レビュー

iiyamaPC「Lev-R017-i7-TM」

~主力のゲーミングミドルタワー「LEVEL∞ R-Class」を内部まで検証

Lev-R017-i7-TM

 iiyama PCのゲーミングブランド「LEVEL∞」(レベル インフィニティ)より、ミドルタワー型ゲーミングPC「Lev-R017-i7-TM」が発売された。ゲーミングPCとしては主力製品となるATXミドルタワーケースを採用した「LEVEL∞ R-Class」にラインナップされた製品で、Intelの最新CPUであるSkylakeと、NVIDIAの最新GPUであるMaxwellアーキテクチャのGeForce GTX 900シリーズを組み合わせた構成となっている。

 今回ご紹介する「Lev-R017-i7-TM」は、Core i7-6700とGeForce GTX 970という組み合わせ。税別価格は142,980円。ここではベンチマークテストや使用感に加えて、「LEVEL∞ R-Class」で使用されているミドルタワーケースについても、外見から内部まで詳しく見ていきたい。

性能とコストのバランスがいい「LEVEL∞ R-Class」

 「Lev-R017-i7-TM」の主なスペックは下記の通り。

【表1】Lev-R017-i7-TMの仕様
CPUCore i7-6700
マザーボードIntel Z170
GPUGeForce GTX 970(4GB)
メモリ8GB DDR3-2133(4GB×2)
HDD1TB
光学ドライブ24倍速DVDスーパーマルチ
電源500W(80PLUS SILVER)
OSWindows 8.1 Update
販売価格(税別)142,980円

 スペック上では各パーツのメーカーおよび型番の指定はされていないため、実機でどうなっていたかも合わせてお伝えする(※実際の製品では同等製品と変更になる場合がある)。

 CPUはCore i7-6700。CPUファンはリテールファンが使用されていた。マザーボードはMSI製で、基板上には「Z170-S01」と書かれている。同名のマザーボード単体製品は発売されていないが、拡張スロットはPCI Express 3.0 x16が2つ(x16/x4動作)、x1が4つという構成。M.2スロットは1つ、SATA Expressは2つ搭載しており、機能的にはベーシックなものだ。

 ビデオカードはGeForce GTX 970。リファレンスデザインらしきシングルファンを搭載しており、外見にはメーカーや製品名を示すものはない。ツールを使用してもベンダー名はNVIDIAとしか出なかった。

 メインメモリはTeam製のDDR4-2133で、4GB×2のデュアルチャネル構成。ストレージは1TB HDDで、今回はSeagate製の「ST1000DM003」が使用されていた。電源は500Wで80PLUS SILVERとされており、今回はFSP製「FSP500-50ERN」が使用されていた。

 OSはWindows 8.1 Update。借用したPCでは、起動直後にWindows 10へのバージョンアップを促された。「LEVEL∞ R-Class」では現状、Windows 8.1 Updateが標準仕様となっているが、カスタマイズメニューにおいてWindows 10も選択できる。最初はWindows 8.1を使っておいて、遊んでいるゲームがWindows 10に正式対応した時点でバージョンアップするという手もあるので、状況に応じて選んでいただきたい。

 本機の構成的にはハイエンド一歩手前という感じだが、「LEVEL∞ R-Class」としては幅が広い。下はCore i5-6500とGeForce GTX 950の組み合わせで103,980円。上はCore i7-6700KとGeForce GTX 980 Tiに水冷CPUクーラーとM.2接続の256GB SSD、16GBメインメモリを搭載して229,800円。融通の利くミドルタワー型だけあって、どの構成でも価格が控えめなのが魅力だ。

4Kゲーミングも現実的なスペック

 続いて各種ベンチマークソフトのスコアを見ていきたい。

【表2】Lev-R017-i7-TMのテスト環境
CPUCore i7-6700
GPUGeForce GTX 970(4GB)
メモリ8GB DDR3-2133(4GB×2)
HDD1TB(Seagate ST1000DM003)
OSWindows 8.1 Update 64bit

 利用したベンチマークソフトは、「3DMark v1.5.915」、「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」、「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク」、「バイオハザード6 ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」、「CINEBENCH R15」、「CrystalDiskMark 5.0.2」。

 ベンチマーク結果を見ると、フルHDでのゲーム系ベンチマークは、どれも最高画質で最高評価が得られている。そこで4K(3,840×2,160ドット)を設定できる「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」でテストしてみたところ、3,193(やや快適)という結果になった。最高画質でこのスコアなので、画質設定を調整すれば4Kでも快適に遊べるだろう。

