Snow Leopardと最新仮想化ソフトで使うWindows 7
【Parallels Desktop編】


Parallels Desktop 5。価格は8,500円(ダウンロード版)

 VirtualBox編VMware Fusion編に続き、今回は11月4日にリリースされた「Parallels Desktop 5」をレビューする。


●1年ぶりのメジャーバージョンアップ。日本語版も同時リリース

 米Parallelsは以前からWindows/Linuxホスト版の仮想化ソフトを販売していたが、あまり知名度の高い企業ではなかった。だが、2006年4月、他社に先駆けてIntel Mac対応の仮想化ソフトのベータ版を公開し、一気に注目を集めた。正式版は同年6月にリリースされた。なお、先行してリリースされていたWindows/Linuxホスト版の製品と合わせるため、Macホスト版の最初の製品は「バージョン 2.1」とされた。

 その後、2007年6月にスナップショットとDirectXのアクセラレーションなどをサポートした「バージョン 3.0」、2008年11月には64bitゲストOSの動作と最大4個の仮想プロセッサなどをサポートした「バージョン 4.0」がリリースされた。今回の「バージョン 5」は3回目のメジャーバージョンアップとなるが、それ以外にもバグ修正や新OS対応を目的としたビルドの更新が行なわれており、8月に公開された「バージョン 4.0(ビルド3846)」でSnow Leopardホスト(32bit/64bitカーネル)とWindows 7ゲストを正式サポートした。

 なお、各言語版が単一バイナリであるVMware Fusionと異なり、Parallels Desktopは英語版と日本語版が別製品となっている。これまでは英語版からやや遅れて日本語版がリリースされていたが、バージョン 5 日本語版は英語版と同時リリースされた。

ゲストOSとして「Snow Leopard Server(32bitカーネルのみ)」が動く。Appleのライセンス上の制限からクライアント版のMac OS XをゲストOSとしてインストールできないのはVMware Fusionと同じ バージョン 5ではLinuxゲストがOpenGL 2.1の3Dアクセラレーションに対応し、3Dデスクトップ「Compiz Fusion」も動作するようになった

●VMware Fusionを超える多彩な機能

 基本的な機能はVMware Fusionと似通っているが、独自の機能も数多く搭載されている。仮想プロセッサは最大8個に対応。作業中断時に仮想マシンの状態を一時保存し次回起動時に素早く作業を再開できる「サスペンド」機能や、保存した仮想マシンの状態にいつでも復元できる「スナップショット」機能、一定時間ごとに自動でスナップショットを作成する「SmartGuard」機能をサポートする。

 また、仮想マシンへ加えた変更を一時ファイルに保存し、仮想マシンの終了時に変更を適用するか破棄するか選択できる「アンドゥディスク」と「セーフモード」も利用できる。スナップショット機能を利用すれば同様の運用が可能だが、より手軽に実現できるのがメリットと言える。

一定時間ごとに自動でスナップショットを作成する「SmartGuard」機能はディスクの消費量が多いので注意 「アンドゥディスク」は仮想マシン終了時に変更を適用するか、破棄して起動時の状態に戻すか選択できる。「セーフモード」は一時的に「アンドゥディスク」と同様のモードで起動したい場合に利用する

 また、「Boot Camp」パーティションにインストールしたWindowsを使って仮想マシンを起動することもできる。Boot Campパーティションから起動した仮想マシンではサスペンドとスナップショットが使用できないのもVMware Fusionと同じだ。

 USBデバイスも利用できるが、特別な設定なしにMacで設定したプリンタを使った印刷が可能なのもVMware Fusionと同じだ。このほか、MS OfficeやWindows Media PlayerなどのアプリケーションをタッチパッドやApple Remote(赤外線リモコン)で操作する機能、iPhone/iPod touchからインターネット経由で仮想マシンを参照する機能、音声認識コマンド(英語のみ)でParallels Desktopを操作する機能など、さまざまな機能がサポートされている。アンチウイルスソフトもKaspersky製品をベースとした「Parallels Internet Security 2009」が1年分の使用権と共に同梱されている。

