レビュー

PFU、アルバムに貼られた写真を手軽にデータ化できるiPhone用アタッチメント「Omoidori」レビュー

製品本体。iPhoneを前面に取り付けて使用する。対応機種はiPhone 6s/6/SE/5s/5

 写真をデータ化するためのツールは数多く存在するが、アルバムに貼られた状態の写真を取り込むのは意外に難しいものだ。例えばフラットベッドスキャナを使うとしても、アルバムを1ページずつうつ伏せにしながらスキャンするのは大変な手間がかかる上、1ページまるごと取り込むのはサイズ的にも難しい。なんとか取り込めたとしても、そこから写真1枚ごとにファイルを切り出すとなると、考えただけでも気が遠くなる。

 かといって、アルバムから1枚ずつ写真をはがしてスキャンするのも相当な手間だし、いったん剥がすともとの状態に復元するのも難しくなる。古い写真であれば印画紙が劣化していることで、アルバムから剥がすことによって破損する危険も大きい。業者に任せる方法もあるが、こちらは納期や費用といった部分がネックになるし、そこまで手間を掛けずにもう少しカジュアルに取り込みたいというケースもあることだろう。

 こうした場合に役立つのが、PFUから登場したアルバムスキャナ「Omoidori(おもいどり)」だ。これは写真をデータ化するためのiPhone用のアタッチメントとでも呼べる製品で、アルバムに貼られた写真を1枚ずつ接写してカメラロールに取り込み、iPhone上で閲覧したり、SNSにシェアしたり、メールで相手に送信できるようになるという製品だ。発売は24日だ。

製品パッケージ。同社の分類上はスキャナだが、写真をデータ化するためのiPhone用アタッチメントと言ったほうが実態に近い
同梱品一覧。左上が本体で、その下にあるのがiPhone SE/5s/5を取り付ける際のスペーサー。さらにスタートガイドと単4電池が付属する
本体。通常は折りたたんで収納しておける
電池込みで310gと軽量。実家に帰省する際にバッグに入れていくなどの持ち歩きも容易だ
利用する際は横から見て三角形になるよう展開する。側面パネルは通常は内側に折りたたまれている
iPhone SE/5s/5を取り付ける際はスペーサーを使用する
スペーサーを使ってiPhone SEを取り付けた状態。上部のレバーを持ち上げると取り外せる
内側に単4電池×2を取り付けるボックスを備える
下から内側を覗いたところ。上下左右に4つの光源があることが分かる
利用にあたってはiPhoneに専用アプリ「Omoidori」をインストールして使用する

iPhone単体での撮影やドキュメントスキャナと比べても高いクオリティ

 使い方は、本体にiPhoneをセットし、専用アプリを起動。電源をオンしたのち、本体をアルバムの上に載せ、写真がプレビュー枠の内側に収まるように位置を調整。後はシャッターボタンを押すだけで写真がデータ化され、iPhoneのカメラロールに保存されるというわけだ。

 写真の向きも自動回転してくれるほか(人物の顔の向きが基準となるそうだ)、色調も自動補正、また傾き補正やトリミングも自動的に行なってくれるので、まったくの手間いらずだ。L判のほか2L版を左右分割で取り込むモードも用意されているので、記念写真などの取り込みにも対応する。ちなみに解像度は450~600dpi相当とされている。

アルバムに貼られた写真をそのまま取り込めるのが大きな利点だ
利用にあたってはまず電源をオンする。内部のLEDが点灯する
そのまま本体をアルバムの写真の上に載せる
アルバムおよび写真が平らでない場合は後述のフォトプレッサーを使うとよい
アプリを起動し、写真がプレビューの緑枠の中に収まっていることを確認した上でシャッターボタンを押す。多少の傾きは自動的に補正されるので無視して構わない
本体内側に搭載された左右2個ずつのLEDを切り替えつつ、2枚の画像が撮影される。これは左側のLED2個で撮影を行なっているところ
こちらは右のLED2個で撮影を行なっているところ。さきほどと反対側のLEDが点灯しているのが分かる
2枚の画像が合成され、反射や影のない画像が生成された。画像はカメラロールに自動保存される

