VMware Fusion 3。価格:7,980円(ダウンロード版) |
Windows 7の一般向け販売が10月22日に開始された。VirtualBox編に続き、10月28日にリリースされた「VMware Fusion 3」をレビューする。
ゲストOSとして「Snow Leopard Server」が動く。Appleのライセンスで1台のMacに複数個インストールできるのはサーバー版OSのみに制限されているため、クライアント版のMac OS XをゲストOSとして利用することはできない |
「VMware Fusion」は、PC向け仮想化ソフトとして人気の高い、米VMwareがMac向けにリリースした仮想化ソフトだ。2006年12月にパブリックベータ版が公開され、正式版は2007年8月に公開された。なお、当初「Fusion」は開発コードネームと伝えられていたが、そのまま製品名として正式採用された。2008年9月には既存ユーザーに無償で「VMware Fusion 2」へのアップグレードが提供されたため、今回リリースされた「VMware Fusion 3」が初の有償アップグレードとなる。
Appleの最新OSである「Snow Leopard」への対応は、バージョン2.0.5で32bitカーネルでの動作を試験的にサポート済みだが、バージョン3では32bitカーネルに加え、64bitカーネルでの動作にも正式に対応した。また、仮想化エンジンが64bitネイティブ化され、パフォーマンス向上に寄与している。さらにゲストOSとして「Snow Leopard Server」を64bitカーネルで動作させることも可能だ。なお、CPUが64bit対応であれば、ホストOSが32bitカーネルで動作している場合でも仮想化エンジンは64bitネイティブで動作する。
●充実した機能。アンチウイルスソフトも同梱続いて各種の機能を見ていこう。最大4個の仮想プロセッサに対応しており、作業中断時に仮想マシンの状態を一時保存し次回起動時に素早く作業を再開できる「サスペンド」機能や、保存した仮想マシンの状態にいつでも復元できる「スナップショット」機能をサポートする。一定時間ごとに自動でスナップショットを作成する「オートプロテクト」機能を使えば突然のトラブルにも対処できる。
仮想プロセッサはマルチコアCPUとして認識されるため、最大2個(ホーム系は1個)のCPUにしか対応していないクライアント版Windowsでも複数コアを活用できる | 定期的にスナップショットを作成する「オートプロテクト」機能を使う場合はディスクの空き容量に注意しよう |
Boot Campパーティションから仮想マシンを起動可能。仮想HDDイメージファイルに変換したい場合は仮想マシンを停止し、「インポート」アイコンをクリックすればよい |
また、「Boot Camp」パーティションにインストールしたWindowsを、仮想マシンとして起動できる。仮想HDDイメージファイルを使用した環境とBoot Camp環境にそれぞれWindowsをインストールする場合、ライセンスは2本必要になるが、Boot CampパーティションにインストールしたWindowsを仮想化ソフトで利用するなら1本で済む。通常は仮想マシンでWindowsを起動し、3Dゲームなどハードウェアの機能をフルに使いたい場合だけ、Boot Campで再起動すればよいわけだ。
ただし、Boot Campパーティションから起動した仮想マシンではサスペンドとスナップショットが使用できないので注意してほしい。なお、「仮想マシンで十分。Boot Campはもう使わない」という場合も再インストールは不要で、Boot Campパーティションから仮想HDDイメージファイルに直接移行することができる。
周辺機器の利用ではストレージやWebカメラなどのUSBデバイスが利用できるほか、特別な設定なしにMacで設定したプリンタを共有した印刷が可能だ。また、VNCサーバー機能を内蔵しており、ゲストOSの種別に関係なく遠隔操作が可能だ。VNCクライアントはPC用OSのみならずスマートフォンやPDAにも移植されているため、さまざまな環境からゲストOSに接続できる。
VMware Fusionにはアンチウイルスソフト「McAfee VirusScan Plus」が12カ月分の使用権と共に同梱されている。必要に応じて導入しよう。
●3種類の表示モード。Aeroも動く
画面表示モードはゲストOSを1つのウィンドウ内に表示する「シングル ウィンドウ」モード、ゲストOSが画面を占有する「フルスクリーン」モードに加え、「ユニティ」モードをサポートしている。「ユニティ」モードは単にWindowsアプリケーションのウィンドウをホストOS上に直接表示するだけでなく、メニューバーやドックにWindowsアプリケーションの名前やアイコンが表示されるなど、WindowsアプリケーションがあたかもMacのアプリケーションのように表示される。
