800gを切るAtomマシンで移動時間にPC活用
小型の筐体にx86の機能を収められるIntelのMenlowプラットフォーム。CPUはAtom Zシリーズ、チップセットはIntelシステム・コントローラ・ハブ(SCH) US15Wの2チップ構成でx86 PCの機能を実現している。一般的なネットブックで使われているAtom Nシリーズ+Intel 945GSE Express+ICH7の組み合わせよりも、消費電力が低く、実装面積も少なくて済む。そのため、筐体の小型化、バッテリ駆動時間の両面で、ネットブックよりも持ち運びに向いた製品が開発できる。
2008年4月の正式発表時には「Centrino Atom プロセッサー・テクノロジー」という上位ブランドで登場。Intelがネットブックに使われているAtom N+Intel 945GSEとは明確に差別化していたことが伺えるが、Atomという名称が浸透した現在は、Menlow採用でも「Atom Inside」のロゴシールが使われている。
正式発表から1年あまり経過した2009年夏、そのMenlowプラットフォームを採用した製品がかなり揃ってきた。特に国内メーカーは、特殊な日本市場のモバイルノートPCで培われてきた技術で魅力的な製品を開発、販売しており、軽量で持ち運びやすいWindows PCを実現している。国内メーカーから出ている機種の多くが800gを切る軽量さだ。
iPhoneやTouch Diamond、T-01Aといった高機能スマートフォンは、携帯電話の回線に常時繋がっているというメリットが大きく、PCは必要ないというユーザーも多い。だが、スマートフォンの使い勝手や画面サイズ/解像度などで物足りないと感じているなら、Atom Zの軽量マシンも選択肢に入ってくる。スマートフォンをすでに持っている場合は、Bluetooth接続によるモデムやインターネット接続の共有などを使って、より快適に使うこともできる。加えて、常時接続の手段として、FOMAハイスピードなどのワイヤレスWAN、モバイルWiMAXなどをオプションで追加できる機種もあり、回線の選択肢が徐々に増えつつある。店頭で初期費用を抑えられるイーモバイルとの回線契約でも、Windowsマシンであるがゆえにドライバやユーティリティが用意されており、USBがあれば問題なく使える。インターネット回線が必要なケースが多い場合は、自分の用途に合ったものを選ぶと良いだろう。
本稿では、Menlowプラットフォームを採用した800gを切る軽量Windowsマシンを紹介していきたい。
●800g以下の現行マシンは7機種現在、800gを切るWindowsマシンは、ウィルコム「D4」、富士通「LOOX U」、工人舎「SC」シリーズおよび「SK」シリーズ、ソニー「VAIO type P」、NEC「VersaPro UltraLite タイプVS」などがある。8月にはBRULEから「Viliv S5」も出荷される。
これら小型マシンに最適なMenlowプラットフォームだが、1つ残念な点があった。それは当初、チップセットのIntel SCH US15Wのグラフィックスドライバが、Windows Vista用しか用意されていなかったことだ。動作クロックが1GHz台と強力とは言えないAtomプロセッサを、“重い”Vistaで使わざるを得なかった。また、当初はメモリ容量1GBまでしかサポートしておらず、Vistaを動かすには厳しい仕様でもあった(現在は2GBをサポート)。この影響をもろに受けたのがウィルコム「D4」だろう。開発時からXPドライバがあれば、Windows XP搭載の小型マシンとして評価は変わっていたかもしれない。
Menlowの発表から半年以上経過した2008年11月、IntelはようやくUS15WのXPドライバをリリース。各メーカーがWindows XPを採用し、実用的な性能でWindowsを使えるようになった。
その状況で、最もフットワークが軽かったのは工人舎だ。「SC」シリーズはXPドライバをいち早く導入し、ULCPC版のWindows XP Home Editionを搭載したモデルを発売した。
続いて、富士通「LOOX U」が2008年末の新製品からWindows XPに変更。XPモデルを初めて触ったとき、Vistaだった従来機種と比べて非常に軽快に動いていたのをよく覚えている。
1月発表のソニー「VAIO type P」は、XP用のドライバがすでにリリースされていたが、Vistaを前提にさまざまな機能を盛り込んだため、当初はVistaのみで展開。5月にXP搭載のエントリーモデルが追加された。
Vistaモデルはメインメモリ2GBと容量が多く、HD動画の再生支援やウィンドウ整列ユーティリティが使えたり、新たに27日よりWiMAXがカスタマイズに追加されるなど機能面で優位。XPモデルはメモリ1GBになり、さまざまな機能が省かれるが、何よりOSにXPを搭載していること、そして、最小構成で直販67,800円と価格が抑えられている。Vista直販モデルの最小構成は69,800円。メモリ1GB分とOS、機能面の違いで2,000円の差だ。
