Intelが、DP(デュアルプロセッサ)サーバーおよびワークステーション向けCPUであるXeonプロセッサ(以下Xeon)の最新クロックグレードであるXeon 3.06GHzをリリースした。 Xeon 3.06GHzは、昨年投入されたXeon 2.80GHzに続くシステムバスが533MHzの製品で、ようやくDPサーバーやワークステーションでもPentium 4のクロックに並ぶことになる。 今回は、このXeon 3.06GHzを搭載したシステムを入手したので、前モデルであるXeon 2.80GHzやライバルとなるAMDのAthlon MP 2600+などと比較していきたい。
今回Intelが発表したXeon 3.06GHzは、11月に発表されたシステムバスが533MHzに引き上げられたXeon 2.80GHz、2.66GHz、2.40B GHzに続くもので、やはりシステムバスが533MHz、12KμOpsの命令L1キャッシュ+8KBのデータL1キャッシュ、512KBのL2キャッシュとなっており、パッケージがPGA604と呼ばれる604ピンのパッケージになっている以外は、Pentium 4 3.06GHzと大きな違いはない。もちろん、Hyper-Threadingテクノロジ(HTテクノロジ)にも対応しており、その点でも同等だ。 最も大きな差は、言うまでもなくマルチプロセッサ環境で利用することができることだ。例えば、ワークステーション用に用意されているE7505チップセット(E7205のデュアル版)で利用すれば、シングルないしはデュアルで利用できるため、HTテクノロジを有効にした場合は論理プロセッサの数が4つとなり、マルチスレッド対応アプリケーションで大きな効果を望むことができる。 なお、同時にシステムバスが400MHzのXeon 3GHzもリリースされており、こちらの方は若干価格が安価に設定されている。
今回発表されたXeon 3.06GHzは、当分の間はXeonの最高クロックグレードとなる。というのも、OEMメーカー筋の情報によるIntelのXeonロードマップでは、第2四半期には新しいXeonのクロックグレードは追加されず、次の新しいグレードは、第3四半期に投入される1MBのL3キャッシュを追加したGallatinコアのXeon 3.06GHzとなるからだ。さらに、第4四半期には90nmプロセスルールに微細化したNocona(ノコナ)コアの3.46GHzと3.20GHzの2つのグレードが追加される予定であるという。 このように、今回登場するXeon 3.06GHzは長ければ2四半期(6カ月)にわたりXeonの最高クロックグレードとなる可能性が高い。Xeonを必要とするようなユーザーは、とにかくパフォーマンスが必要であるため、次々に新しいCPUに対して投資をしなければならないと思うが、今回のXeon 3.06GHzは割と息が長い最高グレードとなる可能性が高いため、安心して購入できると言えるのではないだろうか。
Xeon 3.06GHzは、言うまでもなくIA-32系のDPサーバー/ワークステーション向けCPUとしては、最高クロックグレードの製品となる。従って、当然のことながらパフォーマンスは、他のCPUを凌駕することになるのは言うまでもないが、どの程度の性能向上があるのかをチェックするために、マルチスレッドに対応したアプリケーションを利用して計測してみよう。 計測に利用したのは、Athlon MP 2600+とXeon 2.80GHzを計測した記事に利用したTMPGEnc Version 2.51とPhotoshop V7.0.1で、Photoshopの計測には、HI-FI( http://www.hi-fi.jp/index@hi-fi.html )で配布されていた“HI-FI-Ultimate-Bench-PS7”というアクションファイル(Photoshopにおけるスクリプトのようなもの)を利用させて頂いた。 TMPGEncはもはや説明の必要がないほど有名なMPEGエンコーダソフトで、今回は10分間のAVIファイル(17,989フレーム)をMPEG-1に変換する時間を計測し、フレームレートを計算した。HI-FI-Ultimate-Bench-PS7は、Photoshop 7で複数のフィルタをバッチ実行し、実行にかかった時間を計測するベンチマークで、複数のフィルタをまとめて計測できる優れものだ。数値は時間で、ここでは、数字が小さければ小さいほどパフォーマンスが高いことを示している。Photoshopはマルチスレッド対応のフィルタがいくつかあるので、その効果が確認できる。 比較対象は、DPのこれまでの最高性能だったXeon 2.80GHzとAthlon MP 2600+、さらにシングルプロセッサとの比較をするためPentium 4 3.06GHzのHTテクノロジ有効の3つを用意した。テスト環境は、以下の通りでベンチマーク結果はグラフ1、グラフ2、表1の通りだ。 【テスト環境】
■ベンチマーク結果
グラフ1はTMPGEnc Version 2.51によるAVIファイルをMPEG-1に変換する時間を計測し、そのフレームレートを計測したものだ。右側に行けば行くほど、高い処理能力を持っていることを示している。この結果では、Xeon 3.06GHzは、従来モデルのXeon 2.80GHzに比べて3%ほど改善されていることがわかる。 【表1:Photoshop 7.01のベンチ結果】
グラフ2および表1はPhotoshop 7のフィルタ実行時間だ。グラフ2は、グラフ1とは逆に左に行けば行くほど時間が短いことを意味しており、処理能力が高いことを示している。合計時間で比較すると、Xeon 3.06GHzは、Xeon 2.80GHzに比べて6.5%の性能改善があることがわかる。
以上のように、処理能力の観点でみれば、実クロック(およびAMDのモデルナンバー)が反映しているとおりに、Xeon 3.06GHzは現時点におけるワークステーション向けCPUのトップにある性能だといってよい。 だが、価格という観点では若干見方が異なる。OEMメーカー筋の情報によれば、Xeon 3.06GHzの価格は700ドル強になるという。実際、僚誌のAKIBA PC Hotline!によれば、先週末の秋葉原で展示されたXeon 3.06GHzの予価は94,800円と、10万円近くになっている。 OEMメーカーに告知されている価格とあわせて考えると、かなり高価な製品となる可能性が高い。これに対して、Xeon 2.80GHzは6万円弱、Athlon MP 2600+は3万円台半ばとなっており、価格差は非常に大きい。
そこで、コストパフォーマンスを計算してみたい。Xeonの方はマザーボードも高価で、安いものでも5~6万円程度、これに対してAthlon MPのマザーボードは3万円強となっている。メモリに関しては、どちらもPC2100のRegisteredとなっているので同じコストだと考えられる。 そこで、今回はCPU+マザーボードの価格で、TMPGEncの結果を割り、10,000をかけることで1万円あたりのコストパフォーマンスを出してみた。なお、価格はAKIBA PC Hotline!の価格などを参考に、筆者が最も標準的と思える価格を採用することとした。 結果はグラフ3だ。見てわかるように、Athlon MP 2600+が最もコストパフォーマンスが高く、Xeon 3.06GHzは実にその半分程度だ。この結果から明らかなように、コストパフォーマンスを何よりも優先するというのであればAthlon MPという選択は非常に有望と言えるだろう。 ただ、Xeonのようなプロフェッショナルユースで利用される製品は、目先のコストパフォーマンスよりも、処理能力が優先という考え方が主流であるのが事実だ。 例えば、3Dレンダリングに利用しているのであれば、処理時間が30分から20分に短縮することで、より多くの仕事が可能になり、数万円の価格差はあっという間に埋められるからだ。そうした意味では、プロユースに利用しているようなユーザーであれば、間違いなく現時点でのIA-32に於いて最高の性能を示す本製品を検討してみるのも悪くないだろう。 □バックナンバー(2003年3月11日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
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