 逆に言うと、4Kゲーミングを意識するなら、このくらいのスペックは欲しいところ。もちろん画質を下げればフレームレートは上げられるが、「解像度は高くなったが表現力は落ちた」というのは果たして幸せかどうか。好みは分かれるところだが、コストと快適さを天秤にかけると、この辺りが妥当かなという気もする。

 CPUは「CINEBENCH R15」の結果から、シングルコアでの能力が非常に高いのが分かる。マルチコアでも4コアのCPUとしては十分に優秀で、ゲーム以外の用途でも幅広く活躍できそうだ。動作音もCPUの負荷だけならほとんど変化がなく快適である。

【表3】ベンチマークスコア
「3DMark v1.5.915 - Fire Strike」
Score9,681
Graphics score11,162
Physics score11,947
Combined score4,247
「3DMark v1.5.915 - Sky Diver」
Score26,031
Graphics score35,955
Physics score11,266
Combined score23,577
「3DMark v1.5.915 - Cloud Gate」
Score27,657
Graphics score74,762
Physics score8,629
「3DMark v1.5.915 - Ice Storm Extreme」
Score152,795
Graphics score307,399
Physics score55,355
「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」
3,840×2,160ドット/最高品質/DirectX 113,193
1,920×1,080ドット/最高品質/DirectX 1110,900
1,920×1,080ドット/最高品質/DirectX 913,727
「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク」
1,920×1,080ドット/最高品質10,778
「バイオハザード6 ベンチマーク」
1,920×1,080ドット15,877
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」
1,920×1,080ドット/簡易設定584,654
「CINEBENCH R15」
OpenGL126.50fps
CPU817cb
CPU(Single Core)170cb

 ストレージはHDDのみ。今回使用されていたSeagate製「ST1000DM003」は、1TBプラッタで比較的高速なモデルではあるが、できればSSDも搭載したい。カスタマイズではPCI Express接続のM.2 SSD「Plextor M6e」のほか、SATA接続の2.5インチSSDも各種選択できるので、より快適な環境を求める方にお勧めしたい。

【CrystalDiskMark】HDD(Seagate ST1000DM003)

高級感と低価格を両立させたオリジナルケース

 次は本機の使用感について語りたい。使用されているミドルタワーケースは「LEVEL∞ R-Class」のオリジナルで、冷却性を重視したゲーミングケースとなっている。そのため内部の動作音はそれなりに漏れるが、ベンチマークテスト中でも各種ファンが全力で回るわけではないので、ゲーム中に気になるほどの騒音は出ておらず、性能なりの騒音という印象だ。

 外見は全体がほぼブラックの中に、レッドのアクセントが入ったもの。前面パネルはフラットで、表面はヘアライン加工されている。光学ドライブ(5インチベイ)部分は少しくぼんだ形で、右側がコの字にカットされた特徴的な加工が施されている。それ以外にはLEVEL∞とiiyamaのロゴがあるのみで、インジケーター類はない。

前面パネルはヘアライン加工されたプレートで、インジケーター類はない
光学ドライブ部分は右側を削り取ったようなユニークな外見。レッドの縁取りも目を引く

 上から見ると、手前側が少しくぼんだ形状になっており、そこだけ色がレッドになっている。そこにUSB 3.0端子が1つ、USB 2.0端子が2つと、ヘッドフォン、マイク端子が上向きに用意されている。右隅には横から押す形の電源ボタンがあり、電源LEDもそのすぐ脇に付いている。左側にはHDDアクセスLEDがある。その後方にある天板はブラックで、空気穴などもないフラットな板になっている。

 左側面は、前方に空気を取り入れるスリットがあるほか、側面パネルも大きなメッシュで空気が入るようになっている。右側面も前方はスリットになっているが、側面は少し膨らんでいるだけで、穴は開いていない。

 背面は上部に12cmファンと、水冷チューブを通す穴を用意。電源は下部装着型で、ほかはI/Oパネルと拡張スロットというシンプルな構成だ。底面も見てみると、電源ファンを底面に向けるためのメッシュがあり、取り外しも可能なフィルタが装着されている。さらに隣には12cmファンを装着できるメッシュ穴がもう1つ用意されている。

インジケーターや端子類、電源ボタンは上部前方に用意されている
天板は端子部を除いてフラットな形状
左側面は広いメッシュで空気が出入りする
右側面は少し出っ張った形状
背面は12cmファンと水冷チューブ用の穴がある。電源は下部にある
底面には電源の吸気用メッシュと、12cmファンのスペースがある

 続いて内部を見ていこう。内蔵ドライブベイは、5インチが1つ(光学ドライブで使用済み)、3.5インチが4つ(HDDで1つ使用済み)、2.5インチが1つ。5インチベイは3つあるように見えるが、前面パネルの5インチベイの開口部が1つしかない。HDDの静音ケースやマウンターなど、外部に見える必要がないものなら装着が可能かもしれない。