NEC「VersaPro UltraLite タイプVS」は、ビジネス向けという位置付けのため、OSにはWindows Vista Businessが搭載されているが、ダウングレード権を使ったWindows XP Professionalプリインストールのモデルが用意されている。メインメモリがオンボード1GB固定なので、XPを選択する方が快適に使えるだろう。
Vistaを選択できる機種でエディションがHome PremiumやBusinessならば、各社が実施している「Windows 7優待アップグレードキャンペーン」に対応する。Windows 7への移行を視野に入れている場合は、敢えてVistaを選択するという手もある。特にVista Businessはダウングレード権があるため、XP、Vista、7の3つから選ぶということも可能になる。
一方で、ウィルコム「D4」はVistaのまま販売を継続。仕様上はWindows XPのULCPC版を搭載できるのだが、XPモデルは無く、自己責任でのXP化を前提に購入するというユーザーも存在している。Windows 7優待アップグレードに関する情報も公開されていない。しかし、車載PCでカーナビ代わりといった自分なりの活用法が見つけられると有力な選択肢になり得る。
各機種の特徴やスペックを掲載するので、軽量マシンを検討している方は参考にしていただきたい。
ウィルコム「D4」 | ||
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最も大きなメリットは、PHSのW-SIM内蔵によりほぼ常時接続が可能なこと。操作は液晶の横にあるタッチパッドと左右クリック、スライド式キーボード。標準でワンセグチューナを内蔵する。 【ニュース】【インタビュー】 | ||
OS | Windows Vista Home Premium | |
CPU | Atom Z520(1.33GHz) | |
メモリ | 1GBオンボード | |
ストレージ | 容量40GB 1.8インチHDD | |
ディスプレイ | 1,024×600ドット 5型ワイド | |
通信機能 | 無線LAN | IEEE 802.11b/g |
有線LAN | 別売クレードルで対応 | |
Bluetooth | 2.0+EDR | |
そのほか | W-OAM対応W-SIM | |
Webカメラ | 約198万画素 | |
インターフェイス | USB 2.0、拡張端子、平型イヤフォンマイク | |
バッテリ駆動時間 | 約1.5時間 大容量バッテリ約4.5時間 | |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約188×84×25.9mm | |
重量 | 約460g(標準バッテリ) 約575g(大容量バッテリ) | |
価格 | 実質負担59,300円~ |
富士通「LOOX U」 | ||
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液晶が回転するコンバーチブル型。操作はタッチパネル式の液晶、ポインタとクリックボタン、キーボード。直販でさまざまなカスタマイズに対応。CPU、ストレージ容量、天板、大容量バッテリ、Office Personal 2007や、各種アクセサリが選択できる。 【UMPCリンク集(富士通)】 | ||
OS | Windows XP Home Edition | |
CPU | Atom Z520(1.33GHz)、Z530(1.60GHz)、Z550(2GHz) | |
メモリ | 1GBオンボード | |
ストレージ | 容量60GB、120GB 1.8インチHDD | |
ディスプレイ | 1,280×800ドット 5.6型ワイド | |
通信機能 | 無線LAN | なし、IEEE 802.11b/g/n、IEEE 802.11a/b/g/n |
有線LAN | 別売変換ケーブルで対応 | |
Bluetooth | 2.1+EDR | |
そのほか | FOMAハイスピード対応WWAN内蔵モデルあり | |
Webカメラ | なし、約130万画素 | |
インターフェイス | USB 2.0、SDカード(SDHC)スロット、CFスロット、指紋センサー、ヘッドフォンステレオミニジャック、マイク/ラインインステレオミニジャック アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)は別売コネクタで対応 | |
バッテリ駆動時間 | 約5~6時間 大容量バッテリ約10~11.3時間 | |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 171×135×26.5~33mm | |
重量 | 約565g(標準バッテリ) 約670g(大容量バッテリ) | |
価格 | 直販79,800円~ |
工人舎「SC」シリーズ | ||
