今度の仕事マシンは、Microsoftのアプリケーションを極力減らしてみようと思った筆者だが、それにはまず自分がどのようなアプリケーションを使っているのか把握せねばならない。が、ザッと眺めてみたところ、Windows以外に使用しているMicrosoft製アプリケーションは、それほど多くはないようだ。 目立つのはOffice 2000スタンダードとVisio 2000くらいで、後はInternet Explorer、Outlook Express、Media Player 9といった無償のものが中心。例外的にアメリカの地図ソフトであるStreets & Trips 2002というのもあるが、これに代わるものはすぐには入手できないので、今度アメリカへ行った時に探すこととして、インストールすることにした(この地図ソフトも2~3年前くらいのバージョンが一番良かったと思うのだが)。 これらのアプリケーションの代替について述べる前に、1つ断っておかねばならない。それは、筆者はこれらのアプリケーションのヘビーユーザーではない、ということだ。Officeの中で一番使うのはExcelだと思うが、それでも複雑なマクロなど書いたことがないというレベル。表を作るのに使う程度で、「演算」に関しては四則演算ができれば問題ない。ワードプロセッサやプレゼンテーションに関しては、よそからきたデータを見るビュワーとしての用途がもっぱら。以前はVisioで図を描くことが結構あったが、最近はあまり使っていない。 要するに、筆者がOfficeに求める機能や互換性はその程度に過ぎない、ということなのである。業務でヘビーにOfficeを使い込んでいるユーザーから見れば、お前にはOfficeは豚に真珠だ、と言われかねないし、代替のアプリケーションに求める互換性のレベルは格段に低いのである。 ●StarSuiteを選択
さて、筆者が今度のマシンでMS Officeの代わりに使おうと考えたのはSun MicrosystemsのStarSuite 6.0だ。同じところにルーツを持ち、無償で提供されているオープンソースソフトウェアのOpenOfficeでも良かったのだが、今回は有償版を用いている。 ただ有償といっても、本稿執筆時点におけるStarSuite 6.0の実売価格は1万円を切っている。これで1ユーザーが最大5台までのPCで利用可能なライセンスがついているのだから、安価であることは間違いない。別に筆者はSun Microsystemsが個人向けにソフトウェアを開発しているなどと言うつもりはないが(実際、Sun Microsystemsは個人向けの販売をソースネクストに任せているくらいである)、料金体系が個人の財布に優しいのは事実だろう。 現在、日本語が使えるオフィススイートで、今もアップデートが継続されているのは、OfficeのほかはこのStarSuite 6.0/OpenOfficeくらいしかないのではないかと思う。Lotus Officeはすでに2年ほどアップデートがないようだし、一太郎Officeもなくなってしまった(単独アプリケーションとしてはちゃんと生き残っているが)。少しはOffice以外のオフィススイートを支援しないと、本当にほかの選択肢がなくなってしまいそうだ。 ●表計算、プレゼンは合格、ワープロは……
StarSuiteは、ワードプロセッサのWriter、表計算ソフトのCalc、プレゼンテーションツールのImpress、ドローイングツールのDrawで構成される。 すでに述べたように筆者にとって、最も使用頻度が高いと思われるのはCalcで、実際ハードディスクの中には筆者が作成したExcelのファイル(ただし複雑なものではない)がかなりある。これらが開けないとなると、StarSuiteは使えない、ということになってしまうのだが、幸い読めないファイルはほとんどないようだ。ただ、日付のデータだけが正しく日付として解釈されないようで、セルの書式設定をもう1度やり直す必要があった。とはいえ、筆者にとってCalcは、Excel代わりに十分利用可能なデキである。 プレゼンテーションに関しては、筆者は自分でやるより、人がやった資料をもらう立場。しかも最近はPDFでもらうことが多いから、以前ほどPowerPointのお世話になることはない。それでも試しにいくつか開いてみたが、ファイルレベルでの互換性に問題を感じることはほとんどなかった。ただ、次のシートへの移動の仕方といった、操作性の違いに若干違和感を感じたくらいだ。 それに対して、問題が多そうなのがワードプロセッサのWriterだ。もちろんWriterも、ごく一般的な文書が書かれたファイルを開くのであれば、それほど深刻な問題はない。ただ、企業のプレスリリースなど、ロゴや透かし入りのレターヘッドを模したようなWord文書となると、てきめん互換性が問題となる。Wordで作成されたロゴや透かしをうまく解釈できないようで、これらが入った文書ではレイアウトが乱れてしまう。
