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NVIDIA、GTX 980でNASAの陰謀論解明に挑む

〜人類は本当に月に行ったのか?

GAME24でGeForce GTX 980を披露するジェンスン・フアン氏

 米NVIDIAは、日本時間の19日10時よりゲーマーの祭典「GAME24」を開催している。同イベントは、米ロサンゼルスを中心に、上海、ストックホルム、ロンドンにもサテライト開場を設け、各地で同時開催し、その様子はストリーミングでも全世界に配信されている。

 この中で、同社社長兼CEO(最高経営責任者)のジェンスン・フアン氏は、第2世代Maxwellを搭載するハイエンドGPU「GeForce GTX 980/970」を発表した。その詳細については、関連記事に詳しいが、フアン氏は、GeForce GTX 980がKepler世代のGeForce GTX 680に対して、ワット当たりの性能が2倍になり、MFAAという新しいアンチエイリアス(AA)手法を実装したことで、AA適用時の実性能も前世代から2倍になったことをアピールした。

 もう1つ、この新製品で新たに取り入れられたのが、「VXGI」と呼ばれるグローバルイルミネーション機能だ。グローバルイルミネーションは、物体に直接あたる光だけでなく、物体に反射した光も考慮した上でレンダリングを行なうもので、レイトレーシングと言った方が分かりやすいかもしれない。グローバルイルミネーションを使うことで、CGの写実性は格段に増す。

 だが、グローバルイルミネーションでは、1本1本の光線の軌道を正確に追跡、再現するため、GeForce GTX 980クラスのGPUでも、演算には莫大な時間がかかる。そこで、VXGIでは、レンダリングするシーンをピクセル単位ではなく、ボクセルと呼ばれる立体に分解して演算を行なう。これにより、何十億という処理を、数百万にまで簡易化することができる。

 当然、その分、正確性は犠牲になるが、下の画像を見て分かる通り、本当のレイトレーシングにかなり近い出力を得ている。一方、レイトレーシングではこの1フレームの処理に150基のGPUを使って3秒かかっているが、VXGIを用いたものはGPU 1つでリアルタイム(数十分の1秒)で処理できるようになった。

レイトレーシングによるレンダリング。光源は天井の1つの明かりだけだが、球体や壁に光が反射することで、天井も明るいし、球体には壁の色が映り込んでいる。この処理には150基のGPUで3秒かかった
こちらは直接光だけでレンダリングした結果。天井は暗く、球体の下半分もほぼ真っ黒だ
先の画像から、VXGIを使って間接光だけをレンダリングした結果。天井も明るくなり、壁の色がほかの場所に投影されている
これを用いて、VXGIでレンダリングした結果。レイトレーシングにかなり近い出力が得られているが、リアルタイムでぐりぐり動かすことができる

 さて、本記事の本題はここからだ。このVXGIを活用すると、どのようなことができるのか? もちろん、ゲームでもこれまではプリレンダーされていたカットシーンがリアルタイムで処理できるようになるといったことが真っ先に思いつく。

 だが、フアン氏は今回、やや違う側面からこの機能にスポットライトを当てた。それは、アポロ11号の月面着陸に対する陰謀論を解明するというものだ。

 1969年、NASAはアポロ11号を月面に送り、ニール・アームストロング船長らが、人類で初めて月面に降り立った。その動画や写真は多くの人が目にしたことがあるだろう。

 だが、この偉業は作り話で、月面着陸は地球上でロケ撮影されたものだという、陰謀論を唱える人も一部にいる。米国の威信を顕示するため、宇宙開発で他国に先んじたと見せかけているだけだと彼らは主張する。

 それにはもっともらしい根拠もある。1つは、アームストロング船長が撮影した、エドウィン・オルドリン操縦士が月着陸船から月面へ降り立つ際の写真の写り具合。地面に写る着陸船の影を見ると分かるように、オルドリン氏は、太陽に対して着陸船の背後にいる。そのため、オルドリン氏は着陸船の影になり、もっと暗く写るはずというのが根拠の1つ。もう1つは、月には大気がないため、地平線の向こうには星が見えるはずだ、というもの。

 その真偽を確かめるため、NVIDIAは、この月面着陸の様子をCGで精密に再現した。太陽や月の位置関係、被写体の形状、そして月面や、宇宙服、着陸船の素材に至るまでシミュレーションした。

 もし、光の反射を考慮しない直接光だけでレンダリングしたらどうなるか? それが下の画像だ。確かにオルドリン氏の姿は、宇宙船の影になり、真っ暗になってしまった。陰謀論の主張する通りの結果だ。

直接光だけでレンダリングした結果。オルドリン氏の姿はほとんど視認できない

 しかし、前述の通りこれには地表の反射光が含まれていない。地表の塵による太陽光の反射を考慮に入れて計算、つまりグローバルイルミネーション処理をしたところ、下記の画像の通り、実際の写真と同じようにオルドリン氏の姿がはっきりと浮かび上がった。

グローバルイルミネーション処理すると、オルドリン氏の姿が鮮明に浮かび上がった。ただし、背後には、そこにあるはずの星が見えない

 星の件はどうか? これは単純にカメラの露出の問題だった。写真が撮影された月面の明かりは非常に明るい。そのため、露出を絞る必要があり、背後の星が見えなくなってしまうのだ。実は、この再現CGには近傍の8万4千個の恒星も再現されている。露出を上げてみると、それまで見えなかった星が見えるようになった。

角度を変えて、露出を上げたところ、このように星が出現した

 もう1つ陰謀論の根拠がある。それは、着陸船の外部カメラから写した別アングルの写真だ。先ほどとちょうど逆から写した形となっているが、オルドリン氏の向こう側にかなり明るい光がある。陰謀論を唱える人は、これがロケのセットに置き忘れたライトだとした。

 この状況をCGで再現すると、そのような光は見えない。しかし、これには船外にいたアームストロング船長が含まれていない。船長をその場に出現させるとどうなるか? 反射率の高い宇宙服を着たアームストロング氏が、ライトのように光り輝く状況が映し出された。これが、謎の光源だったのだ。

別のカメラから撮影したオルドリン氏の実際の写真。はしごの向こうに明かりが見える
再現CGではこのようになり、明かりは見えない
しかし、アームストロング船長を実際の場所に出現させると、それが明かりのようになった
別の角度から見たところ。宇宙服はかなり光の反射率が高いのだ

 このように、アポロ11号乗組員による、月面での撮影は、GPUを使って、科学的に正しいものであることが立証された。GPUの機能紹介のデモとしてはかなりユニークなものと言えるだろう。

右が実際の写真をカラー化したもので、左が今回作成されたCG。グローバルイルミネーションにより、ほとんど写真と見分けがつかない仕上がりになっている
視点を変えたもの

 なお、このプレゼンテーションの模様は、日本時間の18時10分と23時23分からも再放送が予定されている。このほか、19時10分からはスクウェア・エニックスの吉田直樹氏によるプレゼンテーションの中継も予定されているので、興味のある人は視聴してみてはいかがだろう。

(若杉 紀彦)