国内で発売になったAMD FX-6100とFX-4100のベンチマーク


 AMDは10月23日、AMD FXシリーズの「FX-6100」、「FX-4100」の販売を開始した。AMD FXシリーズのCPU単体としてはこれが初めて世に出回る製品となる。そのパフォーマンスを、ベンチマークテストで確認していく。

●3モジュール6コア製品と、2モジュール4コア製品が登場

 今回テストを行なうFX-6100とFX-4100は、Bulldozerアーキテクチャ採用したAMD FXシリーズの下位モデルにあたる製品だ。最上位モデルのFX-8150は、1モジュールで2つのCPUコアとして動作するBulldozerモジュールを4基備えた8コアCPUだが、今回紹介するFX-6100とFX-4100ではこのモジュール数が削減されている。

 FX-6100は、3基のBulldozerモジュールを備えた6コアCPUで、L2キャッシュ容量は6MB。動作クロックは定格時に3.3GHzで、All Core Turbo時に3.6GHz、Max Turbo時には3.9GHzまで上昇する。CPU内部のノースブリッジの動作クロックは2.0GHzで、TDPは95W。

 FX-4100は、2基のBulldozerモジュールを備えた4コアCPUで、L2キャッシュ容量は4MB。動作クロックは定格時に3.6GHzで、All Core Turbo時に3.7GHz、Max Turbo時には3.8GHzまで上昇する。ノースブリッジの動作クロックは2.0GHzで、TDPは95W。

 DDR3-1866に対応したメモリコントローラをはじめ、自動オーバークロック機能の「Turbo CORE」のサポート、8MBのL3キャッシュ、CPU倍率を上方に変更可能なBlack Editionであることなど、有効化されているBulldozerモジュールの数以外、基本的な仕様は最上位のFX-8150と共通している。

 より詳細については、関連記事を参照して欲しい。

【表1】各CPUの主な仕様
CPUAMD FX-4100AMD FX-6100AMD FX-8150AMD FX-8120
コア数468
CPU動作クロック3.6GHz3.3GHz3.6GHz3.1GHz
TurboCORE(All Core Turbo)3.7GHz3.6GHz3.9GHz3.4GHz
TurboCORE(Max Turbo)3.8GHz3.9GHz4.2GHz4.0GHz
L2キャッシュ4MB6MB8MB
L3キャッシュ8MB
North Bridge2.0GHz2.2GHz
拡張命令SSE3、SSE4.1/4.2、AES、AVX、FMA4、XOP
対応ソケットSocket AM3+
TDP95W125W125W

AMD FX-4100AMD FX-4100のCPU-Z画面
AMD FX-6100AMD FX-6100のCPU-Z画面

●テスト環境
ASUS SABERTOOTH 990FX。チップセットはAMD 990FX+SB950。

 それではベンチマークテストの結果紹介に移りたい。比較対象には、AMD FXシリーズ最上位モデルの「FX-8150」と、6コアCPUの「Phenom II X6 1100T Black Edition」(以下X6 1100T)のほか、Socket FM1対応APU「A8-3850」と、Intelの「Core i7-2600K」を用意した。

【表2】各CPUの主な仕様
CPUFX-4100/FX6100/FX-8150Phenom II X6 1100TA8-3850Core i7-2600K
マザーボードASUS SABERTOOTH 990FX (BIOS:0810)ASUS F1A75-V PROASUS P8P67 Rev3.0 (BIOS:1850)
メモリDDR3-1866 4GB×2
(9-10-9-28)
DDR3-1333 4GB×2 (9-9-9-24)DDR3-1866 4GB×2
(9-10-9-28)
DDR3-1333 4GB×2 (9-9-9-24)
内蔵GPURadeon HD 6970
ストレージWestern Digital WD5000AAKX
グラフィックスドライバ8.901-110923a-125757E-ATI (Catalyst 11.10 preview)
電源SilverStone SST-ST75F-P
OSWindows 7 Ultimate x64 SP1