ユニティモードでは基本的にWindowsのタスクバーは非表示となり、通知領域アイコンもメニューバーに表示され、Windowsアプリケーションの起動や仮想マシンの操作はメニューバーに追加された「アプリケーションメニュー」から行なう。アプリケーションメニューは常時利用でき、仮想マシン停止時にメニューからWindowsアプリケーションを起動すると、仮想マシンも自動的に起動する仕組みだ。
また、フルスクリーンモードでは「フルスクリーン タイトルバー」と呼ばれる小型のメニューバーが表示され、仮想マシンの操作や表示モードの切り替えが簡単に行なえる。このほか、別ウィンドウにゲストOSの画面を縮小表示する「プレビューウィンドウ」を使えばユニティモードやゲストOSのウィンドウをドックに格納しているときでもゲストOSの状態を随時確認できる。
デバイスドライバがWDDMに対応し、Windows 7の新機能であるAeroプレビューやAeroスナップも動く |
なお、Windows Vista/7ゲストではAeroも利用できるが、Intelのオンボードビデオ回路(GMA 950およびX3100)はAeroの動作をサポートしていない。また、性能面の問題から、ユニティモードでAeroを動かす場合はCore Duo 2.2GHz以上のCPU、NVIDIA GeForce 8800 GTまたはAMD/ATI Radeon HD 2600以上のGPU、256MB以上のグラフィックスメモリ、ホストシステムに2GB以上のメモリ搭載とゲストに1GB以上のメモリ割り当てが推奨されている。
なお、Core 2 Duo 2.0GHzとRadeon HD 2400 XT搭載のiMac(Mid 2007)は推奨スペックを満たさないが、ユニティモードでAeroを動かすことはできた。
●OS間のファイルのやりとりも簡単VMware FusionではMac側の任意のフォルダを共有フォルダに設定してWindows側から設定できるほか、OS間のドラッグ&ドロップでファイルやフォルダをコピーすることもできるが、Mac側の「デスクトップ」や「書類」フォルダを対応するWindows側のフォルダに割り当てる「ミラーフォルダ」機能を使えばファイルをコピーする必要もない。
また、拡張子とアプリケーションの関連付けもOSの壁を越えて設定できる。このほかクリップボードを介したOS間のコピー&ペーストではプレーンテキストだけでなく、スタイル付きテキストやピクチャのやりとりにも対応している。
また、停止中もしくはサスペンド中の仮想マシンの仮想HDDイメージファイルをMac側にマウントできるので、仮想マシン内に置き忘れてきたファイルを取り出したい場合もわざわざ仮想マシンを起動する必要がない。このようにさまざまな方法でファイルやデータのやりとりが行なえるため、実際の運用で困ることはほとんど無いだろう。
●移行ツールを内蔵
現在使用している他社の仮想化ソフトや実PCから乗り換えを考えるユーザーもいることだろう。VMware Fusionでは、「インポート」ボタンをクリックするだけで専用の仮想マシンに変換することができる。仮想マシンのライブラリにはParallels Desktopで作成した仮想マシンもリスト表示される。
また、同一ネットワーク上の実PCを簡単な操作で仮想マシンに変換できる。なお、環境を移行するとWindowsの再認証が必要になる。またライセンス上、PCにプリインストールされたWindowsは別環境で使用できない。
ほか、Microsoftが試用版として提供しているVirtual PC形式のWindows仮想マシンをダウンロードし、インポートできる。VMware Fusionも30日間の試用版が米VMwareのサイトからダウンロードできるのでコストをかけずに手軽に動作を確認できる。
●まとめ
ライセンス上、ベンチマーク結果を公開できないが、FINAL FANTASY XIオフィシャルベンチマークソフト「Vana'diel Bench 3」も動作する |
VMwareはライセンスでベンチマーク結果の公開を制限しているため、具体的な値は出せないが、FINAL FANTASY XIオフィシャルベンチマークソフト「Vana'diel Bench 3」やWindowsエクスペリエンス インデックスも完走した。最新の3Dゲームは厳しいが、数年前のゲームであれば動作する可能性は高い。
注目のAeroサポートだが、ユニティモードで快適に利用するには要求されるハードウェアスペックが高いのが残念だ。ウィンドウモードやフルスクリーンモードであれば2年前のiMacでも動作が特に重いという印象はないが、最新機種であればより快適に動作するであろう。
今回のバージョンアップではAeroサポートを除くと大きな機能追加はなく、使い勝手の改善や64bitネイティブ対応などの内部的な強化が中心となっており、すでに熟成の域に入った感もある。老舗仮想化ベンダーの製品らしく、完成度の高い製品に仕上がっており、Snow Leopardユーザーはアップグレードして損はないと言えるだろう。
なお、競合製品であるParallels Desktopも近々メジャーバージョンアップが計画されている。こちらもリリースされ次第、レビューをお届けしたい。
(2009年 11月 4日)
[Reported by 田中 俊光]