レビュー

Thunderbolt 3接続ポータブルSSD「Samsung Portable SSD X5」実機レビュー

Samsung「Samsung Portable SSD X5」

 Samsungは8月28日、Thunderbolt 3インターフェイス接続ポータブルSSD「Samsung Portable SSD X5」を発表した。前モデルのUSB 3.1 Gen2対応ポータブルSSD「Samsung Portable SSD T5」の転送速度が最大540MB/s、X5の転送速度が最大2,800MB/sとされているので、理論値では約5.19倍性能が向上したことになる。今回Samsungより本製品の1TBモデルを借用したので、製品詳細、使い勝手、パフォーマンスなどについてレビューしていこう。

500GB、1TB、2TBの3モデルをラインナップ

 X5は、NVMe接続のSSDにThunderbolt 3インターフェイスを組み合わせたポータブルSSD。インターフェイス規格をUSB 3.1 Gen2(10Gbps)からThunderbolt 3(40Gbps)に変更することで、前述の通り転送速度を最大5.19倍に向上させている。

 対応機種はThunderbolt 3インターフェイスを備えるWindows PC(Windows 10 64bit RS2以上)またはMac(macOS Sierra 10.12以上)。Thunderbolt 3非対応のUSB Type-C、USB Type-A(USB3.0/2.0)インターフェイスはサポートされていない。

 X5をThunderbolt 3非対応のUSB Type-C、USB Type-A(USB3.0/2.0)インターフェイスに接続しても、Windowsでは「Thunderboltデバイスの機能が制限される可能性があります」、Macでは「Thunderboltアクセサリを使用できません」という警告メッセージが表示されて、ドライブをマウントできない

 T5には250GB/500GB/1TB/2TBの4モデルが用意されていたが、X5は500GB/1TB/2TBの3モデル構成。すべてのモデルで「3-bit MLC V-NAND」と「TurboWriteテクノロジー」が組み合わされており、最大2,800MB/sのシーケンシャルリード、最大2,300MB/sのシーケンシャルライトを実現していると謳われている(500GBモデルのみシーケンシャルライトが最大2,100MB/s)。

 本体サイズは119×62×19.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量は150g。T5のサイズは74×57.3×10.5 mm(同)、重量は51gだったので、体積は3.22倍、重量は2.94倍に増えたことになる。スーパーカーにインスパイアされたという筐体デザインは好みが分かれそうだ。

 筐体は外殻、マグネシウム製フレーム、ヒートシンク、基板、底面カバーで構成されており、可動部分が存在しないため、最大2メートルの高さからの落下に耐えうる堅牢性を備えている。またヒートシンクと、温度管理技術「ダイナミック・サーマル・ガード・テクノロジー」により、内部の過熱を防ぎ、表面温度を45℃以下に保つことで、データの損失や故障を防ぐとのことだ。

Samsung Portable SSD X5
インターフェイスThunderbolt 3 (40Gbps)
互換性Thunderbolt 3端子を搭載したWindows PC(Windows 10 64bit RS2以上)とMac(macOS Sierra 10.12以上)
容量500GB/1TB/2TB
サイズ119×62×19.7mm(幅×奥行き×高さ)
重量150g
性能シーケンシャルリード:最大2,800MB/s、シーケンシャルライト:最大2,300MB/s(500GBモデルは最大2,100MB/s)
暗号化AES 256bit ハードウェア暗号化
セキュリティパスワード設定(オプション)
耐久性温度:動作時0~60℃、非動作時-40~85℃
湿度:非動作時65℃、95%
ショック:非動作時1,500G、持続時間:0.5ms、3軸
振動:非動作時10~2,000Hz、20G
認証:CE, BSMI, KC, VCCI, C-tick, FCC, IC, UL, TUV, CB
RoHS指令対応RoHS 2
保証3年限定保証
パッケージ表面
パッケージ裏面
パッケージ底面。モデルナンバーやシリアルナンバーが記載されている
カバーを取り、内ブタを開けると、X5本体が現われる。借用機には梱包用フィルムなどは貼られていなかったが、開封済みだったので取り去られている可能性がある
パッケージにはX5本体、Thunderbolt 3 USB-C Cable、Quick Start Guideが同梱。ケーブルの長さは実測約50cm
本体天面はメタリックグレー
本体底面はノンスリップのボトムマット仕様。目に刺さるような鮮やかな赤が、たしかにイタリアのスーパーカーを彷彿とさせる
本体上面。Thunderbolt 3端子の横にはLEDランプが内蔵
本体下面
本体左側面
本体右側面
X5本体の実測重量は約145.2g。ちなみにThunderbolt 3 USB-C Cableの実測重量は約21.8g
LEDランプは通電すると点灯。ストレージに読み書きが発生すると点滅して、アクセスランプとして機能する

