品名 | ソニー SVR-515 |
購入価格 | 88,000円(税別) |
購入日 | 2001年12月 |
試用期間 | 約10カ月 |
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。 |
■2001年はHDD録画元年だった
HDDレコーダが欲しいと思うようになったのは、2001年の春ぐらいだった。ケータイWatchの記事でも、ソニーのClip-On(SVR-715)が紹介されており、実際にEPG(電子番組表)による番組録画を見たときには、「これは便利」と強烈な印象が残った。
もともと筆者はビデオ録画を熱心に行なう方でもなく、特に3年前に引っ越してからは、ビデオでTV録画をしていない(そもそもTVアンテナとビデオを接続していない)というくらいTV録画にこだわりがない。TV録画をしなくなったのは、以前使っていたデッキが壊れて、手持ちのビデオデッキがS-VHSですらないノーマルなVHSデッキだったのでやる気がなくなったこと、引越ししてから配線するのが面倒くさかった、などの複合的な理由によるものだ。
しかし、折りしも2001年は、PC上でもTVチューナ付きのMPEGキャプチャカードによるTV録画に火がつき、カノープスのMTV-1000などの大ヒット商品が出た年。まさにPC業界の2001年のトレンドはTV録画だったわけだ。もちろんPCでのTV録画に踏み切ってもいいのだけれど、狭いワンルームに住む身としては、一日中PCの電源を入れておくのもあまりよろしくない。ということで民生用のHDDレコーダの導入を検討し始めたのだった。
■ なんだかんだでClip-Onを買ったわけですよ
Clip-On(SVR-515) |
最初の第一候補はこのジャンルの先鞭を切ったソニーのClip-On。2001年の夏ごろには編集部界隈でも続々とClip-Onユーザーが誕生しており、「皆と同じものもつまらないから次世代機を……」などと思いながら、他社の魅力的な新製品を横目にClip-Onの次モデル待ちに入って数カ月…… しかし待てども新機種はなかなか出ない。
結局痺れを切らせた12月、Clip-Onの最廉価モデル「SVR-515」の購入へと至った。購入価格は88,000円。5月の発売当初は、13万円前後という価格だったが、年末まで次期モデルを待ち続けたため、思いのほか安く購入できた。
購入前には、その年の11月に発表された東芝の「RD-X1」や松下電器から発売された「DMR-HS1」など、HDDプラスDVDにも記録可能なハイブリッド型のレコーダに心惹かれるものがあった。しかし、価格がともに10万円を超えていたこと(特にX1は確か15万円程度だった)と、その2製品が品薄だったため手ごろなClip-Onが魅力に思えた(差額でDVD-Rドライブも買えるくらいの差があった)。また、決定的だったのは、Clip-Onが、EPGに、唯一対応していた民生用レコーダーだったということが挙げられる。PC上では標準的な機能であるEPGだが、実は民生用レコーダーでの採用例は今でも少ない。購入より先にPC上でのTV録画は体験していたので、EPGの一覧性のよさと簡便さは絶対欠かせないものだった。■ 早速箱をあけて導入してみる
早速箱をあけて設置してみる。アルミパネルとブルーLEDのフロントマスクの高級感は十分。HDD 2基搭載で60GB容量の上位モデル「SVR-715A」などでは、一体成型のボディ全体にアルミを採用しているが、筆者の購入した「SVR-515」では、プラステチックモールドとなっている。といっても前面は「715A」と共通で、普段見るのは前面だけなので、これで低コスト化が図れるのなら全然問題は無い。
SVR-715A(左)とSVR-515(右)の比較。やっぱり715Aの方がだいぶ格好いいかも…… |
予約確認画面 |
早速、接続し電源を投入してみる。が、目当てのEPG番組表が取れない。購入したときに、販売員氏が「番組表は朝と夕方の大体2回位更新されるので、最初に使うときは1日位待ってください」といわれたことを思い出す。PC上のiEPGはインターネット経由でアクティブに番組情報を取って来れるが、Clip-OnのEPGでは地上波データと一緒に定期的に番組表が更新される。そのため、最初の1日(数時間)はEPGが利用できない。ちょっと想定していなかったが、考えてみれば当たり前のことだ。このあたりでもアクティブに何でもできるPCと家電製品の違いを感じるが、一度データが取得できれば何の問題も無く利用できる。