 3.5インチベイはトレイ式になっており、楽に脱着ができる。またトレイには2.5インチドライブの装着も可能だ。2.5インチベイは3.5インチベイが入るスペースの下、本体最下部にあり、底面からネジ止めする形になる。SSDならば振動を考慮する必要もないので、この取り付け方でも問題はなさそうだ。また3.5インチベイの上部にも、2.5インチドライブが装着できそうなスペースが用意されている(スペックシート上では、2.5インチベイは1つとされている)。

 ケース内部で特徴的なのは、3.5インチベイの数をあえて減らした形跡が見られるところ。元々は3.5インチベイを7つ用意できるようだが、そのうち上部の3つ分を削ってある。このおかげで、ビデオカードの奥のスペースに余裕ができ、ハイエンド製品も余裕をもって利用できる。SLIにした場合は、下の方のカードが3.5インチベイに干渉しそうな位置にあるが、SLIにするならフルタワーケースを採用した「LEVEL∞ G-Class」を選べということだろう。事実、「LEVEL∞ R-Class」にはBTO時にSLI構成を選ぶためのメニューが存在しない。

 配線は裏面(ケース右側面)も使えるため、マザーボード上はすっきりとした配線にできる。今回は電源のケーブルが着脱式でないため、不要なケーブルが3.5インチベイの上部にくくり付ける形でまとめられている。マザーボードの上はほぼ空けられていて、メモリや各種ケーブルの着脱の邪魔にはならない。エアフロー的にも問題はなさそうだ。

左側面パネルを外した状態での内部の様子
5インチドライブベイは3つあるように見えるが、前面パネルの開口部が1つしかない
3.5インチドライブベイは4つ。トレイ式で2.5インチドライブも固定可能
3.5インチドライブベイの下部、本体底部に2.5インチドライブベイがある
3.5インチドライブベイの上部にも2.5インチドライブが固定できそうに見える
3.5インチドライブベイがさらに3つあったと思われる場所は空洞。大型ビデオカードも余裕をもって取り付けられる

 また今回使用されている電源とマザーボードのレイアウト的に、EPS12Vの8ピン端子が電源からかなり遠い位置にあるため、ケーブルの長さの都合でビデオカード下の隙間を通す形になっている。PCI Expressのカードを追加する時には、延長ケーブルを使用するなどの対処が必要だろう。最も、ビデオカード以外に拡張・交換しないのであれば何ら問題はない。

 ファンは後方にある12cm角ファン1基のみ。前面にはファンがないものの、12cmファンを2基取り付けられるスペースがあり、フィルタも取り付けられている。ただ前面パネルにはUSB端子やオーディオ端子のためのケーブルが繋がっており、完全には取り外すことができないので、増設時やメンテナンスにはやや苦労するかもしれない。

 マザーボードを載せるベースプレートは、CPU部分だけがくりぬかれている。後からCPUファンを交換したい時に、マザーボードを取り外すことなく作業ができるよう配慮されている。

電源が底部にあるため、EPS12Vの8ピンケーブルがやや苦しい取り回しに
背面に12cm角ファンが1基。ケースファンは今回これだけだった
右側面パネルを外したところ。マザーボードのCPU裏が開いている
前面パネルは両側面のパネルを取ってから外す。ただし上部には各種ケーブルが付いてくるので完全には外せない
CPUはリテールファンを使用している
ビデオカードはラベルらしきものすらなく、真っ黒な仕上がり

 機能的にはベーシックながら、ドライブベイを減らして大型のビデオカードも使用できるようにするなど、ゲーミングPC向けのアレンジがなされているのが分かる。側板や天板は薄いため、軽量だが取り外すとたわみやすい。ただ骨格部分の剛性は保たれており、シャーシ自体にたわみは感じない。

 実際に見てみて好印象だったのは、ケース内部の至るところまできっちりとブラックに塗装されていること。側板の裏側や多くのネジまで色が統一されているため、側面パネルを開けてもケース全体としての一体感がある。側面パネルに透明なアクリルパネルがあれば、内装のアレンジも楽しめるものになりそうだ。統一された塗装とレッドのアクセントにより、高級感すら漂わせる。

 ケースそのものの設計としてはかなり安価な部類に入るものと思うが、コストを削るところは削り、高性能なゲーミングPCを安価に提供するのも重要なことだ。とはいえ作りは丁寧で、断じて粗悪品ではない。今回のケースの評価も、「自作ユーザーがこのケースを使うならどう思うか」という視点で見たもので、買って使うだけなら全く疑問点はない。「外見で気に入ったから選ぶ」という選択でも後悔しない品質があることは断言しておきたい。

(石田 賀津男)