Windows、Mac用ユーティリティソフトが同梱

 X5のルートフォルダにはWindows、Mac用ユーティリティソフト「Samsung Portable SSD Software」が収録されている。これはストレージ内のデータを保護するためのセキュリティユーティリティ。4~16文字のパスワードでロックしておけば、ストレージ内のデータへ勝手にアクセスされたり、ファイル操作される心配は少なくなる。ただしパスワードを忘れてしまったさいには、データごとファクトリーリセットするしかないので注意が必要だ。

 なおファームウェア、ソフトウェアアップデートの確認、更新にもこのユーティリティソフトを利用するので、X5を主に利用するPCにはインストールしておいたほうがいい。

Windowsは「SamsungPortableSSD_Setup_Win.exe」、Macは「SamsungPortableSSD_Setup_Mac.pkg」を実行してユーティリティソフトをインストールする
ストレージのデータを保護するならパスワードを入力する
パスワードで保護しているSamsung Portable SSDを接続しても、ルートフォルダの「SamsungPortableSSD_Setup_Win.exe」と「SamsungPortableSSD_Setup_Mac.pkg」、そして「This is Read Only partion(これは読み取り専用パーティションです)」という名前のテキストファイルだけが表示される。記録されているほかのフォルダ、ファイルはいっさい表示されない
パスワードを入力すると、ルートフォルダのファイル、フォルダが現われる
左下の「アップデート」をクリックするとファームウェア、ソフトウェアアップデートをいつでも確認できる

スペックどおりにシーケンシャルリードで2,820.107MB/sを記録!

 さて最後にベンチマークスコアを見てみよう。今回は検証機として「Core i5-8259U」を搭載する「MacBook Pro(13-inch, 2018)」を使用して、Windows 10 Pro バージョン1803、macOS High Sierra バージョン10.13.6上でベンチマークを実施してみた。

 Windows環境ではストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 6.0.1」、ファイルコピー、「Adobe Lightroom Classic CC」でRAW画像現像、「Adobe Premiere Pro CC」で4K動画の書き出し、Mac環境ではストレージベンチマーク「Blackmagic Disk Speed Test」、ファイルコピーを実施している。なお比較対象としてMacBook Proの内蔵ストレージと、手持ちの某社製USB 3.1 Type-C接続のポータブルSSD(シーケンシャルリード/ライト:最大850MB/s)のスコアも計測している。

