レビュー
これだけ覚えればバッチリ。「Vegas Pro 13」使い方の基本
~今5千円で買えるプロ向け映像製作ソフト
(2016/3/15 06:00)
既報の通り、ソースネクストはSony Creative Software製ソフト16製品を対象に、期間限定の割り引きキャンペーンを開催している。その中の目玉が映像製作ソフト「Vegas Pro 13 Editダウンロード版(以下Vegas)」。1万本限定ながらプロ向け映像製作ソフトが92%割り引きの税別4,980円で販売されているのだから、値ごろ感が非常に高いのは間違いない(執筆時点ではまだ販売中)。
とは言え、そもそも映像製作ソフトに対して、ことに「プロ向け」という言葉からハードルの高さを感じている人も多いことだろう。そこで今回は1本のショートムービーを製作しながら、Vegasの基本的な使い方を解説していきたい。
映像製作の一般的な流れ
Vegasに限らずどの映像製作ソフトを使用する場合でも、基本的な作業の流れは下記のようになる。
- ビデオを選ぶ
- ビデオをトリミングする
- ビデオをタイムラインに配置する
- トランジション、エフェクト(ビデオFX)を適用する
- 再生スピードを変える、逆再生する
- ビデオをクロップする
- テロップ(テキストメディア)を入れる
- BGMを入れる
- ムービーとして書き出す
実際にムービーを製作してみると分かるが、作業の大部分は(1)~(3)の工程が占めている。適切なビデオを適切な長さで適切な順番に配置することが映像製作においてもっとも重要な作業であり、(4)~(8)の工程は映像の品質を少しでも向上させるためのものと言っても差し支えないと個人的には考えている。さて、まずはVegas起動時の画面を見てみよう。
上記画面のAがビデオやオーディオ、テキストなどのメディアを配置する「タイムライン」エリア、Bが「プロジェクトメディア/エクスプローラ/トランジション/ビデオFX/メディア ジェネレータ」などを切り替える多機能エリア、Cがメディアの一部分を切り出す「トリマー」エリア、Dが映像の仕上がりを随時確認するための「プレビュー」エリアだ。
Bのエリアにはタブによって複数機能が割り当てられており少々ややこしいが、追ってそれぞれのタブの使い方は解説する。ここでは、さまざまな用途に利用するためのエリアとだけ覚えておいて欲しい。それではパートごとの操作方法について解説していこう。
(1)ビデオを選ぶ
まずVegasでの製作に入る前に作業用フォルダを準備しておこう。フォルダ作成に特にルールはないのだが、筆者は「日付け_作品名」でフォルダを作成した上で、その中にMOVIE、PHOTO、AUDIOの3つのフォルダを作り、それぞれのメディアファイルを保存している。
ビデオ、フォト、オーディオファイルを1つのフォルダにまとめても構わないが、それぞれのフォルダ内のファイル数が少ない方が目的のメディアを見つけやすい。作業効率は上がるはずだ。
さてVegasを起動したら、まず「エクスプローラ」タブをクリックし、メディアファイルを保存したフォルダを開くわけだが、初回起動時はメディアファイルがファイル名だけで一覧表示される。このままではムービーを選びにくい。右上の「表示」を「サムネイル」に設定して、ビデオのサムネイルを表示しよう。
ビデオをサムネイル表示に変更したら、1つずつその中身を確認しよう。Vegasの場合は、サムネイル上で右クリックすると表示されるメニューから「メディアの再生」を選ぶと、「トリマー」エリアですぐにビデオが再生される。そのビデオを使わないのなら、次のビデオの確認に移ろう。
作品に使用したいビデオがあったら、サムネイル上で右クリックすると表示されるメニューから「プロジェクト メディア リストに追加」を選択する。ここで追加したビデオは、「プロジェクト メディア」タブをクリックすると一覧表示される。つまりこの工程で使用する動画、使用しない動画を選別するわけだ。
(2)ビデオをトリミングする
使用するビデオを選んだら、今度はそれぞれのビデオから使用する範囲を切り出す(トリミングする)。長い動画は退屈しやすいので、できるだけ無駄な部分をカットするのは重要な作業だ。
サムネイル上で右クリックすると表示されるメニューから「トリマーで開く」を選ぶと、そのビデオが「トリマー」エリアに表示される。「トリマー」エリアの映像のすぐ下には、映像の開始位置(インポイント)と終了位置(アウトポイント)を設定するバーがある。黄色のつまみをドラッグして、使用する範囲を設定する。
使用する範囲が決まったら、「トリマー」エリア下部にある「サブクリップの作成」アイコンをクリックする。サブクリップには名前を付けられるが、ビデオの数が多くなければサムネイルで中身を判断できる。必ずしも名前を付ける必要はないだろう。
この作業を「プロジェクト メディア リスト」に追加した全てのビデオに対して行なったら、映像製作の最初の山場は終了だ。
(3)ビデオをタイムラインに配置する
ここまで細かな作業が続いたが、この工程は映像全体の構成を決める山場であり、作品作りの醍醐味を味わえるパートだ。想い出などを振り返りながら楽しく作業しよう。
このパートの操作方法は簡単だ。「プロジェクト メディア」エリアから、再生したい順番にビデオのサムネイルを画面下部の「タイムライン」にドラッグして配置していけばいい。もちろん一度ビデオを配置しても削除できるし、「Ctrl」キーで複数選択して移動や入れ換えも可能だ。
ここまで作業したデータを書き出し(レンダリング)したのが下記の動画だ。
これだけではあまりにも説明不足だ。以降のパートで映像作品としてのクオリティを向上させていこう。
(4)トランジション、エフェクト(ビデオFX)を適用する