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回転式ディスプレイのタッチパネル液晶を採用し、ワンセグチューナ、GPSを標準搭載。操作はタッチパネルのほか、キーボード、タッチパッドを装備。インターフェイスもExpressCard/34スロットなど豊富に備える。現行製品はACアダプタ/ケーブルが2個付属。 【ニュース】 | ||
OS | Windows XP Home Edition | |
CPU | Atom Z520(1.33GHz) | |
メモリ | 1GB SO-DIMM | |
ストレージ | 60GB 1.8インチHDD | |
ディスプレイ | 1,024×600ドット 7型ワイド | |
通信機能 | 無線LAN | IEEE 802.11b/g |
有線LAN | 100BASE-TX | |
Bluetooth | 2.0+EDR | |
そのほか | - | |
Webカメラ | 130万画素 | |
インターフェイス | USB 2.0、ExpressCard/34スロット、SDカード(SDHC)/MMC/メモリースティック対応スロット、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、ヘッドフォン端子、マイク入力端子 | |
バッテリ駆動時間 | 約3.1時間 | |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 約189×155×25.4~33mm | |
重量 | 約798g | |
価格 | 直販49,800円~ |
工人舎「SK」シリーズ | ||
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SCシリーズからさらに軽量化。回転式ディスプレイのタッチパネル液晶、ワンセグチューナ、GPSを搭載。操作方法はタッチパネル、液晶の左側にスティックポインタ、右側に左右クリック、キーボード、タッチパッドと多彩。Webカメラを前面と背面の2台、通常の3メディア対応カードリーダに加えて、単独のmicroSDカードリーダを装備する。 【ニュース】 | ||
OS | Windows XP Home Edition | |
CPU | Atom Z520(1.33GHz) | |
メモリ | 1GBオンボード | |
ストレージ | 60GB 1.8インチHDD | |
ディスプレイ | 1,024×600ドット 7型ワイド | |
通信機能 | 無線LAN | IEEE 802.11b/g/n |
有線LAN | 100BASE-TX | |
Bluetooth | 2.0+EDR | |
そのほか | GPS | |
Webカメラ | 背面300万画素オートフォーカス付き、前面30万画素 | |
インターフェイス | USB 2.0×2、ExpressCard/34スロット、SDカード(SDHC)/MMC/メモリースティック対応スロット、microSD(SDHC)対応スロット、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、ヘッドフォン端子、マイク入力端子 | |
バッテリ駆動時間 | 約3.1時間 | |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 約193×132×21.6~30mm | |
重量 | 約720g | |
価格 | 直販69,800円~ |
ソニー「VAIO type P」 | ||
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フットプリントが長形3号封筒とほぼ同じ横長のデザインを採用し、キーピッチ約16.5mmを確保。操作はキーボードのほか、中央にスティックポインタ、手前に3つのボタンを装備する。インスタントOS「インスタントモード」を搭載。VAIOオーナーメードはカスタマイズ項目が多く、ユーザーの好みに合わせた仕様にできる。英語キーボード選択可。VistaモデルのカスタマイズにWiMAXが追加予定。 【UMPCリンク集(ソニー)】 | ||
OS | Windows XP Home Edition (VGN-P61S) Windows Vista Home Basic、Home Premium、Business (VGN-P91S) | |
CPU | Atom Z520(1.33GHz)、Z530(1.60GHz)、Z550(2GHz) | |
メモリ | 1GBオンボード(VGN-P61S) 2GBオンボード(VGN-P91S) | |
ストレージ | 60GB、80GB 1.8インチHDD 64GB、128GB、256GB SSD | |
ディスプレイ | 1,600×768ドット 8型ウルトラワイド | |
通信機能 | 無線LAN | IEEE 802.11b/g/n、IEEE 802.11a/b/g/n |
有線LAN | 別売ディスプレイ/LANアダプタで対応 | |
