レビュー
PFU、アルバムに貼られた写真を手軽にデータ化できるiPhone用アタッチメント「Omoidori」レビュー
2016年6月23日 06:00
写真をデータ化するためのツールは数多く存在するが、アルバムに貼られた状態の写真を取り込むのは意外に難しいものだ。例えばフラットベッドスキャナを使うとしても、アルバムを1ページずつうつ伏せにしながらスキャンするのは大変な手間がかかる上、1ページまるごと取り込むのはサイズ的にも難しい。なんとか取り込めたとしても、そこから写真1枚ごとにファイルを切り出すとなると、考えただけでも気が遠くなる。
かといって、アルバムから1枚ずつ写真をはがしてスキャンするのも相当な手間だし、いったん剥がすともとの状態に復元するのも難しくなる。古い写真であれば印画紙が劣化していることで、アルバムから剥がすことによって破損する危険も大きい。業者に任せる方法もあるが、こちらは納期や費用といった部分がネックになるし、そこまで手間を掛けずにもう少しカジュアルに取り込みたいというケースもあることだろう。
こうした場合に役立つのが、PFUから登場したアルバムスキャナ「Omoidori(おもいどり)」だ。これは写真をデータ化するためのiPhone用のアタッチメントとでも呼べる製品で、アルバムに貼られた写真を1枚ずつ接写してカメラロールに取り込み、iPhone上で閲覧したり、SNSにシェアしたり、メールで相手に送信できるようになるという製品だ。発売は24日だ。
iPhone単体での撮影やドキュメントスキャナと比べても高いクオリティ
使い方は、本体にiPhoneをセットし、専用アプリを起動。電源をオンしたのち、本体をアルバムの上に載せ、写真がプレビュー枠の内側に収まるように位置を調整。後はシャッターボタンを押すだけで写真がデータ化され、iPhoneのカメラロールに保存されるというわけだ。
写真の向きも自動回転してくれるほか(人物の顔の向きが基準となるそうだ)、色調も自動補正、また傾き補正やトリミングも自動的に行なってくれるので、まったくの手間いらずだ。L判のほか2L版を左右分割で取り込むモードも用意されているので、記念写真などの取り込みにも対応する。ちなみに解像度は450~600dpi相当とされている。
撮影にiPhoneを使う以上、本製品なしでiPhone単体で撮るのとクオリティ的に大差ないのではと思う人もいるかもしれないが、iPhone単体で撮影すると、周囲の照明が映り込んだり、撮影者の手やiPhoneの影が被るといった問題が起こりうる。本製品は写真をすっぽり覆うことで外光などの影響を受けないようにするほか、本体内側に搭載された左右2個ずつのLEDを切り替えながら2枚の画像を撮影し、それらを1枚の画像に合成するという仕組みを採用することで、影のないハイクオリティな画像が得られるというわけだ。
今回、比較のためにiPhone用のスキャナーアプリ「CamScanner」で同じ写真を取り込んでみたが、こちらは照明の映り込みや影が露骨に影響するのに対し、本製品を使った場合はそれらの影響がなく、限りなくオリジナルに近いクオリティでの取り込みが行なえる。色も自動補正されるので、外部アプリを使って色合いを直したり、コントラストを調整する必要もまずない。さまざまな写真を試したが、デフォルトで十分な仕上がりだ。スキャナアプリを使って撮影した際に起こりがちなピンぼけの心配もない。
これに加えて、ScanSnap iX100のスーパーファインモード(300dpi)、エクセレントモード(600dpi)とも比べてみたが、エクセレントモードに匹敵するクオリティだ。厳密に言うと、暗い部分のディテールがやや省略されてブロックノイズが入る傾向があるが、iX100をはじめとするドキュメントスキャナではローラー痕や、また紙送り時に発生する白い線がこうした暗い部分に入りがちなため、本製品の方が仕上がりは美しく感じられる。またドキュメントスキャナ、および台形補正を行なうアプリでは写真の縦横比が少なからず狂いがちだが、本製品はそうしたこともない。
写真以外にトレカ類の取り込みにもおすすめ
といったわけで、写真の取り込みにはかなり使えるツールであることが分かったが、もう1つ、本製品の面白い使い方として、トレーディングカードなどの取り込みが挙げられる。紙が厚く、表面がビニールコートされたトレカ類やテレホンカード、おまけのシールなどの図柄をスキャンして残しておきたい場合に、本製品であれば光沢面が反射しない上、黒もきちんとした深みが出るため、印刷物に近いクオリティで取り込める。
ちなみに名刺の取り込みも行なえるが、トレカ類に比べてトリミングが失敗する確率が非常に高い。一般的に、写真とはかけ離れた原稿についてはトリミングに失敗しやすいようで、どうやら色合いや図柄が影響しているようだ。もちろんトリミングなしで取り込んだ後に手動で余白を切り落とすことも可能だが、現状では名刺の取り込みについては本製品ではなく、別のソリューションを使った方が良いだろう。個人的にはトリミング枠検出の判定を「強」、「弱」など調節できる機能があれば用途が広がるのではと感じた。
使ってみて若干気になったのは、撮影時に表示される枠のサイズが意外にギリギリで、やや大きめの印画紙だと端がはみ出かねないケースがあること。こうした場合、本製品のオプションであるフォトプレッサーを取り付けた状態で使うと、本製品がわずかながら浮くことから、ほんの一回り広い範囲の撮影が可能になる。ちょっとした裏技ではあるが、撮影枠から上下左右がミリ単位ではみ出す場合、この方法がおすすめだ。
基本構造についてはよくできていると感じるが、唯一、本製品に取り付けたままの状態ではiPhoneを充電する手段が用意されていないのは少々もったいない。例えば機種変更後の古いiPhoneを本製品と組み合わせて写真スキャナとして使う場合、合体させたままではiPhoneのバッテリが切れてしまうため、作業が終わったら取り外して充電し、使うときにまた取り付けることになり、わざわざ古いiPhoneと組み合わせる意味合いが薄れてしまう。
着脱そのものはレバー1つでワンプッシュでできるとは言え、iPhoneをはめ込む枠の下部に充電ケーブルを通す溝1つ用意されていれば、この問題はクリアできたのではないかと感じる。さすがにLightningコネクタを搭載するなどの機構はコスト的に難しいだろうが、iPhoneをセットしたまま何らかの形で充電を可能にするギミックは、後継製品が登場する暁には検討して欲しいと感じる。
写真の本格的なデジタル化ツールとしても候補になりうるクオリティ
最後いくつか気になった点を挙げたが、製品の肝である使いやすさおよびクオリティは十分であり、SNSなどでカジュアルにシェアする目的にとどまらず、写真のディテールを重視してデジタル化のツールを選ぶ場合も、選択肢の1つに入って来うる存在だ。さすがにプロユースのフラットベッドスキャナやフィルムスキャナと比べるのは酷だが、アルバムに写真を貼った状態で取り込めるのはこれらにない利点であり、実売12,800円というコストなりの価値は十分にある。購入にあたっては、なにかと重宝するオプションのフォトプレッサーも併せて買い求めることをおすすめしたい。