GalaxyのシングルスロットGeForce GTX 460を試す

GF PGTX460/1GD5 KATANA

発売中
価格:オープンプライス



 株式会社エムヴィケーから、Galaxy Microsystems製のシングルスロットのGeForce GTX 460ビデオカード「GF PGTX460/1GD5 KATANA」が発売された。価格はオープンプライスだが、実売価格は24,500円前後だ。今回2枚お借りしたので、SLI構築時の結果とともに、使用感をレポートしたい。

 GeForce GTX 460はNVIDIAのラインナップでハイミドルレンジとして位置づけられるモデル。GeForce GTX 560 Tiの登場により、460の相場は当初2万円台前半だった価格が1万円台後半に下落したが、コストパフォーマンスは良い。本製品はシングルスロットの特徴から、やや高いプレミアム的な位置づけだが、それでも560 Tiよりは安価だ。

 振り返れば、GeForce 7900 GTやGeForce 8800 GT、Radeon HD 4850などの頃、2~3万円台のハイミドルレンジと言えばシングルスロットが当たり前であったが、近年はトランジスタ数の増加と消費電力の向上により発熱が増える一方で、2スロット占有クーラーを搭載する製品が増えた。DirectX 11対応製品に限って言えば、Radeon HD 5770搭載ではXFXの「HD-577X-ZMF3」をはじめ、いくつかの製品が登場したが、GeForceに関しては皆無だ。

 それを打開するのが今回の「GF PGTX460/1GD5 KATANA」と言えよう。Galaxyは以前にもGeForce GTX 260+を搭載した「GF PGTX260+/896D3 KATANA」を発売したが、それに似た形で、クーラーを工夫することでGeForce GTX 460の搭載を可能にしたわけだ。

●長いボードレイアウトで放熱面積を稼ぐ

 さっそく製品を見ていこう。パッケージ内容は簡素なもので、マニュアルのほかにドライバCD-ROM、DVI→ミニD-Sub15ピン変換アダプタ、ペリフェラル4ピン×2→PCI Express 6ピン変換ケーブルなどが付属されている程度だ。

 本体は、金属製のシルバーに覆われており、デザインであしらわれたスリットも入っていてなかなかカッコ良い。ただボード長は266mm(実測値)、GeForce GTX 460リファレンスの216mmと比較するとかなり長い。おそらくこれもクーラーの放熱面積を増やすための工夫だろう。

 クーラーはベーパーチャンバー方式だ。この方式は液体の気化と液化の移動を利用したもので、高い冷却性能を誇るが、反面ヒートパイプとコストが高い。しかし、この薄さで150Wクラス冷却を行なうには、この方式をとらざる得なかったのだろう。

 どのぐらい薄いかというと、実測で13mm程度だ。これはXFXのHD-577X-ZMF3と比較してもわずかに薄い。実はHD-577X-ZMF3の場合も、確かにシングルスロットに収まるが、その下に拡張カードを刺す場合、拡張カードによってはコンデンサの足などがファンの軸にあたり、ファンが回転しなくなってしまう(実際ASUSTeKのU3S6などで干渉した)。しかしGF PGTX460/1GD5 KATANAではさらに薄いクーラーを採用することで、その問題を回避している。

 さらに特筆すべきは、表のファンに相当する部分の背面もまっさらで、部品が一切実装されていない点。つまりGF PGTX460/1GD5 KATANAを2枚隣接して装着した場合でも、ケース側面からのスムーズな吸気とファンの回転が実現できる。これはHD-577X-ZMF3には見られなかった工夫だ。

 なお、このクーラーもHD-577X-ZMF3と同様、後方から前方に向かってエアフローが発生する構造だ。装着する場合、ケース内のエアフローも一度見直したほうが良いかもしれない。ファンの直径は実測で約75mmである。

 一方、ディスプレイインターフェイスはDVI-IとDisplayPortの2基のみと寂しい。デュアルディスプレイ環境を構築するユーザーはDisplayPort対応ディスプレイか、変換ケーブルが別途必要になるので、注意が必要だ。

製品パッケージの内容本体。ヒートシンクはスリットが入っており、カッコ良いクーラーは13mm程度と非常に薄い
裏面。ファンの部分には部品が実装されていないテストにあたって2枚用意したこのように2枚が密接していてもある程度の隙間ができる

●騒音はそれなりにするが、放熱効果は高い
ケースに組み入れたところ

 一通り外観を見たところで、実際に使用してみた。テスト環境は筆者の自作マシンで、CPUにCore i7-930(2.80GHz)、メモリ12GB、Intel X58 Expressチップセット(DFI LP JR X58-T3H6)、500GB HDD、DVDスーパーマルチドライブ、OSはWindows 7 Home Premium(64bit)といった環境。

