Athlon MP 2600+ vs Xeon 2.80GHz
~x86デュアルプロセッサ頂上対決



Intel Xeonプロセッサ

 前回の記事では、Athlon MPの性能を速報としてお届けした。その時点ではXeonを搭載したシステムの入手が間に合わなかったため、ライバルとなるXeonとの比較を行なわなかったのだが、今回Xeon 2.80GHzのデュアルシステムを入手したため、Athlon MP 2600+(デュアル)とXeon 2.80GH(デュアル)の比較を行なっていきたい。



●安定性を重視したXeonのシステムだが、プラットフォームコストは高い

 今回入手したXeon 2.80GHzのシステムは、Xeon 2.80GHzを2つ搭載し、チップセットにIntel E7505チップセットを搭載したIntel SE7505VB2を採用したシステムだ。非常に奥行きがあるフルタワーであるのが特徴で、これはE7505を搭載したマザーボードのSE7505VB2が大柄なサイズであるためだ。

 SE7505VB2は、Intelのサーバー向けボードとなっているが、AGP Pro(8X対応)のスロットが用意されているため、実際のところはワークステーション向けと言える(IntelのWebサイトを見る限り、ワークステーション用マザーボードというカテゴリがないため、便宜的にサーバー向けに入れられているものと思われる)。

 すでに述べたように、チップセットはE7505が採用されている。E7505は、Placerのコードネームで知られるチップセットで、E7205(Granite Bay)と同じようにデュアルチャネルのDDRをサポートし、最大で8GBまで増設することができる(ただし利用できるのはRegisteredのみ)。

 E7205との違いは、PCI-Xを利用することができることだろう。E7505では、ハブインターフェイスが16bit(533MHz、1GB/sec)と8bit(266MHz、266MB/sec)の2チャネル用意されており、8bitにはE7205と同じようにICH4が接続されるが、16bitの方にはP64H2と呼ばれるコンパニオンチップが接続され、PCI-Xバスへのブリッジとなっている。このため、SE7505VB2にはPCI-Xのスロットが3スロット用意されている。

 CPUのシステムバスは400MHzと533MHzがサポートされており、533MHzのXeonプロセッサを利用することができる。このため、ソケットは400MHz時代のPGA603から1ピン増えてPGA604となっている。今回筆者が入手したシステムも、533MHz版のXeonプロセッサが搭載されていた。

 電源はWTX-PSと呼ばれるATXとは異なる仕様で、別途この仕様に適合した電源供給ユニット(PSU)を入手する必要がある。Xeonマザーボードでは、こうした特殊な電源が必要とされる場合が多い。実際、多くのサードパーティマザーボードがリリースしているE7205搭載マザーボードでは、このWTX-PS以外にSSI-EPS12Vという仕様のPSUが採用されている場合が多い。要するに、ATX仕様の電源では電力などが足りないため、それを補うための特殊な電源が必要になるということだ。安定した電源供給という意味では大きな意味があり、何よりも安定動作が必要とされるサーバー、ワークステーションでは必要な仕組みであると言える。

 ただし、コスト面では逆に不利になる。WTX-PSやSSI-EPS12VなどのPSUは、多くの場合は1万円~2万円と、PSUとしては高級機のレンジの製品となっている。また、マザーボードの価格自体も5万円~10万円と非常に高価になっている。そういう意味では、コスト面がXeonシステムのネックであるということができるだろう。

Xeon 2.80GHzを搭載したシステム。電源にはWTX-PS仕様を採用している Intel E7505を採用したIntel SE7505VB2


●性能面ではAthlon MP 2600+を圧倒したXeon 2.80GHz

 それでは、ベンチマークプログラムを利用してパフォーマンスをチェックしていこう。今回も、TMPGEncによるエンコード時間、Photoshop V7.01のアクションファイルを利用したフィルタ処理にかかった時間だ。計測のアクションファイルには、HI-FI( http://www.hi-fi.jp/index@hi-fi.html )で配布されていたHI-FI-Ultimate-Bench-PS7”を利用させて頂いた。

 HI-FI-Ultimate-Bench-PS7は、Photoshop 7で複数のフィルタをバッチ実行し、実行にかかった時間を計測するベンチマークで、複数のフィルタをまとめて計測できる優れものだ。数値は時間で、ここでは、数字が小さければ小さいほどパフォーマンスが高いことを示している。Photoshopはマルチスレッド対応のフィルタがいくつかあるので、その効果が確認できるだろう。

 テスト環境は以下の通りだ。今回は参考までに、HTテクノロジが有効になったPentium 4 3.06GHzの結果も合わせて掲載しておいた。ベンチマーク結果は、グラフ1、表1の通りだ。