仮想マシン作成時にBoot CampパーティションのWindowsを使って起動するように設定できる ドライバの追加インストールなしに使用できる仮想プリンタは実際のハードウェアに関わらず「HP Color LaserJet 2800 Series PS」として認識される。複合機などプリンタ固有の機能を使う場合はUSBデバイスとして接続し、対応したデバイスドライバをインストールする必要がある MacBookのトラックパッドや別売りのリモコンを使って一部のWindowsアプリケーションの操作が可能だ
iPhone/iPod touchから仮想マシンを操作するためのクライアントソフト「Parallels Mobile」はApp Storeから無償でダウンロードできる。ただし、仮想マシンのスタート/リセット/シャットダウン、一時停止/再開、サスペンド/レジュームの操作ができるが、ゲストOSの操作はできないため、用途は限られるだろう 日本語のコマンドに非対応のため、あまり使い道はないかもしれないが、音声コマンドで新規仮想マシンを作成したり、仮想マシンの一時停止/再開、画面モードの切り替えなどの操作が可能 アンチウイルスソフトは必要に応じてゲストOSインストール後に「仮想マシン」メニューの「Parallels Internet Securityのインストール」から導入しよう

●Aeroも動く。Mac風テーマも付属

 バージョン 5ではVMware Fusion 3と同様、デバイスドライバがWDDMに対応し、WIndows Vista/7ゲストでAeroインターフェイスが動作するようになった。なお、Aeroを動かすにはNVIDIA GeForce 9400M以上のビデオ機能が必要で、古いMacBookやMac miniに搭載されていたIntelのオンボードビデオ機能(GMA 950およびX3100)では動作しない。

 画面表示モードはゲストOSを1つのウィンドウ内に表示する「ウィンドウ」とゲストOSが画面を占有する「フルスクリーン」の2つに加え、WindowsアプリケーションのウィンドウをMacのデスクトップに直接表示する「Coherence」と「Crystal」の2つの表示モードをサポートしている。

 CoherenceモードではメニューバーはParallels Desktopのメニューが表示され、ドックのParallels DesktopアイコンをクリックするとWindowsのスタートメニューが表示される。CrystalモードではメニューバーにはWindowsアプリケーションの名前が表示され、仮想マシンの操作やWindowsのスタートメニューの表示はメニューバーに追加されたParallelsアイコンから行なう。CoherenceとCrystalの違いは少ないのでわざわざ新モードにする必要があったのかはやや疑問に思う。

 また、Windows環境のルック&フィールをMac風に変更する「MacLook」というテーマも付属しており、Windowsアプリケーションのウィンドウ枠をMacと似たデザインに変更することができる。画面モードを問わず利用できるが、Coherence/Crystalモードで使用すると画面全体の一体感が高まる。

 このほか、OSやアプリケーションのインストール時など、「操作は常時必要ないが時々状態を確認したい」というとき、ウィンドウを縮小表示して邪魔にならない位置に置いておける「Modality」モードもサポートされている。また、「フルスクリーン」モードではあらかじめ設定したコーナーをクリックしたときにメニューバーを表示したり画面モードを切り換えたりできる「アクティブスクリーンコーナー」機能がサポートされた。

CoherenceモードではドックのParallels DesktopアイコンをクリックするとWindowsのスタートメニューが表示される CrystalモードではメニューバーのParallelsアイコンを右クリックするとWindowsのスタートメニューが表示される。メニューバーにWindowsアプリケーションの名前が表示されるなど、VMware Fusion 3のユニティモードに近い
MacLookを適用してCrystalモードでWindowsの電卓を起動したところ。完全にMacのアプリケーションと同じ操作性になるわけではないので個人的にはあまり必要性を感じない 搭載メモリに余裕があれば複数のゲストOSを同時に起動することも可能だ。ウィンドウを縮小表示するModalityモードを使えば並べて配置しても場所をとらない フルスクリーンモードであらかじめ設定したアクティブスクリーンコーナーにマウスポインタを近づけたとき、Windowsの画面が捲れるアニメーション効果が付けられている

