品名 | 大宇 DHD4000K |
購入価格 | 54,800円(税、送料別) |
使用開始日 | 2002年2月初旬 |
試用期間 | 約6カ月 |
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。 |
■TVをDVDみたいに見るための装置
まっとうな勤め人が、TVの連続番組をきちんと見続けることはたいへんに難しい。ましてや編集者には不可能に近い。これまでは、こういう場合、VTRで録画し、あとで見るというのが普通だったが、HDDビデオレコーダは、こういう視聴スタイルにきわめて有効なツールだ。HDDビデオレコーダの一番スバラシイ点は、記録するメディアの管理を気にせずに、いつでも録画できることだ。テープを上書きしてしまったことや、記録時間が足りず途中で切れてしまうなどの失敗の可能性がほとんどない。溜まったテープの処分に困ることもない(何かデータが入っているメディアは捨てにくいものだ)。
なんせリアルタイムで見ることがまったくなく、追っかけ再生などの機能を利用しない偏った使い方なので、こういうところに一番メリットを感じる。
ちょっと見たいだけの番組も録画して、DVDみたいに早回しでラクに見られる。つまらなければ、すぐに削除してしまう。これなら毎週3時間前後という視聴時間を増やして、すこしは浮世離れの度合いを解消することができるかもしれない。
もちろん、PCにチューナ付きビデオキャプチャボードという選択肢もあるが、TVとPCとは必ずしも隣り合って設置されているわけではないし、家電ならではの安心感もある。かほどに便利な機械なので、気がつけば編集部内の半数ぐらいが導入していた。機種はほとんどがソニーのClip-Onだ。
で、やっぱりこうなっちゃうと買えないわけですよClip-On(およびその後継機)。だいたい編集部内で1,2番目ぐらいまでは、そのモノの話をみんなが聞いてくれるけど4番目以降は、「こんどHDDビデオレコーダ買ってさぁ」、「やっと買ったんですか。何ですか」、「ソニーの」、「便利でしょう。だから早く買えばよかったのに」で終わりなのが見えている。
遅れて導入するからには、「すごく安く買えた」とか、「改良型を発売日に買って、差分の説明ができる」とか、「すごく変なもの」などの付加価値が必要なわけだ。
というわけで買いそびれていたときに目についたのが、AV Watch編集部にころがっていた大宇の「DHD4000K」。ざっとおさらいすると、製造は大宇電子、価格はオープンプライス。編集部がテスト用にコジマで購入したときの価格は54,800円。HDDビデオレコーダとしては格安。販売はコジマのみらしくほかでは見かけない。ちなみに通販価格は現在では43,800円まで下がっている。
「誰も使ってないなら、借りてっていい?」と聞いたら、「使うあてもないですから」と言ってすんなり貸してくれた。きっと私が、ショーウィンドウの前で欲しいトランペットを見ている子供のような顔をしていたに違いない。
海外メーカーの製品ということで、品質について不安な向きもあるかもしれないが、私は、ずっと以前に大宇のPC(386SXのPC/AT互換機)を販売していた経験があり、何十台かを売っても製品へのクレームはほとんどなかったので不安はなかった。正確にいえばPCとHDDレコーダの会社は異なるのだが、同じブランドなんだし。
■設置と設定はとてもシンプル
DHD4000Kのフロントパネルもリアパネルも、シンプルで、本当に最低限のスイッチや端子しかついていない。S端子がついているのが意外に感じるほどだ。電源と入出力のケーブルをつなげば終わり。初期設定は、チャンネル設定(自動)、時刻合わせ(手動)、録画品質のデフォルト設定ぐらい。これらの設定はTV画面で行なうが、文字が小さく、フォントも細めなので、ちょっと離れると文字の判別が難しい。予約のたびにTVの前に陣取る必要がある。このあたりはPCと同じ画面ではツライところで、家電ならではの工夫がほしいところだ。
また、初期設定メニューの各項目から、メインの画面に戻る方法が統一されていない。できの悪い携帯電話みたいで、ちょっとイヤな予感がした。
やや悲惨な自室での設置状況 | シンプルなフロントパネル | 必要最低限のリアパネル |
■気が利かない操作性
