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年末の大掃除に向けPCや液晶を無料で処分できる「おくるだけ」を利用してみた

~送料着払いでただ送るだけでOK

 毎年師走が近付いてくると、気になるのはクリスマスについてか、それともお年玉の額についてか……。そわそわするのは老若男女を問わないと思うが、誰にも公平な“ミッション”としてやってくるのが1年間のアカを落とす大掃除というビッグイベントだろう。

 大掃除で特に困るのが、PCやディスプレイなどの大型機器の処分だ。大掃除をしても片付かないのは、まだ前のものを捨てないのに新しい機器を買ってしまっているからという本誌読者も少なくないだろうか。PCやディスプレイは、普通のゴミのように簡単に捨てていいものではなく、PCならば資源有効利用促進法によるリサイクルが義務付けられており、PCメーカーに持ち込むか回収するメーカーがない場合(例えば自作PCなど)は一般社団法人パソコン3R推進協会に廃棄を申し込む必要がある。1台1台申し込まないといけないので、複数台ある場合には結構面倒だ。

 そういう時に検討してみたいのが、PCやIT機器などを引き取ってリサイクルしてくれる民間の業者だ。今回紹介する株式会社いっとくが運営する「おくるだけ」というサービスも、PCやディスプレイなどを宅配便で送るだけで、PCやディスプレイなどを無料で処分してくれる。しかも、配送料はいっとく側の負担(着払い)で、PCの場合は、ストレージの内容を完全消去してくれる。

 今回はそうしたいっとくのおくるだけサービスを体験し、ストレージの完全消去の現場にも立ち会ってきたので、そのレポートをお届けしたい。

今回処分したもの、デスクトップPC3台(いずれも自作PC)、AcerのWindows Home Server、液晶ディスプレイ2台、シャープのスピーカーシステム、Xbox 360、ソニーのネットワークスピーカー、さらに隠れてしまっているが、WindowsタブレットとVAIO type P

PCリサイクルマークがないPCやディスプレイの処分をどうするか

 PCの廃棄は、2003年以前は地方自治体の粗大ゴミとして回収され、廃棄されるということになっていたが、環境への意識の高まりなどを受けて制定された資源有効利用促進法により、法律に基づいてPCメーカーなどが回収する仕組みが導入された。

 個人向けPCの場合、PCリサイクルマークが付いている製品の場合には、PCメーカーが無償で回収する仕組みが導入されている。この場合、回収、リサイクル料金なく回収してもらえる。2003年以前などに販売されていた個人向けPCや、企業向けとして販売されているPCにはPCリサイクルマークはついていないので、消費者が回収、リサイクル料金を支払うことになる。詳しい手順などに関しては一般社団法人パソコン3R推進協会のWebサイトを参照して頂きたい。

 我が国の場合、こうしたリサイクルの制度がきちんと確立されているので、それを利用するというのが一番だが、対象外のものや、廃棄する台数が多い場合には面倒だ。そういった中、民間のリサイクル事業者するのも賢い手だ。法律的には廃棄ではなく、民間のリサイクル業者に譲渡という扱いになる。

 “おくるだけ"を運営する株式会社いっとくもそうした民間業者の1つだ。同社代表取締役の永野間祐一氏によれば、「持ち込まれるPCの中には全く価値のないものもありますが、中古市場ではではそれなりの価格で取引されているものもあり、そういう場合には整備して販売することができます」と説明する。つまり、同社のビジネスモデルは、顧客から持ち込まれてくるPCが、実際に中古市場などで価値があるかどうかを見極め、それを元にどのようにリサイクルするかを決めるという部分にある。

株式会社いっとく代表取締役の永野間祐一氏
オフィスの応対デスクはゲーム筐体というのがユニーク。中身はPCに入れ替えられており、画面にはPowerPointなどを映し出せる
リサイクルを得意とする同社はこうした古いゲーム機の筐体にWindows PCを入れる再生事業なども行なっている
ディスプレイは液晶に置き換えられ、中身もPCになっているが、操作レバーやボタンを使ってWindowsゲームなどをプレイできるようになっており、年末頃から販売に乗り出すそうだ