Bluetooth | 2.1+EDR(有無選択可) | |
そのほか | FOMAハイスピード対応WWAN(ワンセグ排他) WiMAX(VGN-P91Sのみ、7月27日受注開始) | |
Webカメラ | 31万画素(有無選択可) | |
インターフェイス | USB 2.0×2、SDカード(SDHC)/MMCスロット、メモリースティックデュオ(PRO-HG)スロット、ステレオミニジャック、内蔵モノラルマイク、ディスプレイ/LANアダプタ用コネクタ | |
バッテリ駆動時間 | 標準バッテリ約4~4.5時間 大容量バッテリ約8~9時間 | |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 約245×120×19.8mm | |
重量 | 約588g~約757g(構成によって異なる) | |
価格 | VGN-P61S 67,800円~ VGN-P91S 69,800円~ |
NEC「VersaPro UltraLite タイプVS」 | ||
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10.6型ながら約725gと軽量、最薄部は15.8mm。キーピッチは約17mmで縦横統一、キーストロークは約2.5mmを確保し、小さくなりがちな「け」「む」「め」「ろ」といった右側のキーなども同サイズとした。カーソル操作はスティックポインタ、手前の左右クリック、スクロールボタンで行なう。ビジネス向けとして、面加圧150kgf、76cm落下のテストをクリア。SSDは東芝製の高速タイプ。 【ニュース】【レビュー】 | ||
OS | Windows Vista Business Windows XP Professional (ダウングレード) | |
CPU | Atom Z540(1.86GHz) | |
メモリ | 1GBオンボード | |
ストレージ | 64GB SSD(モジュール型) | |
ディスプレイ | 1,280×768ドット 10.6型ワイド | |
通信機能 | 無線LAN | IEEE 802.11b/g |
有線LAN | 1000BASE-T | |
Bluetooth | - | |
そのほか | - | |
Webカメラ | - | |
インターフェイス | USB 2.0×3、SDカードスロット | |
バッテリ駆動時間 | 通常バッテリ約4.1時間 大容量バッテリ約8.2時間 | |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 約258×199×15.8~23.9mm | |
重量 | 約725g(標準バッテリ) 約835g(大容量バッテリ) | |
価格 | 直販99,750円~ |
BLURE「Viliv S5」 | ||
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最軽量モデルが約394gとトップクラスの軽さで、バッテリ駆動時間も最大7時間と他の製品よりも長め。キーボードは無くソフトウェアの「バーチャルキーボード」とタッチパネル、液晶左側のジョグボタン(カーソルキー、ポインタ)、メニューボタン、右側の「OKボタン」、右クリック、ショートカットボタンで操作する。GPS内蔵。スタンバイから5秒で復帰する「Instant-On」機能を搭載。 【ニュース】【レビュー】 | ||
OS | Windows XP Home Edition Windows Vista Home Premium (V-S5-64-Vのみ) | |
CPU | Atom Z520(1.33GHz) | |
メモリ | 1GBオンボード | |
ストレージ | 60GB 1.8インチHDD 32GB SSD 64GB SSD | |
ディスプレイ | 1,024×600ドット 4.8型ワイド | |
通信機能 | 無線LAN | IEEE 802.11b/g |
有線LAN | - | |
Bluetooth | 2.0+EDR | |
そのほか | GPS「SiRF Star III」 | |
Webカメラ | - | |
インターフェイス | USB 2.0、ミニUSB 2.0(ゲスト)、マルチI/O端子(別売ケーブルでコンポーネント/Sビデオ/コンポジット出力、アナログRGB出力に対応)、ステレオミニジャック | |
バッテリ駆動時間 | 約6時間(HDDモデル) 約7時間(SSDモデル) スタンバイ時最大200時間 | |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 約154×84×24.4mm | |
重量 | 約436g(HDDモデル) 約394g(32GB SSDモデル) 約402g(64GB SSDモデル) | |
価格 | 69,800円~ (7月27日まで発売記念キャンペーンを実施。価格59,800円~、15,400円相当のアクセサリプレゼント) |
(2009年 7月 24日)
[Reported by 山田 幸治]