AMD「Radeon HD 7950」ベンチマークレポート


 米AMDは1月30日(現地時間)、ハイエンドGPU「Radeon HD 7900 シリーズ」の新モデル「Radeon HD 7950」を発表した。今回、AMDより借用したRadeon HD 7950搭載ビデオカードを使い、新GPUの性能をベンチマークテストで探ってみた。

●Radeon HD 7900シリーズ第2弾製品

 今回発表されたRadeon HD 7950(以下、HD 7950)は、初のRadeon HD 7900シリーズ製品として登場したRadeon HD 7970(以下、HD 7970)の下位に位置する製品だ。HD 7970同様、新アーキテクチャ「Graphics Core Next」採用し、28nmプロセスで製造された「Tahiti」コアを搭載する。

 HD 7950のGPUコアは、1,792基のストリーミングプロセッサと112基のテクスチャユニット、32基のROPユニットを備え、800MHzで動作する。メモリは、5GHz相当で動作する3GBのGDDR5で、384bit幅のインターフェイスで接続されている。上位モデルのHD 7970に比べ、GPUコアとメモリの動作クロックが引き下げられ、Compute Unit4基分が無効化された形だ。

 そのほか、インターフェイスにPCI Express Gen 3.0を採用し、DirectX 11.1をサポートする点はHD 7970と同じで、アイドル時の消費電力をカットする「AMD ZeroCore Power Technology」もサポートする。

【表1】Radeon HD 7900 シリーズの主なスペック
 Radeon HD 7950Radeon HD 7970Radeon HD 6970Radeon HD 6950
アーキテクチャGraphics Core NextGraphics Core NextVLIW4VLIW4
プロセスルール28nm28nm40nm40nm
コアクロック800MHz925MHz880MHz800MHz
SP1,792基2,048基1,536基1,408基
テクスチャユニット112基128基96基88基
メモリ容量3GB GDDR52GB GDDR52GB GDDR5
メモリクロック(データレート)5.0GHz5.5GHz5.5GHz5.0GHz
メモリインターフェイス384bit384bit256bit256bit
ROPユニット32基
最大消費電力200W250W250W200W

HD 7950のGPU-Z実行画面。Catalyst Control Centerによるハードウェア情報

●リファレンスボードはHD 7970とほぼ同一

 HD 7950のリファレンスボードは、外観的にはHD 7970のリファレンスボードとカード長や搭載クーラーの形状が同じで、ほとんど見分けがつかないほど似ている。ブラケット部の形状やディスプレイ出力、BIOS切り替えスイッチなども、HD 7970と同じ仕様だ。

 外観上で明らかに異なっているのが電源端子で、HD 7970が8ピン+6ピンの2系統だったのに対し、HD7950は6ピン2系統に変更されている。HD 7950の消費電力は、最大消費電力250WのHD 7970より50W低い200Wとされており、電源端子の仕様はこれを反映させたものと言える。

HD 7950のリファレンスボード左がHD 7950で、右がHD 7970。電源端子を確認しないと見分けがつかないディスプレイ出力は、DVIとHDMI各1系統と、mini DisplayPort2系統という構成
電源端子は6ピン2系統HD 7970同様、ボード上部にBIOS切り替えスイッチを備える

●テスト機材

 ベンチマークテストの結果紹介に移りたい。今回は比較用製品として、上位モデルのHD 7970のほか、Radeon HD 6970(以下、HD 6970)搭載ビデオカード「GIGABYTE GV-R697OC2-2GD」と、GeForce GTX 580(以下、GTX 580)搭載ビデオカード「ZOTAC ZT-50101-10P」のテスト結果を用意した。

 今回のテストでは、HD 7950とHD 7970はRadeon HD 7900シリーズ用の最新ドライバ「8.921.2-120119a-13210E-ATI」を適用し、HD 6970とGTX 580の結果についてはHD 7970レビュー時のテスト結果を流用している。なお、HD 6970搭載の「GIGABYTE GV-R697OC2-2GD」については、GPUクロックを880MHzから920MHzにオーバークロックした独自仕様の製品である点に注意してご覧いただきたい。

HD 6970搭載ビデオカード、GIGABYTE「GV-R697OC2-2GD」GTX 580搭載ビデオカード、ZOTAC「ZT-50101-10P」

【表2】テスト環境
GPUHD 7950HD 7970HD 6970 OCGTX 580
CPUIntel Core i7-2600K
マザーボードASUS P8P67 Rev3.0 (BIOS:2001)
メモリDDR3-1333 4GB×2
(9-9-9-24、1.5V)
ストレージWestern Digital WD5000AAKX
電源Silver Stone SST-ST75F-P
グラフィックスドライバ8.921.2-120119a-13210E-ATI8.921.2-111219a-130573E-ATIGeForce 290.53 Driver BETA
OSWindows 7 Ultimate 64bit SP1

●DirectX 11対応ベンチマークテスト

 まず、DirectX 11対応ベンチマークテストの結果から紹介する。実施したテストは「3DMark 11」(グラフ1、2、3)、「Unigine Heaven Benchmark 2.5」(グラフ4)、「Stone Giant DX11 Benchmark」(グラフ5、6)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ7)、「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」(グラフ8、9)、「Tom Clancy's H.A.W.X 2 Benchmark」(グラフ10)だ。