真っ先に、いつも見る番組を設定しようとしたら、なんと録画予約が8までしか設定できないので驚く。VTRなら、テープのハンドリングの問題があるから、これでいいのかもしれないが、これではHDDビデオレコーダの優位を半ば捨てているに等しい。これまで面倒で録画をしていなかった番組を片っ端から録画して見てやろうという野望は潰えた。こういうところこそ贅沢してほしいのに。ついでにいえばEPG機能などの予約補助機能も用意されていない。気を取り直して、常に見る4つほどの番組を「毎週」で予約。残りの4つは臨時用として使う。画質は、上からHQ、SP、LPと3モードあるが、HQは再生中に裏で録画ができず、LPは1度しか見ないにしても画質が低すぎるため、SPばかり使うようになった。印象としてはVHSの標準モード+αぐらいの印象で、録画した映像であることはわかるが視聴に支障はない。
これまたシンプルな予約画面 | ボタンの配置に一工夫ほしいリモコン |
予約を頻繁に行なうようになると、気が利かないことが多くて疲れる。たとえば、録画時間が重複している場合でも、開始と終了の時刻/チャンネル/録画品質などを全部入力して、最後に登録しようとするまで警告が出ない。開始時刻を入れた時点で、警告することは難しくないだろうに……。1つの番組を予約するのが面倒くさく感じるようになってきて、だんだん予約の頻度が減ってきた。
また、レコーダ内の時計がわりと狂いやすく、一月に数分ずれてしまう。3分早く始まって番組の最後が切れるようになったころから、前後に余裕をもって時間設定するようにしている。
操作はリモコンに集約されているが、リモコンのボタンの感触は柔らかく、はっきりしない。操作への反応が遅いので、よけいぐずぐずした感触がする。
リモコンのボタンの配置も悪い。早送りや巻き戻しなどの操作はパッド型になっているのだが、常用する「CMスキップ」ボタンが、下の方に飛び離れており、ボタンも小さく使いにくい。下の方の段はスペースが足りなくなって、機能別にする余裕がなかったようだ。
録画した番組の消去の操作も、番組ごとに、けっこうなキー操作が必要で、まとめて削除しているといやになる。HDDの容量が40GBもあるので、下手をすると20回ぐらい同じ操作を繰り返す必要があるのだ。選択したものだけを、まとめて削除できたりとか、保護したもの以外は古い順に自動的に削除される機能がほしい。
■ナゾのトラブル
また、再現性がなくて、理由がわからずに困っているのだが、予約録画にトラブルが起こることがある。週間予約を入れていると、ある週に限って録画されないことがある。一度設定をして、最初から3回目までは正常に録画されて、4回目がなぜか録画されず、5回目は録画されている。というようなことが、何度かおこった。録画されない回が必ず4回目とか、月の変わり目とかなら、なんとなく理由がわかるのだが、そういうわけでもないようだ。1月なにもないこともある。しょうがないので、どうしても見たい番組はそのつど予約するようにしている。これは長く使わないと絶対にわからないトラブルだし、どうしてこうなるのかわからない。
■勉強させていただきました
半年付き合った結論は、機能的には必要最低限のことはできるが使いにくい。しかも、仕事をまかせると、急にサボることがあるので常にチェックが必要、という、ちょっと情けないものだ。月並みだが、機能的にできるということと、使えるということは別のことだということだ。家電は空気のように使えて欲しいのだが、この場合それは難しいことのようだ。やっぱりPCと家電は必要とされるノウハウや必要とされるきめの細かさが違うのだろう。
また、この製品の仕様を確認しようと思ってもホームページすらないことも信頼を損ねる一因だ。というわけで、私の中にあった大宇というブランドへの信頼感はかなり低下した。
それにしても、HDDビデオレコーダはすごく便利だ。テープの使い分けや残量を気にしないで、どんどん取りだめができる。どんなに欠点がある機械でももう手放せない。ちょっと見る番組がたまったときでも、簡単に次に飛ばし見ができるので、短い時間で視聴できる。予約がうっとおしくて見る番組は増えないが、いつも見る番組の視聴時間はだいぶ少なくなった。
次の番組に飛ぶときに、テープの巻き戻しや早送りを待たなくてすむのも気持ちがいい。DVD系のレコーダでも、これは実現できるが、容量が限定されてしまうので、メディアの使い分けを考えねばならない。たぶん、次もHDDだけもしくは、HDDに録画してDVDに書き出し可能なレコーダを購入すると思う。
最後に、「大宇 DHD4000K」とのつきあいで勉強させてもらった、私なりのHDDビデオレコーダに必要な条件を挙げて締めとしたい。
1)正確に録画するために、なんらかの時刻補正のしくみは必須
2)簡単に録画予約をするために、EPG機能か、せめてGコード予約ぐらいは必要
3)たまったデータのメンテナンスの方法が簡単なこと
そして、一番重要なのは、信頼できるメーカーの製品を選択するということだろう。
(2002年8月19日)
[Reported by date@impress.co.jp]