レビュー
UQ「Speed Wi-Fi NEXT WX01」
~4x4 MIMOで最大220Mbpsに対応したWiMAX 2+モバイルルーター
(2015/3/5 06:00)
「Speed Wi-Fi NEXT WX01」は、UQコミュニケーションズが提供するモバイルルーターで、4x4 MIMOにより220Mbpsの速度に対応するのが特徴。製造元はNECプラットフォームズで、3月5日より順次発売。UQオンラインショップでの価格は、対応プランと「UQ Flatツープラス おトク割」適用時で2,800円(税別、以下同)。クレードルセットは4,800円。
今回、発売前に端末を試用する機会を得たので、料金プランや本体スペック、気になる通信速度計測結果などを中心にレビューする。
下り220Mbps対応を実現する2つの異なる技術
今回紹介するWX01は、UQコミュニケーションズのWiMAX 2+対応製品だが、「下り220Mbps」に対するサービスや端末の対応状況は非常に複雑になっている。そこで、本体やサービスの詳細に言及する前に、WX01を取り巻くWiMAX 2+の状況について整理する。
WiMAXおよびWiMAX 2+は、UQコミュニケーションズが総務省から割り当てを受けた2.5GHz帯のうち、50MHz幅の周波数帯域をベースとして展開するサービス。WiMAXは下り最大40Mbps、上り最大15.4Mbps、WiMAX 2+は下り最大110Mbps、上り最大10Mbpsという通信速度でサービスを提供してきたが、UQコミュニケーションズではWiMAX 2+の利用する周波数帯域をこれまでの20MHzから40MHzへと拡張、さらに複数の電波を同時に使用して、データ通信を可能とする「キャリアアグリゲーション技術」(CA)を導入し、上り速度は10Mbpsに据え置きつつ、下り速度をこれまでの2倍の速度である下り220Mbpsへ増速する。
下り220Mbpsの高速化に合わせて、対応するWiMAX 2+モバイルルーターも2機種を発表。WX01はその中の1機種になる。
ただし、同じ下り220Mbps対応でも、今回取り上げるWX01と、ファーウェイ・ジャパン製の「Speed Wi-Fi NEXT W01」は、対応する方式が異なる。ファーウェイ・ジャパンの「W01」は前述したCAに対応することで下り220Mbpsを実現しているのに対し、WX01はCAには非対応。代わりに、基地局と端末にそれぞれ従来の2倍となる4つのアンテナを搭載することで、帯域幅や通信出力を変更することなく通信速度を向上させる「4x4 MIMO」技術に対応させ、2x2 MIMOでのCAと同じ下り220Mbpsを実現しているのだ。
同じ速度のモバイルルーターだが、ユーザーにとって大きな違いはエリアだ。CA対応エリアは順次拡大していく方針ながらも、開始当初は栃木県真岡市と非常に限られたエリアになる。一方の4x4 MIMOも基地局側の対応が必要なものの、現状でほぼ全国の基地局が4x4 MIMOに対応しているため、4x4 MIMO対応のWX01さえあればほぼ全国で下り220MbpsのWiMAX 2+が利用できることになる。
もう1つの大きな違いが対応回線。W01はWiMAX 2+に加えてau LTEにも対応している一方で、WiMAXには非対応。一方、WX01はau LTEに非対応だがWiMAXには対応している。なお、W01でau LTEを利用する場合、申し込みは不要だが「LTEオプション」の利用料金として月額1,005円が加算される(2015年5月まではキャンペーン適用で無料になる)。
2機種のうちWX01のみ対応するWiMAXも注意が必要だ。前述の通り、UQコミュニケーションズが割り当てられている周波数帯域幅は50MHzだが、これまで20MHz幅で展開していたWiMAX 2+がCA導入によって倍の40MHz幅となった一方、30MHz幅だったWiMAXはWiMAX 2+のCA拡張分である20MHzが差し引かれ、CA対応エリアでは10MHz幅の展開となる。そのためCA対応エリアではWiMAX 2+が増速する一方、WiMAXについては下り40Mbpsから13.3Mbpsと減速する(CA非対応エリアでは従来通り下り40Mbps)。
機種 | WiMAX 2+ | 技術 | エリア | au LTE | WiMAX |
---|---|---|---|---|---|
WX01 | 対応 | 4×4 MIMO | ほぼ全国 | 非対応 | 対応 |
W01 | 対応 | CA | 栃木県から順次 | 対応 | 非対応 |
本体は軽量コンパクト。バッテリは公称通りほぼ6時間半
WX01の本体サイズは約109×66×9mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約97g。重量が100gを切っているため非常に軽く持ち運びしやすい。厚さも一般的なスマートフォン程度で幅と奥行きも小さく、iPhone 4sと同じくらいの感覚だ。
