レビュー

空冷になったHBMビデオカード「Radeon R9 Fury」を試す

~AMDの新鋭はGeForce GTX 980の対抗馬になるのか

 AMDは7月14日、Fijiコアを採用するを採用したハイエンドGPU「Radeon R9 Fury」の販売を解禁した。今回、同GPUを搭載したASUS製ビデオカード「STRIX-R9FURY-DC3-4G-GAMING」を借用する機会が得られたので、このビデオカードの実力をベンチマークテストでチェックする。

Fijiコアを採用するNVIDIA GeForce GTX 980の対抗馬

 Radeon R9 Furyは、先だって発売された「Radeon R9 Fury X」と同じ「Fiji」コアを採用するハイエンドGPU。Radeon R9 FuryのFijiコアは、3,584基のStream Processorと224基のテクスチャユニットを備えている。これは、フルスペック版FijiであったRadeon R9 Fury Xから、Stream Processor 512基、テクスチャユニット32基を無効化したもの。GPUの動作クロックは最大1GHz。

 ビデオメモリには、1GHz相当で動作するHBM(High Bandwidth Memory)を4GB搭載。GPUとは4,096bitのメモリインターフェイスで接続され、512GB/secのメモリ帯域幅を実現している。これは、上位モデルであるRadeon R9 Fury Xと全く同じ仕様だ。

 接続バスはPCI Express 3.0 x16で、対応APIはDirectX 12、Vulkan、Mantle。一般的なアプリケーションを実行した際にビデオカードが消費する電力の指標であるTypical Board Powerは275Wとされている。

【表1】Radeon R9 Furyの主なスペック
Radeon R9 FuryRadeon R9 Fury XRadeon R9 390X
アーキテクチャGCN(Fiji)GCN(Fiji)GCN(Hawaii)
製造プロセス28nm28nm28nm
GPUクロック(最大)1,000MHz1,050MHz1,050MHz
Stream Processor3,584基4,096基2,816基
テクスチャユニット224基256基176基
メモリ容量4GB HBM4GB HBM8GB GDDR5
メモリクロック500MHz(1GHz相当)500MHz(1GHz相当)1,500MHz(6GHz相当)
メモリインターフェース4,096bit4,096bit512bit
メモリ帯域幅512GB/sec512GB/sec384GB/sec
ROPユニット64基64基64基
Typical Board Power275W275W275W

 今回借用したASUSの「STRIX-R9FURY-DC3-4G-GAMING」は、GPUにリファレンス仕様のRadeon R9 Furyを搭載しながら、セミファンレス機能を持つオリジナルGPUクーラーと、部品の実装をフルオートメーション化した「ASUS AUTO-EXTREME Technology」で製造された独自設計の基板を採用したビデオカードだ。

 ディスプレイ出力端子には、HDMI 1基と、DisplayPort 3基のほか、Radeon R9 Fury Xで廃止されたDVI-Iを1基備えている。補助電源コネクタは8ピン2系統。

ASUSのRadeon R9 Fury搭載ビデオカード「STRIX-R9FURY-DC3-4G-GAMING」。セミファンレス機能付きの2スロット占有GPUクーラーを搭載
ビデオカード本体裏面。大部分が金属製バックプレートで覆われている
GPU-Z実行画面。GPUやビデオメモリの動作クロックはRadeon R9 Furyのリファレンス仕様となっている
ディスプレイ出力端子。3基のDisplayPortのほか、HDMI、DVI-Iを各1系統ずつ備える
基板上部に設けられた補助電源コネクタ。8ピンコネクタを2系統備える

ベンチマーク結果

 それでは、ベンチマーク結果の紹介に移りたい。AMDの資料では、Radeon R9 FuryがGM204コア採用のGeForce GTX 980の対抗馬とされていることから、今回はASUSのGeForce GTX 980搭載ビデオカード「STRIX-GTX980-DC2OC-4GD5」を比較対象として用意した。

 なお、「STRIX-GTX980-DC2OC-4GD5」はGeForce GTX 980をクロックアップして搭載したオーバークロック仕様のビデオカードであるため、比較を行なう際、ブーストクロックをリファレンス仕様と同じクロックまでダウンクロックしている。

【表2】テスト環境
GPURadeon R9 FuryGeForce GTX 980
CPUCore i7-4790K
マザーボードASUS MAXIMUS VII GENE
メモリDDR3-1600 8GB×2(9-9-9-24、1.50V)
ストレージ120GB SSD(Intel SSD 510シリーズ)
電源Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD)
グラフィックスドライバCatalyst 15.7GeForce 353.30 Driver
OSWindows 8.1 Pro Update 64bit
AMDの資料では、Radeon R9 FuryとGeForce GTX 980のベンチマーク結果が紹介されている
ASUSのGeForce GTX 980搭載ビデオカード「STRIX-GTX980-DC2OC-4GD5」

 今回実施したベンチマークテストは、3DMark(グラフ1、2、3、4、5)、3DMark11(グラフ6)、アサシンクリード ユニティ(グラフ7)、 The Witcher 3: Wild Hunt(グラフ8)、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(グラフ9)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ10)。

 3DMark Fire Strikeでは、フルHD(1,920×1,080ドット)の無印とWQHD(2,560×1,440ドット)のExtremeで10%前後、4K(3,840×2,160ドット)のUltraでは約17%の差を付けて、Radeon R9 FuryがGeForce GTX 980を上回った。ビデオメモリの転送帯域への要求が厳しい4Kテストで、Radeon R9 Furyがスコア差を一気に広げたこの結果は、HBMによって実現した512GB/secのメモリ転送帯域幅の恩恵が感じられるものだ。