 下記が検証機の詳細な仕様と、ベンチマークの結果だ。

【表2】検証機の仕様
CPUCore i5-8259U(4コア8スレッド、2.30~3.80GHz)
GPUIntel Iris Plus Graphics 655(300MHz~1.05GHz)
メモリ8GB LPDDR3-2133 SDRAM
ストレージ512GB PCIe SSD
OSWindows 10 Pro バージョン1803
macOS High Sierra バージョン10.13.6
【表3】Windows 10環境でのベンチマーク
種類内蔵SSDSamsung Portable SSD X5USB 3.1 SSD
フォーマットNTFSexFATexFAT
SSDをCrystalDiskMark 6.0.1で計測(単位:MB/s)
Q32T1 シーケンシャルリード3328.1722820.107491.549
Q32T1 シーケンシャルライト1788.8012205.566771.490
4K Q8T8 ランダムリード1166.7941247.808162.952
4K Q8T8 ランダムライト198.4571426.495173.962
4K Q32T1 ランダムリード367.669292.562138.180
4K Q32T1 ランダムライト263.954271.920137.925
4K Q1T1 ランダムリード9.56619.72812.788
4K Q1T1 ランダムライト74.12089.72820.837
4156枚(10GB)の画像をファイルコピー
同じストレージ内でコピー40秒7621秒311分17秒90
PCからストレージにコピー18秒7344秒04
Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像
7,952☓5,304ドット、カラー-自然11分13秒5013分36秒1713分57秒85
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し
3,840×2,160ドット、30fps13分58秒9114分43秒0714分53秒55
【表4】macOS環境でのベンチマーク
種類内蔵SSDSamsung Portable SSD X5USB 3.1 SSD
フォーマットAPFSexFATexFAT
Blackmagic Disk Speed Test(単位:MB/s)
WRITE 1回目1,657.21,838.3605.4
WRITE 2回目1,710.91,839.6765.2
WRITE 3回目1,719.21,840.6767.3
WRITE 4回目1,710.51,839.3829.8
WRITE 5回目1,557.41,832.4829.5
WRITE 平均1,671.01,838.3759.4
READ 1回目2,556.32,489.9867.9
READ 2回目2,568.62,493.9869.5
READ 3回目2,574.02,499.9868.6
READ 4回目2,569.32,496.2869.1
READ 5回目2,581.12,479.3870.6
READ 平均2,569.92,491.8869.1
4156枚(10GB)の画像をファイルコピー
同じドライブにコピー4秒1523秒251分38秒32
Macからストレージにコピー18秒7843秒91

 X5のWindows環境でのベンチマークスコアはほぼスペックどおりで、シーケンシャルリードが2,820.107MB/s、シーケンシャルライトが2,205.566MB/sを記録している。しかしMac環境ではシーケンシャルリードが2,491.8MB/s、シーケンシャルライトが1,838.3MB/sに留まっている。このスコア差はOS、ベンチマークソフトの違いによるものだ。

 顕著な違いが現われたのはファイルコピーの所要時間。USB 3.1 Type-C接続のポータブルSSDとX5を比較すると、同じストレージ内のファイルコピーはWindows環境では73%、Mac環境では77%の短縮、PC内蔵SSDからそれぞれのストレージへのファイルコピーはWindows環境では59%、Mac環境では58%の短縮となった。内蔵SSDからX5にファイルをバックアップするさいには、大幅な時間短縮となるわけだ。

 ただ、それぞれのストレージ内に保存したRAW画像と4K動画を、同じストレージ内に書き出す所要時間は、内蔵SSD、X5、USB 3.1 Type-C接続ポータブルSSDで極端な違いはなかった。ストレージ速度はファイルの読み書きには大きな効果があるが、重い処理を実行するさいにはプロセッサーパワーがボトルネックとなり効果が限定的となる。

 なおCrystalDiskMark実行時のX5の表面温度と内部温度をチェックしてみたが、表面温度は表面が最大43.8℃、裏面が44.6℃、内部温度が39℃となった。X5は温度管理技術「ダイナミック・サーマル・ガード・テクノロジー」で表面温度が45℃を超えないように調節されているとのことだが、ぎりぎりそれを達成できたわけだ。

サーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」で計測したX5表面の最大温度は43.8℃
X5裏面の最大温度は44.6℃
「CrystalDiskInfo」で計測したX5内部の温度は39℃

複数のPCで大容量ストレージを「高速」に共有!

 最近1~4TBのSSDを搭載できるノートPCが増えてきたが、たとえば「MacBook Pro(13インチ 2018)」で128GB SSDから1TB SSDにアップグレードするとカスタマイズ価格は88,800円(税別)とかなり高価だ。ましてやデスクトップPC、高性能ノートPC、薄型軽量ノートPCなどを用途ごとに使い分けているのであれば、それぞれに大容量SSDを搭載するのはかなりの出費となる。

 その点、X5などのようなポータブルSSDを導入すれば、大容量ストレージを複数のPCで共有できるので、それぞれのPCの内蔵SSDを欲張る必要はない。もちろん高速なThunderbolt 3インターフェイスの恩恵を受けて、従来のUSB 3.1 Type-C対応ポータブルSSDよりはるかに高速にファイル操作が可能だ。

 X5の1TB、2TBモデルはまだまだ高価だが、複数のPCで適切な容量を高速に共有できることを考えれば、トータルではリーズナブルにストレージを運用できるはずだ。