 撮影にiPhoneを使う以上、本製品なしでiPhone単体で撮るのとクオリティ的に大差ないのではと思う人もいるかもしれないが、iPhone単体で撮影すると、周囲の照明が映り込んだり、撮影者の手やiPhoneの影が被るといった問題が起こりうる。本製品は写真をすっぽり覆うことで外光などの影響を受けないようにするほか、本体内側に搭載された左右2個ずつのLEDを切り替えながら2枚の画像を撮影し、それらを1枚の画像に合成するという仕組みを採用することで、影のないハイクオリティな画像が得られるというわけだ。

 今回、比較のためにiPhone用のスキャナーアプリ「CamScanner」で同じ写真を取り込んでみたが、こちらは照明の映り込みや影が露骨に影響するのに対し、本製品を使った場合はそれらの影響がなく、限りなくオリジナルに近いクオリティでの取り込みが行なえる。色も自動補正されるので、外部アプリを使って色合いを直したり、コントラストを調整する必要もまずない。さまざまな写真を試したが、デフォルトで十分な仕上がりだ。スキャナアプリを使って撮影した際に起こりがちなピンぼけの心配もない。

 これに加えて、ScanSnap iX100のスーパーファインモード(300dpi)、エクセレントモード(600dpi)とも比べてみたが、エクセレントモードに匹敵するクオリティだ。厳密に言うと、暗い部分のディテールがやや省略されてブロックノイズが入る傾向があるが、iX100をはじめとするドキュメントスキャナではローラー痕や、また紙送り時に発生する白い線がこうした暗い部分に入りがちなため、本製品の方が仕上がりは美しく感じられる。またドキュメントスキャナ、および台形補正を行なうアプリでは写真の縦横比が少なからず狂いがちだが、本製品はそうしたこともない。

本製品で取り込んだ写真(以下無補正、サイズのみ変更)。空の雲と手前の木々ともに一歩間違えばディテールがつぶれやすい写真だが、元の写真のディテールをほぼ再現できている。手前の木々のみ若干ブロックノイズが発生しているが、見れないレベルではない
こちらはiPhone用のスキャナーアプリ「CamScanner+」で取り込んだ同じ写真。左側に撮影者の影が映り込んでいるほか、雲の階調が一部飛んでしまいのっぺりとしている。また台形補正を行なったために縦横の比率が狂い、横に引き伸ばされている。色合いもオリジナルに比べて茶色い
ScanSnap iX100のスーパーファインモード(300dpi)で取り込んだ写真。単純に解像度が不足しており細部のディテールがつぶれている。また手前部分にスキャナのローラー痕が目立つ
ScanSnap iX100のエクセレントモード(600dpi)で取り込んだ写真。300dpiに比べるとディテールは細かくOmoidoriに近い再現性だが、こちらも手前の木々などにローラー痕があるほか、木々が全体的に濃すぎて階調が失われている
中央の建物群を比較したところ。上段左がOmoidori、右がCamScanner+、下段左がScanSnap iX100スーパーファインモード(300dpi)、右がScanSnap iX100エクセレントモード(600dpi)。中央のマンション、左手前の木々の光があたっている箇所などディテールの再現性は本製品(上段左)がもっとも優秀だ

写真以外にトレカ類の取り込みにもおすすめ

 といったわけで、写真の取り込みにはかなり使えるツールであることが分かったが、もう1つ、本製品の面白い使い方として、トレーディングカードなどの取り込みが挙げられる。紙が厚く、表面がビニールコートされたトレカ類やテレホンカード、おまけのシールなどの図柄をスキャンして残しておきたい場合に、本製品であれば光沢面が反射しない上、黒もきちんとした深みが出るため、印刷物に近いクオリティで取り込める。

