レビュー

写真で見る「HP Stream 11」

~税込みでも3万円を切る“新ネットブック”

HP Stream 11

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は、税別直販価格で25,800円という低価格を実現した11.6型クラムシェルノートPC「HP Stream 11」を発売した。

 Streamシリーズは、タブレットに用いられる技術をクラムシェルに転用し、パーツ数を減らすことで低価格化を実現したモデル。7月のMicrosoftのイベントにおいて199ドルという低価格で投入されることが明らかとなり、国内でも注目を集めた。

 日本HPは10月に、Streamシリーズで14型となる「HP Stream 14」を国内で投入したが、本製品はその姉妹モデルとなる。ローカルのストレージ容量が32GBと少ないのがStreamシリーズの特徴で、100GBのOneDriveの2年間利用権、そして全世界のWi-Fiスポットを利用できるiPassが付属する(Stream 14はなし)など、オンラインストレージを含むクラウドサービスの利用を前提としている。

 低価格ながらそこそこの質感を実現しているのもStreamシリーズの特徴である。遠目から見ると、鮮やかなブルーの色からややオモチャっぽいチープな印象を受けるのだが、実際に手にしてみるとそれほど悪くない。天板や底面カバーはラメが入っており、指紋が付きにくい細かい梨地で好感が持てる。パームレストもImprint技術を採用し、ドットパターン+ブルーのグラデーションで個性がある仕上がりだ。

 唯一、液晶の枠とキートップはプラスチックそのものといった感じだが、画面に集中してしまえば気にならないだろう。むしろ気になるのは画面の明るさで、今どきの機種にしては、輝度を最大にしても暗い印象を受ける。加えて、視野角もそれほど高くない。1万円台のタブレットでもIPS液晶採用モデルが増える中、もう一頑張り欲しかったところだ。

 一方で、そのほかのユーザーインターフェイスはしっかりしている。まずはキーボード。低価格なノートPCではキータッチを諦めざる得ないことも多いのだが、本製品はストロークが確保されており、剛性も高いため押下時のたわみもなく、しっかりしたクリック感が得られる。キーピッチも実測約18.75mmで余裕がある。タッチパッドはボタン一体型だが、ツルッとした感触で長時間なぞっても指先が疲れず、ポインタの反応も良い。

 音についても、このクラスにしてはかなり頑張っている方で、筐体の共鳴をうまく使ってボリューム/低音ともにある程度確保されている。ファンレスのため騒音とは無縁で、音楽を楽しむのにはぴったりだ。しかもファンレスだからと言って動作中に熱くなることはなく、ベンチマーク中はキーボード右端にある程度熱を感じるものの、パームレストは熱とは無縁で非常に快適である。

 参考としてベンチマークの結果を掲載する。筆者は今回から、ベンチマークソフトをPCMark 7からPCMark 8に切り替えることにした。今回は機材貸し出し時間の都合上、HomeとCreativeスイート(いずれもOpenCLを利用したAccelerated)のみを実施する。また、バッテリ駆動時間の計測もBBenchから、より現代的なPCMark 8のHomeへと変更する。輝度設定は50%。

 比較用としてデタッチャブルの「HP Pavilion 11 x2」(Pentium N3510搭載)、タブレットの「HP ElitePad G1000」(Atom Z3795搭載)の結果を掲載する。比較機種ではPCMark 8を実施していないのだが、ファイナルファンタジーXI オフィシャルベンチマーク3やSiSoftware Sandraの結果から分かる通り、ほぼCPUのコア数やクロックに準じた結果となっている。PCMark 8実行中にクロックの挙動を追ってみても速度低下が一切なく、ファンレスながら長時間駆動にも耐える設計となっている。バッテリも6時間19分動作し、必要にして十分である。

 本製品は、PC上級者という視点から見ると、64bit OSを搭載しているのにもかかわらずメモリが2GBしかない点や、高解像度化/広視野角化が進むスマートフォンの時代に1,366×768ドット表示対応TN液晶という点が購入のネックになる。だが近年タブレットの躍進でネットブックが市場から駆逐され、「ネットブックの後継が欲しい」というユーザーの選択肢がなくなったのも確かだ。本製品はそのユーザー層のニーズに応えられるのではないだろうか。