●OS間でフォルダやアプリケーションを共有

 ファイルのやりとりも、さまざまな方法が用意されている。標準設定ではMac側の「ホーム」フォルダが共有フォルダとして設定されるほか、「共有プロファイル」機能を使えばMac側の「デスクトップ」や「書類」フォルダを対応するWindows側のフォルダに割り当てることができる。OS間のドラッグ&ドロップでファイルやフォルダをコピーすることも可能だ。

 ゲストOSの起動時には「逆共有フォルダ機能」によりゲストOSの仮想HDDイメージファイルがMacのデスクトップにマウントされるほか、停止中もしくはサスペンド中の仮想マシンの仮想HDDイメージファイルをMac側にマウントすることもできる。さらに「SmartMount」機能により、Mac側でマウントした各種メディアが自動的にWindowsのネットワークドライブとして割り当てられる。

 また、WindowsのスタートメニューにはMacのアプリケーションが登録され、逆にMacのドックにはWindowsアプリケーションが登録されるので、アプリケーションを相互に起動することが可能だ。拡張子とアプリケーションの関連付けもOSの違いを気にせず設定できる。

 このほかプレーンテキストだけでなく、スタイル付きテキストやピクチャもクリップボードを介してOS間でコピー&ペーストすることができる。

Mac側のフォルダを共有できるほか、「共有プロファイル」機能で「デスクトップ」や「書類」フォルダをマッピングすればすべてのファイルをMac側で管理できる 仮想マシン起動時にはゲストOSの仮想HDDイメージファイルが「逆共有フォルダ」としてMacのデスクトップにマウントされる。ネットワークドライブとして扱われるのでNTFS形式のディスクでも読み書き可能だ 仮想マシンファイルを右クリックして「Parallels Mounter」で開くとMacのデスクトップにマウントされる。「VMDK Mounter」と似ているが、停止中の仮想マシンであれば書き込みも可能だ。また、VMwareとVirtualBox形式の仮想HDDイメージファイルもマウントできる
「SmartMount」機能はMac側でマウント可能なディスクであれば利用できるので、仮想マシンから直接利用できないFireWire接続のディスク(図のYドライブ)でもアクセスできる。ネットワークドライブとして扱われるので通常Windowsで読めないHFS+形式のディスクでも読み書き可能だ WindowsのスタートメニューにMacのアプリケーションが登録され、関連付けや「プログラムから開く」でWindowsアプリケーションと同様に扱うことができる Macのドックに「スタック」としてWindowsアプリケーションのエイリアス(ショートカット)が登録され、ランチャーとして使用できる

●移行ツールを同梱

 Parallels Desktopも他社の仮想化ソフトからの移行ツールを提供している。仮想マシンのリストにはVMware Fusionで作成した仮想マシンもリスト表示されるので、右クリックメニューから「変換」を実行するだけでよい。また、実PCから移行するには米Parallelsのサイトからダウンロードした「Paralles Transpoter Agent」を実行し、Mac側で「Paralles Transpoter」を起動して取り込めばよい。

 実PCからの移行はネットワーク経由だけでなく、外部ストレージに保存したデータからも可能だ。Boot Campパーティションから直接仮想マシンにインポートする機能はないが、Windowsで起動して外部ストレージにデータを保存した後、Mac OS Xで再起動して取り込めばよい。

 なお、環境を移行するとWindowsの再認証が必要になる。また、ライセンス上PCにプリインストールされたWindowsは別環境で使用できないので注意してほしい。

 このほか、「ファイル」メニューの「ダウンロード」から米ParallelsのWebサイトにアクセスし、オープンソースOSや評価版OSの仮想マシンファイルをダウンロードして利用することも可能だ。