 ちなみに名刺の取り込みも行なえるが、トレカ類に比べてトリミングが失敗する確率が非常に高い。一般的に、写真とはかけ離れた原稿についてはトリミングに失敗しやすいようで、どうやら色合いや図柄が影響しているようだ。もちろんトリミングなしで取り込んだ後に手動で余白を切り落とすことも可能だが、現状では名刺の取り込みについては本製品ではなく、別のソリューションを使った方が良いだろう。個人的にはトリミング枠検出の判定を「強」、「弱」など調節できる機能があれば用途が広がるのではと感じた。

名刺は取り込み自体はまったく問題なく行なえるが、このようにトリミングがうまくいかないことが多い。背景の濃淡を変えつつ試したがほぼ全滅だった。一方で写真に近いデザインのトレカなどではうまくトリミングできるケースが多いことからして、色合いや図柄が関係しているようだ
トリミング・回転・赤目補正の各機能については自動のほか手動でも行なえるので、必要に応じて使用すると良いだろう。ちなみに明るさやコントラストの補正機能はないが、仮にそれらの機能があっても使わないだろうと感じるほど自動補正は優秀だ
写真の右隅に映し込まれた日付を読み取ってタイムスタンプに設定する機能も備えており、撮影日でソートする場合などに重宝する。こちらも手動での修正が可能だ

 使ってみて若干気になったのは、撮影時に表示される枠のサイズが意外にギリギリで、やや大きめの印画紙だと端がはみ出かねないケースがあること。こうした場合、本製品のオプションであるフォトプレッサーを取り付けた状態で使うと、本製品がわずかながら浮くことから、ほんの一回り広い範囲の撮影が可能になる。ちょっとした裏技ではあるが、撮影枠から上下左右がミリ単位ではみ出す場合、この方法がおすすめだ。

印画紙が大きいとこのようにプレビューの緑枠から若干はみ出すこともある
フォトプレッサーを装着するとわずかに引いた状態となり、うまく枠内に収まることもしばしばだ
専用フォトプレッサー。反った写真を押さえつけるためのオプション品だ
マグネット式で本体下部に取り付けて使用する

 基本構造についてはよくできていると感じるが、唯一、本製品に取り付けたままの状態ではiPhoneを充電する手段が用意されていないのは少々もったいない。例えば機種変更後の古いiPhoneを本製品と組み合わせて写真スキャナとして使う場合、合体させたままではiPhoneのバッテリが切れてしまうため、作業が終わったら取り外して充電し、使うときにまた取り付けることになり、わざわざ古いiPhoneと組み合わせる意味合いが薄れてしまう。

 着脱そのものはレバー1つでワンプッシュでできるとは言え、iPhoneをはめ込む枠の下部に充電ケーブルを通す溝1つ用意されていれば、この問題はクリアできたのではないかと感じる。さすがにLightningコネクタを搭載するなどの機構はコスト的に難しいだろうが、iPhoneをセットしたまま何らかの形で充電を可能にするギミックは、後継製品が登場する暁には検討して欲しいと感じる。

写真の本格的なデジタル化ツールとしても候補になりうるクオリティ

設定画面。今回は触れていないが、写真の中の人物が赤目で映っている場合に、自動的に補正を行なってくれる赤目補正機能も備える

 最後いくつか気になった点を挙げたが、製品の肝である使いやすさおよびクオリティは十分であり、SNSなどでカジュアルにシェアする目的にとどまらず、写真のディテールを重視してデジタル化のツールを選ぶ場合も、選択肢の1つに入って来うる存在だ。さすがにプロユースのフラットベッドスキャナやフィルムスキャナと比べるのは酷だが、アルバムに写真を貼った状態で取り込めるのはこれらにない利点であり、実売12,800円というコストなりの価値は十分にある。購入にあたっては、なにかと重宝するオプションのフォトプレッサーも併せて買い求めることをおすすめしたい。

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