元麻布春男の週刊PCホットライン

CLIEとPalm Desktopを試す



 前回は、Microsoft Officeの代わりにStar Suite 6.0を使ってみることにした、という話をした。残念ながら日本語ワードプロセッサ部(StarSuite Writer)のWordとのデータ互換性は期待したほどではなかった。

 互換性の問題がクリティカルなのは、主にヘッダやフッタの取り扱いのようで、一太郎13/花子13のスペシャルパッケージ(一太郎と花子のバンドルパッケージ)に付属する自在眼7ライト(アンテナハウス製)でも似たような問題が生じた。本当にWordを使い込んでいるユーザーや、仕事柄Wordとの互換性が命なユーザーは、Microsoft Wordを使うしかないようだ。筆者はそれほどこだわりはないし、多少不便なシチュエーションもありそうだが、それが致命的になるまで、Microsoft Office(特にWord)のインストールは我慢してみようと思っている(手元に自分で購入したパッケージもライセンスもあるので、その気になればいつでもインストールできるのだが)。

 前回、どうしても解決できなかったのは、Outlookの代替アプリケーションだ。電子メールについてはShuriken Pro 3を使うことにしたのだが、スケジュール管理ソフト、それもPDAと連携可能な良い代替がなかなか見つからない。

 もともと筆者はOutlookが好きではなかったのだが、PDA(PocketPC 2002機)といっしょにOutlookがやってきてしまった。Outlook抜きにPocketPCを使うことは不可能ではないものの、著しく効率が悪い(いちおう付け加えておけば、Pocket Outlookはそんなに嫌いではない)。Microsoft Officeを辞めるということは、Outlookを辞めるということであり、事実上PocketPCも辞める、ということになってしまう。


●まずはPDAの選定

 PCソフト側からスケジュール管理ソフトを探して見つからなかったので、逆にPDA側から絞り込むことにした。パッケージにOutlookが付属しないPDA、要するにPalm OS機かZaurusを試してみようというわけだ。

 まずPalm OS機だが、誤解を恐れず言ってしまえば、国内で買える日本語版Palm OS機は、実質的にソニーのCLIEしか存在しない。本家Palmは、米国では新製品を投入し続けているものの、国内では昨年夏のm515を最後に新製品を投入していない。本家Palmのラインナップは、発売から時間が経過するにつれて、だんだん店頭から姿を消しつつある、というのが率直な感想だ。

 一時はVisorがヒットしたHandspringも日本の市場はあきらめてしまったように思える。ときどき、秋葉原に格安品が出てくるWorkPadだが、日本IBMがこの分野から撤退して久しい。今も元気に新製品をリリースしているPalmベンダはソニーだけなのである。

 だが率直に言って、CLIEの標準価格は高い。少なくとも決して安くはない。現在、多くの販売店でPocketPC機の実売価格が下がっているし、NTTドコモ製は特に安かったりする(ケータイといっしょで、通信費まで考慮して価格設定されているのだろう)。これらのPocketPC機の多くが、最新の組み込み用RISCプロセッサ(主にIntelのPXAシリーズ)を用い、200〜400MHzの動作クロックで動いているのに対し、たとえば、CLIE現行機種のうちローエンドのPEG-SJ33のCPUは組み込み用のMC68000(DragonBall VZ)で動作クロックは66MHzである。PCと違ってPDAは、必ずしもプロセッサのアーキテクチャや動作クロックは最優先事項ではないのだが、ハードウェアを購入する際のお得感という点で不利なのは否めない。

 またOSの機能という点で比較しても、ローエンドのCLIEに使われているPalm OS 4.1は、基本的にシングルタスクのOSであり、マルチタスクOSであるWindows CEとは比べ物にならない。OSの機能を比べると、やはり不利なことは否めない(Palm OSでもDAと呼ばれるアクセサリソフトなどによる擬似マルチタスクは可能だが、これをマルチタスクと呼ぶのはMS-DOSをマルチタスクと呼ぶようなものだろう)。