 おくるだけの特徴は、ユーザーがPCやディスプレイなどの本体をに送るだけで完了するという点にある。かつ、ある一定の条件を満たすと、送料も無料(おくるだけ側の負担)になる。

 その条件とは、

  1. デスクトップPC、ノートPC、液晶ディスプレイのいずれか
  2. 外観破損がないこと、HDD以外のパーツを取り外していないこと

となっている。こうした条件が付いているのは、運送費を負担しても赤がでないようにするためで、到着したPCはその価値を見積もったり、どこか一部だけ壊れているなら、その部分を修理して中古PCとして再生させることになる。逆にこの条件を満たしていれば、壊れていて動かなくてもOKだ。ただし、もう少し細かな条件もあるので、こちらの説明を参照していただきたい。

 上記の条件を満たすと、ゆうパックの着払いのシステムを利用して発送できる。その際、箱のサイズが160サイズ(3辺合計160cm)以下、重量が30kg以下を満たす必要がある。そのサイズと重量を満たせば、1台のPCやディスプレイを入れた同じ箱の中に同社が処分品(後述)として指定しているものを入れて送ることも大丈夫だ。今回筆者も着払いでの送ったのだが、家にあった適当な段ボールに梱包して郵便局からゆうパックで送るだけと簡単なのがいいと感じた。加えて、ゆうパックは自宅への集荷も無料で対応できる。

 送料無料になる条件を満たさない製品も、送料さえ負担すれば処分品扱いとなり、無料で処分することは可能だ。PCの付属品、パーツ、デジタルカメラ、ネットワーク機器、サーバー、プリンタ、液晶TV、ワープロ、ビデオデッキ、携帯電話、カーナビ、ゲーム機、ポータブルオーディオなどが対象になっている。詳細は同社のWebサイトで確認して欲しい。このように一般的なIT機器としてかなり幅広い製品を処分してくれる。ただし、永野間氏によれば「弊社で処理できないIT機器の代表は、ブラウン管のCRTやTVなど。ガラスに関しては素材としてのリサイクルでどうしてもコストが発生するため」とのことだ。

このように梱包して送る。送料無料になるには壊れていないことが条件になるため、輸送中の事故を防ぐ意味でもそれなりの梱包はしておこう
いっとくの倉庫には顧客から送られてきた製品が山と積まれている
PCの歴史を彩った製品達も、時間が経てばこのようにただの処分品だ……
NECの外付けHDD
このようにCPUも分類されているが、ここに入っているのは基本素材のリサイクルに回されるものだという。MMX Pentiumや初代Pentiumなどがレアメタルなどの含有量が多く、高く売れるそうだ
こちらは液晶ディスプレイや液晶一体型PCのコーナー
AV機器やゲーム機の処分も行なっている
再生できそうな製品は同社の社内で分類される
割と新しめのデスクトップ、最近はWindows Vista世代が持ち込まれることが多いとのこと
パーツ取りされたビデオカード
NECのPC-8001やPC-9821なども持ち込まれることも多く、ビンテージPCとして販売されることもあるという
引き取られたPCはこのように分解されて、パーツ取りされたりする
ノートPCもこのように分解される

 なお、処分品に関しては郵送料は顧客側の負担となるが、八王子にある同社に直接持ち込めば費用はかからない。自動車などを持っていて、八王子に比較的簡単に行けるような人であれば、年末の大掃除のタイミングなどで同社に持ち込むという手もある。

自動車などで自分で持ち込めば、無料で処分してもらえるということで、一部は実際に筆者のマイカーで持ち込んだ
自動車で持ち込んだ分
Xbox Oneを買ったので必要なくなったXbox 360
故障して起動しなくなったVAIO type P。バッテリも紛失してしまったが、液晶ディスプレイの部品取りなどにできそうとのこと
こちらは事前にゆうパックで着払いにて送ったものの開梱