仕事柄、こうした文書がメールに添付されて送られてくることが多いだけに、ちょっと不便を感じるところだが、本文が読めないわけではない。不満を感じつつも、もう少し様子をみようというのが現状である。もし筆者がWordで原稿を書いていたり、Wordで人に配布する文書を作成しなければならない立場であれば、Writerは使えない、という判断を下したかもしれない。なお、Word文書との互換性が完全ではないという問題は、一太郎13/花子13の特別パッケージに添付されていた自在眼7ライトでも解決しなかった。かなり難しい問題らしい。 ●VisioとOutlookの代わりがない 残るDrawは、Visioの代わりになるかと言われると、これはちょっと難しそうだ。互換性うんぬんではなく、両者は目的の異なるアプリケーションであり、筆者が求めているのはVisioのようなアプリケーションであるからだ。とりあえず早急に必要なものではないのでボチボチ探すことにしようと思う(まず最初に試すのは花子だろうか)が、過去にVisioで作成したファイルを読めるアプリケーションを探すのに苦労しそうな気がする。結局、Visioをインストールすることになるかもしれない。 OfficeをStarSuiteに変えて一番困ったのは、Outlookをどうするか、だ。StarSuiteの以前のバージョンにはスケジュール管理ソフトがついていたことがあったらしいが、StarSuite 6.0にはそのようなアプリケーションは付属していない。Lotus OrganizerやジャストシステムのSasukeも、すでに更新されていないようだ。良し悪しは別にして、もはやOutlook以外に選択の余地がないように見える。 誤解のないよう言っておくと、筆者はOutlookにどうしても馴染めない。できれば使いたくないし、今回偶然にもOutlookの個人フォルダが壊れたのも、天啓ではないか、と思ったほどだ。が、Outlookがなくなると、PDA(Pocket PC)も道連れでなくなってしまう。理屈の上ではOutlookなしでPocket PCを使うことは不可能ではないが、魅力は半減する。PDAと連携可能で、使い勝手の良いスケジュール管理ソフトがあったら教えて欲しいくらいだ(とりあえずPalm Desktopを試してみるつもりだが)。 ●多少の不具合に目をつぶれば
Outlookを止めて、もう1つ問題なのはメールクライアントだ。WindowsにはOutlook Expressがついてくるし、個人的にはOutlookよりOutlook Expressの方が全然好ましいのだが、今回はメールクライアントも変えることにした。 とりあえず使ってみることにしたのは、ジャストシステムのShuriken Pro3だ。使い始めて1週間以上になるが、標準のスキンが派手だったり、メールの着信監視が別プログラムだったりと、若干とまどう部分はあったものの、特に大きな不満なく利用できている。むしろ、複数アカウントの管理、Pop before SMTPのサポートなど、重宝している部分が少なくない。割と気に入っている。 メールクライアントほどうまくいかなかったのが、Webブラウザだ。本当はWebブラウザも、標準のIEに代えてOperaを使う予定にしていた。が、試したOpera 7.0.3はブックマークをホットリストとしてウィンドウ内に表示させない限り(IEでお気に入りをウィンドウ内に表示させるのと同じ状態)、ユーザーが好む任意の順番に並べることができない。これが致命傷となって、結局標準で使うブラウザはIEに戻してしまった。タブによる複数ページの管理等、気に入った部分もあったのだが、ブックマークを複数のブラウザで管理することは限りなくわずらわしいので、IEに統一したというわけである。 現時点で、Windows以外のMicrosoft製アプリケーションを極力使わないようにしようと考えてすでに1週間以上が経過した。Internet Explorerのように、すでにあきらめてしまったものも出てきているが、とりあえず何とかなっている。ただ、WordにせよOutlookにせよ、好き嫌いは別にして、Microsoft製アプリケーションが事実上の標準になっていることだけは痛感させられた。筆者は個人だから、多少の非互換性にも目をつぶっていられるが、これが組織だったらそうはいかないだろう。 【お詫びと訂正】 □StarSuiteのホームページ(サンマイクロシステムズ) (2003年5月19日)
[Text by 元麻布春男]
【PC Watchホームページ】
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