●ベンチマークテスト結果

 まずはCPUベンチマークのテスト結果から見ていく。テストは「Sandra 2011.SP5 17.80」(グラフ1、11、12、13、14)、「PCMark05」(グラフ2、3)、「CINEBENCH R10」(グラフ4)、「CINEBENCH R11.5」(グラフ5)、「Super PI」(グラフ6)、「PiFast 4.3」(グラフ7)、「wPrime 2.05」(グラフ8)、「PCMark Vantage」(グラフ9)、「PCMark 7」(グラフ10)だ。

 Sandra 2011.SP5では、整数演算を使う項目でFX-4100はA8-3850を、FX-6100はX6 1100Tをそれぞれ上回る結果を記録した。一方で、浮動小数点演算を使うWhetstone FPUやMulti-Media Float/Doubleでは逆転されている。FX-4100とA8-3850は4コア、FX-6100とX6 1100Tは6コアと、それぞれCPUコア数は同じだが、Bulldozerモジュールは2つの整数コアと1つの浮動小数点コアをまとめて2つのCPUコアとしているため、浮動小数点コアの数で言えばそれぞれ半分しかないことになる。浮動小数点コア単体の性能はA8-3850やX6 1100TのK10系アーキテクチャより強化されているものの、CPUコア毎に独立した浮動小数点コアを持つK10アーキテクチャの方が有利なようだ。

 CINEBENCH系では1コアのみで実行した際には、Turbo COREの効果でFX-4100がA8-3850を上回っているものの、4コア全てを利用する条件ではA8-3850に及ばないという結果に終わり、FX-6100については使用するコア数にかかわらずX6 1100Tに及ばなかった。また、計算系のベンチマークでは、Super PIこそかろうじてA8-3850を上回るものの、PiFast 4.3とwPrime 2.05では、FX4100とFX-6100はともにX6 1100TはおろかA8-3850に及ばないという結果だった。

【グラフ1】Sandra 2011.SP5 17.80(Processor Arithmetic/Processor Multi-Media)
【グラフ2】PCMark05 Build 1.2.0 CPU Test(シングルタスク)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0 CPU Test(マルチタスク)
【グラフ4】CINEBENCH R10
【グラフ5】CINEBENCH R11.5
【グラフ6】Super PI
【グラフ7】Pifast 4.3
【グラフ8】wPrime 2.05
【グラフ9】PCMark Vantage Build 1.0.2
【グラフ10】PCMark 7 Build 1.0.4
【グラフ11】Sandra 2011.SP5 17.80(Memory Bandwidth)
【グラフ12】Sandra 2011.SP5 17.80(Cache and Memory)
【グラフ13】Sandra 2011.SP5 17.80(Memory Latency - Clock)
【グラフ14】Sandra 2011.SP5 17.80(Memory Latency - nsec)

 続いて、3Dゲーム系のベンチマークテストの結果を確認していく。

 検証したテストは「3DMark06」(グラフ15)、「ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク」(グラフ16)、「MHFベンチマーク【絆】」(グラフ17)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ18)、「3DMark Vantage」(グラフ19、20、21)、「3DMark11」(グラフ22、23、24)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ25)、「Unigine Heaven Benchmark 2.5」(グラフ26)だ。

 FX-4100とFX-6100のスコアは、テストによっては同じコア数のA8-3850やX6 1100Tを超えるものがあるものの、その逆の結果となっているテストも少なくない。タイトルによって得手不得手があるのは前回FX-8150を検証した際にも触れたが、「Lost Planet 2」や「ファイナルファンタジー XIV オフィシャルベンチマーク」では、FX-4100とFX-6100がともにA8-3850のスコアに及ばない結果となるなど、芳しくない結果が目立つ。

 「MHFベンチマーク【絆】」や「Unigine Heaven Benchmark 2.5」など、FX-4100やFX-6100が優位なテスト結果もあるが、それらのテストでの差は数パーセント程度に留まっている。ゲーム系ベンチマークの結果をみると、少なくともゲームを快適にする目的でFX-4100やFX-6100を選ぶ理由はほとんど無いといえる。

