ロジテック「LDR-PS8WU2BKW」を試す
~Wi-Fi経由でスマホ/タブレットで映画が観られるポータブルDVD

「LDR-PS8WU2BKW」

11月上旬 発売
価格:6,980円



 ロジテックINAソリューションズの「LDR-PS8WU2BKW」は、筆者が知る限り国内で唯一のWi-Fiを内蔵したポータブルDVDドライブだ。このWi-Fiを使ってユーザーは、スマートフォンやタブレットからDVD-Videoを観ることができる。

 家庭内で特定の映画を観たい時、手段としては、DVDやBDを購入/レンタルする、VOD(ビデオオンデマンド)サービスを利用するという2つがあるが、一般消費者にとっては前者が圧倒的に主流だろう。

 しかし、DVD/BDの視聴には当然ながら光学ドライブが必要であるため、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスではそれができない。以前なら、購入したDVDをリッピングし、トランスコードするという方法もなくはなかったが、6月の著作権法改正でこれは違法になってしまった。

 筆者個人は、映画は腰を据えて大型TVで観たい質なので、モバイルデバイスの小さな画面での視聴にはさほど魅力を感じていない。だが、“嵌まる”ドラマを1シーズン分購入した際などは、時間の許す限り観続けてしまうので、そういう時はソファやベッドに寝っ転がって、小さい端末で観たいなとは思っていた。

 そういった状況で登場したLDR-PS8WU2BKWのニュースには、そこそこ多くの注目が集まった。似たような考えを持つユーザーが少なくないのだろう。

 というわけで、本稿ではLDR-PS8WU2BKWの実際の使い勝手などについてレビューする。

●設定は簡単で即座にDVDが視聴可能に

 本製品の本体サイズは150×198×25mm(幅×奥行き×高さ)。薄型のポータブル光学Dドライブでは20mmを切っているので、それと比べると若干厚い。また、Wi-Fi関連の基板を実装するためだろう、縦幅が一回り大きい。といっても、重量も430gだし、本製品の用途を考えた時、支障があるほど大きいわけではない。

 ロジテックでの直販価格は6,980円。同社の通常のポータブルDVDドライブだと、実売が3,000円を切っているものもあるが、機能を考えれば個人的には許容範囲だと思う。

トレイは前面ローディング裏面。Wi-FiのSSIDとパスワードはこのステッカーに記載されている背面にUSB、Mini USB、電源端子。PCとはMini USBで接続。USBはUSBストレージ接続専用
Wi-Fiモードでは付属のACアダプタを利用コンパクトタイプのドライブとの比較。縦幅が結構長い厚みは5mm程度の差

 本製品の対応クライアントOSは、Android 2.3以降およびiOS 5.0.1以降。ただし、デュアルコア以上のプロセッサが必須要件となっている。今回は、いくつかのAndroid端末で試してみた。

 モバイルデバイスを本製品のDVDクライアントとして利用する手順は、DVDドライブのアクセスポイントにつなげ、専用のアプリを起動する。ただ、これだけだ。SSIDとパスワードは本体背面のステッカーに記載されている。アプリはAndroid版はGoogle Play、iOS版はApp Storeで無償ダウンロードできる。

 アクセスポイントといっても、本製品にはWAN機能はないので、本製品を利用してる間はインターネット接続が切断され、メールなど受信出来なくなるのでやや注意がいる。対応Wi-Fi規格はIEEE 802.11b/g。なお、本製品はPCのポータブルDVDドライブとして利用する際はUSBバスパワーで動作するが、Wi-Fi接続時は同梱のACアダプタを使うのでコンセントが必要となる。

 アプリを起動すると、自動的にDVDドライブが検出される。初回のみ、「Logitec WiFi DVDが未登録のため、本機能が使用出来ません。登録を行ないますか?」と表示されるので、「OK」を押す。

アプリのトップ画面初回利用時は製品が未登録の旨のダイヤログが出るが、OKを押すだけでいい
DVD Playerのトップ画面では、通常のプレーヤーのように、チャプターや音声、字幕の選択ができる

 あとはトップ画面で「DVD Player」を選び、「Play」をタップすると再生が始まる。ここまでの流れはマニュアルに画像付きで書かれているので、初心者でもつまずかずに利用できるだろう。

 DVD Playerのトップ画面では、チャプターの指定、音声の設定、字幕の設定ができる。再生中に画面をタップすると、プログレスバーや再生コントロールボタン類が表示され、頭出し、再生、一時停止、停止、音量変更ができる。

 また、右下の「D」をタップするトップ画面と同じチャプターなどの設定、「i」をタップするとDVDの各種情報が表示。右上の、「sw100」をタップすると、「sw50」、「sw25」を選ぶことができ、それぞれ解像度が50%、25%になる。その左にあるアイコンをタップすると、アスペクト比が変わるようだが、いまいち正確な動作は分かっていない。