起動音は結構静かで、ほとんどHDDの回転音やリード/ライト音だけといった感じだ。内蔵しているHDDの種類は確かめていないが、それなりにシーク音などはする。しかし、PCで録画マシンを作るよりは静かだろう。TV番組の再生などをすればほとんど聞こえなくなるレベルだ。
本体背面 | Gガイド(EPG)対応を示すロゴ | 付属のリモコンで全ての操作を行なう |
ちなみにEPGのデータ更新は、大体日に2回位のようだが、突然HDDの起動音がして25秒ほどディスク回転音がする。筆者宅では、大体朝の4時ぐらいに更新されているようで、眠りが浅いときや昼寝中は、まれにそれがきっかけで起きてしまうことがある。といってもそんなにうるさいものではないのだが。
■ とにかく便利! EPG録画
なお、「715A」では対応しているGコード予約だが、「515」では対応していない。個人的には、ほぼ100%EPG予約で利用しているので、使う機会も無いかと。ということで、個人的にな利用スタイルは、EPGを利用して、週に1、2度まとめて録画予約し、気が向いたときに見るといったスタイル。EPG予約は時刻別、チャンネル別、ジャンル別の各選択画面が用意されているが、個人的にはもっぱらチャンネル別を使っている。もちろんEPGを使わないタイマー予約なども可能だ。
EPG予約は3つのモードが用意される | ||
チャンネル別 | 時刻別 | ジャンル別 |
購入直後は、久しく見ていなかった連続TVドラマを見たりなど大活躍だったが、最近はもっぱらスポーツやら、特番の予告を見たらすぐに録画といったスタイルになっている。時間をちゃんと覚えていなくても、適当な日付とチャンネルの見当さえ付けば、録画できるというのはとてもありがたい。たいして見たくは無いけれどちょっと気になるものも、ガシガシ録画し消している。一見ビデオ録画と同じように思えるが、予約の簡便さと、すぐに消せるお手軽さというのは、想像していたよりはるかに気楽なもの。放送時間に縛られなず自分の時間の自由度を上げてくれる。
HDD容量は40GBで、録画モードは「HQ(MPEG-2/11.5Mbps)」、「SP(MPEG-2/5.8Mbps)」、「LP(MPEG-2/2.8Mbps)」の3種類が用意される。録画時間はHGが約6時間、SPが約13時間、LPで約26時間となっている。TV番組を記録する分にはSPで十分と感じる(すくなくともノーマルVHSの安物デッキでとるよりはよっぽどいい)ので、もっぱらSPモードを利用している。LPは明らかに画質の劣化が感じられるので使っていない。
また、購入直後はより大容量なHDDへの換装も考えたが、サポート外となるし、どうにも面倒くさい。ソニーも期間限定で80GBへの増設サービスを行なっていたが、なにより価格が高い(45,000円)。そのうち自分で録画するけれど見ない番組というのがわかるようになってきたので、40GBという容量にもあまり不自由を感じていない。ちなみに715Aでは、AV Watchのfurukawa氏が増設して、レポートを(編集後記で)掲載しているのでこちらをご覧いただきたい。
ということで、TV視聴に関しては、40GB/13時間のバッファを手にしたようなもの。個人の時間の自由度を拡げるツールとして、こうしたHDDレコーダは本当に便利なものだと思う。個人的には近年買った家電製品の中で、最も自分の生活に大きな変化をもとらしたものといえる。
■ 不満点っていうか
もちろん不満点もある。まず第一は、なんといっても書き出しができないこと。といってもMPEG-2で出力し、PC側のキャプチャカードなどを使えばキャプチャはできるが、画質劣化もあるし、そもそも実時間でしかキャプチャできない。
もちろんこのあたりは、著作権がらみの問題もあるので、この製品でどうにかするというよりは、2次利用しやすい形での保存やライブラリの作成を主眼とする人は、PCでキャプチャデバイスを利用するか、DVDレコーダやDVD/HDDハイブリッドレコーダを買うというのが正しい選択だろう。個人的には、保存することが必要ならば、PC上でキャプチャすればいいと考えているので、Clip-On自体で書き出せないことはあまり問題ではないと思う。