【グラフ15】3DMark06 Build 1.2.0
【グラフ16】ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク
【グラフ17】MHFベンチマーク【絆】
【グラフ18】Lost Planet 2 Benchmark(DX9・テストタイプB)
【グラフ19】3DMark Vantage Build 1.1.0
【グラフ20】3DMark Vantage Build 1.1.0(Graphics Score)
【グラフ21】3DMark Vantage Build 1.1.0(CPU Score)
【グラフ22】3DMark 11 Build 1.0.2
【グラフ23】3DMark 11 Build 1.0.2(Graphics Score)
【グラフ24】3DMark 11 Build 1.0.2(CPU Score)
【グラフ25】Lost Planet 2 Benchmark(DX11・テストタイプB)
【グラフ26】Unigine Heaven Benchmark 2.5

 最後に消費電力の比較結果を紹介する。

 消費電力の測定は、サンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」を利用して行なった。アイドル時の消費電力のほか、CINEBENCH R11.5でスレッド数を制限して実行した際と、ストレステストツールの「OCCT Perestroika 3.1.0」で、CPUに負荷を掛ける「CPU:OCCT」を実行した際の消費電力をそれぞれ測定した。

FX-6100のOCCT実行中の画面。スクリーンショットを撮ったタイミングでは1コアだけ3.5GHzで動作しているが、負荷テスト実行中は3.3GHzを下回るコアが目立った

 AMD FXシリーズの特徴として、アイドル時の消費電力がかなり低く抑えられている点が挙げられる。プラットフォームの違うA8-3850には及ばないものの、AMD FXシリーズの各CPUのアイドル時消費電力はコア数に関わらず80W程度に抑えられている。

 負荷時については、FX-6100とFX-4100の消費電力はかなり近い値で推移しており、もっとも負荷の高いOCCT実行時でも5Wの差に収まっている。数値としても171~175Wと、TDP 125WのX6 1100Tや上位のFX-8150に比べだいぶ低い値となっている。この数字を見ると、定格時3.3GHzと他のモデルよりクロックは低いものの、6コアを備えるFX-6100はかなり電力を抑えることに成功しているように見える。

 ただ、このFX-6100の負荷時の動作をモニタリングしてみると、表示された温度的には余裕があるにも関わらず、CPUクロックが2.8~3.6GHz程度の範囲で変動するという現象が発生していた。まだ登場から日の浅いCPUであるため、マザーボードのチューニング不足による不具合である可能性もありえるが、モニタリングしていた限りでは動作クロックが3.3GHzを超える瞬間はほとんどなく、逆に3.3GHzを下回っている時間が多かったことと、OCCT実行時の消費電力が同じTDP 95WのFX-4100と同程度であったことを考えると、不具合というよりTDP枠内に抑えるための動作であるのではないかと考えられる。いずれにせよ、全コア3.3GHz動作を維持した際のFX-6100の消費電力はもう少し高いものになる可能性が高い。

【グラフ27】システム全体の消費電力

●現時点では魅力の薄いAMD FXシリーズ下位製品

 以上のように、FX-6100とFX-4100は同じコア数の旧世代製品に対して苦戦を強いられる結果となった。

 FX-8150は既存の製品に対して8コアというアドバンテージがあったものの、それがない条件ではクロックの近いX6 1100Tだけでなく、定格2.9GHzと動作クロックの低いA8-3850と優劣が分かれるという結果となった。両製品とも上方へのCPU倍率変更が可能なBlack Edition製品なので、オーバークロックによるパフォーマンス向上も狙えるが、少なくとも3.6GHzで動作するA4-4100と、2.9GHz動作のA8-3850のテスト結果などから、AMD FXシリーズのクロック当たりのパフォーマンスが低いのは明らかなので、クロックに伴って向上するパフォーマンスはK10やSandy Bridgeに比べて低いことになる。

 今後、新たに対応した拡張命令セットなどを活かせる環境が増えれば評価が変わることも考えられるが、現時点では、FX-4100やFX-6100に、Phenom II X4やPhenom II X6からアップグレードするメリットを見出すのは難しい。ようやく発売されたAMD FXシリーズだが、最上位モデルの「FX-8150」の発売が未だ未定であることも含め、その滑り出しは決して順調なものとは言えないようだ。

(2011年 10月 27日)

[Reported by 三門 修太]