本体側面には下部に充電用のMicro USBポート、左上にストラップホールを搭載。前面には液晶ディスプレイと「SET」、「SELECT」操作ボタン、電源ボタンを備えており、SSIDの確認などはこの本体前面部で行なう。
対応するWi-Fi規格はIEEE 801.11a/b/g/n/acで、Wi-Fi最大同時接続数は10台まで。また、Bluetoothテザリングにも対応し、通信速度は遅くなるもののWi-Fi通信時と比べて約20~30%程度バッテリ消費を節約できるという。さらにWi-Fi通信時も省電力モードを搭載。通常は4x4で通信するところを2x2で通信することでバッテリの消費を抑えるなど、バッテリ持続時間に対してさまざまな配慮がなされている。
バッテリは2,500mAhで、ハイスペックスマートフォンと同程度の大容量。背面カバーは取り外しが可能で、バッテリ交換にも対応する。連続通信時間はWiMAX 2+ 4x4 MIMO時が約6.5時間、同2x2 MIMO時が約8.5時間、WiMAX時が約11時間。ただし、WiMAX通信時は手動で選択することができず、WiMAX 2+エリア外の時に自動的に切り替わる仕組みだ。
Wi-Fiを2.4GHzの通常モードに設定し、iPhone 5sを常に接続した状態で使用したところ、公称の6.5時間を若干上回る6時間40分程度でバッテリが空になった。公称値の信頼性はさすがNEC製と言うべきか、ほぼほぼ信頼できる値と考えて良さそうだ。
料金プランは既存の「UQ Flatツープラス」に加え、2月20日から提供を開始した「UQ Flatツープラス ギガ放題」に対応。プランの違いは料金と月間容量制限で、UQ Flatツープラスは3,696円で月間容量制限が7GB(2015年4月以降に適用)、UQ Flatツープラス ギガ放題は4,380円と若干価格が上がるが、月間容量は無制限だ。
ただし、どちらのプランとも3日で3GBを超える場合は速度制限が適用されるため、完全な無制限ではない。とは言うものの、制限適用時も下り速度は700kbps程度になるとのことで、よほど大きいファイルをダウンロードするのでもない限り、ブラウジングやメール送受信程度であれば実用上不満はない速度で利用できる。
設定方法はUSB、Wi-Fi、Bluetoothと多彩。バッテリ消費を抑えるモードも
WX01を使ったインターネット接続はWi-Fi、Bluetooth、USB接続の3通り。Wi-Fi接続の場合、本体の「SELECT」を押して「無線LAN情報」を表示、「SET」を押すとプライマリSSIDが表示され、さらに「SELECT」を押すとプライマリキー、セカンダリSSID、セカンダリキーが順番に表示される。あとはこの情報をPCやスマートフォンに設定するだけ。簡単設定機能としてWPSやらくらく無線スタートを利用することもできる。
初期設定では無線LANの周波数帯域として2.4GHz帯が固定で割り当てられており、せっかくIEEE 802.11acに対応しているのにフルの性能が発揮できない。そのためまずは一旦初期設定でWX01に接続した上で、IPアドレスを入力して管理画面にアクセスし、5GHz帯の利用をオンにしよう。一度5GHz帯をオンにすると今度は本体メニューに「無線LAN待機切替」のメニューが追加され、5GHz帯も新たに選べるようになる。
なお、5GHz帯は屋内でのみ利用できるW52、W53と、屋外でもできるW56という全部で3種類の帯域が用意されており、WX01でも「5GHz帯(屋内)」、「5GHz帯(屋外)」というように帯域を切り替えられるようになっている。他のシステムに影響を与える可能性があることからW52とW53は屋外利用が法令で禁止されているため、移動中などにW52、W53を設定したままにしないよう気を付けよう。
Bluetooth接続は本体メニューから「LAN側無線選択」を選び、Bluetoothに切替えた上で設定の「Bluetoothペアリング設定」を選択、PCやスマートフォンから接続する。USB接続は、データ通信対応のUSBケーブルでWX01とPCを接続するだけ。ドライバなどは自動にインストールされ、設定不要で通信が可能になる。他の電波の影響を受けることもないため、WX01が最も性能を出せる接続形態だ。
USB接続で実効20Mbps以上を記録。省電力モードが高速という意外な結果も
WX01は4x4 MIMOが最大の特徴であり、通信速度が最も気になるポイントだが、実際にいくつかのエリアで速度を計測した。なお、駅前は喫茶店などの屋内で5GHz帯の屋内モードも測定。駅構内は屋内ではあるものの念のためW52、W53は使わずW56の屋外モードのみで測定している。
