レビュー

フルHDゲームの最適解か、Radeon R7 265をベンチマーク

 AMDは2月13日、Radeon R7 265を発表した。今回、同GPUを搭載するビデオカードを借用する機会を得たので、ベンチマークテストでその性能を探ってみた。

Mantle、DirectX 11.2サポートのミドルレンジGPU

 AMD Radeon R7 265は、28nmプロセスで製造されたGraphics Core Nextアーキテクチャ採用GPUで、既に発売されているRadeon R7 260XとRadeon R9 270の間を埋める形での登場となる。

 GPUコアは、1,024基のStream Processorを備え、最大925MHzで動作する。メモリインターフェイスは256bitで、最大5.6GHz相当で動作する2GBのGDDR5メモリと接続する。他のRadeon R9/R7製品同様、AMD独自の新API「Mantle」のほか、OpenGL 4.3、DirectX 11.2をサポートする。

 今回借用したRadeon R7 265搭載ボードは、Sapphire製のオリジナルGPUクーラー搭載モデルだった。2スロット占有タイプの大型GPUクーラーを搭載しており、動作には6ピン1系統の補助電源を必要とする。

テスト用に借用したRadeon R7 265搭載ビデオカード。Sapphire製
基板上部にCrossFire端子を1基搭載
補助電源コネクタは6ピン1系統
ディスプレイ出力端子はDVI-D、DVI-I、DisplayPort、HDMIを各1系統ずつ装備
【表1】Radeon R7 265の主なスペック
Radeon R7 265Radeon R7 260X
アーキテクチャGraphics Core NextGraphics Core Next
プロセスルール28nm28nm
GPUクロック925MHz1,100MHz
Stream Processor1,024基896基
メモリ容量2GB GDDR52GB GDDR5
メモリクロック(データレート)1,400MHz(5,600MHz相当)1,625MHz(6,500MHz相当)
メモリインターフェイス256bit128bit
TDP150W115W

テスト機材

 それでは、ベンチマークテスト結果の紹介に移りたい。今回のテストでは、下位モデルのRadeon R7 260Xを比較用製品として用意した。

Radeon R7 260X搭載のASUS R7260X-DC2OC-2GD5

 なお、Radeon R7 260X搭載ボードのASUS R7260X-DC2OC-2GD5は、GPUクロックとメモリクロックをASUSが独自にオーバークロックしたモデルであるため、GPUコアはリファレンスクロック相当の1.1GHz、メモリクロックは設定下限の6.8GHz(リファレンスクロックは6.5GHz)にダウンクロックしてテストを実行した。

【表2】テスト機材
GPURadeon R7 265Radeon R7 260X
CPUCore i7-4770K (3.5GHz/Turbo Boostオフ)
マザーボードMSI Z87A-GD65 GAMING
メモリDDR3-1600 8GB×2(9-9-9-24、1.5V)
ストレージ120GB SSD (Intel SSD 510シリーズ)
電源Antec HCP-1200 (1,200W/80PLUS GOLD)
グラフィックスドライバCatalyst 14.1 Beta1.6
OSWindows 8.1 Pro 64bit

3Dベンチマークテスト

 まずは、Mantleに対応するBATTLEFIELD4のベンチマーク結果をチェックする。

 DirectX 11時の結果は、Radeon R7 265が描画設定「最高」時に約25%、描画設定「中」時に約1%の差をつけ、Radeon R7 260Xを上回った。APIをMantleに切り替えるとこの差は拡大し、描画設定最高時は約30%、DirectX 11利用時にはほぼ差のない結果となった描画設定「中」時にも約19%の差がついた。

【グラフ1】BATTLEFIELD4 DirectX11/Mantle(1,920×1,080ドット)

 定番ベンチマークの3DMarkでは、10~20%程度のスコア差でRadeon R7 265がRadeon R7 260Xをリードしている。GPU負荷の高いテストになるほどスコア差が拡大している傾向があり、3DMark11では、プリセットをPerformanceからExtremeに変更することで、スコア差が6%から16%に拡大。3DMark06でも、標準設定から高負荷設定に変更すると、9%から36%へとスコア差が拡大している。

 そのほかのベンチマークテストでも、Radeon R7 265はRadeon R7 260Xに対し、おおよそ20~30%の差をつけている。1グレード上のGPUに相応しい結果と言えるだろう。

【グラフ2】3DMark - Fire Strike Default/1,920×1,080ドット
【グラフ3】3DMark - Fire Strike Extreme/2,560×1,440ドット
【グラフ4】3DMark11 v1.0.5 Performance/1,280×720ドット
【グラフ5】3DMark11 v1.0.5 Extreme/1,920×1,080ドット
【グラフ6】Alien vs. Predator DX11 Benchmark 1,920×1,080ドット
【グラフ7】3DMark Vantage v1.1.2 Performance/1,280×1,024ドット
【グラフ8】3DMark Vantage v1.1.2 Extreme/1,920×1,080ドット
【グラフ9】3DMark - Cloud Gate Default/1,280×720ドット
【グラフ10】3DMark06 v1.2.1 1,280×1,024ドット/Default
【グラフ11】3DMark06 v1.2.1 1,920×1,080ドット/8x AA/16x AF
【グラフ12】3DMark - Ice Storm Default/1,280×720ドット
【グラフ13】ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
【グラフ14】MHFベンチマーク【大討伐】DX9
【グラフ15】PSO2ベンチマーク(1,920×1,080ドット/フルスクリーン)
【グラフ16】Unigine Heaven Benchmark 4.0 DX9/1,920×1,080ドット

消費電力比較テスト

 続いて、サンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を利用して、各テスト実行中の最大消費電力を測定した結果を紹介する。

【グラフ17】システム全体の消費電力

 アイドル時の消費電力については、Radeon R7 265が42W、Radeon R7 260Xが41Wと、わずか1W差となっており、ほぼ同程度と言える結果だ。Radeon R7 260Xは、オーバークロック仕様のビデオカードをダウンクロックしている点に注意が必要だが、アイドル時の消費電力については、どちらもしっかりカットされているという認識で良いだろう。

 ベンチマークテスト実行時の消費電力は、Radeon R7 265が20%前後高い結果となった。消費電力の値としては、20~30W程度高くなっており、かなり消費電力の増大を感じる結果だが、ベンチマークスコアも同じ程度向上しているため、消費電力あたりの性能は妥当な結果と言えよう。

Radeon R9シリーズとRadeon R7シリーズの隙間を埋めるRadeon R7 265

 以上のテスト結果から、Radeon R7 265は、Radeon R7 260Xの上位モデルというポジションに対して、順当な性能を持つ製品であると言える。

 Radeon R9シリーズとRadeon R7シリーズの間を埋め、新Radeonシリーズのラインナップを拡充するRadeon R7 265についてAMDは、1,920×1,080ドットの解像度でゲームをプレイするユーザーにとって、最適な製品であるとしている。今回実施したBATTLEFIELD4でのテスト結果は、それなりに描画品質を高めても十分プレイできる可能性を示している。Mantleを利用することで、パフォーマンスが確実に向上している点にも注目したい。

 BATTLEFIELD4に限らず、今後登場するであろうMantle対応ゲームに期待しつつ、今からミドルレンジクラスのGPUを求めるのであれば、Radeon R7 265を検討する価値はありそうだ。

(三門 修太)