■いっそ買い換えるならと 先日、引っ越しをしたので、ともに昭和生まれの冷蔵庫と洗濯機にお引き取りを願って、安物ながら新品に買い換えた。ところが、友引ってやつで、引っ越したとたんに平成ヒトケタのVHSビデオデッキ(以下VTR)も寿命が来てしまった。予定外の出費で相当痛い。いまさら、VTRを買うかという話はあるのだが、手持ちのパッケージもそれなりにあるし、自宅周辺のレンタル屋は相変わらずVHS中心なので、まだ無くなると不便だ。 VTR自体は、S-VHSでも1万円台、よりごのみしなければ数千円からごろごろしている。しかし、これを機会に、3系統しかないTVの入力を整理して、βかプレイステーション 2を復活させようと思いついてしまい、VHS付きのHDDビデオレコーダーという、ちょっと怪しげなジャンルに踏み込んでしまった。ビデオ入力を、DVD、VHS、HDDから、DVD、VHS+HDD、β(またはPS2)にしてしまおうというわけだ。 スイッチボックスを買って、きちんとDVD、VHS、HDD、β、PS2とすればいいのだが、リビングで家人も使うシステムなので、あんまり複雑にしたくなかったのだ(といいながら複雑な複合品を買ってしまうのがダメなところなのだが)。
■発売後時間がたった格安機を購入 Webでざっと調べてみると、VHS+HDDというのは、東芝、ビクター、三洋、松下から出ている。三洋、松下はバリバリの新機種だが、2機種以上出しているのはビクターだけで、すごく流行っているジャンルというわけではないようだ。購入を検討していた8月の時点で、ビクター HM-HDS1と東芝 A-F40G1が59,800円、サンヨー VZ-HD1Gが69,800円、松下 NV-HVH1が89,800円だった。発売もこの順だ。ちなみにVTRなしのHDDビデオレコーダー、ソニーCSV-S55「チャンネルサーバー」は89,800円だった。 急な出費ということで、今回はコスト優先(ならばVHSデッキだけ買えばいいのだが、もう思いつきが自走していて止まらない)、で東芝かビクターしかない。ビクターはS-VHSだがHDDが20GB、東芝はVHSだが40GBなので、HDD重視で東芝にした。 購入は、ヨドバシカメラの通販で59,800円(税別)、送料無料、ポイント還元は15%だった。ちなみに、A-F40G1は2001年の11月に出た製品で、当初は10万円ぐらいだったのが、処分価格扱いになっているようだ。 発注後、中2日で到着したが、いきなりHDD側のチューナーで視聴するとノイズが入る初期不良。確率の問題とはいえ、前途多難な雰囲気。交換ではなく、返品にしようかとも思ったが。まぁまぁと自分をなだめ、電話して送り返し、再度手元に届くまでまた中2日かかってしまった。
■現代のVTRに準じた各種仕様
気を取り直して再設置。S端子もない機種なので、接続はアンテナとコンポジットだけですぐ終わる。 デザインは、普通のVTRそのもので、フロントパネルはミラー調。HDDのある側と思われる正面右にはイルミネーションが青く輝くが、とくに機能はなく輝いているだけだ。 チャンネル設定は地上波が地区コードを入れるタイプ、CATVは自動選択だ。時刻あわせは、手動で設定後、教育テレビの時報を使ってオートで修正される。 番組の予約はEPGはなく、Gコードが前提で、予約番組数は16まで。このあたりは現在のVTRの標準的な仕様だ。チューナーはVTR用とHDD用に2個搭載されている。接続がコンポジットという制限はあるが、チューナーの品質はわりと良く、常時こちら側で見ていても違和感などはない。元々はそれなりの価格の製品だっただけに、このへんはおごられている。 リモコンはVTR用をベースに「HDD/VTR」、「ダビング」など、HDD向けのボタンが追加されている。このボタンからもわかるように、HDDとVTRはかなり独立した構造だ。入力と出力を共有しながら、内部は個別の機器が入っていると思った方がいい。 しかし、せっかくチューナーを2台積んでいるのに、HDDとVTRの同時予約録画はできない。予約録画の機構は共有されてしまっているらしい。 リモコンからHDD/VTRを切り替えると、いまどちらのモードかが、本体の前面パネルにも表示されるようになっており、操作するときは常にどちらを操作しようとしているのか意識する必要がある。ウチの使い方では、HDDが標準で、VHSは再生とHDDからのダビングのみなので、ほぼ常にHDDモードのままになっている。 起動はゆっくりとしており、電源スイッチを入れてから、HDD側のチューナーで選択されているチャンネルが表示されるまで10秒弱かかる。いったん起動してしまったあとは、かなりマシで、録画リストのサムネールなどからの起動は素早い。
■VTRを引き継いだための足枷 前に使っていた大宇のHDDビデオレコーダーに比べると、予約は簡単になり、予約数も少な目とはいえとりあえず倍増、時刻あわせもオート、画面の文字表示も離れていても見える(いや、当たり前のことなのだが)。しかし、やっぱりそうは問屋がおろさなかった。なんと、こいつは予約を入れて置いても、「タイマー入/切」スイッチが入っていないと録画してくれないという私にとっては致命的な欠点があったのだ。つまりHDDだと、上書きをするおそれがないので、HDDの容量が許す限り、どんどん録画するのが当然だと思っていたのだが、機構のベースがVTRなので、予約時は「タイマー入」になっていないと録画しないという、上書きを防ぐための機構をそのまま引き継いでしまっているのだ。しかもタイマーが入っているかどうかという表示はきわめて小さくしか表示されないので、HDDを操作したあとで、録画ミスのないように、本体のそばに行って確認する必要がある。せめて、イルミネーションの色も赤に変わってモードを判断できるようにするとか考えてほしかったところだ。
では常に「タイマー入」にしておけばいいかというと、それもできない。なぜなら、HDD録画した画像の一覧表示を行ない、編集や削除などの入り口になる「リスト」ボタンが「タイマー入時」には動作しないのだ。 再生ボタンを押すことで最新の録画画像を再生し、そこから頭出しボタンでさかのぼって、目的の番組を再生することはできるが、やっぱり一覧から再生できないのは不便だ。かといって、タイマーを切にして操作していると、最後に入にするのを忘れてしまいそうで怖い。結局、週に10本ぐらいの予約を入れ、毎週の番組を自動上書きするという使い方に、落ち着いてしまった。こうすると、HDDの残量を気にせずにするので編集機能などに触れないでも使える。しかし、しょせんは対処療法という気がして、釈然としない。
■新しい酒は新しい革袋に 約1カ月使った印象は、HDDのメリットが生かし切れていない半端な機種というものだ。とくに「タイマー入/切」の問題は一見つまらないことながら、かなり使い方に制限を与えている。これがないだけで、活用する気になり、だいぶ印象が変わると思う。失敗の原因は、HDDという新しい媒体に対して、新しい使い方を考えようというアプローチではなく、VTRの録画機能をそのまま使ってしまったことにあると思う。HDDならではの、見たいときにすぐ見られる、取りたいときにすぐ録れる、上書きがされないなどのいくつかのメリットは享受できるが、過去のしがらみにとらわれて、メリットを活かしきれていない。 VTRからHDD、HDDからVTRへのダビング機能なども用意されているので、複合機ならではのメリットはあるが、VTRの制限がHDDにまで悪影響を与えてしまっている。結局「新しい酒は新しい革袋に」ということのようだ。大宇も東芝も、録画予約機構でVTRという枠組みを捨てきれずに失敗している気がする。
□製品情報 (2002年10月7日) [Reported by date@impress.co.jp]
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