【特別企画】Windows 7インストール実験レポート
~Windows 7アップグレード対象ノート「Let'snote W5M」

パナソニック Let'snote W5M
「CF-W5MWVAJP」



 この企画では、基本的にメーカーのアップグレードサポートがなく、Windows 7の動作が微妙なスペックのPCを取り上げ、Windows 7をインストールして動作を検証してきたが、今回は、事実上メーカーがWindows 7へのアップグレードをサポートしている機種である「Let'snote W5Mシリーズ」を取り上げる。とはいえ、1.06GHz動作のCore Duoを搭載するなど、Windows 7の動作要件ギリギリに位置する製品であり、その動作にはかなり興味があるのも事実。このスペックでも、Windows 7が快適に動作するのか、チェックしていこう。

●公式にWindows 7対応ドライバやアプリケーションが配布されている

 今回取り上げる、Let'snote W5Mシリーズは、2007年1月に発売された、直販サイト「マイレッツ倶楽部」限定モデルの中でも、最上位に位置付けられている「CF-W5MWVAJP」だ。基本スペックは、CPUがCore Duo U2400(1.06GHz)、チップセットがIntel 945GMS Express、メインメモリはオンボード1GB、HDDはIDE仕様の120GB、OSはWindows Vista Businessが採用されている。ちなみに、今回利用した個体は、PC Watch編集部で作業用として長らく利用されてきたもので、メインメモリは1.5GBに増設されていた。

 パナソニックは、過去に販売されたLet'snoteシリーズのうち、Windows Vistaプリインストールモデルについてのみ、こちらのページにおいて、Windows 7へのアップグレードに関するサポート情報を提供するとともに、対応ドライバなどを配布している。Let'snote W5Mシリーズについては、「VideoドライバーのWindows 7対応予定がないため、Windows 7アップグレードはおすすめできません。」との注意書きが記されているものの、サポート情報およびWindows 7対応ドライバやアプリケーションが配布されており、事実上Windows 7へのアップグレードがサポートされていると言っていい。当然、Windows 7の動作要件も満たしている。

 メーカー自体がWindows 7へのアップグレードをサポートしているのだから、動作について心配する必要は一切ないが、念のため、Windows 7 Upgrade Advisorを利用して互換性をチェックしてみた。すると、このPCに接続して利用していたプリンタドライバが互換性不明と表示されたものの、このPCのハードウェア自体に互換性の問題は存在しなかった。当然の結果ではあるが、やはり安心してWindows 7にアップグレードできると言っていいだろう。

Let'snote W5Mシリーズは、メーカーがWindows 7対応モジュールを配布しており、事実上アップグレードがサポートされているWindows 7 Upgrade Advisorの結果では、外部接続のプリンタドライバが互換性不明と表示されたが、マシンに搭載されるデバイスに問題はなかった

●メーカー公開手順に従ってアップグレードを行なう

 Let'snote W5MシリーズをWindows 7にアップグレードする手順は、こちらのページで詳しく紹介されているが、そこでは、新規インストールの方法ではなく、Windows Vistaからのアップグレードインストールの手順が紹介されている。そこで今回は、この手順に従って、Windows VistaからWindows 7へのアップグレードインストールを行なうことにした。

 まず、Windows 7のアップグレード作業を行なう前に、重要なデータなどのバックアップを行なう。これは、機種を問わず必要なことであり、面倒でも必ず行なっておくようにしよう。

 次に、Windows 7アップグレード時に必要となる、Windows 7対応のデバイスドライバやアプリケーションなどの対応モジュールをダウンロードし、あらかじめ内蔵HDDに展開する。対応モジュールは、先ほどのアップグレード手順を紹介しているページに用意されているリンク先からダウンロードできる。対応モジュールは全部で13ファイルで、全て自己解凍形式の実行型圧縮ファイルとなっている。全ての対応モジュールをダウンロードした後に実行すれば、Cドライブの「util2」フォルダが作成され、その中に必要なファイルが解凍される。

 対応モジュールが解凍されたら、Windows Vista用としてインストールされている一部のアプリケーションの削除を行なう。削除が指示されているのは、「Intel Extended Thermal Model」、「無線切り替えユーティリティ」、「ホイールパッドユーティリティ」など。かなり多くのアプリケーションが削除するように指示されているため、Windows 7対応モジュール配布ページに用意されている「Windows 7 アップグレード手順書」を参照しつつ、順番に削除していく。

 これらの削除が終わったら、次にダウンロードしたWindows 7対応モジュールのうち、「Panasonic Common Components」と「Hotkey Appendix」をインストールする。これらは、必ずutil2フォルダ内にあるものをインストールしなければならないので注意しよう。