データの消去には最大限の注意を払っており、ローレベルフォーマットか物理破壊で対応

 永野間氏によれば、同社の顧客の最も関心が高いことは、持ち込むPCのデータは大丈夫なのかということだという。同社では、PCからHDDやSSDが取り外せる場合で、単体でも市場価値がある場合には、取り外してローレベルフォーマットを行ない、完全にデータにアクセスできないようにした上で、中古品として再生。容量が小さいドライブや、動作しないものに関しては、ドリルで穴を空けて完全に破壊し、物理的にデータを読み出せないようにした上で、リサイクルのプロセスに回す。

 PCのストレージには個人情報を含めたさまざまなデータが格納されている。本来PCを廃棄や譲渡する場合には、ストレージの全ての領域に0と1を書き込んで、データを復旧できないようにするデータ消去ソフトウェアを利用して完全に消去するか、ローレベルフォーマットと呼ばれるストレージを出荷時の状態へ戻す作業などを行なうべきだ。単純な消去やフォーマットだけでは、復旧ツールを利用してデータがサルベージできてしまう可能性があるからだ。

 いっとくでは、それでもデータ漏洩が心配という顧客に対しては、HDDやSSDなどを外して送って欲しいと呼びかけている。その場合でも、送料無料サービスは使える。

 今回筆者は起動しなくなったWindowsタブレットを持ち込んだ。ストレージはeMCCの64GBがオンボード搭載されているモデルだった。こうした基板に直接実装されているストレージの場合には、ストレージのチップを基板から引きはがし、第三者がユーザーデータに絶対アクセスできないようにする。その後、液晶デイスプレイなどのパーツを、部品単位で販売したりしている。

 このように、同社では持ち込まれた顧客のストレージの管理には万全の注意を払っているということで、仮にユーザーのデータが入っている状態で持ち込まれても、必ず完全に削除するか、物理的な破壊を行なっていることが確認できた。繰り返しになるが、本当に情報の漏洩を気にするのであれば、ストレージはユーザー自身がローレベルフォーマットなり、完全消去を行なってから、物理的に破壊するなど処分することを筆者としては強くお薦めしたい。

筆者のAcerのWindows Home ServerはHDDがベイ方式なので簡単に外される
持ち込んだVAIO type Pも分解され、ストレージが取り出された
HDDの物理的破壊の様子
破壊されたHDDの山
同社のストレージ処理室
ローレベルフォーマットが終わって動作が確認された製品にはシールが貼られて区別される
複数のHDDをまとめて処理できるようにしている
UltrabookやWindowsタブレットなどでストレージが外せない場合には、チップを引きはがして物理的な破壊を行なう

年末の大掃除に向けて、今から準備をするならこうしたサービスを利用してまとめて処理

 今回、実に多くのPCやディスプレイなどを同社に持ち込んで処分してもらった。筆者が感じたことは、送るPCやディスプレイの状態にはちょっと注意する必要はあるが、それさえクリアできていればあとは段ボールに梱包して送り状書いて文字通りおくるだけというシンプルさはいいなと感じた。特に筆者のように、自作PCなどが多いユーザーであれば、パソコン3R推進協会のリサイクルに回すより簡単に処理できるというのはメリットと言えるだろう。

 また、実際に同社を訪れて分かったことは、顧客が持ち込んだ製品のストレージの取り扱いには細心の注意が払われているということだ。廃棄時や譲渡時のデータの消去はユーザー自身がやるべきだと筆者は思うが、それでも万が一消し忘れて持ち込んでも、きちんと消去なり物理破壊をしてくれているというのは安心材料になる。

 これから年末にむけて部屋を片付けたいひとは、こうしたサービスを使ってみるというのも、選択肢の1つとして考慮に入れてみてはいかがだろうか。

取材協力:いっとく