 なお、ハイミドルレンジのビデオカードとはいえ、SLIのテストも兼ねているので、今回はCPUがボトルネックにならないよう、FSBを166MHzに引き上げて、CPUを3.486GHzにオーバークロックした状態でテストした。

 まずは気になる騒音だが、デスクトップ表示時などは「やや煩い」、起動時や高負荷時などドライバによるファン制御が効かない環境だと「煩い」という印象。甲高い音で、まるでブレードサーバーが目の前で稼働しているかのようだ。といっても、どうしても我慢できないほど煩いわけでもないし、半バラック状態での評価だ。遮音性の高いケースに入れてしまえば気にならないかもしれない(もっともこの場合は放熱が課題になるが)。

 デスクトップ表示時の騒音をやや煩いと評したが、具体的に言うなら、HD-577X-ZMF3の負荷時よりも気になる程度。風切り音云々というより、軸音で「キュルキュル」鳴っている印象だ。

 温度と回転数を監視したところ、室温18℃の環境でアイドル時が41℃前後で3,270rpmだった。これだけ高速に回っていれば煩いのも致し方ないだろう。

 一方、「HeavenBenchmark Ver.2.1」を約10分間走らせた高負荷時の回転数は4,780~5,280rpmに達した。しかしそのお陰もあって、温度は67~72℃前後で推移した。筆者はリファレンスのGeForce GTX 460を使用したことがないため、データ比較はできないが、“ハイミドルレンジでシングルスロットモデル”として考えれば、かなり抑えられているのではないだろうか。

【動画】アイドル時の騒音
【動画】負荷時の騒音

●性能はリファレンス通りだが、SLIに問題

 最後に性能を見ていきたい。だが、その前に1つお断りしておかなければならない点がある。冒頭の写真を見てお気づきの方もいらっしゃると思うが、本製品は製品情報のパッケージにもパッケージにもSLIの文字が大きく書かれているのにもかかわらず、SLIのコネクタを装備していない。

 では実際にどうかというと、テスト時点で最新版だった「260.99」をインストールしたところ、そもそもSLIの項目が現れなかった。また、製品付属のCD-ROMには、「259.22」という特殊なバージョンもあり、これもインストールしてみたが、これにおいても同様にSLIを選択できなかった。

260.99ではSLIの選択ができない258.96ではSLIを有効にできるSLIコネクタの接続を促されるものの、SLIそのものは有効だ

 これについてエムヴィケーに問い合わせたところ、Galaxyのサイトで提供している「258.96」では対応を確認できたということだったので、これをインストールしたところ、SLIコネクタの接続を勧められたものの、しっかりSLIの構成ができるようになった。以下のテストもこのバージョンで実施している。

 ベンチマークテスト結果の表を下に掲載するが、仕様がリファレンス通りということもあり、標準的なスコアとなった。ただし、SLI時はドライバのバージョンの関係で、3DMark 11実行時にSLIが有効になっておらず、スコアが伸びきっていない。また、比較用としてHD-577X-ZMF3(ドライバはCatalyst 10.12を利用)の結果も付け加えてある。


GF PGTX460/1GD5 KATANAGF PGTX460/1GD5 KATANA SLIHD-577X-ZMF3HD-577X-ZMF3 CrossFire X
3DMark 11
3DMark 11 Score(X)103510258761584
Graphics Score9219227811465
Physics Score8164813284168229
Combined Score117410499501371
GT14.694.684.228.04
GT24.814.94.418.53
GT34.664.663.786.98
GT42.752.742.224.12
PT25.9225.8226.7226.12
CT5.454.884.426.38
3DMark Vantage
3DMark Score(P)15354263321133218794
GPU Score1253222805975417930
CPU Score47336491232200821969
GPU TEST 138.2167.6830.1754.55
GPU TEST 235.1665.8926.9250.42
CPU TEST 13009.473061.583081.473061.47
CPU TEST 2151.65158.9128.2728.58
Feature Test 11024.611902.39942.221894.19
Feature Test 24.388.453.87.48
Feature Test 326.4749.3830.7759.5
Feature Test 438.4838.627.127.74
Feature Test 567.7669.1735.9438.49
Feature Test 658.84109.2179.88160.71
HeavenBenchmark Ver.2.1
Score1313783922514
fps523136.620.4

 性能的に見れば5770からおおよそ3割高速化されており、SLI有効時でも5770とほぼ同等のスケールアップとなった。

●シングルスロットで性能を追求したいユーザー向け

 以上、GF PGTX460/1GD5 KATANAをテストしてみたが、甲高い騒音と、SLIコネクタがなく、新ドライバからSLIのサポートが打ち切られているところが弱点と言えるだろう。その一方で、性能面ではシングルスロットビデオカードの中でダントツのトップであり、熱や干渉問題も比較的楽にクリアできる。限られた拡張性をフルに活かしたいユーザーにおすすめしたい。

(2011年 1月 27日)

[Reported by 劉 尭]