 ここまでの作業が完了したら、ようやくWindows 7のアップグレード作業の開始となる。今回も、従来同様、パッケージ版の「Windows 7 Professional アップグレード」を利用してアップグレードインストールを行なった。アップグレードインストールを行なう場合には、アップグレード対象OS上からインストーラを実行する必要があるため、Windows Vistaが起動している状態で光学式ドライブにWindows 7のインストールディスクを入れ、インストーラを起動する。あとは、インストールの種類で「アップグレード」を選択し、指示に従って作業を進めればよい。

 Windows 7のインストール作業が完了し、Windows 7が起動したら、あらかじめダウンロードして展開しておいたWindows 7用ドライバやアプリケーションを順にインストールしていく。こちらも、先ほどの「Windows 7 アップグレード手順書」に詳しく手順が掲載されているが、Windows 7用デバイスドライバのインストール、Windows Updateの実行、Windows 7用アプリケーションのインストールの順に作業を行なうことになる。

 手順書に書かれている作業が全て終了したら、Windows 7のアップグレード作業は終了となる。

アップグレードの手順が詳しく書かれた「Windows 7 アップグレード手順書」が掲載されているので、そちらに従って作業を進めるWindows 7インストール前に、公式に配布されているWindows 7対応モジュールを全てダウンロードしておく手順書に従い、Windows 7に対応しないアプリケーションを全て削除する
ダウンロードしたWindows 7対応モジュールのうち、「Panasonic Common Components」と「Hotkey Appendix」をインストールする一連の下準備が終了したら、光学式ドライブにWindows 7インストールディスクを入れ、インストールを開始するWindows 7アップグレードインストールは、Windows Vista上でインストーラを起動して行なう
Windows 7アップグレードインストール直後のデバイスマネージャー。この時点で、「!」マークの付いたデバイスは存在しない手順書に従い、Windows 7対応モジュールを順にインストールしていく
ドライバ類のインストールが終了したら、Windows Updateを実行。チップセット(Intel 945GMS Express)内蔵グラフィックのドライバが自動的に導入される最後に、オリジナルアプリケーションなどをインストールし、作業は完了となる

●Windows Vistaに比べ、快適度が向上

 Windows 7にアップグレードしたLet'snote W5Mだが、さすがにメーカーが対応モジュールを用意しているだけあり、動作は完璧だ。Let'snoteシリーズの特徴でもあるホイールパッドや、バッテリの充電モードを変更する「エコノミーモード(ECO)切り替えユーティリティ」などのオリジナルユーティリティ類はどれも問題なく利用できるのはもちろん、Fnキー併用機能もすべて問題なく動作した。Windows Aeroも動作が確認され、Windows 7の動作に問題はほとんど感じられなかった。

 Windows 7の動作は、デュアルコアCPUを搭載しているとはいえ、動作クロックが1.06GHzと低いこともあって、やや重く感じるものの、それでも過去に検証したネットブックよりは十分軽快に利用できる。なにより、もともとインストールされていたWindows Vistaに比べると明らかに動作が軽快となり、これだけでもWindows 7にアップグレードする価値が十分にあると感じた。

 ただ、OSの起動や終了の時間を計測してみたところ、大きな問題が発覚した。それは、起動時間はWindows Vistaとほぼ同等かわずかに速くなっているのに対し、終了時間が8分~9分半もかかったのだ。アプリケーションの動作は、IEの起動時間(IE起動からPC Watchが表示されるまで)こそ、Windows Vistaより大幅に遅くなっているものの、他のいくつかのアプリケーションを利用してみても、特に動作が大幅に遅くなったものはなかったし、どれも正常に利用できた。とはいえ、終了時についてのみシステムに何らかの問題が発生していると考えざるを得ない。

 おそらく、Windows Vistaで長期間利用する間に、さまざまなアプリケーションやデバイスドライバのインストール・削除を繰り返し、システムに何らかの問題が発生し、Windows 7をアップグレードしたことでその問題も引き継がれてしまったのだろう。そこで、Windows 7を新規にインストールして、同じ問題が発生するかどうか検証してみることにした。

 Windows 7の新規インストール手順は、当然先ほどのアップグレード手順と変わってくるが、公開されているWindows 7対応モジュールはそのまま利用可能。また、Windows 7対応モジュールとして配布されていない、エコノミーモード(ECO)切り替えユーティリティなどの一部のアプリケーションは、Cドライブの「util」フォルダに保存されている、Windows Vista用モジュールが利用できる。そのため、Cドライブのutilフォルダの内容は必ずバックアップしておこう。また、新規インストール直後、デバイスマネージャーを見ると、「不明なデバイス」が2つ存在するが、「Hotkey Driver for Panasonic PC」と「Panasonic Misc Driver」の2種類で、それらに対応するドライバをインストールすればいい。

