GeForce GT 640M搭載Acer製Ultrabookの性能を検証
〜Ultrabookでもメジャー3Dゲームのプレイが可能に


 台湾Acerは、CeBITにあわせドイツ時間の3月6日にNVIDIAの新GPU「GeForce GT 640M」を搭載するUltrabook「Aspire Timeline Ultra M3」を公表した。今回、この製品の性能を検証する機会を得たので、ここに紹介したい。

 GeForce GT 640Mを含むGeForce 600シリーズは現行のGeForce 500シリーズの後継となる次世代GPUで、「Kepler」のコードネームで呼ばれているが、現時点で正式には発表されていない。

GeForce GT 640M

 そのため、詳細なアーキテクチャなどの情報はまだNVIDIAから公開されていないが、このGeForce GT 640Mについては、スペックが明らかになっている。具体的には、SP数が384基、シェーダクロックは最大625MHz、対応メモリはDDR3/GDDR5、メモリインターフェイスは128bit、メモリクロックは最大4GHzとなっている。プロセスルールは28nmだ。

 これは、SP数96基、シェーダクロック1,344MHz、メモリインターフェイス128bit、メモリクロック1,800MHzであるGeForce GT 540Mと比べると、SPのクロックは半分以下だが、数は4倍ということになる。前述の通り、アーキテクチャ情報などが公開されていないので、1SP当たりの性能がどのように変化したのかは未知だが、これらの数値から判断すると、40nmから28nmへの微細化により、クロックの低下を補ってあまりあるSP数で性能を底上げしているものと思われる。

 GPUの性能を見る前に、本体全体を概観してみよう。Aspire Timeline Ultra M3は、15.6型液晶を搭載する2スピンドルのUltrabook。現在、日本で扱われている製品がほぼ13型級に限られていることもあり、一般的にはUltrabook=モバイルノートというイメージがあるだろう。そのため、15.6型というサイズの本製品を見ると、Ultrabookに対する印象からかけ離れているとも思えるが、本体の厚さは20mmであり、高速な応答性も含め、Ultrabookの基準にきちんと適合している。本体サイズまわりの情報は提供されてないため、手元で計測したところ、サイズは約376×253×20mm(幅×奥行き×高さ)だった。重量はあいにく感量2kgまでの秤しかなく、これでエラーが返されたため、2kg以上ということしか分からない。いずれにせよ、普段、持ち運んで使う類の製品ではない。

 主な仕様は、Core i7-2637M(1.4GHz)、メモリ4GB、SSD 256GB、DVDスーパーマルチドライブ、1,366×768ドット表示対応15.6型液晶、GeForce GT 640M(1GB)、Windows 7 Home Premium(64bit SP1)を搭載。

 ビデオ機能はおなじみのOptimusに対応するため、通常はCPU内蔵のIntel HD Graphics 3000が利用され、ゲームやCUDA対応アプリなどGeForceが必要な場合だけそちらが自動的にオンになり、そのアプリを終了すると自動的にGeForceはオフになる。そのため、ユーザーは特に意識しなくても、最大限のバッテリ駆動時間とGPU性能を両立できる。

 インターフェイスは、USB 3.0、USB 2.0×2、HDMI出力、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n無線LAN、SDカードスロットなどを装備。オーディオはDolby Home Theater v4に準拠する。キーボードはアイソレーション型で、15.6型のサイズを活かして、テンキーも備える。また、ボタン一体型のタッチパッドもゆとりのある大きさだ。

 発売時期は3月中とされており、価格は未定だ。また、米国以外の地域での販売情報についてもまだ分かっていない。

Aspire Timeline Ultra M3 上面 正面には電源ボタン
右側面には特に端子類はない 背面にヘッドフォン、USB 2.0×2、USB 3.0、HDMI出力、Gigabit Ethernet、電源 左側面に光学ドライブとSDカードスロット
底面。バッテリは取り外しできない キーボードはアイソレーション式で、テンキー付き デバイスマネージャでGeForce GT 640Mが確認できる

●ベンチマーク

 それでは、ベンチマークの結果を紹介しよう。環境については、Timeline Ultra M3をそのまま利用。本来であれば、前世代のGeForce GT 540MやRadeonとの比較も見たいところだが、モバイルではGPUだけ異なる環境を整えるのが困難なので、CPU内蔵のIntel HD Graphics 3000との比較だけとなる。また、DirectX 11での結果も測定しているが、Intel HD Graphics 3000はこれに対応しないため、GeForce GT 640Mの結果だけを掲載している。画面解像度は、基本的に1,366×768ドットか、各ソフトの標準設定を利用している。ビデオドライバのバージョンは、NVIDIA用が296.11、Intel用が8.15.10.2639。