 一方でPC初心者、特に学生向けの1台目としては結構フィットする。HDDではないので少し荒っぽく扱えるし、ファンがないので図書館のような場所でも使える。ちょっとした動画や音楽の再生や調べ物には便利だ。来る将来に備えてPCに慣れておくのに使うのも悪くはない。SDカードスロットもあるので、デジカメで撮影した写真の閲覧やアップロードにも使える。とりあえず日常でやろうとすることは一通りできそうだ。

 そういった意味では、個性に合わせて選べるよう多くのカラーバリエーションを用意していただきたかったところではあるのだが、それは次期に期待することにしよう。とりあえず価格面でタブレットと並び、ユーザーの選択肢を増やしたことは大いに評価したい。

HP Stream 11本体。液晶は非光沢だ
天板には大きくHPのロゴがあしらわれている
後ろから見てもなかなかかっこいい
本体底面
本体左側面にはSDカードスロットとDC入力を装備
右側面はUSB 2.0、USB 3.0、HDMI出力、音声入出力を備える
キーボード配列は同社製ノートPCを踏襲する
ファンクションキーは標準でホットキーとして動作する。ファンクションキーとして使う際はFnキー同時押し
キーはアイソレーションタイプで、誤入力が少ない
キーピッチは約18.75mm確保されている
タッチパッドは左右クリックボタン一体型となっている。ツルッとしており、指が疲れない
タッチパッドの幅は約95mm
タッチパッドの高さは約56mm。広々使える
キーボード面はドットパターンのグラデーションで、質感は高い
電源ボタンは電源LEDを内蔵する
底面のスピーカー。左右に付いており、音量は十分だ
重量は実測で1,268g
ヒンジ部にHewlett-Packardのロゴが印字される
液晶はノングレアで視認性は良いが、輝度を最大にしても明るい環境下では暗く見える
左右の視野角はそれほど広くなく、TNパネルと見られる
【表】ベンチマーク結果
Stream 11Pavilion 11x2HP ElitePad G1000
CPUCeleron N2830Pentium N3510Atom Z3795
メモリ2GB4GB4GB
ストレージ32GB eMMC128GB SSD128GB eMMC
OSWindows 8.1Windows 8Windows 8.1
PCMark8
Home accelerated1082--
Web Browsing-JunglePin0.527s--
Web Browsing-Amazonia0.169s--
Writing8.56s--
Photo Editing v22.993s--
Video Chatv2/Video Chat playback 1 v220fps--
Video Chat v2/Video Chat encoding v2578.3ms--
Casual Gaming6.6fps--
Benchmark duration1h8min27s--
Creative Accelerated1027--
Web Browsing-JunglePin0.518s--
Web Browsing-Amazonia0.167s--
Video Group Chat v2/Video Group Chat playback 1 v230fps--
Video Group Chat v2/Video Group Chat playback 2 v230fps--
Video Group Chat v2/Video Group Chat playback 3 v230fps--
Video Chat v2/Video Chat encoding v2472ms--
Photo Editing v22.579s--
Batch Photo Editing v2151.8s--
Video Editing part 1v251.6s--
Video Editing part21v2210.9s--
Mainstream Gaming part 11.3fps--
Mainstream Gaming part 20.6fps--
Video To Go part 115.1s--
Video To Go part 224.4s--
Music To Go54s--
Benchmark duration2h33min59s--
Home実行時のバッテリ駆動時間6時間19分45秒--
ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3
Low497040724435
High321225373069
Sisoftware Sandra
Dhrystone14.82GIPS23.5GIPS26.08GIPS
Whetstone8.25GFLOPS12.77GFLOPS18GFLOPS
Graphics Rendering Float44.91Mpixel/sec43.16 Mpixel/sec45Mpixel/sec
Graphics Rendering Double8.47Mpixel./sec8.07 Mpixel/sec8.48Mpixel/sec

(劉 尭)