 HD 7950のテスト結果をみると、HD 6970を明確に上回る一方で、GTX 580に対してはStone GiantやLost Planet 2など、HD 7970がGTX 580を上回るベンチマークテストで下回るなど、テストタイトルによって優劣が分かれる結果となった。スコアの傾向はHD 7970と一致しており、HD 7950のスコアはHD 7970より10~20%程低いスコアとなっている。

 上位モデルであるHD 7970とのパフォーマンス差は少なくないが、NVIDIAのシングルGPU最上位製品であるGTX 580はかなりいい勝負をしていると言える結果だろう。

【グラフ1】3DMark 11 Build 1.0.3
【グラフ2】3DMark 11 Build 1.0.3(Graphics Score)
【グラフ3】3DMark 11 Build 1.0.3(Combined Score)
【グラフ4】Unigine Heaven Benchmark 2.5
【グラフ5】Stone Giant DX11 Benchmark(1280×720)
【グラフ6】Stone Giant DX11 Benchmark(1920×1080)
【グラフ7】Lost Planet 2 Benchmark(DX11・テストタイプB)
【グラフ8】Alien vs. Predator DX11 Benchmark(1280×720)
【グラフ9】Alien vs. Predator DX11 Benchmark(1920×1080)
【グラフ10】Tom Clancy's H.A.W.X 2 Benchmark

●DirectX 9/10対応ベンチマークテスト

 続いて、DirectX 9世代とDirectX 10世代のベンチマークテストの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark Vantage」(グラフ11、12)、「BIOHAZARD 5 Benchmark DX10」(グラフ13)、「3DMark06 Build 1.2.0」(グラフ14、15)、「ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク」(グラフ16)、「MHFベンチマーク 【大討伐】」(グラフ17)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ18)だ。

 DirectX 11対応ベンチマークの結果と比べると、各GPUのスコア差は小さくなっており、HD 7950のスコアは、HD 6970やGTX 580と大差ない結果が目立つ。一方で、HD 7970には多くのテストである程度のスコア差をつけられていることから、従来のハイエンドGPUを概ね上回るHD 7970と、従来のハイエンドGPUと概ね同程度のHD 7950という傾向が見て取れる。

 DirectX 11対応ベンチマークに比べ描画負荷の軽い傾向にあるDirectX 9/10対応ベンチマークでは、CPU性能がボトルネックとなってスコアに反映されるGPU性能の差が小さくなる傾向があるが、HD 7970とのスコア差を見ると、単にそれだけが原因でHD 6970やGTX 580と差のない結果になっているというわけではないようだ。

【グラフ11】3DMark Vantage Build 1.1.0
【グラフ12】3DMark Vantage Build 1.1.0(Graphics Score)
【グラフ13】BIOHAZARD 5 Benchmark(DX10・パフォーマンステストB)
【グラフ14】3DMark06 Build 1.2.0
【グラフ15】3DMark06 Build 1.2.0 高負荷設定(1920×1080、4x AA、16x AF)
【グラフ16】ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク
【グラフ17】MHFベンチマーク 【大討伐】
【グラフ18】Lost Planet 2 Benchmark(DX9・テストタイプB)

●消費電力の比較

 最後に消費電力の測定結果を紹介する。サンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」を利用し、各テスト実行中の最大消費電力を比較した。

 アイドル時の消費電力については、アイドル時の消費電力をカットする「AMD ZeroCore Power Technology」の効果により、HD 7950とHD 7970が従来のハイエンドGPUより20W程低い優秀な数値を記録している。

 各テスト実行中の消費電力については、HD 7950が大差をつけて比較製品中最も低い数値を記録した。HD 6970はOCモデルである点に注意が必要だが、従来のハイエンドGPUに約100Wからそれ以上の差をつけ、HD 7970にも60Wから最大で95Wもの差をつけている。また、アイドル時の消費電力とOCCT3.1.0によるGPUフルロード時の消費電力の差から、スペック上の最大消費電力より低い消費電力で動作していることも伺える。

【グラフ19】システム全体の消費電力

●従来のハイエンドGPU並みの性能を低消費電力で実現

 以上の結果から、HD 7950が従来のハイエンドGPUと同程度のパフォーマンスを大幅に低い消費電力で実現したGPUであることが見えてくる。単純にパフォーマンスだけ見れば大きな進化とは言い難いが、そのワットパフォーマンスの高さと純粋な消費電力の低さは特筆に値する。

 ワットパフォーマンスについては抜きんでた存在と言えるHD 7950だが、よりパフォーマンスを重視するユーザーにとって、HD 7970とHD 7950の間に存在する性能差は決して小さくないだろう。既にGTX 580などのハイエンドGPUを使っているのであれば、パフォーマンスアップを狙ってのアップグレードパスとしての魅力はHD 7970に及ばない。

 より高いパフォーマンスを求めるのか、消費電力と性能のバランスを求めるのかで、HD 7970とHD 7950のどちらが魅力的に見えるのかは変わってくる。いずれにせよ、Radeon HD 7900シリーズの2製品は、いずれも新世代のGPUに相応しい魅力を持った製品であることは間違いなさそうだ。

(2012年 1月 31日)

[Reported by 三門 修太]