【テスト環境】
CPUAthlon MP 2600+(Dual)Xeon 2.8GHz(Dual)Pentium 4 3.06GHz(HT)
チップセットAMD-760MPXIntel E7505Intel 850E
マザーボードGIGA-BYTE GA-7DPXDW+Intel SE7505VB2Intel D850EMV2R
BIOSバージョンF4SE7505VB20.86B.0012.B08.1014022156MV850.10A.86A.0038.P21
チップセットドライバAMD AGP V5.33+AMD IDEIntel 4.30.1006+Intel IAA V2.30Intel 4.30.1006+Intel IAA V2.30
メモリDDR266DDR266Direct RDRAM(1066MHz)
メモリモジュールPC2100(2.5-3-3)PC2100(2.5-3-3)PC1066-32
容量1GB
ビデオチップATI RADEON 9700 PRO(325MHz)
ビデオメモリ128MB(DDR SDRAM/620MHz)
AGP Apature Size256MB
ビデオドライバATI CATALYST 3.0 6.14.01.6255
標準解像度1024x768ドット/32bitカラー/85Hz
サウンドYMF-754R
EthernetIntel PRO/1000 MT Desktop Adapter
ハードディスクIBM IC35L040AVVN07-0(40GB)
光学ドライブTEAC DV-516E
フォーマットNTFS
OSWindows XP(SP1、DX9)

■ベンチマーク結果

【グラフ1】TMPGEnc MPEG-1エンコードフレームレート

 グラフ1はMPEGエンコーダソフトのTMPGEnc Version 2.51を利用したMPEG-1エンコード時のフレームレートだ。最も優れた性能を残したのはXeon 2.80GHzのデュアルで、44.7フレーム/sec、次がAthlon MP 2600+のデュアルで、39.8フレーム/sec、その次がHTテクノロジ有効のPentium 4 3.06GHzで37フレーム/secという結果となった。



【表1:Photoshop 7.01のベンチ結果】
 Athlon MP 2600+(Dual)Xeon 2.8GHz(Dual)Pentium 4 3.06GHz(HT)
雲模様 22.943
ノイズを加える0.90.70.6
水晶26.58.815
モザイク1.510.9
明るさの中間値46.3104.9182.3
アンシャープマスク6.92.73.2
光彩拡散16.812.311.6
ぼかし (詳細)107.179.273.1
シャープ(輪郭のみ)2.41.92.9
ウォーターペーパー31.531.228.4
ドライブラシ2834.931.7
輪郭以外をぼかす2.11.72.6
クロム24.420.319.3
墨絵30.827.825.6
明るさの最大値44.333.629.5
ハイパス9.17.28.8
エッジの光彩23.620.921
ぼかし(ガウス)4.722.5
逆光4.91.82.4
NTSC カラー3.832.8
水彩画27.92422.2
照明効果2.21.82.2
モード変換CMYKカラー3.73.34.4
モード変換Lab 5.56.78.7
モード変換グレースケールモード1.92.22.6
モード変換RGB 1.41.31.4
輪郭検出2.11.72.6
カラーハーフトーン5.23.22.9
極座標10.85.212.4
押し出し228.1102.797
ハーフトーンパターン1411.910.8
クラッキング34.927.424.8
プラスター1915.514.1
パレットナイフ41.93429.9
インク画 (外形)2520.118.2
拡散152.9103.688
ぼかし (放射状)301.9244.7445.2
合計1296.91009.21254.6

 表1はPhotoshop V7.01におけるフィルター処理にかかった時間だ。総合タイムでは、Xeon 2.80GHzのデュアルが1009.2秒と、Athlon MPおよびPentium 4 3.06GHzを引き離した。


●コストパフォーマンスではAthlon MP 2600+が優れる、選択はどちらを重視するか次第

 ご覧のように、現時点で両者のワークステーション向けとして最高の環境を比較するという条件であれば、Intel側に軍配をあげなければならないだろう。ビデオエンコーディング、静止画処理のいずれもXeon 2.80GHzのデュアルは高い性能を発揮した。

 ただ、コストパフォーマンスという観点では、Xeonの方はやや苦しい。例えば、Xeon 2.80GHzはCPU単体で約6万円、2つで12万円。マザーボードが安価なもので5万円、電源が1万5千円と計算して、合計で18万5千円という価格になる。

 これに対して、Athlon MP 2600+はCPUが単体で約3万5千円、2つ合計で7万円、マザーボードが約3万円、電源はATX電源がそのまま使えるので1万円として合計で11万円という計算になる。例えば、TMPGEncのフレームレートをコストで割ると、Xeon 2.80GHzは1万円で約2.4フレーム/sec、Athlon MP 2600+は約3.6フレーム/secという計算になる。コストパフォーマンスという観点ではAthlon MP側に軍配があがるといえる。

 以上のことから、純粋にパフォーマンスだけを追求するユーザーにはXeon、コストパフォーマンスも合わせて追求したいユーザーであればAthlon MPを筆者のお薦めとしたい。

バックナンバー

(2003年2月7日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.