 一方、3DMark11では、GeForce GTX 980に約3%の差をつけて逆転されている。比較的描画負荷の高いテストであっても、フルHD程度の解像度では、メモリ帯域幅の差をGeFroce GTX 980に逆転されることもあるようだ。

【グラフ1】3DMark - Fire Strike (1,920×1,080ドット)
【グラフ2】3DMark - Fire Strike Extreme (2,560×1,440ドット)
【グラフ3】3DMark - Fire Strike Ultra (3,840×2,160ドット)
【グラフ4】3DMark - Sky Diver
【グラフ5】3DMark - Cloud Gate
【グラフ6】3DMark11 [Extreme]

 アサシンクリード ユニティでは、フルHDでは描画設定「標準」で2フレーム、描画設定「最高」で3フレーム、それぞれGeForce GTX 980を下回った。一方、4Kの描画設定「標準」ではGeForce GTX 980を5フレーム上回っており、ここでもHBMのメモリ帯域幅が効果を発揮していることを伺わせる結果を記録した。

 4Kの描画設定「最高」に関しては、Radeon R9 Fury Xのレビュー時に指摘した、ビデオメモリ容量の不足によるフレームレートの急落が、Radeon R9 FuryとGeForce GTX 980の両方で発生している。ほかのテストでは、200W中盤~300W台の電力を消費している今回のテスト環境が、この設定での動作中は100W中盤まで消費電力が低下した。このフレームレートと消費電力の急落からは、高速なビデオメモリから溢れたデータを低速なメインメモリにスワップした結果、GPUが本来の実力をまったく発揮できていないことが伺える。

【グラフ7】アサシンクリード ユニティ

 今回、新たにテストに追加したThe Witcher 3: Wild Huntでは、グラフィックスと後処理のプリセットを最も高いものに設定し、フルHDと4Kでフレームレートの測定を行なった。

 フルHDでは50fps対53fpsの3フレーム差でGeForce GTX 980がRadeon R9 Furyを上回り、4Kでは25fpsを記録したRadeon R9 Furyが1フレーム差でGeForce GTX 980を上回った。4KでRadeon R9 Furyが優位になるというのは、これまでのテストと同じ傾向だが、決定的な差がついたとは言い難い。

【グラフ8】The Witcher 3: Wild Hunt

 ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークでは、DirectX 9版においてRadeon R9 Furyが約1~13%の差をつけてGeForce GTX 980 Tiを上回ったが、DirectX 11版ではフルHDで約12%差を付けられてGeForce GTX 980の後塵を拝し、4Kでは逆転したもののスコア差は6%に留まっている。

 MHFベンチマークについては、フルHDでGeForce GTX 980に約5%の差を付けられ、4Kでは逆に約13%の差を付けてRadeon R9 Furyが上回った。Radeon R9 Fury Xでもそうだったが、広帯域なHBMを持つFijiコアが真価を発揮するのは、フルHDよりも高い解像度でのゲーム時となるようだ。

【グラフ9】ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
【グラフ10】MHFベンチマーク【大討伐】

 最後に消費電力の測定結果を紹介する。消費電力は、サンワサプライのワットチェッカーを用いて、アイドル時と、各ベンチマーク実行時の最大消費電力を測定した。

 アイドル時の消費電力は、Radeon R9 Furyが66W、GeForce GTX 980が63Wで、その差は3W。それほど気になる差ではない。

 一方、ベンチマーク実行中の消費電力はテストによってまちまちだが、Radeon R9 Furyが概ね1割弱ほど高い消費電力を記録しており、4Kで実行した3DMark Fire Strike UltraとMHFベンチマークで約19%高い電力を記録した。2割近く高い消費電力を記録した2タイトルでは、GeForce GTX 980より50Wほど高い数値となっている。ベンチマークテストの結果を考えれば、そう悪くない結果だが、電源ユニット的には1グレード上のものを選びたくなる電力差ではある。

【グラフ11】システム全体の消費電力

高解像度ではライバルを凌駕するRadeon R9 Fury

 今回、Radeon R9 FuryとGeForce GTX 980の性能を比較してみた結果、Radeon R9 Furyがライバルに対し、特に高解像度環境において、優位な性能を持っている事が伺えた。

 フルHD解像度では遅れをとるテストもあったが、HBMの広帯域が活きてくる高解像度での性能は上々だ。また、ライバルとなるGeFporce GTX 980との間に、メモリ容量面での不利も存在しない。4KあるいはWQHDなど、フルHDを超えるディスプレイでゲームを楽しみたいユーザーに適したGPUであると言える。

 性能面ではGeForce GTX 980より優位なRadeon R9 Furyだが、記事執筆時点で発売済みのSapphire製ビデオカードの実売価格は9万円後半。対して、今回比較に用いた「STRIX-GTX980-DC2OC-4GD5」は、GeForce GTX 980搭載製品の中でも高価な方だが、それでも7万円前半で購入できる。Radeon R9 FuryはGeForce GTX 980よりも2万円以上高いというのが現状だ。

 Radeon R9 Furyが真にGeForce GTX 980の対抗馬として受け入れられるには、供給の安定と価格差の解消は必須。今回試用した「STRIX-R9FURY-DC3-4G-GAMING」の国内発売を含め、Radeon R9 Fury搭載製品が潤沢に供給されることを期待したい。

(三門 修太)