 ただし、だからこそPalm OS 4.1マシンは、PocketPCよりローパワーなプロセッサでも軽々と動くし、少ないメモリで済むわけで、必ずしも悪いことばかりではない。PDAで重要なバッテリ寿命という点でも有利なハズだ。ただ、筆者としては、もう少し安くてもいいんじゃないの、と思ってしまうのである。国内にはまだ登場していないが、米国では標準価格が300ドルを切るPocketPC機がHPやDellからリリースされている。同じ価格であれば、ハードウェアスペック、OSの仕様といった点で、Palm OS 4.1マシンは厳しいように感じる。

 そもそもOSライセンスのついたデスクトップPCが5万円を切り、ノートPCが10万円を切る時代、高価なPDAというのはかなり難しい商品ではないかと思う。市場調査会社のガートナージャパン・データクエスト部門によると、昨年の国内PDA市場は20%以上落ち込んだということ。高機能・高付加価値路線もいいけれど、価格を下げる努力も必要ではないだろうか。


●結局CLIEを購入

 というわけで、CLIEを購入することはためらわれていたのだが、結局購入することにした。購入したのは1世代前のローエンド機であるPEG-SJ30。決め手となったのは価格だ。ヨドバシカメラ本店のアウトレットコーナーで、展示品が15,800円プラスポイント還元13%で売られていたのである。

 PEG-SJ30は、現行のローエンド機であるPEG-SJ33に比べ、CPU(DragonBall VZ)の動作クロックが半分(33MHz)で、音楽再生機能も持たない(別売のオーディオアダプタPEGA-SA10が必要)。上位モデルなら付属するクレードル(ACアダプタなしで実売価格5,000円弱)も、PEG-SJ30/33には付属しないが、この値段なら悪くないと考えたわけだ。

液晶カバーを閉じたPEG-SJ30 あらかじめPCで320×320ドットに縮小したJPEG画像を表示させたところ。表示するまで待たされるが、それなりにきれいに見える

 筆者が低価格にこだわるのは、PCとの機能比較ばかりが理由ではない。筆者はそもそもPDAに多機能を求めないタイプの人間なのだ。それは、NECのPocket Gearを使って得られた教訓である。PocketPC 2002機であるPocket Gearは、音楽再生もできたし、2つあるスロット(Type2 CF/SDメモリーカード)は通信にも余裕で対応できた(PEG-SJ30はメモリースティックスロットのみで、通信用途でポピュラーなCFスロットを利用するには別途オプションが必要になる)。

 が、できることと、実際にやることは別の話。筆者はPocket Gearを持ち歩いた場合でも、それで音楽を聴いたり、外出先でメールを読み書きしたりはしなかった。泊りがけで出かけるときはノートPCを持っていくし、ちょっとした外出ならわざわざ外でメールを読んだりしない。そもそも筆者はそれほど外に出るわけではないのだ。筆者にとってPDAは本当にPIMでよく、それ以上の機能を欲していなかったのである。もちろん、これは筆者個人のニーズであり、PDAで通信までやりたい人、原稿まで書きたい人など、人それぞれだろう。たまたま筆者の場合はこうだっただけのことだ。

 というわけで購入したPEG-SJ30だが、最初はカルチャーショック? にとまどいを禁じえなかった。たとえば、あるアプリケーションが利用するデータをメモリースティックに置く場合、そのデータは、特定のフォルダ(\PALM\PROGRAMS\MSFILESなど)になければならない、というのは忘れて久しい感覚だった。昔はPCのソフトもそういうのが珍しくなかったが、いまやPocketPCだって「ファイルを開く」ダイアログがあり、任意の場所からデータを読み込むことができる。Palmのアプリケーションでも、任意の場所からデータ読み込めるものもあるのだが、データの場所が決めうちになっているものも少なくない。慣れの問題ではあるのだが、アプリケーションのマニュアルを読まずに使うのは、ちょっと難しいかもしれない。