 Windows 7の新規インストール後に、改めてOSの起動と終了時間、IEの起動時間を計測してみたところ、OSおよびIEの起動時間は、アップグレード時とほぼ同じだったが、OSの終了時間が約16秒前後と、大幅に短くなった。やはり、アップグレードインストールによって、何らかの問題が発生していたと結論づけてよさそうだ。

 OSの新規インストールは、インストール後の環境設定など、多くの時間や手間がかかるため、環境をほぼそのまま引き継げるアップグレードインストールは確かに魅力だ。とはいえ、今回のように、アップグレードインストールによって原因不明のトラブルが発生することも少なくない。新OSが登場するたびに言われることだが、やはり手間がかかっても新規インストールを行なった方が確実だ。

 今回、アップグレードインストールで少々問題が発生したものの、Let'snote W5MにおけるWindows 7の動作は全く問題ないと結論づけていい。スペック面は、Windows 7のシステム要件にギリギリのラインであり、動作の重さを感じる部分があるのも事実。また、Windows XPをインストールして利用している場合には、Windows 7にアップグレードすることで、Windows XP時との比較で動作が重くなる可能性が高く、積極的なアップグレードはおすすめしづらい。しかし、Windows Vista搭載モデルであれば、Windows 7のほうが動作は快適となるため、Windows 7へのアップグレードは真剣に検討すべきと言える。

Windows Aeroの動作も確認。デバイスの動作も問題なかった新規インストールを行なった直後のデバイスマネージャー。不明なデバイスが2種類ある
不明なデバイスは、「Hotkey Driver for Panasonic PC」と「Panasonic Misc Driver」の2種類。ダウンロードしたWindows 7対応モジュールを解凍してできる、Cドライブの「util2」フォルダから、対応するドライバを導入すればよいあとは、手順書に従って、ドライバやアプリケーションのインストールと、Windows Updateを実行すればよい

・OSの起動・終了時間
 Windows VistaWindows 7
アップグレード
Windows 7
新規インストール
起動時間56秒3449秒9152秒38
55秒1052秒4754秒59
52秒8850秒5753秒93
終了時間33秒078分00秒6617秒06
34秒789分36秒5015秒82
33秒168分51秒0316秒50

・IEの起動時間(IE起動からPC Watchが表示されるまで)
Windows VistaWindows 7
アップグレード
Windows 7
新規インストール
5秒8111秒949秒47
5秒1011秒8210秒25
4秒0310秒889秒44

・PCMark05
 Windows VistaWindows 7
アップグレード
Windows 7
新規インストール
PCMark Score209120512102
CPU Score238524132414
Memory Score189618981938
Graphics Score618604609
HDD Score339334173288

 これまで5回にわたって、ネットブックや旧スペックPCなどを用意してWindows 7のインストールを試してきたが、スペック的に厳しいと思われるPCでも、動作要件さえ満たしていれば、Windows 7は思った以上に快適に利用できることが確認できた。もちろん、Vilive S7のように、Windows 7にアップグレードしたことで動作が重くなり、アップグレードしない方がいい場合もある。ただ、全体的には、スペックが低めのPCでも、Windows XP時と比較して、思ったほど動作が重くならず、予想外に快適に利用できる場合が多かった。また、Windows VistaがインストールされているPCについては、Windows 7にアップグレードした方が確実に快適になることも確認できた。これらを総合すると、ややスペックの低いPCであっても、Windows 7へのアップグレードを検討する価値は十分にあると言える。

 現在では、6万円も出せば、スペック的に優れるWindows 7搭載PCが購入できてしまうことを考えると、コストをかけて旧型PCにWindows 7をインストールすべきかどうか、判断が難しいのも事実。もし、その点に少しでも疑問を感じるようであれば、Windows 7へのアップグレードはおすすめしないでおく。ただ、本誌読者なら、新しいことへのチャレンジに楽しみを感じる人も少なくないはず。とにかく、臆せずにチャレンジしてみてもらいたい。

□インストール手順の注意事項

・HDD内のデータは必ずバックアップしよう
・あらかじめ、サポートページからWindows 7対応モジュールをダウンロードする
・「Windows 7 アップグレード手順書」に従って作業を進める

□今回の結果

・Windows 7およびデバイスの動作に問題はなく、Windows Vista時より快適度が向上
・今回の個体では、アップグレードインストール時に、OS終了に時間がかかるという問題が発生
・新規インストールによって、アップグレードインストール時の問題は解消された

(2009年 12月 15日)

[Reported by 平澤 寿康]