特集

清水貴裕プロが教えます! Broadwell-Eのオーバークロックテク

~常用で10コアの性能を引き出せ!

なぜかアウトドアでCore i7-6950Xを手にする清水貴裕プロ

 ハイエンド向けの第5世代Coreプロセッサ「Broadwell-E」が5月31日に発表され、合計4モデルが同日に店頭に並んだ。約2年ぶりのハイエンドCPUの刷新とあってか、ユーザーの注目も高く、売り切れるモデルも多かったようだ。その中でも注目したいのは最上位モデルのCore i7-6950Xで、Intelのデスクトップ向けCPUとしては初の10コアを擁するモデルとなっている。

 本記事では、最初にIntel X99プラットフォームでのオーバークロックの方法や仕組みを復習しつつ、実用における性能向上を検証していき、Broadwell-Eに秘められたパフォーマンスを引き出す方法を紹介したいと思う。

 なお、オーバークロックはメーカー動作保証外での使用となるため、パーツが破損するなどのトラブルが発生する可能性もある。PC Watchや筆者が責任を負うことができないので、本記事を読んでオーバークロックに挑戦する際は、これらの危険を承知した上で自己責任で挑戦してほしい。

検証環境

Core i7-6950X Extreme Edition

 今回の検証で使用するCPUは最上位モデルのCore i7-6950X Extreme Edition(以下、Core i7-6950X)で、マザーボードにはBroadwell-Eに対応したASRockの新型マザーボード「X99 Taichi」を使用する。そのほか詳細は下記の通り。

■検証環境
CPU:Intel Core i7-6950X Extreme Edition(10C20T、3.0GHz)
マザー:ASRock X99 Taichi(Intel X99)
メモリ:CORSAIR DOMINATOR PLATINUM DDR4-3000C15 4GB×4
グラフィック:GALAX GT730(GeForce GT 730、2GB)
ストレージ:Samsung MZ7TE120HMGR(SSD、120GB)
電源:CORSAIR AX1200i(80PLUS PLATINUM、1,200W)
CPUクーラー:CRYORIG A40 Ultimate(240mmラジエータ、12cmファン×2)
OS:Windows 10 Pro 64bit版

 CPU温度に影響するファンの設定だが、A40 UltimateのファンコネクタをマザーボードのCPUファンヘッダに接続し、自動設定機能の「Fan Tuning」を使用して設定している。自動設定の結果、40℃に達すると29%、60℃に達すると50%、75℃を超えると90%でファンが回転するように設定された。なお、室温は24℃前後になるように調整している。

ファンの自動チューニング実行後の設定。
ASRock X99 Taichi
ピンが追加された独自ソケットを搭載。VRMは12フェーズ構成で、コンデンサとチョークコイルはZ170 OC Formulaと同じ物が使われている
PCI Expressスロットには最近のトレンドである金属製のシールドを装備。M.2スロットは2本でソフトウェアRAIDに対応
CPU用の補助電源は8ピン×1
背面のインターフェイス。2基のUSB 3.1や無線機能を装備
Serial ATA 3.0は外付け2基を含む合計8基
CRYORIG A40 Ultimate
ヘッド部分にファンを搭載可能。VRMなどの周辺冷却に効果があると謳われている

Haswell-Eと同じくCPUに電圧レギュレータを内蔵

 まず最初にオーバークロックのキモとなる、電源周りの仕様について復習しておこう。Skylakeこと最新の第6世代Coreプロセッサ世代で、CPU内蔵電圧レギュレータが廃止されたのは記憶に新しい。しかし、Broadwell-Eは第5世代Coreプロセッサなので、電圧レギュレータは第4世代のHaswell-Eと同じくCPUに内蔵されている。

IDF14の資料より

 マザーボードからCPUに入力される電圧は、内蔵電圧レギュレータに供給される「VCCIN」とメモリインターフェイス供給される「VDDQ」の2系統のみとなっている。これは、Haswell/BroadwellやHaswell-Eと同じ仕様なので、これらを触ったことのある人は同じ感覚でBroadwell-Eを触ることができるだろう。