Vegasには豊富なトランジションやエフェクト(ビデオFX)が用意されている。多用するとせわしない映像作品になってしまうが、トランジションは場面転換などで使うとシーンが変わったことがはっきりするので分かりやすい動画となる。
トランジションを適用するには「トランジション」エリアから目的のトランジションを選び、そのサムネイルをドラッグしてビデオとビデオの間に配置すればいい。ちなみにエフェクト(ビデオFX)は「ビデオFX」エリアからサムネイルをドラッグしてメディアの上に配置する。
VegasのトランジションとビデオFXのサムネイルはアニメーション表示されるので、名前しか表示されない映像製作ソフトより断然分かりやすい。なおパラメーターを変更することでトランジションやビデオFXの効果を調整可能だが、Vegasの機能に習熟してから試してみればいいだろう。
(5)再生スピードを変える、逆再生する
コミカルな映像作品によく利用されるのがスローモーションや逆再生だ。Vegasはスロー再生(タイムストレッチ)や高速再生(圧縮)を、タイムラインで「Ctrl」キーを押しながらビデオの長さを変えるだけで設定できる。「プロパティ→ビデオ イベント→再生レート」でも変更可能だが、ビデオの長さを変える調整方法の方が直感的だろう。
逆再生はビデオを右クリックすると表示されるメニューから「逆方向」を選ぶだけ。コミカルなシーンを繰り返し再生したい時などに積極的に活用したい。
(6)ビデオをクロップする
ビデオの特定箇所にズームしたい時は「クロップ」機能を利用する。ビデオを右クリックすると表示されるメニューから「ビデオ イベント パン/クロップ」を選択すると、「ビデオ イベントFX」ウィンドウが開かれる。初期状態では現在のフレームを示す点線が外枠と重なっているので、適当なサイズに点線の枠を縮小して、その枠を切り出したい部分に移動すればオーケーだ。このウィンドウで操作した時点でクロップ(切り出し)はビデオに反映されているので、変更がなければ右上の「閉じる」ボタンをクリックしてウィンドウを閉じよう。
(7)テロップ(テキストメディア)を入れる
ナレーションなどが入っていないなら最低限の状況説明は必要だ。分かりやすい映像作品に仕上げるためにテロップを入れよう。
最初にビデオトラックを1つ追加する。タイムライン左端の「トラックヘッダー」で右クリックすると表示されるメニューから「ビデオ トラックの挿入」を選べば、ビデオトラックが1つ追加される。そして「メディア ジェネレータ」タブの「タイトルおよびテキスト」から、プリセットのタイトルを1つ選んでタイムラインに追加する。今回は「アクションフリップ」を使用した。
プリセットのタイトルをタイムラインにドロップすると、「ビデオ メディア ジェネレータ」が開かれる。このウィンドウのテキスト欄に任意の文字列(今回で言えば「沖縄珍道中」)を入力すれば、タイトル付け完了だ。ウィンドウはそのまま閉じて構わない。
(8)BGMを入れる
映像製作最後の仕上げがBGMの挿入だ。YouTubeなどに公開するのであれば、無償で利用できるオーディオファイルを利用しよう。YouTubeもオーディオライブラリに無料で利用できる音楽ファイルを公開(リンク)しているが、帰属表示が必要なものと不要なものがあるので注意しよう。
ビデオトラックと同じように「トラックヘッダー」からオーディオトラックを挿入したら、「エクスプローラ」タブからオーディオファイルをタイムラインにドラッグ&ドロップする。このままだとビデオとオーディオの長さが合わないので、ビデオの尺に合わせてオーディオを短くしよう。オーディオファイルの右端をつかんで長さを合わせたら、オーディオファイルの右上にカーソルを移動して、扇形のアイコンと「フェードアウト オフセット」という文字が表示されたら、アイコンをそのまま左側に少しドラッグしよう。これで曲線の開始位置から、オーディオがフェードアウトするように設定される。
(9)ムービーとして書き出す
さていよいよ最後の作業である動画の書き出しだ。メニューの「ファイル」から「名前を付けてレンダリング」を選ぶと、保存場所、ファイル名、出力形式を選ぶウィンドウが表示される。YouTubeなどに動画をアップするのであれば、「Sony AVC/MVC」の中の「インターネット 1920×1080 - 30p」を選択しよう。そして「レンダリング」をクリックすれば、書き出し(レンダリング)が始まる。これで全ての作業は終了だ。
今回作成した動画を下に掲載した。
本記事中盤に掲載したバージョンと見比べると、作品としてのクオリティはともかくとして、分かりやすく、見栄えの良い動画になっているはずだ。
PremiereユーザーがVegasを使ってみた感想
筆者の本業はIT系ライターだが、定期的にほかのメディアで動画を撮影・編集する仕事も請け負っている。普段は「Adobe Premiere Pro CC 2015(以下Premiere)」を使用しているが、予想していたよりも早くVegasの操作に慣れることができた。むしろ、トランジションやビデオFXの効果がアニメーション表示されるので、Premiereより分かりやすく操作できるパートもあった。
もちろんPremiereの方が高機能だし、ほかのアプリとの連携も強力だ。既にPremiereを使い込んでいる筆者にとっては、正直なところVegasへ移行する強い動機はない。しかしこれから初めて映像製作ソフトの購入を検討しているのであれば、税別4,980円で購入できる「Vegas Pro 13 Editダウンロード版」は非常に魅力的な選択肢だ。Vegasで動画編集の基礎を学んでから、本格的に動画を製作したくなった時にPremiereにステップアップするというのも良いのではないだろうか?