ちょっと気になるのは、使い込むにつれ、若干起動時間が遅くなってきたこと。購入時は10秒足らずで起動していた筈だが、10カ月近く経過したいまでは、20秒くらいかかっているようだ。HDDを増設した(サポート外となった)furukawa氏の715Aは30秒程度起動にかかっているということなので、ディスクの断片化とかそういった症状ではないかと推測しているのだが……。
また、Clip-On固有の問題ではないが、EPGデータを取得後に、例えばプロ野球中継で延長などが入ると、録画途中で切れてしまったりする。プロ野球シーズンが始まって、あまりにも寸断が多いので、録画頻度がかなり減ったような気がする。もちろんきちんと番組表を見ながら、予想される延長時間を設定すればいいのだが、もともとTV録画にかける情熱が無いので……。
ちなみに、編集機能などの細かい機能も充実しており、個人的には音楽番組から決まったクリップだけを取り出して、しばらく保存するとかいった際にチョコチョコ使っている。とりあえず、説明書を読まずに簡単な操作ができるようにUIが洗練されているのもありがたいところだ。
■21世紀はハードディスク録画
購入からはや10カ月、「Clip-On」のブランド名も既に消滅しており、後継機となるチャンネルサーバーも発売されている。ちょうどこのレポートを書いている9月4日にはチャンネルサーバーの新製品「コクーン(CSV-E77)」が発表された。地上波チューナとMPEG-2エンコーダを2系統搭載するほか、Ethernet端子を装備し常時接続に対応。月額300円のインターネットサービスを申し込むと、10分ごとに予約状況を確認できるというすばらしい仕様。筆者のように会社でもほぼ常時インターネットを見ている環境であれば、野球中継の状況を見ながらリモートで予約時間の調節も可能だ。これだったら野球による順延で番組を取り逃がすことも少なくなりそう……。
正直、HDDレコーダに関して、いままでソニーのやる気はいまいちよくわからない(注目製品なのに他社に比べるとレコーダのプッシュが弱い気がする)という印象を受けていたが、DVD搭載のモックアップも展示しているなど、かなりやる気のようだ。などと、買い替えに少しずつ心が動きつつある……。
しかし、EPGによる簡便な予約録画を民生機に持ち込んだという意味で、このClip-Onシリーズの果たした役割は、とても大きいと思う。個人的にはこのSVR-515を購入したことはTV視聴のスタイルは大幅に変わった。家電製品によってもたらされた、ここ数年でもっとも大きな変化といえると思う。20世紀でテープメディアは打ち止めで、2001年にHDDに移行したというか、明らかにパラダイムが変わったということが実感できた。
とにかく、HDDレコーダを導入していない人には、本当にお勧め(Clip-Onはもう売っていないけど)だし、各レコーダメーカー様にはぜひEPG予約の実装をお願いしたい。
□ソニーのホームページ
http://www.sony.jp/
□製品情報
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200104/01-0413/
□関連記事
【2001年4月13日】ソニー、HDDビデオレコーダ「Clip-On」の40GBモデル
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20010413/sony.htm
【2001年7月】SVR-715A分解記(AV Watch編集後記)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/kouki/svr715a.htm
【2001年1月11日】カハードディスクビデオレコーダーで極楽テレビ生活(ケータイ)
ソニー Clip-On「SVR-715」
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/toys/0,,3157,00.html
【9月4日】ソニー、D1出力装備の160GB HDDビデオレコーダ(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20020904/sony.htm
(2002年9月9日)
[Reported by usuda@impress.co.jp]