 内蔵電圧レギュレータからは、CPUコアに供給される「VCORE」、リングバスに供給される「VRING」、システムエージェント部分に供給される「VSA」、I/O部分に供給されるアナログ電圧の「VIOA」とデジタル電圧の「VIOD」の5系統が対応するブロックへと供給される。

 なお、IDF2014の資料ではI/O電圧がアナログとデジタルの2系統存在するように描かれているが、マザーボードのUEFI上では存在するのは「CPU VCCIO Voltage」の1系統のみとなっていた。LGA1150プラットフォームとは違って、UEFI上で個別に設定できないようだ。

 オーバークロック時の電圧設定モードはこれまで通りの3つが利用可能。常に設定した電圧が掛かる「Override」モード、VID値から指定した値を増減させる「Offset」モード、オーバークロック域でのみ昇圧する「Adaptive」モードの3つがあるので、用途に合わせて最適なものを選ぶ。

 省電力機能を無効にしてクロックを固定するベンチマーカーやオーバークロッカーはOverrideモード、常用の場合はオーバークロック域以外は昇圧が行なわれず省電力性に優れるAdaptiveモードがお勧めだ。マザーボードによっては、Adaptiveモードを選択するとOverrideモードやOffsetモードよりも高い電圧を要求する例もあるので、その場合はOffsetモードを選ぶと良いだろう。

Overrideモードの設定画面
Adaptiveモードの設定画面
Offsetモードの設定画面

トラブル時に確認したい2つの電圧

 X99プラットフォームは、多数の電圧設定を備えるためかオーバークロック時に不安定になる場合が多い。適切な昇圧を行えば解決できる場合が多いので、安定性に問題がある場合は下記の2つを試してみてほしい。

 VCOREやVRINGを昇圧しても負荷テストで落ちてしまう場合に有効なのが、マザーボードから内蔵電圧レギュレータへと供給されるVCCINの昇圧だ。

 マザーボードによってさまざまだが、VCCINの定格値が1.75Vに設定されているマザーボードの場合は、これを1.8~1.9Vまで昇圧しないとオーバークロック耐性が伸びない場合がある。これはなぜかというと、内蔵電圧レギュレータから供給するVCOREなどの電圧をいくら昇圧しても、CPUに入って来るVCCINが低いままでは昇圧の効果が発揮されないからだ。

 CPUによっては定格のまま限界まで回せる個体もあるので、効果がない場合は定格のままでOKだ。常温環境では影響のない場合があるが、極冷環境では昇圧は必須で、1.9Vから2.1V辺りに最適値がある個体が多い。

VCCINの設定画面

 もう1つ注意したい電圧がVSAだ。これはメモリコントローラのオーバークロック耐性に直接関係するシステムエージェント部分の電圧で、ここが定格のままだとメモリをオーバークロックした際に不安定になりやすい。

 手動設定でメモリをオーバークロックする場合だけでなく、XMPでDDR4-3,000MHz以上のメモリを使う場合にも昇圧を行ないたい電圧だ。また、メモリを8枚使用する場合にも効果的なので、大容量メモリを使用する人もトラブル時はチェックしてみてほしい。

 マザーボードによって電圧の指定方法は異なるが、1.2V前後になるように設定すればOKだ。オフセット値を指定する場合は、+0.3V前後が目安となる。CPU間でVSAのVID(定格電圧値)は異なるので、UEFI上のハードウェアモニタ機能などで確認してから昇圧を行なうといいだろう。

 デュアルチャンネルのLGA115x系よりも、クアッドチャンネルに対応したメモリコントローラを備えるLGA2011系のCPUの方が、メモリコントローラへの負荷は高いので、VSAの昇圧が必要になる場合が多い。

VSAの設定画面

隠しピンを利用した電圧調整ができない仕様に

 LGA2011-v3マザーボードでは、ASUSTeKの「OC Socket」に代表される独自ソケットを搭載した製品を各社が発売していたのは記憶に新しい。これは、CPUの隠し接点を利用してCPUに電圧を供給し、アンコア部分のオーバークロック耐性を高めてくれるというものだ。具体的に言うと、リングバスクロックのオーバークロック耐性や、メモリコントローラの安定性を向上させるという効果がある。