仮想マシンのリストに灰色のアイコンで表示されているのがVMware Fusionで作成した仮想マシンだ。右クリックメニューから「変換」を実行してParallels形式の仮想マシンに変換できる Windows PCで「Paralles Tranpoter Agent」を起動したところ。移行手段はSwitch to Mac版(日本未発売)に同梱のUSBケーブル、ネットワーク、外部ストレージが選択できる
ファイル」メニューの「インポート」から「Paralles Tranpoter」を起動し、移行元PCのデータをネットワークまたは外部ストレージ経由で取り込めばよい 米Parallelsの仮想アプライアンスのサイトから仮想マシンファイルをダウンロードできる。オープンソースOSだけでなく、マイクロソフトが自社の仮想マシン用に提供している英語版Windowsの評価版をダウンロードし、「Paralles Tranpoter」で取り込んで使用することもできる

●仮想環境の性能をチェック

 VirtualBox編と同様にメモリは4GB、CPUはIntel Core 2 Duo 2.0GHz、ビデオカードはATI Mobility Radeon HD 2400 XTを搭載したiMac(Mid 2007)を使用して性能測定を行なった。仮想マシンは仮想プロセッサを2個と2GBのメモリを割り当てている。Boot Camp機能を利用してiMacを直接Windows 7で起動した環境を比較対象としている。

CrystalMark 2004R3

【表1】CrystalMark 2004R3


Paralles Desktop 5 BootCamp
総合 85084 86641
ALU 17178 17871
FPU 15052 17897
MEM 12700 12553
HDD 33178 6439
GDI 3307 4430
D2D 740 3045
OGL 2929 24406

Windows エクスペリエンス インデックス

【表2】Windows エクスペリエンス インデックス


Paralles Desktop 5 BootCamp
プロセッサ 4.9 5.1
メモリ 4.9 5.1
グラフィックス 2.9 4.7
ゲーム用グラフィックス 4 4.4
プライマリハードディスク 6.4 5.9

Vana'diel Bench 3

【表3】Vana'diel Bench 3


Paralles Desktop 5 BootCamp
Low 2430 6915

 HDD性能が非常に高い値となっているのは前回(VirtualBox)と同じ傾向で、仮想HDDイメージファイルを使用している特性と思われる。プロセッサやメモリは問題ないレベルと言えるだろう。グラフィックス関係の値は低い値となっているが、 Vana'diel Bench 3の2430という値は「FINAL FANTASY XI for Windowsをデフォルト状態で快適に動作させることのできるマシンだと予想されます。(2000〜2499)」に相当する。全体的にネットブック実機の結果を上回っており、2年前のiMacで動作する仮想環境としてはなかなかの結果と言えるのではないだろうか。

●まとめ

 2大仮想化ソフトが相次いでメジャーバージョンアップしたため、どちらを選択するか悩んでいるユーザーも少なくないだろう。

 WindowsアプリケーションのウィンドウをMacのデスクトップに直接表示する機能やデスクトップの共有機能などはParallels Desktopが先に実装し、VMware Fusionが追従した機能だ。逆にVMware Fusionが先行し、Parallels Desktopが追いついた機能もある。お互いを強く意識した機能追加を行なっているため、結果として両者の機能は似通ったものとなっている。

 Parallels Desktopのほうが多機能だが、用途が限定されるものや他の機能で代替できるものも多く、基本機能ではほぼ互角と言えるだろう。強いて挙げるならば、仮想マシンで8個の仮想プロセッサを活用したいユーザー、WindowsだけでなくLinuxゲストでも3Dアクセラレーションを利用したいユーザーにはParallels Desktop 5の機能は魅力的かもしれない。14日間試用できる体験版も用意されているので、自分の環境や使い方で速度や機能を確認し、導入や乗り換えの参考にするとよいだろう。

(2009年 11月 10日)

[Reported by 田中 俊光]

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