 DirectX 9/10対応ベンチマークは、3DMark Vantage 1.1.0(グラフ1)、3DMark06 1.2.0(グラフ2)、BIOHAZARD 5 Benchmark(グラフ3)、ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク(グラフ4)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ5)、Lost Planet 2 Benchmark(グラフ6)を利用した。

 結果はご覧の通り、圧倒的な差が出ている。そもそもCPU内蔵とミドルレンジの単体GPUを比べることに意味はないのだが、ひとまず大きな性能向上が得られることが分かるだろう。

【グラフ1】3DMark Vantage 1.1.0
【グラフ2】BIOHAZARD 5 Benchmark
【グラフ3】3DMark06 1.2.0
【グラフ4】ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク
【グラフ5】MHFベンチマーク 【大討伐】
【グラフ6】Lost Planet 2 Benchmark

 DirectX 11対応ベンチマークは、3DMark 11 Build 1.0.3、Unigine Heaven Benchmark 2.5、Stone Giant DX11 Benchmark、Lost Planet 2 Benchmark、Alien vs. Predator DX11 Benchmarkを用い、結果は表1にまとめた。

 ゲームベンチについては、サンプル数が少ないので、断言はできないが、DirectX 11世代のタイトルでも、快適にゲームをプレイできる閾値となる30fpsをおおむね期待できることが分かる。

【表1】DirectX 11ベンチマークの結果
3DMark 11 Build 1.0.3 Permormance 1818
Graphics Score 1715
Physics Score 3304
Combined Score 1487
Unigine Heaven Benchmark 2.5 Tessellation: Normal 3.1
Stone Giant DX11 Benchmark 36
Lost Planet 2 Benchmark DX11 Test A 31
DX11 Test B 24.9
Alien vs. Predator DX11 Benchmark 30.7

 消費電力については、ワットチェッカーを使い、Internet Explorer 9および3DMark06実行時の消費電力を調べた(グラフ7)。IE9を使っているだけであれば、GeForce GT 640Mをオンにしても、最低限の上昇しかしないが、3Dレンダリングとなると、40Wの差が出てしまう。バッテリ駆動の環境で、3Dゲームをし続けるということはあまりないだろうから、40Wの差がバッテリに与える影響というのはあまり深刻ではないだろう。ただし、GeForce GT 640Mがフル稼働しているときは、ファンがかなりの騒音を上げる。個人的には、ヘッドフォンをしていないと、気になってしまうレベルの音だ。

【グラフ7】消費電力(W)

 バッテリ駆動時間については、BBENCHを使い、キーストローク出力、Web巡回オン、液晶輝度10%の状態で計測を行なった。結果、Intel HD Graphics 3000利用時は5時間、GeForce GT 640M利用時は4.18時間経過時点でバッテリ残量が5%になった。その差は約16%で、IE9実行時の消費電力の差よりも小さい。実際の利用時は、GeForceが常時オンとなることはないので、Webブラウズ時で5時間と4.18時間の間くらい使うことができるだろう。

【3月16日12時追記】初出時にベンチマークのグラフにデータの数値が記載されていなかったので、追加しました。

●Ultrabookでもゲームプレイに耐えうる性能を実現

 以上、GeForce GT 640Mの性能を見てみた。検証時間が限られていたこともあり、簡単な評価にとどまっているが、ここから得られる帰結は、同GPUは、WXGAの解像度ならDirectX 11世代のゲームも十分満足に動作させられる実力を持っていると言うことだ。

 もちろん、Timeline Ultra M3の15.6型というサイズを差し引いて考える必要があるのだが、本製品はUltrabookとして厚さを20mmに抑えているので、13型級でもこのGPUを搭載できる可能性はゼロではない。

 Ultrabookは、まだ立ち上がって間もないカテゴリだ。これまでは、薄さ、バッテリ駆動時間の長さ、高速な応答性といった、可搬性や使い勝手が訴求されてきたが、GeForce 600シリーズによって、ここにゲームレベルのグラフィック性能が加わることになる。つまり、Ultrabookがターゲットするユーザー層が1段広がるわけで、これはユーザーはもとより、Ultrabookを提唱するIntelにとっても喜ばしいことだろう。

 最後に、冒頭にも書いたとおり、GeForce 600シリーズはまだ完全には発表されていない。しかし、Timeline Ultra M3の発売が3月となっていることから、月内にも発表が行なわれると見ていいだろう。その暁には、デスクトップ向けも準備が整っているはずであり、アーキテクチャの詳細や、従来および競合製品との比較も明らかに出来るだろう。

(2012年 3月 16日)

[Reported by 若杉 紀彦]