 CPU側のランドが2,084本あるのに対し、LGA2011-v3ソケットは文字通り2011本しかピンがない。この差に注目したASUSTeKのエンジニアが、独自にピンアサインを検証した結果、ノーマルソケットではオーバークロック耐性に関係するピンが使われていないことを発見し、ピンを追加した独自ソケットが誕生したという裏話がある。その後各社が独自に検証を行い、ピン数を調整して独自ソケット搭載製品を作って追従したのだ。

 Broadwell-Eでは残念なことに隠しピンを利用したアンコア電圧の調整が出来ない仕様になっており、リングバスクロックの大幅なオーバークロックが難しくなっている。Haswell-E世代では空水冷でも4.5GHz超えが狙えたが、Broadwell-E世代では3.7GHz前後がリングバスクロックの限界となっている。

 オーバークロックの面では後退したとも言える仕様変更ではあるが、空水冷から極冷までテストした中で一点興味深い挙動があった。Haswell-Eでは、追加ピンを搭載しないマザーボードでは3.7~3.8GHz前後にリングバスクロックの壁があった。これはリングバス電圧をいくら昇圧しても超えられず、液体窒素を使ってCPUを冷却しても超えることは不可能だった。しかし、Broadwell-Eでは極冷時にリングバス電圧の昇圧を行なえばこの壁を突破できるのだ。4GHz超えは楽勝で、良い個体だと4.5GHzを超えるものも確認している。アーキテクチャ変更の恩恵なのかは不明だが、追加ピンを搭載しない初期のLGA2011-v3マザーボードでも性能を発揮できる点は、オーバークロッカーにとっては朗報かもしれない。

Turbo Boost機能がパワーアップ

 Turbo Boost 2.0では、温度や消費電力の余裕によってブーストクロックは変わってくるものの、負荷の掛かっているコアが増えるに従って動作クロックが下がっていく仕様となっていた。Core i7-5960Xを例にすると、1コア稼働時と2コア稼働時には上限値の3.5GHzまでクロックがブーストするが、3~8コア稼働時には3.3GHzまでしかクロックがブーストしないといった具合になっている。

 しかし、Broadwell-Eで新たに実装された「Turbo Boost Max Technology 3.0」では、全てのコアに負荷が掛かった状態でも、製品スペックに表記されている最大周波数までブーストするようになった。全てのコアのクロックがブーストするようになったのは、マルチスレッド処理での恩恵が大きい仕様と言える。

 これに加えて、Turbo Boost Max Technology 3.0には、特定のコアだけが最大周波数を超えてブーストするという機能も含まれている。ブーストするコアには、CPU内で最もオーバークロック耐性の高いコアが使われているようで、その情報は専用ユーティリティで確認することが可能だ。そのいわゆる“当たりコア”だが、製造時に選別されているという。

 上記機能を利用するためには、UEFI上でTurbo Boost Max Technology 3.0機能を有効にした状態で、Windows上でドライバをインストールする必要がある。ドライバのインストール後に、インストールされた専用ユーティリティ上で任意のアプリケーションを指定すれば設定は完了。当然のことだが、どれか1つでも欠けていると追加ブースト機能を利用できないので注意して欲しい。

Turbo Boost Max Technology 3.0設定画面
ユーティリティの設定画面。一番上に表示されているコアが最も耐性の高い当たりコアになっているようで、このコアが追加でブーストする
ドライバインストール後のデバイスマネージャ。「Intel Turbo Boost Max Technology 3.0 driver」なる項目が出現

 ASRockのレビュワーズガイドによると、CINEBENCH R15のシングルスレッドテストでの検証が分かりやすいと書かれていたので、これを用いて挙動を確認してみた。

Turbo Boost Max Technology 3.0追加ブースト無効時のスコア
Turbo Boost Max Technology 3.0追加ブースト有効時のスコア