再生時の画面。横表示のみ画面をタップすると、コントロールメニューが上下に表示。再度タップか、一定時間放置で消える

●動作はやや不安定

 今回、検証にあたって、キング・テック「IMPRESSION KT-i7A4.0」(Allwinner A10、シングルコア1GHz)、ソニーモバイルコミュニケーションズ「Xperia GX」(MSM8960、デュアルコア1.5GHz)、NEC「MEDIAS TAB UL」(MSM8960、デュアルコア1.5GHz)、NEC「LifeTouch L」(OMAP 4460、デュアルコア1.5GHz)の4製品を利用した。

 iOS端末については、手元のiPhone 4SとiPad miniを利用したのだが、iOS 6.0.1には未対応のようで、動作しなかったため、今回は検証できていない。

iPhone 4S(左)、iPad mini(右)ともiOS 6.0.1のためか、動作しなかった

 まず、IMPRESSION KT-i7A4.0の場合だが、前述の通り、本製品はデュアルコア以上を要求しており、実際、再生させるとCPU負荷は100%に張り付き、終始コマ落ちした。解像度を50%に落とすと、スムーズにはなった。映画のあらすじは理解できるが、作品を鑑賞するという意味では、シングルコア製品では力不足のようだ。

Xperia GXでの再生中は、左上に表示されているように、CPU負荷率がかなり高まる

 続いて、Xperia GX。これは筆者の私物で普段から利用しているもの。夏モデルではあるが、スペックとしては最新機種と変わらない。だが、映画を再生すると、コマ落ちが頻繁に発生した。CPU負荷も場面によっては100%近くになる。

 一方、同じプロセッサを積み、解像度もほぼ同じMEDIAS TAB ULではコマ落ちは皆無に近かった。CPU負荷は85%程度まで上がることもあるが、おおむね50%程度で安定していた。

 Xperia GXの場合、コマ落ちが発生するのは同じ場面ではなく、毎回変わっていたので、色々とインストールしてある他のアプリのプロセスがバックグラウンドで動き、再生を妨げていたのかもしれない。メーカーに確認したところ、デコードには、CPUに内蔵された動画再生アクセラレータではなく、ソフトウェアを利用しているとのことで、ある程度のCPUパワーが必要になるようだ。とはいえ、最新の1.5GHzデュアルコアプロセッサで480p MPEG-2のデコードがもたつくのは、ややいただけないというのが率直な感想だ。

 LifeTouch Lでは、CPU負荷は常時80%程度だったものの、コマ落ちは特に見受けられなかった。

Xperia GXからMHL経由で液晶TVにつないだところ、普通に表示できた

 余興として、Xperia GXのMHL出力を使って、普通の液晶TVに出力できるか試したところ、何の問題もなく表示できた。ただ、これが本製品、Xperia GXどちらの制限、あるいは問題か分からないが、音声については、ソースが5.1chにも関わらず、ステレオで出力されていた。もちろん、このような使い方は本末転倒で、TVに出力するのなら、最初から据え置きの5.1ch出力対応DVDプレーヤーで再生すればいいわけだが、参考までに記しておく。

 また、今回使ったAndroid端末はいずれもAndroid 4.0搭載だが、画面写真に使っているように、再生中にスクリーンショットを撮影できた。

 本製品利用中に気になったのは、ソフトの不安定さだ。端末、場面を問わず、アプリが強制終了されることが何度もあった。特に、アプリがバックグラウンドから復帰した際のエラー率は高い。そのため、再生を一時中止し、ほかのアプリを使い、再生を再開しようとすると、強制終了し、手動で再生位置を指定するという状況にしばしば陥ることになる。正確には計測していないが、連続再生中だと数十分に1度程度といったとこだろうか。この点は、アップデートでの改善を望みたい。

 このほか、細かいことではあるが、字幕の文字の縁が一般的な白でなく黄色い点、そして字幕の表示がたまにずれる点も個人的に気になった。

 なお、DVD再生中はスリープへの移行が防止されているので、長時間放置したまま再生していても、不意に画面が消えることはない。

アプリは不安定で強制終了がしばしば個人的な趣味だが、字幕の文字の縁が黄色なのはどうも慣れない

●モバイル端末でDVD-Videoを視聴できる唯一の製品

 以上、本製品のDVD再生周りの動作をざっとみてきた。本製品のアプリには、リモートDVD再生以外に、CD再生や、本製品のUSBにつないだUSBメモリ内のコンテンツ再生、およびスマートフォン/タブレットから記録式DVDメディアへのデータのバックアップという機能も搭載されている。もちろん、PCの外付けDVDスーパーマルチドライブとしても、付属の「Nero Kwik Burn Express Essentials」を使って、ライティングできる。これらの点は、技術的な目新しさはないので、今回は評価は割愛している。

 本製品の評価だが、それなりの端末スペックが必要である点や、iOS 6.0.1でうまく動かなかったなど、端末を選ぶ点、そして条件を満たしてもなお動作が不安定な点は残念であり、ユーザーは購入前の下調べを慎重に行なう必要がある。ちなみに、ロジテックによると、iOS 6.0では動作可能だが、iPhone 5での動作に問題があり、それは近日公開予定のバージョン1.3.3で修正されるというので、iOS 6.0.1の問題や、不安定さも遠くないうちに解消されるのではとの期待は抱いている。

 こういった問題こそあるものの、本製品は、Android/iOS端末からDVD-Videoをネットワーク経由で見られる(おそらく)唯一の製品だ。この点だけで、そういった機能が必要な人にとっては、「買い」の製品と言っていい。価格もさほど高くはなく、使い方も難しさはないので、自分の端末の対応状況さえ確認できればという条件付きになるものの、比較的広く勧められる製品と言っていい。

(2012年 11月 6日)

[Reported by 若杉 紀彦]