やじうまPC Watch
【懐パーツ】処女作にして野心的、NVIDIAのNV1を搭載した「EDGE 3D」
2016年9月7日 06:00
この突発企画の3回目は、3D時代へ突入する(いつ逆戻りするかも分からないけど)。Diamond Multimedia製のビデオカード「EDGE 3D 3240」だ。筆者の友人の父親から譲り受けたものである。
EDGE 3Dのコアエンジンは、NVIDIAの記念すべき初ビデオチップ「NV1」である。製造はSGS Thomsonで行なわれた。EDGE 3D 3000シリーズにはNV1の刻印がされたチップが搭載されているのだが、下位のEDGE 3D 2000シリーズは「STG2000」という刻印がされている。
NV1登場当時はまだDirect3Dといった標準のAPIがなかったため、NVIDIAは独自の実装により3Dを実現していた。しかし当時はVoodoo向けに製作された3Dゲームタイトルが多かったため、「バーチャファイターRemix」や「パンツァードラグーン」、「NASCAR Racing」といった一部タイトルが、NV1専用版として移植されただけに留まる。これらのゲームはEDGE 3Dにバンドルされたため、結果から言えばゲームが目的であればお買い得であった。
NV1を搭載したカードの特徴は3D機能だけではない。ビデオカードでありながらサウンド機能も統合している点である。サウンドはDMA転送に対応しているほか、ハードウェアミキサーも内蔵されているため、CPUに負荷を掛けずに音を再生できた。しかもハードウェアMIDIテーブルも内蔵しており、筆者が記憶する限りではなかなかの高品質だった。
さらに、本製品はセガサターン用のサターンパッド2基を繋げるための別ボードも付属していた。先述の通り、一部セガサターンのタイトルがNV1向けに移植されているのだが、サターンパッドを接続すれば、セガサターンとまったく同じ操作感でゲームをプレイできたわけだ。
ちなみにこのボードはNV1を中心に、DACと見られる「NVDAC64」や、セガサターンパッドの制御を受ける「NVSGP」(SGPはセガサターンパッドの略?)などのチップも実装されている。ビデオメモリはSamsung製の「KM4216C256G-60」で、KM4はSamsung、2はVRAM、16は16bit幅、Cは5Vの駆動電圧、256は256kbit、60は60nsを示す。よって1チップ当たりの容量は4Mbit(512KB)で、これを4基搭載した本機は2MBである。ドーターボードによって、4MBに拡張できる。
Analog Devicesの「AD1845JP」は、先ほど述べたサウンド機能を実現するためのコーデックチップだろう。データシートによれば、2つのDMAチャネルを備えており、全二重動作が可能になっている。サンプリング周波数は48kHz、ビットレートは16bit、アナログ出力の周波数は20Hz~20kHzと、今となってはまったく高性能ではないが、CD音質はカバーしている。ボード上には、CDドライブの音声を入力するためのピンヘッダも見える。
サウンド機能も兼ねているため、背面インターフェイスは賑やかだ。ミニD-Sub15ピンの下に見えるのは音声入出力、上に見えるLANポートのような端子は、ドングルによってゲームポートに変換できる。つまり、一般的なPCジョイスティックも利用できるわけだ。
ちなみに筆者は当時「PC-9821V12」を使用していて、3Dゲームをプレイするどころか、MIDIを鳴らすこともゲームパッドを接続することもできなかったので、1枚で全て済ませられる本製品が憧れの的であった。
こうしてみると、NVIDIAの処女作「NV1」は、野望に満ち溢れた製品に仕上がっていることが分かる。