 タスクマネージャやHWMonitorを開いた状態でベンチマークを走らせたのでスコアが少し低く出ているが、Turbo Boost Max Technology 3.0無効時のスコアが143cbだったのに対し、有効時には166cbと、約15%のスコア向上が見られた。

 タスクマネージャのグラフを見ると、無効時にはベンチマークの処理がコア間で移動しているが、有効時には処理が4.0GHz動作の当たりコア(#0)に集中している。なお、全コア稼働時でも、当たりコアだけがさらにブーストするとの情報があったが、当環境ではそういった挙動は見られなかった。

 ユーティリティ側でアプリケーションを指定することで、タスクマネージャからコア指定(関係の設定)を行なうのと同じ効果が得られるようだ。ドライバをインストールしただけでは、Turbo Boost Max Technology 3.0の恩恵を全て受けられないので、シングルスレッド性能を向上させたい場合は設定を行なった方がいいだろう。

 一点気になる挙動があった。ユーティリティ上で追加ブースト機能を無効化しても、なぜかアイドル時にクロックが4GHzまでブーストしてしまうのだ。ベンチマーク中にはブーストしなかったのでスコアへの影響はなかったが、今後のドライバアップデートでの改善を期待したい部分だ。

オーバークロック向けの新機能が3つ

 Broadwell-Eで新たに追加されたオーバークロック機能をチェックしていこう。

 まずは、「Per Core Overclocking」という機能。これまでのIntel製CPUではTurbo Boost時のCPU倍率は全コア共通でしか設定できなかったのだが、この機能を使うことでCPU倍率をコア単位で設定できるようになる。オーバークロック耐性の高いコアだけ倍率を上げるといった使い方をすれば、ハイスコアを狙う際に有利だし、常用設定を構築する際にもメリットとなるだろう。これまで以上に柔軟なオーバークロック設定が可能となるだろう。

Per Core Overclockingの設定画面。コア倍率を別々に設定可能

 次に「AVX Ratio Offset」という機能。Haswell-E世代のCPUは、AVX命令を使用する際にTurbo Boost機能が働かない仕様となっていた。しかし、Broadwell-E世代ではオフセット値を指定することで、オーバークロック状態でAVX命令を実行可能になった。マザーボードの仕様によってオフセット値の設定方法は異なると思われるが、今回使用したASRockのX99 TAICHIでは、最大周波数からのマイナス値を設定する「AVX2 Negative Offset」という項目が存在する。

AVX2 Negative Offsetの設定画面。マイナス値を設定可能

 最後に「VccU Voltage Control」という、電源供給レーンのインターフェイスにアクセス可能になると謳われている機能。技術的な仕様は不明だが、リングバスクロックのオーバークロック耐性に影響を及ぼす部分がその中にあるらしく、ASRockマザーボードでは「VCCU Voltage Offset」という設定項目が設けられている。

 この項目に関してはCPUの発売前からテストしているが、残念なことに空冷や水冷の環境ではほとんど効果が見られなかった。Haswell-E世代のマザーボードでもBroadwell-E世代のマザーボードでも同じ挙動だったので、常温環境での昇圧は不要と考えていいだろう。ただ、極冷でリングバスクロックを4GHz以上に設定する場合には+0.3~0.6V程の値を設定する必要があるので、極冷オーバークロックにチャレンジする人は昇圧を行なおう。

VCCU Voltage Offsetの設定画面。プラス値を設定可能

常温環境では4.4GHzに壁がある

 X99プラットフォームの復習と新機能の予習ができたところで、ここからは実際の検証に移りたいと思う。まずは、Intel Extreme Tuning Utilityのベンチマーク機能を使用して、3.5GHzから4.4GHzまでの完走に必要なCPU電圧(Vcore)を求めた。また、その際に消費電力値とCPU温度も計測しているので、そこからCPUの挙動を読み解きたいと思う。

 消費電力値はElectoronic Educational Devicesの「Whatts Up? PRO」を使用して計測し、CPU温度はHWMonitor 1.29のPackageの値から計測している。マザーボード側の設定だが、電圧の降下を防ぐLoad Line Calibration機能を最も降下の少ない「Level 1」に設定した上で、CPU倍率とCPU電圧のみを設定している。また、電圧やクロックの変動が検証結果に影響を及ぼさないように、C-STATEなどの省電力機能を無効にし、電圧設定はOverrideモードを選択した。