 また、サードパーティ製ソフトを組み込まない状態では、PEG-SJ30はJPEGの画像ファイルを開くこともできない。すでにPocket GearでPDAをデジカメで撮影したデータのビューアに使う野心は捨てたのだが、開くこともできないというのはちょっと驚きだった。当然のことだが、WindowsユーザーにはPocketPCのほうが親和性が高いのは間違いないところだ。

 ハードウェアキーボードを持たないPalm機では、文字の入力にはGraffiti(アルファベットを簡略化した一筆書き用の文字。専用の入力エリアにスタイラスで書く)を用いる。が、標準では英字入力しかサポートされておらず、ローマ字かな漢字変換をしなければならないというのも、結構つらい部分だ。

 筆者はPDAにおける文字入力を重視していないつもり(そうでなければハードウェアキーボードを内蔵したCLIEを検討しただろう)だが、直接かな漢字まじり文の入力が可能なPocketPCに比べるとかなり違和感を感じる。幸い、サードパーティからひらがなをGraffitiエリアに直接書き込むツール(楽ひら+α)が販売されているため、早速これをインストールすることにした。


●Outlookの呪縛から開放

 というわけで、いろいろと文句を言ってきたPEG-SJ30だが、実は意外と気に入っていたりする。その最大の理由は、何といってもOutlookから開放されたことだ。Palm機はOutlookとのデータの同期も可能だが、筆者の場合標準で添付されているCLIE Palm Desktopで事足りている。予定表やTo Doリストなどそれぞれの機能単独はもちろん、各機能間の連携、ネットワークを用いた複数ユーザー間での連携など、機能を比べればOutlookの方が数段上(だからこそOutlookとの同期をPalmもうたっている)なのは間違いないところだが、筆者はPalm Desktopのシンプルさが気に入っている(組織で働いている人間ではないので、それほど込み入った機能を必要としていないということも理由だろうが)。

 もう1つ感心したのは、液晶ディスプレイが意外にきれいだったこと。内蔵ディスプレイは65,536色表示可能な320×320ドットのTFT液晶で、スペック的に唯一PocketPC(240×320ドット)に勝てる部分なのだが、写真の表示にも十分耐える。

 では、デジカメ画像の確認に使えるかというと、それは無理。VGA程度の大きさなら開けなくはないが、最近の300万〜500万画素級の画像にはとうてい太刀打ちできないようだ。VGAが開けるといっても、DragonBall VZ 33MHzでは1枚開くのに1分近くかかるため、実用性に乏しい(JPEGの展開だけでなくメモリスティックのアクセスにも時間がかかっているようだ)。写真を見たいときは、あらかじめPC上でディスプレイサイズまで縮小した方が良さそうだが、そこまでしてPEG-SJ30で写真を見ることもあるまい(このあたりの事情は、PXA250を用いたPalm 5 CLIEでは変わっているのだろうが)。

 率直に言って、PocketPCに比べるとPalm OS 4.1は、つつましいシステムだと思う。だが、PocketPCはマルチタスクであるがゆえに、Pocket Gearでは32MBのメモリがアッという間に消費されてしまったが、PEG-SJ30では16MBのメモリがずいぶんと広く感じられる。「ファイルを開く」ダイアログのような洗練されたユーザーインターフェイスがない分、プログラムサイズも小さいようだ。このつつましやかさも、筆者が気に入った点の1つかもしれない。

□関連記事
【5月19日】【元麻布】StarSuiteにOfficeの代わりが勤まるか?
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0519/hot261.htm
【2002年8月28日】ソニー、小型のPalm OS搭載PDA「クリエ PEG-SJ30」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0828/sony.htm

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(2003年5月26日)

[Text by 元麻布春男]


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