計測にはCore i7(1.9GHz)、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANを搭載したノートPC「Lavie G タイプZ」初代モデルを使用し、周波数帯域や接続方式、省電力モードなどさまざまな設定で3回ずつ計測、その平均値を算出している。測定にはより実感に近いインターネット経由の計測方法として「speed.rbbtoday.com」を使用した。
結果は以下の表の通り。当然のことながら他の電波の影響を受けないUSB接続が良好な結果で、20Mbps以上の実測値を計測。また、5GHz帯も他の影響を受けにくく、USBとほぼ同程度の結果を示した。
面白い結果となったのが2.4GHz帯で、ほぼすべてのエリアにおいて省電力の2x2設定の方が4x4設定よりも高速な結果が得られる結果となった。測定環境にも依存するためこの結果が必ずしもすべての利用エリアで反映されるわけではないが、2x2の方がバッテリが持つということもあり、外出時は常に省電力モードで使うのがよさそうだ。
また、無線LANの周波数帯域も悩みどころだ。明らかに5GHz帯のほうが好成績が得られるものの、5GHz帯のW52とW53は屋外では利用できない。W56は利用自体は可能なものの、チャネル切り替え時には気象レーダーなど他のシステムと干渉していないかをチェックが行なわれ、実際に使用できるようになるまで1分ほどの時間がかかる。1度チェックが終わればエリアを移動しても再度チェックは行なわれないが、本体が休止状態から復帰する場合は再度チェックが行なわれるため、いざ通信したいときに時間がかかるという可能性もあることを覚えておいた方が良い。
多彩な機能
通信速度や帯域以外にもWX01は多彩な機能を備えている。その1つがWi-Fiスポット機能。設定をオンにするとWX01から公衆無線LANサービスにアクセスし、サービスごと固有のIDやパスワードによるログインも自動で行なってくれる。初期設定ではau Wi-Fi Spotのみが登録されているが、他のサービスを自由に追加することも可能。設定画面からはSSIDや暗号化キーの変更も可能だ。
バッテリ節約の面ではスリープモードも搭載。指定した時間になると液晶が非表示となり、さらに一定時間が経過すると自動で省電力状態に切り替わる。省電力状態もすぐに通信できるウェイティングのほか、休止状態や電源オフなど自由に設定可能だ。
本体の電源を長押ししても休止状態の設定は可能で、さらに長押しすることで電源をオフにできる。電源オフの場合、起動するには40秒近く必要だが、休止状態からの起動であれば8秒程度で起動する。また、リモートで休止状態から起動するリモート起動機能も備えており、本体を操作せずにBluetooth対応スマートフォンから起動することも可能だ。
WX01向けのスマートフォンアプリ「NEC WiMAX 2+ Tool」はAndroid版、iOS版の両方が用意されており、リモート起動のほか周波数帯の切り替え、Wi-Fiスポット切り替えなどの機能が利用可能。本体を取り出さず操作できるため、スマートフォンに入れておくと便利だ。
別売ながらクレードルにも対応。クレードルは有線LANポートを搭載しており、充電中は宅内ルータとしても利用できる。自宅にブロードバンド回線を導入せず、全てをWX01で運用したいが有線LANも必要、というユーザーには嬉しい周辺機器だろう。
高速通信に加えて容量無制限が魅力。省電力設定での運用がお勧め
CA非対応ながらも4x4 MIMOによって下り220Mbpsを実現したWX01。今後を考えると周波数を拡張するCA対応が本命になるのかもしれないが、現状は栃木県など非常に限られたエリアでしか使えないことを考えると、現時点ではほぼ全国で利用できる4x4 MIMOの方が利便性は高い。
通信速度もUSBであれば非常に高速なだけでなく、省電力モードやBluetooth接続などさまざまな接続形態があるのも嬉しい。外出中の利用が多く2.4GHz帯がメインという場合は高速化の恩恵がさほど受けられないかもしれないが、大容量ファイルをすぐにダウンロードしたいという時にUSBを使えば使い勝手は良いだろう。
最大の魅力は料金プランで、月額上限が設けられた料金プランが主流になりつつある中で、3日の制限があるとは言え月間の容量が無制限というのはヘビーユーザーにとって魅力的。3日の制限も3GBと比較的緩く、制限されても700Kbps程度の通信が保証されるため、ほとんど制限を感じずに済むだろう。
バッテリはフルパワーだと6時間半ということで外出中心のユーザーにはやや物足りないかもしれないが、スリープモードや省電力モード、Bluetooth接続などを駆使することで実質利用時間は延ばせるだろう。高速通信に加えてデータ容量無制限という点に魅力を感じるユーザーには最適な1台となりそうだ。