 3.5GHzから4.1GHzまでのVcoreの要求値は、多いときに0.03V、少ないときに0.02V刻みで上昇している。温度と消費電力の面でも上昇は緩やかで、4.1GHz時でさえCPU温度は56℃までしか上昇していない。昇圧が必要にはなるだろうが、4.1GHz辺りであればより負荷の掛かるPrime 95やOCCTを走らせても、CPU温度を80℃以下に抑えられそうな感触だ。

 グラフ上で注目して欲しいのが4.2GHz時の値だ。Vcoreの要求値が1.21Vと、1.16Vだった4.1GHz時と比べて0.5Vも上昇している。加えてCPU温度は4℃上昇し、消費電力値は19W上昇している。これらは3.5GHz~4.1GHz時と比較すると最も大きい上昇幅になっている。筆者の経験からいうと、この発熱と消費電力が増えるラインから常用設定を作る難易度が上がる傾向にあると思う。

 4.3GHz時には同じ0.5Vの上昇幅だが、4.4GHz時には要求電圧はさらに増えて0.6Vとなっている。この時のCPU温度は73℃を記録し、消費電力値は302Wまで上昇した。これらの値から推測するに、今回の個体では4.4GHzでPrime 95やOCCTを長時間動作させるのは無理だと思われる。

 この後、4.5GHzにも挑戦したが、Vcoreを1.4Vまで上げてもベンチを完走できなかった。昇圧してもベンチの動作時間が大幅に伸びる感じでもなく、1.37Vを超えた辺りからは走らせた瞬間にフリーズするようになってしまった。VCCINを1.9Vまで昇圧しても症状が改善されなかったので、4.5GHzよりも先は液体窒素やドライアイスを使った極冷オーバークロックでないと安定しない領域なようだ。

 CPUクーラーの性能やケース内のエアフローにもよるが、検証結果からして今回の個体の常用クロックは4.0GHzから4.1GHzが狙い目だと思われる。電圧の設定値だが、水冷タイプのクーラーやハイエンド空冷を使うとしても、VCOREは1.2~1.25Vの間に抑えておいた方がいい感じがする。

フルスレッド処理での恩恵は大きい

 オーバークロック時の挙動が分かったところで、実際にどれ程性能が向上するのかをチェックしていこう。Intel Extreme Tuning Utility 6.0.2.8とCINEBENCH R15、TMPGEnc Video Mastering Works 6 ver6.1.4.25を使ったH.265形式へのエンコードを使って検証を行なう。エンコードの設定は、容量520MBのMOVファイルをH.265形式のMP4動画に変換する際に掛かる時間を計測した。

 計測にあたって、スコアを安定させるために、Turbo Boost Max Technology 3.0の追加ブースト機能はユーティリティ上で無効化してある。ドライバはインストールされた状態のままなので、定格時の動作クロックは全コアが3.4GHzとなっている。

Intel Extreme Tuning Utility 6.0.2.8の結果
CIBEBENCH R15の結果
TMPGEnc Video Mastering Works 6 ver6.1.4.25の結果

 CINEBENCH R15の結果を見ると、4.3GHz時のシングルスレッド処理のスコアが178cbに達している。Core i7-6700Kの定格時のスコアが180cb前後なので、4.3GHz以上までオーバークロックすればシングルスレッド性能で良い勝負ができることが伺える。

 Intel Extreme Tuning Utility 6.0.2.8のスコアはメモリをXMPで使っているために、Core i7-5960Xのスコアで表すと5.2GHz相当になるが、CINEBENCH R15のマルチスレッドテストのスコアはCore i7-5960Xのスコアで表すと5.6GHz相当のスコアになっている。コア数が増えた恩恵で、旧世代のExtreme Editionの極冷時のマルチスレッド性能が常温環境で手に入るのは浪漫がある。

