一度適当なフォルダに保存して、それをCalcで開くようにすれば回避できるので、まぁ我慢の範囲内というところである。それから、これはトラブルとは言えないが、Acrobatのバージョンアップ等で、Microsoft Officeとの連携を強化などといわれると、さびしい思いをするのはやむを得ないところだ。

 それでもかれこれ3カ月、“ほとんど”Microsoft Officeのない生活(一応ノートPCには残っているので)を続けているわけだが、案外困らないような気がしている。上ではWinHEC 2003のPowerPointプレゼンテーションの問題を指摘したが、同様に提供されているWinHEC 2003のホワイトペーパー(Word文書)は、すべてStarSuite 6.0で問題なく見ることができた。ただ、Microsoft Officeがインストールされていないマシンで仕事をしていることを言うと(今でもOfficeをインストールしていないでいると言うと)結構驚く人が多いのに、逆にこちらが驚く。


●OSにも選択肢が無ければ危険?

 とはいえ、筆者とて土台であるOSとしてはWindows XP Professionalを使っている。ドライバサポートなど様々な理由により、現状ではWindows XP Pro以外に選択肢はないと思っているし、次のLonghornも使うことになるだろうと半ば確信している。だが、その次は果たしてどうか。Microsoftの最近のエンタープライズシフトを見ていると、筆者のような個人ユーザーがその時もMicrosoft製のOSを使い続けていられるのか、ハッキリ言って自信はない。ライセンスポリシーやサポートポリシーが、どんどん大企業向けになっているように思われるからだ。

 そうでなくても、1社のソフトウェアにあまりに依存するのは、やはり危険だ。このお盆休み、Windows 2000とWindows XPの脆弱性を利用したBlasterウイルスが大きな話題になった。ブラスターが利用する脆弱性は7月に、対策パッチと同時に公開されたものだが、対策をとらなかった人が少なくなかったようだ。

 だが、もし脆弱性を発見したのがサイバーテロリストで、ブラスターとは比にならないくらい悪意のあるウイルスを仕掛けたとしたら、と考えるとゾッとする。みんなが揃って同じOS上で同じアプリケーションを使うというのは、管理の点からは都合の良いことかもしれないが、とてつもなくリスクの大きいことではないのか。どんなテロがあるか分からないというのは、9.11から学んだことの1つだったハズだ。

 MicrosoftはWindows Updateなどを使って、常にシステムを最新の状態にして欲しいと呼びかけている。この呼びかけは理解できるし、筆者のような不良(?)ユーザーだって、ちゃんとWindows Updateは行なっている。だが、そもそもWindows Updateを全ユーザーが行なうことなど、期待できるハズがない。

 現在、Windows XP Professional SP1をインストールし、必要なデバイスドライバ類を組み込んだ状態でWindows Updateに接続すると、重要な更新とService Pack、それからWindows XPの項に含まれる推奨修正プログラムだけで50MB近いパッチをダウンロードするように言われる。新しいService Packがリリースされようものなら、この数字はさらに跳ね上がるだろう。Windows Updateには未登録(後日、登録されることもある)のセキュリティパッチやホットフィックスまで含めると、手間の問題もバカにならない(これについては、Windows UpdateをMicrosoft Updateにすることで、パッチの所在を統合するようだが、どこまで含まれるのかは不明)。

 これだけのアップデートを要求するOSは、ナローバンド接続のユーザーなど使えるハズがない。先日、八丈島にブロードバンドを、という活動がニュースになったが、ブロードバンド環境のない離島などのエリアに済むユーザーは一体どうしろというのだろう(雑誌付録CD-ROMへのService Pack掲載も縮小の方向だと聞く)。そうでなくても米国は、今でもアナログモデムによるダイヤルアップ接続が非常に多い。加入電話からの市内電話が事実上無料であるためだが、そうしたユーザーの多くは、あまりにも時間のかかるWindows Updateなど行なわないだろう。

 これまで、ソフトウェアにバグ(あるいはセキュリティホール)はつきもの、とは良く言われてきたし、それを狙ったコンピュータウイルスやワームが決してなくならないことも共通認識になっているといって間違いない。この7月でWindows NTが誕生して10周年を迎えた(日本語版は2004年の1月で10年)が、もう10年経ってもService Packやパッチが不要になる時代など当面考えられない。バグが修正される一方で、新たな機能、新たなモジュールが追加されるからだ。加えて、そろそろユーザーはアップデートなどしないで使う、ということを前提に考えなければならないのではないか。

 その対策はMicrosoftに考えてもらうとして、ユーザー側で考えなければならないのは、たとえ管理コストが増大しても、プラットフォームに一定数のバリエーションを持たせておく、ということかもしれない。旅客機のコクピットで、機長と副操縦士が違う機内食を食べる、というアレである。万が一、どちらかの機内食に毒が盛られていたり、食中毒を引き起こす食材が紛れ込んでいても、コクピットが空になる事態は避けられる、というわけだ。全員がWindows上でOfficeを使い、IEを利用する、というのでは、潜在的なリスクは高い。

 筆者は上で、Microsoftのライセンスポリシーやサポートポリシーにより、将来Windowsを利用できなくなる(使いたくなくなる)かもしれない、と書いた。が、プラットフォームを分散させるという危機管理の観点からも、別のOSの利用も検討しておかねばならないような気がしている。少なくとも、準備や研究はしておかないといけないのではないか。最近、とみにそう思うのである。

 というわけで、次回からはデスクトップOSとしてのLinuxの可能性を検証してみる。

□関連記事
【5月12日】筆者にOfficeは必要か?
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0512/hot260.htm
【5月19日】StarSuiteにOfficeの代わりが勤まるか?
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0519/hot261.htm
【5月26日】CLIEとPalm Desktopを試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0526/hot262.htm

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(2003年8月21日)

[Text by 元麻布春男]


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