 エンコードでもオーバークロックの効果は絶大で、定格時に5分10秒掛かったエンコード時間が、4.0GHz時には約16%高速化して4分27秒、4.4GHzに至っては約25%高速化して4分07秒まで短縮されている。個体差や消費電力との相談にはなるだろうが、エンコードを行なう場合はオーバークロックした方が時間の短縮に繋がる。

リングバスのオーバークロック効果を検証

 最後にリングバスのオーバークロックがベンチマークのスコアとエンコード時間に及ぼす影響をチェックしてみよう。兼ねてよりコアクロックよりは効果が薄いと言われているリングバスのオーバークロック。やるべきなのか、やらないべきなのかをはっきりさせたいと思う。

 常用設定域での効果を検証すべく、CPUのクロックは4.0GHzに設定した。リングバスのクロックは3.0GHzと3.5GHz、定格状態の2.8GHzの3段階で計測を行なった。

Intel Extreme Tuning Utility 6.0.2.8の結果
CIBEBENCH R15の結果
TMPGEnc Video Mastering Works 6 ver6.1.4.25の結果

 最もスコアが伸びたのがIntel Extreme Tuning Utility 6.0.2.8で、3.5GHz時には約3.4%のスコア向上が見られた。リングバスのオーバークロックが効果的なベンチマークの1つなので、順当な結果と言える。

 CINEBENCH R15ではマルチスレッドテストで約2.8%、シングルスレッドテストで約2.4%のスコア向上が見られた。体感できるかは微妙だが、ベンチマークでハイスコアを狙う場合にはリングバスのオーバークロックは必須と言える結果だ。

 エンコードの結果を見ると、3.5GHzまでリングバスをオーバークロックしてもエンコード時間は7秒しか短縮されていない。しかし、パーセンテージで現ると2.6%高速化していることになるので、安定性や発熱の面でデメリットがないのならば、リングバスをオーバークロックする価値はあると言える。

 稀に、リングバスクロックを限界付近まで上げると、コアクロックが伸びなくなる個体があるので、設定する際はコアの設定を決めてからリングバスの設定を行なうのが鉄則だ。そうすることで安定性や発熱にどういった影響を及ぼすのかが分かるし、処理速度への影響が強いコアクロックを優先して設定を組み立てた方が、トータルパフォーマンスの向上にも繋がる。

オーバークロック設定の難易度は意外にも低い

 オーバークロック向けの新機能が搭載されてはいるものの、Broadwell-Eの基本的なオーバークロック設定はHaswell-E世代と同じだ。VCOREとCPU倍率の変更だけでも、ある程度のところまではオーバークロックできるので、経験者ならずとも扱えるだろう。

 Haswell-Eと比べてクロックが伸びにくいのは残念だが、最上位モデルのCore i7-6950Xはコア数が2つ増えているので、エンコードやレンダリングをする場合に大きなメリットとなり、オーバークロックによってさらにその魅力が増すのは言うまでもない。

 常用オーバークロックの狙い目ラインだが、個体差にもよるが多くのCPUが3.9GHzから4.1GHzあたりになると予想している。VCOREを1.2V以下に抑えた状態であれば、発熱が低いので240mmサイズのラジエータを搭載した簡易水冷クーラーで十分冷却できそうな印象だ。

 VCOREを1.25V以上に設定したあたりから、CPUだけでなくVRMも熱くなってくるので、ハイクロックでの常用を目指す際はCPUに加えてVRMの水冷化も必要になってくるだろう。これはX99マザーボードの特性なので、ケースのサイドパネルを開けてVRMのヒートシンクを指で触りながらオーバークロック設定を行なうことをお勧めする。指で触れない位まで発熱している場合は、VRMが燃える可能性があるのでスポットファンを設置するなどの対策が必要になってくる。

 CPUの下位モデルを試せなかったのが心残りではあるが、今回のオーバークロックガイドはこれにて終了。発熱や消費電力の増えるラインを意識して設定をすれば、設定に迷うことも少なくなるので、今回の記事を参考にオーバークロックを楽しんで頂ければ幸いだ。